リテラエルネルア「第三話」
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 『―レディさんから連絡あったがここがその場所か?』

 

 『おいまて、なんでアキラがここにいる。 って聞かなくていいか』

 

 暁は西洋風の建物が並ぶ街を傍観できる高台に来ていた。そこは先客がいてそれは知人だった。 長身に身の丈ほどの大剣を背負い髭を生やしてはいるが調った顔立ちが印象的な銀髪の男性。 そして一際目に入るのが真紅のレザーコートだ。

 

 『まぁ『アイツ』が領主だったって言う話しを聞いたからな、どういう所か見てみたいのがあるが……話しを聞くとどうもきな臭くてな』

 

 『『魔剣教団』か、質の悪い博物館でも開くつもりらしいぞ?』

 

 街の一角に一際大きな建物、城と思われる建物を見る。

 

 『動物園の間違いじゃないか? 悪魔の反応するし』

 

 『……だな。 じゃあそろそろやるか』

 

 長身の男はフットワークをしながら調子を確認する。

 

 『『アイツ』が俺に関する事を残すとは考えられないが念のため調べてから合流するわ』

 

 『オーケーオーケー。 まぁお祭の前に終わらせる事をオススメするぞ?』

 

 そういった男性はあろう事か崖から飛び降りた。

 

 『俺的には祭りを終わらせてもらいんだがな』

 

 そんな男性の行動に驚きもせず、暁は来た道を戻るように高台から去って行った。

 

 

 機動六課宿舎・医務室

 

 「…いつつ。 何処だここ」

 

 体に走る痛みに暁は目を覚ました。

 

 視界に入ったのは白い天井。 首を動かせば棚には薬品らしき液体が入った瓶、鼻腔を刺激するアルコール臭……医療部屋だと連想するための材料が揃っていた。

 

 「(あぁ、そうか。俺高町の攻撃を受けて気絶したのか)」

 

 置かれた状況に頭を整理すると自分は気を失っていたということを自覚した。

 

 窓の外は暗くなっていたが部屋の中は明かりがついていた事から恐らく深夜には至ってないだろう。 壁に取り付けられている時計が証明していた。

 

 「8時…か。 腹減ったな。」

 

 幸い大きなダメージは残っていなく動くことに苦はなかった。

 

 「ん?」

 

 ベッドから下りてふと窓の外を覗くと見たことある、オレンジ髪のツインテールが宿舎から森へといくのが見えた。

 

 「あれは……ティアナだったか」

 

 見かけた手前、気になるので後を付けることにした。 通路で出会った人に『散歩してくる』と言伝を頼んで。

 

 後を付けること数分、宿舎からさほど離れていない森の中の開けた場所でティアナは自主訓練していた。

 

 「(おいおい、あんな訓練した後に自主訓練かよ。 タフだなぁ…)」

 

 呆れ半分でティアナの自主訓練を見つからないように気配を消しながら見ていた。

 

 内容は不規則に現れる光球を両手に持つハンドガンタイプのデバイス《クロス・ミラージュ》で狙いをつけるものだ。

 

 「旦那・・・」

 

 「ん?」

 

 かけられた声に振り向くとヴァイスがスパナ片手にこちらに来ていた、おそらく整備の途中だったのだろう。

 

 「あんたはたしかヴァイス?」

 

 「はいな、ヴァイスっす。 それよりも旦那、見ちゃいましたか」

 

 ヴァイスは視線をティアナの方を向ける、それだけで何に対してなのかを察した。

 

 「あいつはいつもこんなことを?」

 

 「えぇ、ここんとこ毎日。 最初は注意したんですがあいつの思いを知ってるんで止めることまでは出来なかったんっす」

 

 「だから様子を見に来た、か」

 

 「一応、整備場から双眼鏡で見てたんですが旦那の姿が見えたもので」

 

 「なるほど」

 

 「自分はすぐ戻らないとまずいんで戻りますが、旦那から見て頃合の時に宿舎に戻らせてください」

 

 口調が変わったことにより真剣味が増したのか先程までの軽い笑顔が消えていた。

 

 「わかった」

 

 踵を返し離れていくヴァイスを見送り、再びティアナの訓練を見ると。

 

 「(アイツ……疲れきってるな)」

 

 ティアナの表情は青白く、汗の量も尋常じゃない。 それなのにティアナは自主訓練を止めようとはしない、なにかに強要されているかのように続けている。

 

 「(これ以上は危険だ、止めるべきだな)」

 

 そう結論した暁はティアナを制止させよう茂みから出た。

 

 「!?」

 

 出た瞬間、ティアナは糸が切れた人形みたいに地面に倒れ込んだ。

 

 「なにやってんだか!!」

 

 急いでティアナの側に駆け寄り上半身を起こし、意識の確認をした。

 

 「おい、しっかりしろ!! ティアナ!!」

 

 「……お兄…ちゃん…?」

 

 閉じていた目を開けると焦点が合わない目で暁をみた。

 

 「起きろ!! 寝ぼけんな!!」

 

 「ひゃあ!?」

 

 雷の魔術を利用した微弱な電流を流し、一気に意識がはっきりしたティアナは悲鳴を上げた。

 

 「な、なななな何なのよアンタ!?……ん?」

 

 ティアナ、思考停止。暁の手は自身の背に当てられ金髪の幼さ残る顔が近い。 生涯肉親以外の異性からここまで距離が近い事は皆無だったティアナ。

 

 「きゃああああ!!」

 

 とまぁこうなるわけで、悲鳴と共に乾いた音が辺りに響き渡った。

 

 

 「リィン、このデータ間違いないんか?」

 

 部隊長室にはやてをはじめ、各隊長や副隊長、主要メンバーが一同を会していた。

 「はいです…何回もやり直しましたしシャマルやシャーリーとやったので間違いないです」

 

 妖精、そう表記するのが正しいぐらい小人がはやての近くで浮いていた。

 

 「出鱈目だな」

 

 かのデータをみたシグナムも冷や汗を流していた。

 

神崎 暁

 

 基礎能力

 

リンカーコア 無し

身体能力 優

魔力生成力 優

空間認識 良

状況認識 良

 

 戦闘技能

 

基礎戦闘技能 優

陸戦技能 優

空戦技能 無

補助技能 判定未定

近接戦闘技能 優

中距離戦闘技能 良

遠距離戦闘技能 無

単体戦闘技能 優

広域戦闘技能 判定未定

総合攻撃評価 優

総合防御評価 良

総合評価 判定不能

 

 

 「攻撃と防御の差が激しいなコレ」

 

 ヴィータも顔をしかめながら感想を漏らす。 データを見る限り超攻撃型だ。 それも局地的に投入可能な戦力として申し分ない程に。

 

 「リンカーコアが無い? それなのに魔法が使えるの?」

 

 フェイトが我が目を疑うように呟く。 先のアンノウン――暁は悪魔と称した――に対して行った殲滅攻撃も確かに魔力反応はあったのだ。

 

 「世界の違い、なのかもしれんなぁ……」

 

 お互いの世界が違う事を話していたのを思い出したはやてだったが結局は推測だ。

 

 「あと、神崎さんが身につけていたペンダントから気になる情報が出ました」

 

 「気になる情報?」

 

 シャーリーが端末を操作しあるデータを映し出した。

 

 「これは、デバイス!?」

 

 映し出されたのは機械的な両刃の剣だった。

 

 「デバイス、とは言い切れないんですよね。 話を聞くと魔法とは無関係の世界から来たんですよね?」

 

 「そや、向こうは魔法じゃなくて魔術らしい。 せやからリンカーコアもないんやと思う」

 

 「それともう一つ、神崎さんの左腕なんですけど」

 

 今度はシャマルが端末を操作し暁の腕の映像を映す。

 

 「入れ墨?」

 

 映し出された暁の左腕には紋様のような図形のようなものが書かれていた。

 

 「シャマル、これがどうしたというのだ。 テスタロッサの言うとおり入れ墨にしか見えないが」

 

 フェイトに同意するようにシグナムが言葉を放つ。

 

 「ただの入れ墨では無いのよ、違和感を感じてその紋様を触ろうとしたら拒絶されるかのように弾かれたのよ」

 

 「弾かれた?」

 

 「えぇ、だけどあの弾かれた時に感じた力どこかで覚えがあるのよね」

 

 「ホントかシャマル」

 

 「うん、だけどそれが闇の書と呼ばれはじめた時代になのよ」

 

 この発言に闇の書に関わりのある人物達が目を見開いた。

 

 「え、じゃあ神崎さんは」

 

 「それは早計とちゃうか? 神崎さんは次元漂流者ではあるけどそんな昔の人ではあらへんやったやないか」

 

 彼の所有物にはデザートイーグルがあった、それは地球での質量兵器であり近代の物である。

 

 状況証拠でしかないが暁は異世界人であるとはいえ現代人で間違いはないはず。

 

 なのにベルカ騎士の一人シャマルは昔、それも戦乱期で心当たりがあるという。

 

 「――あぁ〜アカン、頭んなかゴッチャゴチャや、今日はもう終いや」

 

 情報の整理が追い付かないはやては強制的に今日の事を終わらせる。

 

 他のメンバーも同じらしく同意の頷きをした。

 

 

 それから数日後、簡易デバイス化が完了したアグニとルドラを受け取った暁は機動六課宿舎から離れ、人気のない広場に来ていた。

 「よし、弄られていないようだな」

 

 弾倉部分をとり中身を確認した暁は異常が無いことに安心すると弾倉を元に戻した。

 

 すると朱と翠の装飾銃―アグニ&ルドラ―は淡い光を放ちながらそれぞれの自身を主張する色のブレスレットに姿を変え、暁の手首へと付けられた。

 

 このデバイスと言うのは持ち運びの利点として、待機状態という携帯品……もしくはアクセサリーとして持ち運び出来るようになっていた。

 

 「(クラウ・ソラスみたいなものだな)」

 

 似たような物を持っているため暁は自身の十字架を模したペンダントヘッドを見る。

 

 「とりあえず動作確認しとくか」

 今後ガンスタイル主流でやって行くであろうと考えていたため再び相棒を出現させ調子を確かめるために色々と試した。

 

 回路に支障はなくいままで通りに難無く魔力を通わせる事が出来た。

 一通りの確認が出来た為、日課にしてる訓練でもやろうかと思ったら――

 

 『神崎さん、大変です!!』

 

 アグニの方からウィンドウが出てはやてが映し出される。

 

 「……どうした」

 

 いきなり現れたはやての映像に驚きつつ説明を促した。

 

 「―――わかった。まずはヘリポートに向かえばいいんだな?」

 

 内容は山岳地帯を走行中の貨物列車にガジェット・ドローンが取り付いているというのだ。

 いまはまだレリックを保管している車両には侵入していないものの時間の問題のようだ。

 

 「今、フェイトちゃんが出払っててなのはちゃんと新人四人しか出撃できないんです。 しかも、その四人は今回が初めての実戦なので……」

 

 「了解した。あと敬語は使うなよ一歳しか歳違うんだからな」

 

 「あはは、そうやね……それじゃあ、お願いや」

 

 「オーライ、協力する以上出来る限りなことはするさ」

 

 その返事に満足したのか、はやて笑みを浮かべて通信を切った。

 

 「確か、ヘリポートは宿舎の屋上だな」

 

 アグニとルドラを待機状態に戻しヘリポートへと向かった。

 

 

 ヘリポートへ着くと既に発進準備は整ってあり、いつでも離陸出来るようその時を待っていた。

 

 「神崎さん、早く乗ってください!」

 

 乗り口で待機していたなのはに急かされ急いでヘリに乗り込む。

 

 「行きますぜ!!」

 

 シートに座ったのを確認したヘリパイロット、ヴァイスの声が聞こえたかと思うと浮遊感が体を襲う。

 ちなみに暁は向かい合わせの座席で奥の窓側に座っている。その隣にはエリオ、キャロ、向かい側にティアナ、スバル、なのはという順番だ。

 

 だが。

 

 「フリード…なんで俺の頭に乗るんだ?」

 暁は自身の頭の上でくつろいでいるフリードにツッコミを入れた。 だが本人は居心地が良いのか「キュ♪」と鳴いていた。 これに対してはもう苦笑いしかでない。 周りも同意だろう。

 

 「今回の任務はガジェットの全機破壊とレリックの確保。 スターズ分隊とライトニング分隊で分かれ列車の前後から七両目の最重要貨物車両に目指し目標を確保」

 

 なのはの口から今回の任務内容を聞かされる。 四人はこれが初の実戦と言うわけあってあからさまに緊張しているのが目に見えていた。

 

 「俺は?」

 

 「神崎さんはライトニング分隊と一緒に行動してください。 私は制空圏を取るためにガジェット・ドローンを破壊します」

 

 スターズにいるティアナは暁と同じガンナーだ、同じ部隊に同じ役割がいるとバランスがおかしくなる。 即決とはいえ利に適っている判断だ。

 

 了解。と返事したあとエリオとキャロを見たところ―――

 

 「固くなるな、最初の出撃で緊張するのはわかるが過ぎるのは良くない。少し気を落ち着かせろ」

 

 緊張故なのか脚が震えているので落ち着かせようと二人の頭に手を乗せる。

 

 「高町から指導を受けているのならその成果をだせばいい。 俺が一緒に行くことになったから思う存分やるんだフォローは任せろ」

 

 「神崎さん……。 はい!!」

 

 ポンポンと頭を叩くと固くなっていた表情が緩み笑みが零れていた。 『兄』という存在が自分にもいたらこんな感じなんだろうかと二人は思った。

 「おうおう、いい顔になったな」

 

 「ッ!?」

 

 そこでふと前のティアナと目が合った。 だがティアナは首を痛めるのではないだろうかという速度で顔を逸らし外の景色を見た。

 

 それをみたスバルが『どうしたのティア?』とか言っていたがティアナはそれを『なんでもないわよ』と一蹴した。

 

 先日の出来事では一応誤解は解いたものの何かよそよそしい。

 

 「そろそろ目的地に着きますぜ!?」

 

 ヴァイスの声でモニターを見ると貨物列車の周りに飛行物体がうようよしているのが見えた。

 

 「あれもガジェット・ドローンか?」

 

 「はい、AMF持ちですが神崎さんが交戦したV型より性能は低いです」

 

 「オーケー、相棒も戻ってきたからな本領を試すには不足無しだ」

 

 そういってアグニとルドラを待機状態から出現し両の手に収まる。

 

 「かなりゴツイですがこれ質量兵器じゃ無いんですか?」

 

 デザートイーグルをそのままカスタマイズした外見にティアナは指摘したがなのはが訂正した。

 

 「簡易的だけどデバイス化にしたから問題ないよ」

 

 「………というかさ、いつの間に着替えてるんだよお前ら」

 

 気付くと他の五人は既にバリアジャケットと呼ばれる衣服に着替えていた事にツッコミを入れた。

 

 「神崎さんはバリアジャケット着ないんですか?」

 

 「んなもんない」

 

 「えぇ!?」

 

 そんなに驚く事なのか?と思ったがこのやり取りの最中にも貨物列車はすぐそこまで来ていた。

 

 「それじゃあ先に出て制空権を取りに行くからみんな、訓練通りにね」

 

 「「「「はい!!」」」」

 

 四人の気合いの入った返事に満足いったなのはは単身で出撃すべくヘリの扉を開けた。

 

 「スターズ1、高町なのは行きます!!」

 

 なのはは靴に桜色の羽根を具現し勢いよく蒼天の空へと飛び出した。

 

 「速ッ、もう見えなくなっちまったな」

 

 一瞬にして遠くまで行ったなのはに対し暁は目を開いた。

 

 「そりゃ管理局が誇る『エース・オブ・エース』ですからね! おっとフェイト隊長も到着だ」

 

 モニターを見るとバリアジャケットを装着したフェイトがなのはと合流しガジェット・ドローン航空U型編隊を次々と破壊していく。

 

 「新人ども、なのは隊長とフェイト隊長のおかげで予定通り降下ポイントにつけるぞ!! 準備はいいか!!」

 

 「はい!」

 

 「行け!!」

 

 「スターズ3、ティアナ・ランスター!」

 

 「スターズ4、スバル・ナカジマ!」

 

 「「いきます!!」」

 

 ヴァイスの合図と共に先に出撃したのはスバルとティアナだった。

 

 「次、チビ共と旦那!!」

 

 「「はい!!」」

 

 「よし、俺から先に行くぞ」

 

 暁とライトニング分隊は後部の12両目の屋根へとヘリから降下する。

 

 「うし」

 

 無事に屋根に降り立った三人。

 

 「さぁて、手厚い歓迎はあるかな?」

 

 臨戦態勢に入った暁とエリオ、キャロは来るであろう敵の攻撃に備えて身構えていた。

説明
連続投稿になりますが一部設定捏造があるとおもいますw
ハーメルンにも投稿しています。
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