ワルプルギスの夜を越え 7・奇蹟が欲する棘道
[全7ページ]
-1ページ-

 半分の月が白く輝き夜を漆黒にしないように照らすと、この町の極端な作りは際だって見える。

 

 真円に近い城は、昔は出張砦とも言われていた。

山の峰と、谷間に備えられる前線の砦とは違い、食糧備蓄や後方支援のために作られた城で最後の詰め城が始まりだった。

本来なら最後を護る城として堅固な城壁が幾重にも張られるべきだが、結局そこまでの大火は山を越えてこなかった。そのため簡素なまま、元城の形だけが残って町になった。

今や四方を見渡すために作られた尖塔も無く、変わってカリオン塔を中央に頂く風光明媚な避暑地の町に、表面だけでもなろうとしていた。

-2ページ-

 

 

 夜陰に紛れた仕事から帰り、水路の交差点に置かれた掘っ立て小屋ではなく、藁山側面をほじり作った風よけにナナは寝床を作っていた。

そこから少しだけ顔を出して風を受け、月に透かすように皹(あかぎれ)の手を見つめる。

割れた傷に汚泥が詰まると、指は寒さも手伝ってあっけなく壊死する。

汚れと水仕事を夜にやるのは自殺行為、指が無くなるような事を好んでしたくはなかったが……キュゥべえの言う魔女の事が気になって、一働きしていた。

 

『魔女は来るよ、必ず。不思議な事だけど魔女はこの町に近づきたがっているようなんだ』

 

 実際に、山の魔女を見ているのだから危機感の波は高かった。

だからヨハンナや他の仲間の為に逃げ道を確保するぐらいの事、教会や町に対する良心の呵責などなかった。

 

「アルマ、私の出来る事をするよ……私は強くないからさ…出来る事だけをするよ」

 

 何度か寝返りを打ちながらナナは、こうしている間に魔女が来るのではという思い無駄な事で頭を揺らし、眠りを下ろそうとしながら纏まらない考えの果てに向かっていた。

母の記憶に。

 

 ずっと昔、まだロミーより小さかった頃、ここより寒い北の湖水地方に住んでいた。

収穫の少なく、寒い季節の多い北の方では荒くれ者が傭兵となって、冬の到来とともに南の町へと狼藉に出かけていた。

勝ちどきに景気を良くし、奇声と怒声を挙げて帰ってくる男達。

錆びた甲冑がけたたましく駆け抜け、ぬぐえない血と臓物臭をしみこませたスタッド・アーマー*1を片手に酒に興じる強盗騎士*2達が囲みを作る小屋の中でナナは生活していた。

思い出はいつも暗く、一つの灯の中で転がるように進む。

 

 男たちと酒を飲み交わす母の姿。

色白で長い赤髪を持っていて……青いドレスを着て踊っていた。

いつもの笑顔で。

 

 それだけが灯りのともる思い出であり、後は奈落の黒い泡の中にあるのだが、夜長の時に触れてはいけない渦の深い底の声が漏れ聞こえていた。

嬌声の母と男達と、男達と……たくさんの手と、燃える人。

笑う自分。

 

 うたた寝をしていた背筋に痛みが走り跳ねる。

坩堝の闇にある記憶に心がむき出しのまま触れてしまわぬように針を刺した……一度、目を大きく開いてゆっくりと細めると息を整えた。

ナナは自分の胸を押さえると、早くなった鼓動にもう一度深く息を吸い、小さく首振った。

 

 あの闇の夢を見るときは決まって何か悪い事が起こる。

何かが壊れて、信じていた者が遠くなり、裏返る。

不安で体が重くなる中で、ナナは口を開いた。

自分に語らなければ、とても平静を保てない時に使うまじないを。

 

「大丈夫……辛い時は笑う、笑うんだ。そうすれば人は畏れを知るんだ」

 

 無理に作った笑みの中、半分の月を見ていた目、涙は見える片目から静かにこぼれた。

風に晒されて頬に張り付く冷たさを感じ、指で払う。

ナナは藁の山の奥に隠しておいたアルマの赤いリボンを取り出すと、抱きしめてきつく自分の体を丸め込んだ。

朝までここで頑張らないといけないという必死な思いで、自分を励ましながら泣いた。

 

「アルマ…アルマ、笑ってよ、私に大丈夫だって……笑って」

 

 闇に笑う母と、笑って自分を支えたアルマの影。

アルマが自分の笑みを変えてくれようとしていたのに、結局嬌声を上げる母の笑みが夢に現れる。

二つの姿に苛まれながらナナは眠りに落ちようと目をつぶった。

-3ページ-

 

 

 冬の夜明けはいつも遠い。

山の峰が紫に色をかえるまで後数刻あるだろう時に、イルザは木戸の窓を開け放っていた。

町に巣くう魔女に対する恐れから、安直に眠る事などできず熱を上げた思考を覚ますために吹く風に打たれていた。

 

「あの魔女は…鏡の魔女は自分から聖処女を襲いにはこないのでは…」

 

 風に乱された黒髪を掻き揚げ、城の中央に位置する聖堂を見つめる。

夜明け前の冷たい空気は石畳を磨き上げ、月の光に煌々と輝かせているが、静かすぎて何もかもが凍結してしまったような景色にはただ身震いしか起こらなかった。

 

 イルザはずっと考えていた、前に同じような魔女と相対した時の事を冷静に思い出して。

鏡の魔女は忘れもしない対戦相手だった。それはまだ姉がいて、お嬢様がいて、数人の使い女達とともに魔女を狩る仕事をしていた時に見た姿とここに現れたそれは多くの点で一致していた。

 

 記憶の糸をたぐり、あの時に近寄っていく。

鏡の魔女は港の一角にある、船着き宿に誕生していた。波止場に作られた酒場の二階は、色物狂いと化粧で顔を真っ白にした女達の住処でもあった。

元々悪い噂の多い薄暗い船宿は朽ちた柱でなんとか屋根を立たせ、南の海から渡ったキルトもどきで店先にのれんを掛けていた。

大きく隠された店の入り口は、常に口を開けている海の化け物のようにも見えた。

 

 好きこのんで少女が近づくような場所ではなかったが、波止場をいく女が何人か行方不明になる事件が頻発するようになって、そこに蠢く魔がいる事をイルザの姉が偶然にも突き止めてしまった。

 

 それがイルザの運命を決めた。姉がそんなものを見つけなければという悔恨が頭の中を巡っていた。

 

「私は好きで聖処女になったわけじゃないのに……なんでこんな思いを背負わされなきゃいけないのよ」

 

 口に上り、零れ出た愚痴。

舌打ちと吐き出す唾の後で苦く思い出した姉の姿は、嫌味のように姿勢正しく始まりの言葉を告げた。

 

「私の願いでお嬢様の病気を治すの」

 

 それが聖処女となり魔女討伐をする者へと走った姉の願いだった。

このまま港に魔女が残ればいずれ自分達の生活を脅かす。

それを討伐する力を得る、同時に恩有るお嬢様を助けられるのは望外の幸せと。

 

 イルザの考えとは違った道を走った。

確かにお嬢様がいる事で自分達が生かされてはいたが、病弱のまま生き続けてくれれば、それで良い。

世話をするために来た自分達の立場を危うくする事に反対だった。

 

 だがキュゥべえは真面目に願いを叶え、主家のお嬢様は病弱で咳き込みがちだった生活から解放された

健康になっても令嬢と自分達の生活は変わらなかった事に安堵した時、良い事の後には深い闇への道が開かれていた。

お嬢様回復直後に鏡の魔女は大々的な事件を起こったのだ。

 

 寄港する船の積荷が消える。

人が消える。

女達の調度が失われる。

大きな港町に起こった怪奇に、ギルドの船は港への立ち寄りを遠慮し始めた。

 

 船がこない。

そうなると商家はお手上げだ。

物が流れないのだから、商売などやっていられない。

そういう時勢に少女達の運命は追い立てられた。

回復したお嬢様は自らも聖処女となり魔女を討伐する者となるという道へ。願いは

 

「家が繁栄する事」

 

 窮地にあった実家を救う事を願ったのだ。

願いは適い、化け物騒ぎがあるにも関わらず流通の港町は栄え、主家は没落を逃れた

しかし依然として魔女の問題は残った。

このまま、放置すればいずれ同じような危機は巡ってくる。

 

 魔女の討伐は必須、しかし姉とお嬢様の力を合わせても鏡の魔女を追い詰める事はできなかった

そこで姉は、イルザにも聖処女になる事を勧めたのだ。

 

「お嬢様でさえ町のために戦ってるのです。貴女にもそうする義務がある」

 

 まったく理解の出来ない事だった。

お嬢様に恩はあったが町には恨言があるだけ、今日までの生活を振り返って、どうして姉がそんな事を言うのか理解はずっと遠かった。

 

「私には願いなんてなかった、あるとすれば……姉さんとお嬢様との生活が続くことだけだったのに」

 

 思い出しても納得のいかない物言いだった。

そして願いの内容さえも自分で決められなかったという悔やみが蘇る。

素朴だったイルザの願いは姉に自己犠牲*3の教えに添わぬと拒否されたのだ。

 

「何故自分のために祈るの、私達がここに居られるようになったのは父上が騎士だったからよ。恩を返しましょうよ」

 きれい事にしか聞こえなかった。

父は強盗騎士で傭兵へと落ちぶれた男、自分達を顧みる事もなかった人だとイルザは憶えていた。

そもそも主家に自分達を奉公へと出したときの言葉を忘れていなかった。

 

「女だから、もう少し大きくなれば遊女にも使えるだろう。好きに使ってくれ、ただ金は必ず俺に送ってくれ」

 

 金子の代わりに商売女にされるところだった……

それでも結局姉の願いに準じ、父親の復職を願った。

 自分の意にそわない、こんなくだらない願いもキュゥべえは真面目に叶え、父は裁判官の剣技者になった。

いまさら思い返してもどうにもならない事だが、このくだらない願いのせいで自分は姉達に従って聖処女の職務に就き、魔女を狩る者になったと頭痛のする額を軽く叩いた。

 

「酷すぎるわ……姉さんもお嬢様も……死んでしまったのに」

 聖処女になる事を望まなかった自分だけが生き残り、今も苦しんでいるという現実と、それ故に今も魔女と向き合わなくてはならないという事実に目は冴え眠れなかった。

 

「……アルマが死ぬ……私一人ではあんな魔女は倒せないのに、どうして」

 

答えは一陣の風とともに返った。

 

『アルマは、山に現れた魔女に倒されたんだよ』

 

 開け放っていた窓に白い毛並みを月光に輝かせたキュゥべえが座っていた。

冷えた空気に糸のように流れた白い息、イルザの顔色は暗い空の下でよりいっそう悪くなっていた。

俯き、小さく数回首を振り、歯を震わせた揺れる声で返事した。

 

「やっぱりそうなのね」

『君の考えたとおりだったよ、山には魔女の音色が残っていた』

 

 イルザは、アルマの死を疑っていた。

聖処女として名を馳せたアルマがたかが狼に食われるなど、素直に納得できるものではなかったが……

今となってはそのほうがまだマシと思わざる得なかった。

 

「町にも魔女がいるのに……山にもいるだなんて……どうしろっていうのよ」

 

 最悪の予想が当たってしまった事で浮き足だった。

とても1カ所に留まり考えを纏めるなど悠長な事はしていられない、事は急転の崖っぷちである。

窓の前をイライラと行き来するイルザにキュゥべえは変わらない淡々とした問いを続けた。

 

『イルザ、助けが必要だよ……僕は君の助けになる子を一人……』

「わかってるわ!!」

 

 いつもは冷静さを促すパートナーの言葉を遮ってしまう程の焦り、荒立てた声に口を押さえて。

 

「キュゥべえ、アルマはこの辺では随一の聖処女だったのでしょ、こんなに魔女が頻繁に出る土地を守って来た彼女に後継者はいなかったの?いや……いるハズでしょ」

 

 後継者……

「私を聖処女に」と言うヨハンナの申告は有りがたかったが、魔女に立ち向かうという経験を欠片も持っていない者では鏡の魔女の討伐は不可能。

なにより使い魔の前であんなに怯えていたヨハンナが、たった一日でそれを上回る魔女を倒す側になれるとは到底考えられなかった。

相手は過去にイルザと姉、お嬢様の三人を持ってやっとで倒した鏡の魔女。それと同じ強さを持つと考えられる魔女にヨハンナでは立ち向かえないし、助けにもならない。

二人揃って討ち死にの道しかない、焦りで額の汗を拭う。

 

『いるよ、一人』

 

 縋る気持ちをぶつけたイルザに、キュゥべえはやはり抑揚のない淡々とした返事をすると、ひらりと窓の外枠に体を返して、赤い視線を遠くに動かした。

 

『今は城壁の外にいるけど、アルマがずっと聖処女にと願った子がいる。ただね彼女からは聖処女になる事を断られてる』

 参ったね、と可愛らしく小首を傾げる仕草。

粟立っているイルザの心を抑えるには逆効果とも思われる目は間をおかずに。

 

『どうする?』

 先へと言葉を続けた。

 

「会うわ、今日」

 

 イルザもまた窓に身を寄せ城壁の外を見た。

「アルマが願った者ならば、その子には見込みがあるのだから」

 うっすらと山の峰に、陽の幕開けを告げる青いラインが走る。

存在する二つの魔女を確実に仕留めなくてはならない、危機感の鐘は朝を告げるカリオンの音よりも高くけたたましく鳴っていた。

焦りと決意に滾るイルザにキュゥべえは頷くと。

 

『彼女の名前はナナ、すごく強い聖処女になれる子だよ』

 

 含みのある期待を告げた。

-4ページ-

 

 

 聖堂での礼拝が終わった後、イルザは中央の広場ではなく貴族達の宿舎が並ぶ道を忙しく走り抜け、市場を抜けて一足飛びに城壁も突っ切っていた。

聖堂の掃除に来るだろうヨハンナに見つかれば昨日の話の事で問い詰められるのは必然、だがイルザはどうしてもヨハンナを選びたくはなかった。

力が足らないという絶対的な判断基準もあるが、危機に瀕してやむを得なく聖処女なるのは自分の通った苦悩の道と同じと感じていたからだ。

 

 早足で外殻の道を歩き、小山の隧道を越えて水路小屋に向かった

 

 

 

 

「で?なんのよう?」

 

 城壁を出た、二重目の灌漑が走る小道でナナとイルザ、そしてキュゥべえは初めて顔を合わせていたが、イルザは挨拶もままならない衝撃を受け立ち尽くしていた。

 

 麻袋に馬糞を詰め引きずっていたナナの姿に心は一気に青ざめてさえいた。理由は……

最初に名前を聞くのも挨拶をするのも、躊躇するほどの汚れ具合だった。

あまりにみすぼらしさと、それを助長する容姿、背丈はヨハンナよりも低く細く華奢過ぎて、服に着られているような姿を見るに、期待を砕かれた気持ちになってしまったからだ。

 

 風に吹かれるまま会話のない時が続く

 

 期待したイメージを大きく逸脱してしまった事で落胆と、猜疑の目をナナに向けて呆然とイルザは晒していた。

アルマという理想の形を思い描き過ぎていた事が、目を深く曇らせていた。

この地の随一の聖処女を名乗っても恥ずかしくない存在だったアルマは背筋も正しく、言葉使いも学無き貧民とは思えない程良く出来ていた。

衣服も粗末ながら、清潔さを心がけ、装飾もすくなすながら付ける理性的な女だった。

だからこそ教会が商家に嫁として使わす気持ちにも成れたのだろうと納得のいく容姿の彼女から、そのアルマが希望した聖処女候補の姿には納得がいかなかった。

 

 とにかく汚らしい、汚れた赤毛が見苦しく帽子からあふれ不遜な態度を示す口だけ見える長い前髪など、礼を知らない奴隷そのもの。

手鋤で馬糞を麻袋につめているのに衣服の至る所を汚しこびりついた悪臭に目眩を覚えた。

 

『キュゥべえ、この子なの?』

 

 信じられないという顔で、同行したキュゥべえに頭の中で聞いた。

そんな相手の動揺を気にせずナナは路肩道を歩きながら最初の質問をキュゥべえにした。

 

「耳毛ウサギ、てめーが居るって事は……そいつは聖処女なのか?」

 

 礼儀もへったくれもない。もちろん最初に呼び止めて起きながら言葉を無くしている相手に合わせる必要もないが、あまりにも無礼に背中を向けたままイルザを無視して聞く。

 

 イルザの問いに答える間もない状態でキュゥべえは頷くと。

『そうだよ、イルザというんだ』

「名前なんか聞いてねーよ……聖処女なのかって聞いてんだ」

『もちろん、聖処女だよ』

 

 淡々としたやり取りは背中越しで行われていたが。

 

「無礼でしょ!!」

 

 顔を見せないまま、水路にしゃがみ込み手を洗うナナにイルザは怒鳴った。

身なりが貧しく汚いのは身の上の問題だから仕方の無い事と割り切れたが、およそ年上で身分ある自分に対して行って良い態度ではなかった事で、いつも以上に頭に血が上り叱責した。

 

「あんたのような者をアルマが聖処女に望んだ? どんな冗談なのよ」

「だまれ、よそ者がアルマの事を語るな」

 

 コートの襟で鼻を塞ぎ、つり上がった目を見開いたイルザに対して水面に映るナナの口は大きく歪んでいた。

テンションが上がり、思わず怒鳴ったイルザに臆することなくナナは立ち上がって振り返る。

小さな背丈が下から煽るように、斜に構えた顔で揺れながらイルザを見ると、鼻で荒い息を落とした。

 

「ふん、アルマがいなくなった途端に新しい聖処女なのか?耳毛ウサギ?」

 

 歯がみする言葉には怒りが隠っていた。

アルマは死んだ、たった2日前に。そして新しい聖処女を見る事になったナナの心は燃え立っていた

居なくなれば、すぐに代わりを……

入れ替わるように存在して、前任者を捨てるようなキュゥべえの態度が気に入らなかった

それに自分を見るイルザの目も。

 貴族のお付きとして生活している彼女の服、主のお下がり*4を持ち黒のコートの下から見える先の尖った靴も、飯も与えられず冬を越えるための新しい服もないのに汚れ仕事をする身であればこそ、腹の立つものでしかなかった。

冷たい風と同じように、刃物のやり取りのように凍った場だが、喧嘩を望んではいないイルザは自分の前で不遜を示すナナに対して、それでも一歩下がったてみせた。

 

「そうよ、アルマは居なくなってしまったけど、魔女は今もいる。だから貴女に聖処女になってもらわないといけないわ。アルマはそれを望んでいたのでしょ、この町を護るための聖処女に対して私は助力をする準備がある。後は貴女の願いの次第よ」

 

 逼迫している事実を告げて、無理矢理にでも合意を得ようとしたイルザの思いにナナは大笑いをしてみせた。

馬糞の入った麻袋を蹴飛ばして。

 

「けっさくだよ、腰抜け聖処女さんよ」

 そこまでは悪意の笑みもあったが、ぱたりと囃しを止めると。

 

「耳毛ウサギ、てめーはあの手この手と人をたぶらしやがって。アルマが居なきゃすぐに別のヤツをってか? アルマが今までしてきた事を思ったらそんな事できないだろ!!」

 

 蹴飛ばし続けた麻袋は、口を切られた豚のように汚物を吐き出していた。

 

「ちょっと待ってよ。貴女は事の重大さをはき違えてない?魔女は」

「魔女を倒すのはあんたの仕事だろ」

 ナナは聞く耳を持っていなかった。

アルマが居ないから、自分に、じゃあ目の前の聖処女さんは何しにきた?

そういう赤黒い思いが渦巻いていた

 

「アルマは一人で今までやってきた。どんな時だって一人で魔女を倒してきたのに、あんたはなんだ?最初から出来ないって思ってるわけだろ。だからって助力なんていいやがって……そんなヤツと一緒に戦えっていうのか」

 

 痰を絡めた血の気の多い唾を、ナナはイルザの足下に吐きだした。

 

「帰れ糞女、それに糞ウサギ(キュゥべえ)、まず魔女を倒してからこい、どこの町だったそういうもんだろ。出来なくたって恨みはしないさ、あんたが腰抜けだって事を私が知ってるから」

 

 時にはアルマと一緒に戦いに参加もしてきたナナにとって、入れ替わるように現れた聖処女など受け入れられなかった。

相手が自分達を見下す身分を持っている事。

戦う前から助力をなどとお高くとまった態度は、自分の非力さを隠す裏返しだと見抜いてもいた。

 

 一方のイルザも一気に諦めが付いていた。

『帰るわよキュゥべえ』

 二人の会話を聞くに徹していた赤い眼は首を傾げる。

『いいのかい?喧嘩をしても魔女は消えないんだよ』

『わかってるわ、でもこの子とは組めないわ……こんな子と……』

 頭で話す二人に、ナナは自分のこめかみを指差して笑った。

 

『聞こえてるぜ、聖処女さんよ。出来る事をやってからこい』

 

 苛立ちのだめ押しをする一撃にイルザはナナに背を向け、町に向かって歩き出した。

距離を取りナナに聞こえなくなる城門に戻ったところで振り返った。

 

「頭にくる子だわ……」

 

 枯れ畑に姿を消した相手を探し尖った目を見せる。

「もう……選んでなんていられない……ヨハンナのところに行くわ」

 時に追い立てられるように、昼近くになった市場に向かいイルザは重い足取りで歩き始めた。

-5ページ-

 

 

 耳元に雀の声が聞こえない、何かが走り回る音。

いつもとは違う寝起きの音に耳が反応するが、体はまだ重いのかゆっくりと寝返りを打つ

ハンスのベッドに沈むように俯せていたヨハンナは薄く開けた目で自分の手を見つめた。

右手の中指に付けられた百合の紋章と、契約の指輪。

 

「私……聖処女になったんだ……」

 

 昨日の夕刻、白い聖獣の示す言葉に願いをかけた。

奇跡は一瞬で自分の胸から抜き取られて……後は押しつぶされるような疲労に沈んだ。

 

「私……私……あっ!!!」

 

 羊小屋に帰った後、帰って眠った。そういう簡単な事は憶えていたが、後の事を憶えていなかった。

どうやって帰り、誰と会い、夕食を食べたのか?

同時に、明るい日差しが漏れる木戸に体は雷に打たれたように跳ね起きた。

 

「寝過ごした……大変!!」

 

 教会への奉仕の時間はとっくに過ぎている。今までんな事はなかったという自負で、慌てて起きると上着であるストールで体を巻く。

薄い敷居戸を開け飛びだしたヨハンナを藁の山で寛いでいたエラがつかんだ。

 

「ヨハンナ、慌てるなよ」

「そうはいかないわ!! 教会の奉仕に」

「大丈夫だよ。まあ、座って飯食って落ち着けよ」

 

 短い金髪頭は癖毛を跳ねさせたままのエラが、ヨハンナの寝癖頭、金の髪に触れると切り株のイスに座に手を引いた。

手にスープを持ったシグリは灰かぶり状態、色白な顔に黒いそばかすをいっぱいにした顔に柔らかい笑みを浮かべて。

 

「大丈夫って……どうして?だれか代わってくれたの?」

 落ち着かない目のヨハンナに、エラが答えた。

「今日はハンスが代わりに出てるよ」

「ハンス? ハンスがなんで? ダメよ、まだ体が治ってないのに」

 そういえば自分はハンスのベッドに寝ていた。

自分がめり込んだ跡の残るベッドに、いつもは横になっている弟がいない、戻って回りを見る

 

「どうして? 止めてくれなかったの!!」

 

 最早スープを頂くなど考えが飛んだヨハンナは病弱な弟に、自分に代わって仕事を果たせとエラが送り出したのかと勘ぐり、普通では居られなくなったが。

 

「姉さん、おはよう」

 

 聞き慣れたハンスの声に、悲鳴をあげずにすんだ。

 

「ハンス……大丈夫なの……」

 外からのドアを開け、肩に荷物を掛けて立つ弟。

ハンスは笑顔でヨハンナに近づくと。

 

「姉さん、今まで苦労かけたね。もう大丈夫、僕……治ったから」

 

 姉の細い肩を、まだ背丈の足らない弟はしがみつくように抱きしめた。

幼くても男の力、両腕を通して伝わる確かな力に、ヨハンナの目から涙がこぼれた。

 

「ああマリア様……マリア様、願いを聞いて下さって……ありがとうございます」

 ずっと祈ってきていた。

弟ハンスの病状が良くなる事を、男手として羊小屋を助ける者となる事を。

ヨハンナはうれしさで抜けた力のまま、床に膝をついた。

二人の姿にエラは髪を掻きながら。

 

「びっくりしたよ、朝方市場に行こうと仕度してたらハンスが起きてきて」

「そうだよ??慌てて小屋に戻そうとしたら???教父様に挨拶に行くってぇ??」

 

 シグリと揃って、明るく伝えた。

アルマが居なくなり、小屋の中は深く悲しみに沈んでいた。

短い期間だったが誰もが気安く話をできる雰囲気などなかった。

 

「ハンス!!薪割りはあっち(私)の仕事だよー!!」

「気にしないでよ、やれることを全部やらせてよロミー」

 

 干し藁の前室に集まったみんなに、小さなロミーの黄色い声が元気よく響く。

 

 久しぶりに聞く、明るい声達の中でヨハンナは自分の指に付けられた紋章に感謝し、指輪に口づけした。

明るさを取り戻した仲間達と、なにより元気になったハンスの姿を喜んだ。

昼が過ぎようとしている少しの時間をナナを覗く全員が集まる。

ヨハンナにとって、いや小屋のメンバーにとっても久しぶりの嬉しい休息になった。

 

「ハンスが良くなってくれたのは本当にいい知らせだ」

 苦労を背負う覚悟を先に示したエラも、先行きが見えなかった所から脱出したようでシグリとじゃれ合いながら言う。

 

「姉さん、教父様には今朝僕が挨拶をして、姉さんの分の仕事もしてきたよ。少しでも早くみんなの役に立ちたくて、はしゃいでしまって……でも本当に今日はもういいんだよ」

 

 慌てて着替えた姉の姿を安心させるようにハンスは言う。

昨日まで青白かったハンスの顔に、日差しの力も手伝ってか多くの血の毛色を感じられる

頬を見せて。

 

ヨハンナは心の中で何度もの感謝と、ここへ来た時の約束を思い出していた。

ナナがここに連れてきてくれた、羊小屋の仲間になれた時。

それでも負債の多かった小屋の生活を灯す者はハンスしかいないと考えていた。

いつか男手として立派に働いてくれるようになれば……小屋の生活も少しずつ潤うだろうという願いはここに果たされ。

ハンスの復帰をみんなが喜んでくれる姿に、自分の願いが間違ってはいなかったと確信した。

 

 姉の隣で微笑むハンスの目には希望があった。

「姉さん聞いて、今日教父様にご挨拶をして奉仕をしていたら……カリオン塔を直す職人さん達に会えたんだ。凄いよね、僕少しでも役に立ちたいから、カリオン塔の修復作業を手伝わせて貰える事になったんだ」

 教会の仕事を貰ったハンスの言葉に場は湧いた。

 

 市場の仕事は、アルマとナナの件もあってまだまともには貰えない。

そんな中で教会に付属する仕事を手伝うなんて奇跡にも近いものだった。

 

「どうやってそんな仕事を頂いたのぉ?」

 無邪気に聞くロミーの、ハンスはヨハンナの顔を見つめて。

 

「ほら、ぼくここにいる間ずっとカリオンの鐘の音を聞いてたでしょ、あれが少しずれてる事、姉さんが教父様に告げていてくれたおかげだよ。職人さんもそうだって、音がおかしい事に気がついたのを凄く感心してくれて……だから仕事に連れて行って貰えるようになったんだよ」

 

 弱い体を抱えていた頃、すぐ上にあるカリオンの鐘の音を聞くのが唯一の楽しみだったハンス。

自分で仕組みを解明しようとヨハンナが掃除ついでに見て来たものを小さく作っていた日々。

本物を明日には見られるという喜びは顔いっぱいに表れていた。

 

「もちろん他の仕事もやるよ、薪割りも荷運びも……羊の世話だって」

 

 語りながら、きつく握った拳。

今ここにはいないナナの事もしっかりと憶えていたハンス。

女の身で羊飼いをしてきたナナも大きな借りがあった。

 

「ナナにカリオンの音が歪んで聞こえるって言った時、良い耳だねって……そういうのはマリア様からの贈り物だから大切にしたらいいって」

 

 ヨハンナは頷くと、城の外、外殻を囲む城壁に目をやった。

大切な友達が弟の背中を押してくれていた事にも感謝した。

エラもシグリもロミーも揃って、夜を過ごすのが大変だろう時に外に追いやられてしまった仲間を思った。

 

「僕が頑張ってナナが早く戻れるようにするよ」

 

 まだ背の低いハンスの意気込みに、エラは久しぶりの皮肉顔を見せる。

 

「まあ、そう慌てるな。だけどハンスが元気になってくれたのは本当に嬉しいな……ご馳走は作れないけど水で乾杯ぐらいはしようじゃねーか」

 貧しくても、苦しくても、ヨハンナは自分の願いが正しかったことを確信して感謝と涙で空を見ていたが。

 

「イルザさん……」

 

 庭先の囲い戸に立つ影に目を見張った。

黒いフードのついたコートを着たイルザの姿は目立っていた。明らかに町の者ではない事にエラは警戒したが、ヨハンナは柔らかくみんなに伝えた。

 

「大丈夫だよ、イルザさんは教会であった人なの、とても良い方だから心配しないで」

 そういうとその場で立ち上がり軽い挨拶をし、イルザの側に近寄った。

イルザは歩いて近寄るよそ行きの仕度をしているヨハンナに頭で話した。

 

『声は出さないで、話があるの今からいいかしら』

 イルザの足下にはキュゥべえも座っている。ヨハンナは笑みを浮かべた顔で静かに頷くと。

 

『はい、私もお話がありましたから』

 戸惑う事なく頭で返事をした。

 目の前に達もう一度挨拶するヨハンナの目にイルザは申し訳なさそうに言った。

『聖処女になる覚悟は決まった?』

 ナナとの会話が喧嘩別れになったイルザは、自分の弱さを痛感しながらもやはり一人では倒せない魔女に対する仲間が必要という認識を示した。

 

『待っていましたイルザさん、私は聖処女です。願いは叶いました、マリア様のために願った分だけの仕事をする覚悟はできています』

 

 しかめた眉でヨハンナの覚悟を問うたイルザの前に、契約の証である左手を見せた。

突然だったが見慣れた指輪と新しい紋章に、一瞬イルザの目は凍り仰け反りそうになったが、人目をはばかり前に頭をシンクさせると尖った目で。

 

『キュゥべえ、どういう事?』

 足下を見ないように聞いたが。

『だから、君の助けになる子が一人いると……聞かなかったでしょ』

 白い大きな尻尾は余裕綽々と揺れる。

『朝には言わなかったでしょ?!』

『言おうとしたら遮ったでしょ、それに君が慌ただしくしていて言う機会がなかったよ』

 責め立てられようと動じないキュゥべえは下から二人の顔を仰ぎ見して。

 

『でも、こうして助け手は得られたよ』

 

 二人の会話を頭で聞くヨハンナは微笑んで。

 

『私が助けになります。魔女を打ち払いましょう』

 

 心苦しい頼みの部分は勝手に省かれていたことにイルザは苦くキュゥべえを見つめたが、自分の発言で重荷を背負わずにすんだと安堵はした。

『……ありがとうヨハンナ』

 二人の指に輝く、聖処女の証。

最早一刻も待てない状態にある魔女の誕生はそれに呼応していた。

魔女の奏でる音が二人の頭には響いていた。

それは聖堂の奥に激しい鼓動を鳴らして、今宵の誕生を待ちわびるように使い魔達の羽音を鳴らせていた。

 

『今日、戦う事になるわ。付いてきてね』

 

 揺らぐ二人の証に、ヨハンナも静かに頷き。

 

『いきましょう』

 

 躊躇いはない事を告げた。

-6ページ-

 

 足の速い夕暮れに急かされるようにエラはナナの元に炒り豆を持って来ていた。

 

「エラも……遅いからってこんな所にきちゃ行けないよ」

 石拾いから上がったナナは冷えた足をさすりながら、刻んだ薬草を塗り込んでいた。

「そう言うなよ、食べられないと寒さは響くし」

 

 心配を語るにしては心のほか明るいエラの声。

ナナは背中を向けたままだったが、片手で隣に座ればと差しながら。

 

「何? 何かあったの」

「ああ奇跡があった」

 

 待っていたと言わんばかりのエラは藁山に隠れて隣に座ると。

 

「すごいんだぜ、ハンスの病気が治ったんだ。今日の朝から仕事をしているよ」

「ハンスの病気が? だってこないだまだ寝込んでたじゃないか」

 

 いい話ではあったが、急すぎる事にナナは口を歪めた。

すでに嫌な予感が背中を走り鼓動は大きく唸り始めていた。

そんな相手の様子に、大きく手をふって背中を叩いたエラは。

 

「それがさ、カチンと治った感じなんだよ。本当に奇跡だよ、教父様にも挨拶に行って……男手が出来たってのは大きいよな、ホント、アルマが残してくれた軌跡なのかもしれない、マリア様に感謝しなきゃ……」

「エラ、ヨハンナは?」

 

 隣に座って大仰な手振りで話すエラを遮るようにナナは顔を近づけた。

声には重みがある、とても喜んで聞いているという感じはないまま続けて訪ねた。

 

「ヨハンナは何処にいるの?」

「ヨハンナ、ヨハンナは……昼過ぎにイルザっていう女と出かけたよ。だからあたしが炒り豆を持って来てるんじゃねーか」

 

 雷に打たれる怒りでナナは立ち上がった。

息を巻き、歪めた口で怒鳴った

 

「どこにいる!!耳毛ウサギ!!!」

 

 突然の怒髪におどろくエラをよそに、広がった刈田を見回す。

「どおしたんだよ、ナナ?」

「どおしたもこおしたも……あの糞女!!」

 

 歯ぎしりをしてもう一度怒鳴った。

 

「糞ウサギ!!!出てこい!!」

 

『ぼくの名前はキュゥべえだよ。いつになったら憶えてくれるの?』

 

 夕暮れのオレンジが長い影を引く畑の真ん中にキュゥべえは鎮座していた。

長い夜はまだ始まらない、これから全てを巻き込む深い闇夜が来る中でも赤く輝くであろう目に向かいナナは走り叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-7ページ-

 

------------------------------------------------------------------------------

とあるワルプルの無駄知識www

 

読まなくても支障なし、読むと物語に少し深みをもてます!!

 

 

*1 スタッド・アーマー

 

要約すると皮の鎧

歴史は古く紀元前からある、形態の変化も激しくも世紀を下るほどに変わり現在でいうならばライダースジャンパーの事wパンクロックの戦闘服www

皮の鎧は皮だけで精製された事はあまりなく、鞣し革を下地(肌との接触面)にし、それに金属の小札(こざね)を付けて使われる事が多かった

皮だけでは金属の刃物を防ぐ事が難しかったが、この皮に小札をつけたタイプのものを北方の荒々しき人達は良く使った(バイキング系に近い)

金属でできたアーマーが少なかったという事ではなく、土地柄金属では凍ってしまうという現実的な問題からそうなった

リドリー・スコット監督作品、2000年制作映画「グラディエーター」で主人公マキシマスが次代皇帝候補コモドゥスに裏切られ森で処刑されそうになるシーンがあるのだけど、この時厳冬の中の早朝で剣が抜けないという描写があります

マキシマスは

「剣は暖めたか?」と聞くのですが、夜露と早朝の寒さで凍り付いた剣は抜けず、戦闘大将であったマキシマスに返り討ちに遭います

鉄は優れた武器でしたが、ヨーロッパのように厳しい気候の中での武器運用・管理は大変だったようです

そのような事もあり北方十字軍などはチェーンメールを主体とした武装が多く

完全なプレートアーマーなどは指揮官クラスしかいなかった

結局武器は色々な進化するのですが、作って見て、使ってみてこそ用途がはっきりするというもので

歴史書は余程の事が無ければ当時の戦場の気候や風土、気温や食料事情など記していませんし武器の管理・扱いが季節によって大変やっかいな物になるなど多く記されたりもしませんが、実際は地域に密着した武器の選択と進化、同時に運用の方法があったわけです

戦功を争わねばならぬ下級騎士にとってはプレートアーマーなど重くて俊敏に動けない邪魔な物であり

先軍の大将は生きて軍隊を指示する役目からみっちりとプレートアーマーを着込んだという次第でした

この辺は同じくリドリー・スコット監督作品、2005年制作の「Kingdom of Heaven」を見ると良く分かります

映画は事実より脚色が多くダメな面も多いのですが、勉強してみれば正しい部分と謝りも見切れますから、一つの楽しみとしてみるのもいいと思います???映画好きです

ところでFate/Zeroでセイバーが付けているのはプレートアーマーらしいのですが……

なんかおしゃれーな感じですよね

彼女の運動量からするとあれはスタットアーマーだと私は思うのですがwwwコルセットが鉄製だった時代ならばある意味鎧にも近いしありっちゃありなんでしょうね

むしろドレスアーマーだろぃ!!あのスカートのプレートってなんで浮いてるの?重量がないような描写が気になって眠れないよー!!

 

 

*2 強盗騎士

 

ぶっちやけならず者です、騎士の名を語ったならず者に相違なしですwパンクロックですwww

キリスト教社会は十字軍での蛮行から、騎士には騎士の礼節ありと規則を設けますが、下々の者は王侯貴族とは違い、常に生きるか死ぬか、冬が来 ると食べられない地域に住まう者達には多かった

死活問題の解決のために、町同士の小競り合い的な争い(食物略奪等々)起こさざるえず、故にそれを黙認する事もあったのです

こういう隙間に乗じた者達が強盗騎士でした

大きな戦争があれば「我ら騎士団」と旗を揚げて参加する荒くれ者達ですが、普段は居着きの町にたむろしており、騎士である事を良いことに

「町を護る我らに飯を献上しろ」なんて事も平気で行っていたのです

そういう者達は酷く自己中心的で、しかし町を護る事もあるので厄介者ともできず、町も献上の品々を与えて離れに住まわせたりもしていましたが本音では「強盗騎士」と呼び酷く軽蔑していました

ちなみにジャンヌ=ダルクの父親はドンレミ村では名士の一人でしたが、やはり強盗騎士に悩まされ多くの駆け引きをして町を守ってきた人でもありました

たまには負けて見せ媚びへつらったり、不意打ち追い出しでクズ騎士達を斬り殺したり、そういう背中を見て育ったジャンヌにとって「護る」というのはどういうものだったのでしょうね

いずれにしろ、村単位町単位での自己防衛をする事が中世では基本でした

 

*3 自己犠牲

 

こういう考えが美徳の頂点とされた時代でもありました

思想の押しつけに置いてはすごく矛盾が多いのも中世の特徴なのです

そして解釈の自由化というものもありました。宗教改革なんてまさにそれですしね

実際にナナの母親のような生き方も自己犠牲の延長と、いいように解釈する者がいるのにもかかわらず

神の御前にて他者を救うというきれい事のみが自己犠牲であるというのががまかり通ったのでした

自己犠牲は貴いけれど、自分を助ける事もできない人間には未だ難しい教えでもあります

 

*4 主のお下がり

 

中世ヨーロッパの洋服事情

この時代、物の流通は盛んでしたが洋服については流通はありませんでした

今のように既製品、作ったまま販売というのがあまりなかったのです

布を買って、自分達で作るというのが基本でした

富裕層はお抱えの服飾師を持ち、自分の体にフィットするものをつくらせていました

羊小屋のメンツの服は、教会への物品寄付にある服をお下がりとして頂いたもので、それをシグリがせっせっと修繕したり、たまに拾ったり頂いたりする端切れで装飾を付けたりしているのです

イルザのように豪商に使える者も、やはりお下がりをいただく事になります

いくら良い家に仕えていても自分で服が作れる程にはなれないからです

貴族や商家でのお下がりにはその家の裕福さを現すバロメーターというのも含まれていました

主は綺麗な服を着ているのに、使いの者達はボロを着ている。そんな事があれば

「本当は繁盛していないのでは?」

「金ばかりに執着して、道徳心がない人なのでは?」

そういう疑いをもたれたくないがために、自分に近い使いには良い服を着せたりするのもありました

どちらにしろ自分の自由に服を選べるのは上位階級の者達だけだったという事です

しかし、主からお下がりを頂くと……センスは選べませんから大変な事になったりもしたのでしょうねー

派手な服しか着ない主からお下がりもらったら……恐ろしいwww

みんな大好きメイド服はこういう問題を解消するために

「1つの制服」として作られました

みんな一つ揃え一緒のものを着ていれば主のセンスを疑われずに済むし、服飾師も面倒がなかったから

けっこう奥の深いメイド服〜〜個人的にはイギリス、ヴィクトリア朝最後の頃のが好きです!!

まさにエマです!!

 

 

身分

 

今回ナナとイルザの共闘決裂が描かれましたが、内容については特に今描く事はありません

ただ時代的に身分の差は大きく、上位階級の者や地位有る者は常に威張っており、貧民は必ずしも従順に上位階級に従ったという事はありませんでした

そういう諍いは達観や苛立ちから常にあったというぐらいです

戦争が起これば真っ先に商家を狙い、略奪暴行を働くのは農民だったりもしましたし

終われば支配階級となったものが、懲罰や弾圧を普通にしたり

人と人との関わりが実に殺伐としたものでした

実際19世紀初頭になってもヨーロッパではこういう弾圧はつづいたりしたので、「戦う歴史」というのはあながちまちがってもいないのでしょう

何がそんなに人を区別していたのか?そういう根の深い部分の形成はナナやイルザの間にもすでに存在した時代でした

 

 

さて物語も後半戦に入っていきます!!頑張っていくぞー!!

頭でっかちになってしまわないように!!

がんばるぞーい!!

説明
先代魔法少女、ワルプルギスの夜に至った少女の話。もちろん創作です。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
507 506 0
タグ
魔法少女まどか★マギカ 先代魔法少女 オリキャラ ワルプルギスの夜 

土屋揚羽さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com