IS学園にもう一人男を追加した 〜 78話
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一夏SIDE

 

 

B

「だから答えろって言ってんだろうがぁ!!」

 

一夏

「っと!」

 

半歩下がると、雷撃が目前を通り過ぎ、相手はイライラとした口調で愚痴を叫ぶ。

 

B

「あ〜腹立つっ!! いくら待っても相手が来ねぇし! 来たと思ったらピーピー叫びやがるしっ! しかも逃げられるしよっ!!」

 

・・・

 

B

「それに加えてガン無視かい!? ふざけんじゃねぇよっ!」

[バチバチ!]

 

一夏

「おわっ!?」

 

相手から発せられる電撃の糸が縦横無尽に暴れる。

 

B

「シにさらせぇ!!」

 

その全てが相手の激号に合わせて、俺に襲い掛かる。音速並みの速度で迫る電撃。直線的な動きしか出来ない電撃と白式との鬼ゴッコが始まる。

だが、相手は電撃を発しながら俺の目の前に立ち、バチバチと鳴る拳を振り下ろす。

 

一夏

「っ!」

 

咄嗟に機体に急ブレーキをかけると、視界が一瞬、真っ白に染まり、雷鳴が轟く。

だけど、そこで背後の意識を削く訳にはいかない。

瞬間的にブースターを最大出力で噴射し、背面を仰け反る様に上空に飛ぶ。頭の先を通り過ぎた電流は相手のゾーンに吸収される。

 

B

「おらぁ!!」

 

正面から迫りくる拳を雪片弐型で防ぐ。ミシッと"嫌な音"が雪片弐型からするが、その音が霞むほど相手の猛攻が激しくなる。

バチバチと、振り回される拳を何度も雪片弐型で受けきり続けていると、"嫌な音"がさらに鈍く響き始めた。

 

一夏

(雪片は・・・もう、限界か!)

 

ビシッと刃にヒビが入り、次の殴打で刃がへし折れ・・・空中で完全に砕け散った。それでも相手の猛攻は収まるわけがなく、さらに増してきた。

雪羅だけでは、この猛攻を完璧に防ぎることが出来ず・・・

 

[グイッ!]

 

左腕ごと相手に持っていかれ、肘と膝に雪羅を挟み潰された。

 

一夏

「ぐわぁああっ!!」

 

同時に、左手から激痛が走る。

 

B

「おっと、やりすぎちまった・・・」

 

やっと、相手は落ち着いたようだ・・・

俺は粉砕した左手の骨の痛みに堪えながら、少しでも相手から距離を取る。

白式の唯一の武器二つが破壊され、SEも残り少ない。しかも、さっきの場所とは隔離され、戦線離脱不可能・・・

 

一夏

(もう一度、"あれ"が使えれば・・・!)

 

ダリル先輩との戦闘で、出現した"巨大なEN状の刀"・・・

つか、どうやって出したんだ、俺?

左手を右手で庇いながら、少し前の記憶を探る。

 

『その剣の重さは、思いの重さに比例する』

 

一夏

「っ!?」

 

雪片弐型から・・・雪片弐型の柄の部分から声が・・・

 

『その剣の重さは、思いの重さに比例する』

 

一夏

「・・・思い」

 

『その剣の重さは、思いの重さに比例する』

 

一夏

「"思い"は・・・どんな兵器をもってしても、絶える事のない"力"」

 

『そして』

 

一夏

「俺の"力"だぁ!!」

 

B

「柄の部分しかない武器で突っ込んでくるか・・・最後の悪あがきって事か!」

 

一夏

「違う! ここからが、本気の悪あがきだっ!!!」

 

『白式』が神々しく輝き、辺り一面に光が散りばめられる。そして、その光は一点に収束していって・・・

 

B

「っ!?」

 

相手は"雪片"に斬られ、フィードの壁に叩きつけられた。

だが、相手を斬った雪片は、もう自分の手にはない。

 

B

(な、何だ? 俺は何にやられた・・・それに、アイツの機体がさっきよりも鎧みたいに・・・まるで・・・)

 

一夏

(一瞬・・・一瞬だけど、手に熱いものが伝わってきて・・・それで・・・)

 

B

「『白騎士』の真似事か、てめぇ!?」

 

一夏

「っ!」

 

迫ってくる相手に合わせ、また手に熱い何かが伝わってきて・・・

 

B

「っ!?・・・へぇ、お前の"本気の悪あがき"って、そいつの事か」

 

右手に握られていたのは、光の雪片・・・

骨折が直っていた左手でも雪片の柄を握り締めて、相手の拳を押し返す。

 

B

「ぐっ・・・・・・ひひっ」

 

歪んでいた表情が一変して、どす黒い笑みへと変わるのを至近距離で確認する。笑みを浮かべる意図は分からないが、そのまま力任せに相手を押し飛ばした。

 

B

「ひひひっ・・・!」

 

飛ばされてもまだ笑みを浮かべ続けている相手の機体は、重力の作用で仰向けのまま地面に近づく。

だが・・・

 

B

「ヒャハハハハハハハッ!!!」

 

一夏

「いっ!?」

 

どす黒い笑みが迫ってきた。恐怖の塊が俺の顔を強張らせながらも、乱心した相手に雪片で応戦する。

 

B

「おらおらおらぁ!!!」

 

コイツ、さっきからキレたり、落ち着いたり、乱心したり忙しいな〜・・・

それにしても、今の『白式』の機動性・・・まるで、全ての異物を取り除いたような・・・言うなれば"真っ白"だ。ただ振るい、駆け出す。この一点が俺の思いの一点と合わさって、力となっているのだろうか・・・

なら、今の俺は何を思い戦っているのだろうか・・・獅苑が言ってたな。『まずは考えろ。そして行動しろ』って。

 

B

「俺とやり合って考え事とは・・・余裕綽々だな!!」

 

一夏

「うっ・・・!」

 

ダメだ。考えたところで何も浮かばない・・・第一、俺は頭で考えるのは苦手なんだ・・・!

 

B

「何、悩んでんだか知らねぇが、分かんねぇなら考えんな!」

 

そんなこと言われたら、本末転倒じゃ・・・いや、一理あるな。

もし、獅苑の言っていた"考えろ"が、次の行動に移す理由付けじゃなくて、俺に合った戦い方を見つけろって意味だったら・・・

 

一夏

「簡単じゃねぇかっ!」

 

B

「は?」

 

さらに右手に熱気が駆け上がって雪片が膨れ上がっていき、相手は咄嗟に俺から飛び退く。

フィードの広さを超える巨大な刀・・・『雪片"紫電』

 

片足を突き出し、フィードごと破壊しながら、『雪片"紫電"』を相手の頭上に振り下ろした・・・

 

B

「・・・チッ」

 

 

 

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投稿者SIDE

 

 

楯無

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

息切れのように聞こえる息づかいだが、本人にとってはため息に近い。そんな楯無は、壁に手を付き、どこに向かっているのかも分からず歩き続けている。

その片方の手には、10cmぐらいの大きさの注射器が握られている。

 

楯無

「はぁ・・・ったく、居場所ぐらい教えてくれても、いいじゃない・・・」

 

『ミステリアス・レイディ』は修理なしではレーダーすらも使い物にならず、直感で進路方向を決めている。

 

楯無

「何が、"愛があれば"よ・・・ムカつく」

 

あの爆発の後、楯無とスコールの部屋は床に埋められた高性能爆薬によって原型は留めたものの、2人のISは使用不能までにダメージを与えた。

直撃を受けた楯無は、生身にも大きなダメージを受けたが、スコールは美貌に合う笑みを浮かべられる余裕があった。だけども、それは苦し紛れの笑みで実際には体の負担が大きい。

2人とも動けぬ状態で、スコールは楯無に、ある条件・・・というより頼み事を提示した。

 

楯無

「見逃してやったんだから、ちゃんとやりなさいよ・・・」

 

スコールから渡された注射器を握り締め、この場に居ない彼女に呟く・・・そして、次の角を曲がろうと壁伝いに通ろうとした瞬間、耳につんざく爆音と、瓦礫が崩れる音が、風圧とともに楯無の顔面を通過する。

なびく髪を注射針を持つ手で抑え、音が響いた場所へ楯無は歩を進める。

 

楯無

「・・・あそこに」

 

音の発生源に着くと、その部屋の一部の天井が瓦礫と化し、その影響で木箱と鉄製の器物が無残にも散り散りに散らかっている。

床に散乱しているテニスボールに気を配りながら、迷いなく、煙幕の中に入る。

瓦礫でバランスを崩しながらも、手を伸ばした先に"彼"は居た・・・

 

獅苑?

「ぐっ・・・」

 

『W』から振り落とされ、瓦礫に体を打ち付けたのだろう。痛みで表情には苦渋の念が伺える。

 

楯無

「・・・」

 

獅苑?

「っ・・・お前は、あのときの [プスッ] っ!?」

 

ムクリと半身を上げた獅苑?の首筋に、楯無は手に持つ注射器の針を的確に突き刺し、器中の液体を流し込む。

獅苑が暴れる前に、針を抜いた首筋からチョロと血が流れる。その液体の成分には医療ナノマシンが含まれており、血が盛大に噴き出す事無く、傷口もすぐに塞がった。

 

獅苑

「な、なに・・・なにこれ・・・?」

 

楯無

(スコールの言うとおりなら、これで全部、思い出すはず・・・だけど、その前に)

 

突然の記憶の復元に、混乱し怯える獅苑。その頬に手を伸ばす楯無。

 

楯無

「大丈夫だから・・・ね?」

 

獅苑

「んっ・・・!?」

 

優しい口付け・・・獅苑は目を見開き、途端に全ての感情がリセットする。

唇同士が離れる時には、獅苑の記憶は完全に整理(処理)されていた。

 

獅苑

「たてなし、さん・・・?」

 

楯無

「ふふっ・・・やっぱり、獅苑君の呆けた顔・・・かわいい、ね・・・」

 

やるべき事を終えた楯無は、獅苑の胸に体重を任せて、健やかな寝顔を浮かべ寝息を立てた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウッド

「潜水艇はすぐに出せるな?」

 

黒服

「はい。もちろんです」

 

黒服を1人だけ引き連れたウッドは潜水艇に乗り込み、黒服は操縦席に、ウッドは後部座席に座る。

 

ウッド

「まずは"あのお方達"に合流せねば・・・そして、すぐにでも組織もこの世の全てを手に入れてみせる」

 

黒服

「・・・」

 

基地から深海に出撃した潜水艇は、海底洞窟を進んでいく。

 

ウッド

「おい、どこに向かっている? 早く浮上しろ」

 

黒服

「落ち着いてください。そろそろ出ます・・・」

 

ウッド

「そうか・・・」

 

スコール

「あなたのレッドカードがね」

 

その瞬間、海中で潜水艇が木端微塵に爆破した・・・

 

 

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一夏SIDE

 

 

一夏

「・・・っ」

 

フィードが完全に消滅し、元の空間に戻ってきた俺。

だが・・・

 

一夏

(手応えが・・・)

 

『雪片"紫電"』の手応えがない訳ではない・・・確かにある。だけど・・・

 

B

「・・・分かる」

 

一夏

「っ!?」

 

ハイパーセンサーで煙中にいる相手を捉える。そこには、何やら2本の棒状のブツで『雪片"紫電"』を防ぐ姿があった。

 

B

「お前の力は揺るがない思い・・・その大きさが刀として具現化・・・」

 

バンッと、『雪片"紫電"』を跳ねっ返した相手。その周辺の煙が一気に晴れ、相手の姿が視覚で確認できる。

 

B

「俺の欠陥は、"固定概念の異常な強さ・それ以外に対しての無関心"・・・"揺るがない思い"と準するものがあるかどうかは知らんが、とりあえず俺が言える事は一つだけある・・・」

 

2本の"ククリナイフ"を弄び、両刀の柄を繋ぐ鎖がカチャカチャと音が鳴る。

 

B

「俺とお前は似ているが・・・俺は、お前の事が"昔から"目障りだった!」

 

一夏

「ぐふっ!」

 

激号を合図に超音速で迫ってきた相手。手に持ったククリナイフが『白式』の腹部装甲を砕き、ナイフに帯電した電流がSEを一瞬にして削る。

まるで、スタンガンのように・・・

 

B

[げしっ!]

 

一夏

「うっ・・・」

 

先ほどの『白式』の姿が、強制的に第二形態に戻された俺を、下の階に抜けた床まで足蹴りで運ぶ。

 

B

「てめぇみたいな奴がここに居ちゃいけねぇんだよ・・・

[げしっ、げしっ!]

・・・失せろ」

 

冷たく発せられた言葉を最後に、俺は下の階に落とされた。

 

一夏

「ち、チクショウ・・・ま、まだ、俺は・・・」

 

獅苑

「無理するな・・・」

 

腕がガクガク震え、瓦礫に手を付き起き上がろうとする俺の前に立つ"漆黒のISを纏った・・・

 

獅苑

「お前にはやってもらわないといけない事がある」

説明
この小説を書いて、もう半年が経つのか・・・

あっ、独り言ですよ。
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タグ
インフィニット・ストラトス朝霧獅苑 のほほんさん 

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