デジモンクロスウォーズ 絆の将と魔道の戦士 |
「よーし、それはあっちへ持ってけ!」
ここは、一騒動あった後、無事にオークションを終えたホテル・アグスタ。機動六課の面々は、事後処理活動をしていた。
工藤タイキも積極的に作業に参加している。ふとそこへ、
「なあタイキ、ドルルモンを見てないか?」
リボルモンが現れタイキに訊ねた。
「ティアナと一緒にいるはずだけど…見てないのか?」
「それが、ティアナのところにも行ってみたけど、いなかったんだ。」
こう答えたリボルモンに、今度はタイキが、
「ところで、ティアナ本人はどうしてた?」
と、訊いた。彼にしてみれば今一番気になる事である。いわゆる「ほっとけない」である。
「うーん、負のオーラで覆われているみたいで近寄れなかった。」
リボルモンの答えを聞いたタイキは思った。レイクゾーンの二の舞のような事態にならなければいいが、と。
「うーん、ありませんね。」
背中に白い羽をたくさん持った天使型デジモン「ルーチェモン」は、あたりを見回しながら言った。彼は今、謎の襲撃者である「インペリアルドラモン」の痕跡を探しているのだ。
「お、これは。」
突然、一緒に同じことをしていた「ワイズモン」が声をあげた。彼の目線の先には、大きいわけではないが、金色の塊が落ちていた。
「間違えない、これはインペリアルドラモンの爪の欠片だ。」
「じっくりしらべる価値がありますね。」
二人は、サンプルを慎重に回収しながら言った。
「何か見つかったの?」
ふとフェイトが話しかけてきた。
「ああフェイトさん。重要なサンプルを調べたいんで、今度実験室を借りたいんですけど。」
これは良かったとばかりにルーチェモンは言った。
「うん分かった。今度私からシャーリに掛け合ってみるよ。」
フェイトは、ワイズモンが持っている「インペリアルドラモンの爪の欠片」を見ると、ほぼ即答と言えるタイミングで答えた。
「……ところで、あそこにいる彼は?」
今まで黙っていたワイズモンだったが、なのはと仲良さそうに会話する薄い金髪の青年を見てフェイトに訊いた。きっと自分と同じニオイがするのであろう。
「ああ、彼はユーノ・スクライア。考古学者で私たちの十年来の友人、そしてなのはの魔法の先生。」
フェイトは淡々と説明した。
「やはりな、彼とは一度いろいろ話したいものだ。」
フェイトの説明を聞いたワイズモンはこう呟いた。この時、フェイトには二人が仲良く話す構図と一緒に、フェレットとなったユーノを解剖しようとするワイズモンの構図が浮かんだのは言うまでもない。
「それにしても、なのはさんの先生にしては若すぎませんか。」
ルーチェモンは先生と言われ、英雄の息子に勉強と格闘技を教えた麺類爺や、かつては世界最強と謳われたエロ仙人のような人物を連想したのだろう。フェイトにこう聞いた。
「なのはが魔法に関わるようになったのが9歳の時だから、同い年とはいえユーノの方が経験は豊富だったから。」
とフェイトが言うと、
「なるほど、今の二人の関係は友達以上恋人未満といったところか。」
ワイズモンが遠目に観察しながら言った。おそらく何らかの方法で二人の顔の体温や、心拍数を調べたのだろう。
「そうなんだけど二人ともまるで進展しないんだよね。二人とも仕事中毒だから。なのははうちの部隊で副隊長兼教導官だし、ユーノは無限書庫の司書長だから。」
フェイトがこう言った時、
「無限書庫ってなんですか?」
ルーチェモンが食いついた、
「いろんな次元世界の本を集めた図書館のような場所のことで…」
フェイトがここまで言った時、
「何!!この世界にはそんなに素晴らしい場所が存在するのか!!!!」
今度は目をキラキラと輝かせたワイズモンが食いついた、
「うん、今度連れて行ってあげてもいいけど……」
フェイトは半ばひいた状態で二人に言った、ルーチェモンとワイズモンは本がたくさんある書庫の様子を思い思いに連想していたからである。
この事件の後、しばらくは事件は起こらず、機動六課の面々は日々訓練漬けの生活に戻った。ある日、変化が訪れた。ティアナ一人が皆と離れ、夜中に一人で特訓をするようになったのだ。
「あんまり無理するなよ、明日の活動に差し支えるぞ。」
みかねたドルルモンは、彼女に声をかけた。
「分かってる、でもこれくらいしないと間に合わないの、凡人だから。」
ティアナは、元々強いあなたには分からないでしょう、とも言った。対してドルルモンは、
「そんな事はねえよ、俺なんてタイキやシャウトモンがいなけりゃ何もできねえよ。」
と言った。そして、
「強くなるのはいいが、半端な力を持ったところでどう努力しようとその力は恐怖の対象にしかならない。」
こう言い残してその場を立ち去った。その後、偶然寮の入口でスバルと出会った為、思い切って訊いてみた。ティアナが強くなりたがる理由をしらないか、と。
「うーん、もしかしてあれかなぁ。」
スバルは、心当たりがある、とドルルモンに言って。ある事件について話した。
数年前、執務官を目指して努力を続ける一人の魔道士がいた。名前は「ティーダ・ランスター」といい、ティアナという幼い妹がいた。
彼はある日、とある事件の犯人を捕まえようとしたが、あと一歩のところで犯人の攻撃を受け、それが致命傷となり殉職した。犯人はその後、彼との戦闘で疲労困憊となりグロッキー状態になっている所を別の管理局員に逮捕されたらしい。
しかしティーダの上司はティーダが犯人を捕まえられなかった事が不満だったようで、ティーダの最後の仕事の結果と彼の死の事を、不名誉なうえ無意味だった、と評したのだった。
「たぶん、兄の死が無意味ではないと証明したいからこそ、ああして無茶してるんじゃないかな。」
一通り話し終えたスバルはこう言って話をしめた。ドルルモンは少し考えてから、
「無茶を言うようで悪いが、明日も朝早くからあいつは自主練を開始すると思う。この時はお前も参加してくれないか。」
と、スバルに頼んだ。これに対しスバルは、
「うんいいよ、元からそのつもりだったし。」
と、ドルルモンに言った。そして、
「そういえばドルルモンって元々はタイキ達の敵だったんでしょう。なんで今は味方になっているの?」
と、訊いた。さっき答えたんだからお相子でしょう、とも言っている。
「さあな、しいて言えば面倒くさくなったのかな。仲間を大事にしようとしない軍にいるのがさ。」
ドルルモンは、かつて自分がバグラ軍を抜けるきっかけとなった戦場での出来事を思い出して、こう言うと、
「ティアナも仲間の本当の存在理由に気づいてもらえればいいが。」
と言って、タイキの部屋に向かっていった。
そしてその頃、肝心のティアナはと言うと、長い練習の中で体力に限界が来始めた。胃の中身をリバースしなかったのはほぼ奇跡であった。
(証明するんだ、兄さんの魔法は無意味なものじゃないと)
それでもなお動くのは、心に秘めた決意によるものだろう。再び立って練習を再開しようとした時、近くの窓ガラスに映った自分の顔が歪み始め、ティアナの良く知る人物の顔になった。それは自分の兄、ティーダ・ランスターの顔だった。
「兄さん、なんで?」
ティアナは驚きを隠せないようだった。対してティーダは、
「何、妹は元気かなと思って化けて出てきてみたんだ。」
と、冗談を交えながら言った。その後、
「ところで、調子はどうだ。」
と、ティアナに訊いた。
「ううん全然、まだまだ兄さんには及ばないよ。この間は失敗までやっちゃったし。」
ティアナの返答にティーダは、
「いいかティアナ、僕たちみたいな部下の失敗には二つのものがあるんだ。」
真面目な顔で言った。
「一つは正真正銘の自分の失敗、二つ目は上司の責任転嫁の皺寄せ。後者は割と多いけど、前者は予想以上にまれだったりするのさ。でもまあ、今する話でもないか。」
そしてその後、
「お前だって凡人なんかじゃない。それを嫉妬して分かろうとしない相手には、力ずくででも見せつければいいんだ。」
と言った。すると、
「そう、私は凡人じゃない。力ずくでも分からせる……」
ティアナは意識が朦朧とするのを感じた。一瞬だけ何かが入ってくる感じがしたのが最後だった。
「そう、お前は凡人じゃない、力ずくで分からせてやれ。」
ここはミッドチルダのとある場所。ここでは一人の女が鏡に向けて呟いていた。
「いい子ねティアナ、私が合図を出すまで普段どおりにしていなさい。」
そして、鏡に映った自分の顔を見ながらほくそ笑んだ。
「レイクゾーンのあの女の子より使えそうな子ね。しばらく自由にさせておくとするか。」
そして翌日、早起きしたティアナとスバルは早速特訓を開始した。日頃の訓練もさることながら、自主練では手数を増やす練習をしたり、熱心に研究を重ねた。当然困難にぶち当たる事もあったが、そこはスバル、エリオ、キャロ、タイキ達がサポートし、着実に皆は繋がりを深めていったはずだった。
そして、問題の日となった。
「さて、今日は2対1で模擬戦をするよ。」
一通りの訓練の後、なのはが皆に言った。
「最初はスターズ、ライトニングはその間ヴィータ副隊長と見学だよ。」
なのはにこう言われ、スターズはバリアジャケットを装備し、ライトニング部隊の二人はヴィータ、タイキ達とホログラムのビルの屋上に上った。
「ええ、模擬戦もう始まってるの?」
すると、フェイトが慌てながらやってきた。本人いわく、自分が模擬戦を担当しようと思ってきたらしい。
「最近のなのはの訓練密度濃いからな。夜遅くまで新人どもの訓練の映像見て分析も行ってるし。」
ヴィータがこう言うと、
「いつも見てくれてるんですね。」
エリオも隣で言った。
「本当にそうかな?あいつが何を目指して指導を行っているのかしっかり新人に伝わっていないなら、まだまだあいつの指導は不完全だがな。」
しかし、ドルルモンはこう言っている。ヴィータは言い返そうとしたが、模擬戦が始まったので、そこに注目した。
スバルはいつも通り、気合で真っ直ぐなのはに突っ込んでいった。しかしティアナは、速いと言えば速いが味方まで危なくなるような弾道の弾を沢山放っている。
「ティアナの奴どうしたんだ?」
ヴィータは早くも気が付いた、
「スバルを囮に使ってる。」
なのは本人も気が付いているだろうが、あまり気にしていないのか、それとも含むところがあるのか。模擬戦を続行している。そして、
「防御を抜いてバリアジャケットを切り裂く、一撃必殺!!」
なのはの不意を突く形で、刃のエネルギーを放出した銃を振り下ろした。
「レイジングハート、モードリリース。」
なのはは静かにこう言うと、素手でスバルの拳とティアナの刃を受け止めた。
「ねえ、私の教導ってそんなに間違ってる?」
二人にこう言うなのはの口調は、静かだが槍のように突き刺さるものだった。ティアナは言われた瞬間にその場を離れると、
「私は!何も失いたくないから!強くなりたいんです!!」
力の限り叫び、なのはめがけて大量の弾を発射した。
「頭…冷やそうか…」
なのははこう言うと、大量の弾丸と共に一発のエネルギー波をティアナに打ち込んだ。
威力を加減し、なおかつバリアジャケットで守られているとはいえ、これだけの一撃を打ち込まれたからには普通は無傷では済まない。しかし、ティアナは無傷で立っていた。一人の和装束の女に守られて。
「あらあら、せっかく見に来たのにその光景が仲間割れのところなんてね。」
現れたのは、旧バグラ帝国軍の三元士、色欲を司る魔王型デジモン「リリスモン」だった。
カットマン
「カットマンと。」
モニタモンズ
「モニタモンズの。」
全員
「デジモン紹介のコーナー!!」
カットマン
「今回のテーマはスパロウモン。スパロウモンは飛行機のような姿をした鳥型デジモン。必殺技は、所持した銃を乱発する「ランダムレーザー」翼に仕込んだ刀で相手を斬る「ウィングエッジ」高速で体当たりする「クラッシュムーブ」だ。」
モニタモンA
「飛んでいるときの動きを見れば、その時の調子はおろか、その時の機嫌まで分かる実に単純なデジモンですな。」
モニタモンB
「となると、やたらとアクロバットな飛び方をしていると、間違えなく浮かれてるいう事ですな。」
モニタモンC
「おやつあげたら曲芸するかな。」
カットマン
「それはともかく、スパロウモンが「ランダムレーザー」を撃つときに使う二丁の銃は「サナオリア」と言って、かのベルゼブモンが使う銃「ベレンヘーナ」を作った人が作ったんだよ。」
全員
「それじゃあまたね!!」
次回予告
突如機動六課を襲撃したリリスモン。ティアナを人質に組織を壊滅をたくらむリリスモンは、真に王たる人物についてタイキ達に言う。
タイキはリリスモンの脅威から皆を守るため、全戦力を叩きこむ。
次回「リリスモンVS機動六課&クロスハート」
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第六話 ティアナの失敗、ドルルモンの過去 | ||
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