リテラエルネルア「第四話」
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 銃声、銃声―――

 

 迫り来る円筒状の機械、ガジェット・ドローンU型に対し何発もの魔力弾が撃ち込まれ爆散する。

 

 「12両目制圧完了」

 

 11両目へと続く扉を前に暁が呟いた。

 

 「すごい、AMFなんてものともしないなんて…!」

 

 魔力による攻撃を半減、もしくは無効化する力場を関係無しに貫く威力にエリオとキャロは驚いていた。

 

 「(多少出力に変化があるが…帰ったら調整でもしてやるか)」

 

 違和感を感じていた暁は気を取り直して次の車両への扉を開けた。

 

 「うおわ!?」

 扉を開けた瞬間『待ってました』と言わんばかりにガジェットT型がコードをクネクネさせながら眼前にいた。

 瞬時にルドラを待機状態にして空いた手でガジェットをつかみ、後ろに投げ飛ばした。

 「え、うわ!?」

 「キャア!?」

 まさかこちらに投げてくるとは思わなかった二人だがそれに反応して分かれるように余けた。

 「あ…わるい二人とも」

 二人に謝罪しながらも投げ飛ばしたガジェットをアグニで撃ち抜きこれを撃破する。 すると通信が入り回線を開く。

 

 『神崎さん!新たなガジェット航空U型がそちらに向かってるです!』

 

 回線を開くとそこには小動物…改めリィンフォースUが映し出されていた。

 

 「高町達は?」

 

 『別方向からきたU型の増援の対処しているです!』

 

 「了解、あとはこっちでやろう」

 

 通信を切ると背後にいるエリオとキャロに向く。

 

 「ということだ。 俺は迎撃しに行くからあとは二人で進め」

 「え、でも神崎さん空戦出来ないんじゃ」

 

 指摘するキャロとエリオの間を通ながら――

 

 「やりようはいくらでもある。 後ろの奴らは俺に任せて二人は七両目を目指せ。 それと自分の力を試すいい機会だ、おもいっきりやれ。こっちが片付いたらもどるから」

 

 これまた頭をポンポンと叩くと侵入するときに開けた穴を通り屋根の上へと登る。

 

 「行こう、キャロ!!」

 

 「はい!!」

 

 二人は気合いを十分に11両目へと入って行った。

 

 「来た来た……」

 

 走行中故に風圧が暁を襲い掛かるがそれをものともせず屋根の上に立っていた。

 

 過ぎ行く景色の中、上空からこちらに迫ってくる飛行物体が幾つか見えた。

 

 「まだ距離があるな…試しに広域魔術でもやってみるか」

 

 暁は銃を持ったまま腕を下ろし目をつむり、自然体で構える。

 

 「『我は請う、断罪の刃。 与えよ、紫電の刃。 我が前の仇なす輩を討ち滅ぼさん』」

 

 暁の足元にミッド式でもベルカ式でもない魔法陣が広がり魔力が暁に集まってくる。そして眼を開くとオレンジだった瞳が赤く染まっていた。

 

 「落ちろ!!」

 

 腕を振るうと上空に足元と同じ魔法陣が現れガジェット航空U型編隊に紫電が降り注いだ。

 

 そのひとつひとつがガジェット航空U型をAMFごと易々と貫き次々と爆発を起こした。

「なるほどな、障壁を上回る攻撃なら阻まれないって事か」

 

 瞳の色が赤からオレンジへとグラデーションのように戻っていった。

 

 「お、残った奴もいたか。 機械のくせになかなか骨があるじゃないか」

 

 煙の中から辛うじて大破を逃れたガジェット航空U型が出て来て光線が暁を襲うが一歩横に移動し避ける。

 

 「墜ちろ…」

 

 アグニに魔力を溜めて引き金を引く。 朱い魔力弾が尾を引きながらガジェット航空U型にあたり爆散した。

 

 「……やっぱり燃費悪い」

 

 身体を襲う軽いけだるさを感じながらリィンフォースUに通信を入れる。

 

 「おい、後方からの増援はこれでおわりか?」

 『は、はいです! すごいです、デバイスも無しにあんな魔法を使うなんて』

 

 魔法じゃねぇって…。 そうツッコミたかったが今は戦闘中ということなので抑えた。

 

 「エリオ君!!」

 

 「!?」

 

 後ろから聞こえた叫びに暁は振り向くと以前この世界にやって来た時に対峙したガジェット・ドローンV型の同型機がベルトアームでエリオを捕まえていた。

 

 「まずい!」

 

 あのままだと崖下へと投げ落とされる!そう思った暁はアグニで阻止しようとしていた。

 

 「!? 障壁か!!」

 

 目に見えるほどの障壁に撃つことは無駄だと判断した暁は肉体強化をかけ、屋根の上を駆けた。

 

 「エリオ!!」

 叫ぶがエリオは気を失っているらしくぐったりとしていた。

 

 無情にもガジェットV型はエリオを車両の外、つまり崖下へと投げ飛ばした。

 

 「エリオ君ッ!!!」

 「チィッ!!」

 肉体強化の魔術を掛けなおし、脚力を向上しリニアレールの屋根を蹴った。

 『神崎さんがライトニング3を追って飛びおりました!!』

 『か、神崎さん何やってるですか!?』

 通信越しででは自殺行為だとか言っているが暁自身は自殺する気は更々ない。

 落ち行くエリオの腕をつかみ、リニアレールに投げ戻そうと思った時だ。 

 「いいぃい!?」

 キャロまでもこちらに向かって飛び降りてきたのだ、フリードも主人に追うように付いてきている。

 

 「キャロ!?」

 

 エリオを引き寄せ、キャロを受け止める。

 「っと。 キャロな――」

 何故飛び降りてきた!? そう言おうと思ったのだが、キャロの体から暖かな魔力を感じた。

 「ごめんねフリード、私が怖がってたばっかりに不自由な思いさせて。 いくよ、竜魂召喚!!」

 その魔力は徐々に力強さを増していき暁達を包みこんだ。

 そして一気に膨れ上がった魔力の殻を破り大きな白龍が現れた。

 「フリード…か?」

 暁は、正直驚いた。 まさか自分が元居た世界では架空の生物である龍の背にのっているのもあるがこんな小さな、しかも女の子がその龍を使役しているのだ。

 「…キャロ、凄いな」

 「え? あ!? へぅ……」

 いまキャロは暁に抱き着いている状態なのだ、それを認識するや否や顔を赤らめていった。

 「んん…」

 「お、気が付いたかエリオ」

 気が付いたのかうめき声をあげるとうっすらと瞼を開けるエリオ。

 「神崎…さん? それにキャロも?」

 「エ、エリオ君大丈夫?」

 「うん、心配かけてごめん。 神崎さんもすみませんでした」

 どうやら記憶の混濁はなさそうだと暁は思った。

 「謝るのも話すのも終わってからだ、行けるな?二人とも」

 「「はいッ!!」」

 二人の自信に満ちた返事に暁は二人にあのガジェットを任せようとおもった。

 「オーケー、ならあのガジェットは二人で行け。 ヘリで言った通りフォローは任せろ」

 二人は顔を見合わせ意を決意しガジェットに向き直った。

 「フリード、ブラストレイ!!」

 キャロがそう命じるとフリードの口から高温度の魔力が感じられた。

 その魔力が灼熱の奔流となりガジェットを襲う。

 しかし高性能なAMFが展開されてるのがこちらからでも見えるため決定打にはなりそうにない。

 「(さて、どうする?)」

 「ツインブースト、スラッシュ&ストライク!!」

 キャロのブーストアップを受け、エリオはストラーダを構え跳躍した。

 突撃性と突破性に特化したスピーア・アングリフだ。

 しかしガジェットもベルトアームをくねらせ迎え撃とうとしているが―――

 「させるかよ」

 朱と翠の装飾銃からそれぞれの特色である魔力弾が放たれる。

 朱の装飾銃は威力重視の魔力弾、翠の装飾銃からは多数の魔力弾。

 アグニとルドラでのチャージショットでベルトアームを撃ち貫く。

 それでも対抗しようとAMFの濃度を濃くしたようでガジェットが霞んで見えたが、エリオはそれさえも貫かんと突進し獲物のストラーダでAMFを貫き――

 

 「う、アァアアアアッ!!!」

 

 魔力刃が伸びて背後まで貫き、全身のバネを使い縦へと斬り裂いた。

 

 ガジェットV型は火花を散らしながら爆散する。

 「こりゃあ凄いな」

 

 その様子を見ていた暁は感嘆と見ていた。

 

 『ガジェット全機破壊を確認。 スターズがレリックを回収しました、この作戦は成功です!!』

 通信回線からリィンフォースUの作戦終了の声を聞き二人は安堵の息を吐き、エリオは腰を落とす。

 「よくやったな、エリオ。 たいしたもんだよ」

 リニアレールに近づきフリードから下りるとエリオに近づき、横にしゃがむと笑みを浮かべながら頭をクシャっと撫でた。

 「はい。 でもキャロのブーストのおかげですよ」

 撫でられても嫌な顔ではなく、寧ろ照れているようだ。

 「んじゃあ訂正しておこう。 たいした奴らだよお前ら二人は」

 キャロもヘリで見せていた表情はなく憑き物が落ちたような年相応の笑顔を見せていた。

 

 

 

 時同じくして一人の男性が暗い部屋で笑みを浮かべながら先程の戦闘をモニターで見ていた。

 モニターに映っていたのはエリオ、フェイト、スバル……、そして暁とティアナだった。

 「どうしますか、接触を試みますか?」

 後ろに控えていた女性が指示を仰ごうと進言するが男性がそれを制した。

 「いや、まだ時期尚早だよウーノ。 彼にコンタクトを取るのは今はまだその時ではない」

 「わかりました。 しかしAMFを易々と破るなんて彼はホントに?」

 「そうさ、まさか彼がこの世界に来るとは思わなかったがこれは僥倖だ」

 すると映像に映っている暁がこちらを睨みつけるとアグニの銃口を向けていた。 直後、その映像からはもう何も情報が送られてこないという映像が流れていた。

 「見つかってしまいましたね」

 男性はモニターの電源を切り椅子に深く座り直す。

 「まぁいいさ。 なんとかして彼をこちら側に入れたいものだ。 そしてこの彼も」

 そう呟く男性がひとつのモニターに目をやる。 そこにはひとりの青年が酸素マスクがつけられ、医療カプセルの中に眠っているかのように入っていた。

 

 「かろうじて一命は取り留めているもののかれこれ6年か」

 

 「ドクター、申し上げにくいのですが彼はもう・・・」

 

 「いや、彼はボクの被害者の一人と言ってもいい。 彼が知ったことは管理局に対するジョーカーになりえる、それに彼女のためにも諦められない」

 

 「…ドクターがそう言うのでしたら」

 

 「済まないねウーノ。 よろしく頼むよ」

 

 ウーノと呼ばれた女性が部屋から出ていくのを見送るとドクターと呼ばれた男性は再びモニターを見る。

 

 「あまり時間に余裕がなくなってきた、早く目覚めてくれないか――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   『ティーダ・ランスター』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 レリックの搬送をするためヘリで先に帰還するスターズの二人。

 

 ライトニングは事後処理の為列車を停めて現場に待機していた。

 

 暁はやることが無いので列車の屋根へ寝転がっていた。

 

 『神崎さん、スターズと一緒に帰還してもいいんよ?』

 

 不意にはやてから映像通信がはいる。

 

 「……そうだな、そうさせてもらうか」

 

 悪魔の反応も無いしこれ以上いても邪魔になるだろうと考えた暁は素直に聞き入れた。

 

 「!?」

 

 『どうしたん?』

 

 身を起こそうとした暁は直感的に感じた寒気に暁の表情が一変する。

 

 「八神、悪魔が来たぞ」

 

 『なんやて!?』

 

 気配のする方向に眼を向けると紅い鳥みたいな飛行物体がこちらに接近しているのが見えた。

 

 『なのはちゃん、フェイトちゃんあのアンノウンが現れた!! 確認例にあった紅い鳥や、迎撃をおねがい!!』

 『『了解!!』』

 

 モニター越しから聞こえる二人の声が聞こえた。

 

 「八神、この通信は二人に聞こえてるか?」

 

 『? そうやけど、それが一体?』

 

 「ブラッドゴイル、人間の生き血を浴びたガーゴイルみたいな下級悪魔だ」

 

 『生き……』

 

 息を飲む音がモニターからでも聞こえる。

 

 「そういや俺の世界で悪魔関係で伝説になってる話をしなかったな。 帰還後に話す」

 『……わかった。 それでその何とかゴイルの攻略方とは?』

 「手っ取り早いのは血のヴェールを剥がした後、本体の石像を破壊。 高町やフェイトなら魔力波を当てればすぐ終わるさ」

 暁は通信を切るとアグニとルドラを構えいまだ遠くに見えるブラッドゴイルの群れを見据える。

 

 「神崎さん、アンノウンが!!」

 

 後ろから事後処理をしていたエリオとキャロが駆け付けてきた。

 

 「大丈夫だ、攻略方教えたから高町達が撃破するさ」

 

 見るとなのはが桜色の魔力波を放ち血のヴェールを剥がし、あらわになった本体の石像をフェイトが破壊するというコンビネーションで確実に数を減らしていく。

 

 (悪魔を臆せず対峙するとは中々肝が据わってるな)

 

 その光景を見ていた暁は改めてこの世界の人間に対して感心した。 悪魔とは人間の恐怖を誘う装いであるのが普通だ、だが少なくとも彼女等は平然と戦っていた。

 

 (『あの時』にもそんな人間がいればアイツは魔帝なんてふざけた奴にも殺られなかっただろうに)

 

 「神崎さん? どうしたんですか?」

 

 「なにがだ?」

 

 声のした方を向くとエリオがキョトンとしていた。

 

 「あ、いえ…、なんか悲しそうな顔してたので」

 

 「気のせいだろ?」

 

 暁は一蹴して視線を戻すとブラッドゴイルの群れは掃討されていた。

 

 「神崎さん、アンノウンを撃破出来ました。アドバイスありがとうございました」

 

 二人が暁のそばに降りると礼を述べた。

 

 「撃破したのは二人の実力だ。 とりあえず宿舎に戻ろう、話しておく事があるからな」

 

 その後迎えに来たヘリ乗り込み機動六課の宿舎へと戻る一同だった。

 

 

 「おい、ダンテ。アキラはここに居たのか?」

 その頃暁の居た世界では銀髪の青年と同じく銀髪の男性がある遺跡の中を歩いていた。

 

 ダンテと呼ばれた男性は真紅のレザーコートを翻し青年の方を向いた。

 

 「俺が知る訳無いだろ。 しかし見ろよ坊や、噂通り悪魔がわんさかだ」

 

 前を向き直るダンテの視線の先にボロ布を被り痩せこけした悪魔が現れた。 ダンテ自身、数年前の出来事で見たヘル=プライドだ。

 

 「文献で見た奴らだな」

 

 青年は片刃の大剣、男性は無骨で鍔に髑髏をあしらった不気味な両刃の大剣を構えた。

 

 「意外に勉強熱心だな」

 

 「…アンタ一言多いんだよ」

 

 悪魔を前に軽口を叩く両者。 ダンテからしたら素直な感心から述べた言葉だったが青年はそれが感に触った。

 

 「…褒めたつもりなんだがな」

 息を吐きやれやれと両手を上にあげる。

 

 「さて、奴さん達もそろそろ痺れをきらしてきたぞ。 準備は良いかい坊や」

 

 「いいぜ」

 

 二人は視線を鋭くそれぞれの獲物を持つ手に力が入る。

 

 「「Let's Rock!!」」

 掛け声と共に二人は地を駆け、悪魔の群れの中に自身の身を投じた。

 

説明
今回は「あのキャラがまさかの」な設定があります。

あとコメントとかもお受けしていますので辛口でない程度でよろしくお願いします。
ハーメルンにも投稿しています。
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