ハイスクールD×D〜HSSを持つ転生者〜 第54話〜第55話
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第54話〜白龍皇との再会と取引〜

 

 

体育倉庫での騒動があった日の放課後。

 俺は早朝にあった出来事を振り返って、後悔していた。

 ったく、何がすきにすればいいだ。危うく、一線を越えるところだったぞ。

「……何かあったんですか? クリス先輩」

 俺の膝に座っている小猫が訊いてくる。

「……いや、何でもないんだ」

 何故だろう、小猫には言ってはいけない気がする。

 ふとゼノヴィアと視線が合って、すぐに目を逸らされた。頬もうっすら

 朱に染まっている。俺も少し赤くなっている。

 小猫は互いに赤くなっている俺とゼノヴィアを交互に見て何かを

 勘付いた小猫は

「………」

 ぎゅぅぅぅ。

 無言で俺の頬をつねった。

「いたひ、いたひよ、こねこ」

「……浮気者先輩」

 ぐっ! 心の奥に深く突き刺さった。小猫の毒舌が普段より強力だ…!

「…ごめん、小猫」

 一応、ゼノヴィアと一線を越えかけたからな。謝るのが普通だ。

「……許します」

 ありがとうございます、小猫さん。

「皆、集まったわね?」

 部長は部員全員集まったことを確認すると、記録メディアみたいなものを

 取り出した。

「若手悪魔の試合を記録したものよ。私達とシトリー眷属の試合もあるわ」

 今回はこれを視聴し、今後のゲーム対策を立てるのか?

 

 俺達はまず、バアル眷属とグラシャラボラス家の試合を見た。

 これを見た感想は――『王(キング)』サイラオーグの強さがハンパじゃなかった。

 最後は『王』同士の一騎打ちになったが、サイラオーグが圧勝した。

 画面越しでもわかったが、一発一発の攻撃がこもっていた。勝利への執念が

 すごい…! 会合のとき、俺はサイラオーグの強さはレガルメンテと同等

 と思っていたが、これを見る限りあれは間違っていたかもしれない。

 王者のHSSといわれている、レガルになっても勝てるかどうか…

 映像を見るには、サイラオーグは、祐斗並の速さを持っていた。

 最終的には、ゼファードルが泣き崩れながら降参をし、試合は終わった。

「サイラオーグは…精神を断ち切るほどの気迫で向かってくるぞ。あいつは

 本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇もない」 

 アザゼルの言うとおりだ。

 しかも、ゼファードルとのタイマンでも本気を出していなかったという。

 これは、最大の壁というわけだな。

 俺達が次の試合を見ようしたとき、部室の片隅に魔方陣が現れた。

 この模様は――アスタロト。

「ごきげんよう、皆さん。ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いにきました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室のテーブルには、部長とディオドラ、顧問のアザゼルが座っていた。

 朱乃さんがディオドラのお茶を淹れ、部長の傍らに待機する。

 俺を含むほかの眷属達は、片隅に待機していた。

 これが上級悪魔と下級悪魔の差って奴だよなぁ。何か、ライザーのとき

 を思い出す。ただ、あの時と違うのは今回は部長じゃなくてアーシアって

 ことだ。

 一誠。お前の大事な人はいろんなことに巻き込まれているよな。ライザー

 のときのように、ディオドラにも一発かましてやれ

「リアスさん、単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」

 『僧侶』といったとき、一誠の手を握っているアーシアがビクッと反応した。

「いやん! 僕のことですか!?」

「ギャスパー。大事な話のときに、冗談をいうな」

 ていうか、お前も進歩したよなぁ。前だったら、怖がって、ダンボールの中に

 逃げ込んだのに。

「僕が望むリアスさんの眷属は――『僧侶』アーシア・アルジェント」

 予想はしていた。『僧侶』のトレードといったときからな。

 だが、求婚した相手をトレードで手に入れようとする方法が、俺は嫌いだ

 あいつ――あの笑顔の裏に何かを隠している。まぁ、勘だけどな

「こちらが用意するのは――」

 ディオドラの言葉に部長が間髪いれずに言った。

 

「だと思ったわ。けれど、ごめんなさい。私はトレードする気はないの。

 それはあなたの『僧侶』と釣り合わないとかそういうものじゃなくて、単純に

 アーシアを手放したくないの。――私の大事な眷属悪魔だもの」 

 真正面から部長は言った。

 …俺のときも、部長はそんな風に言ってくれるかな? 少し不安になってきた。

 よし、これからは部長をからかうのは自重しよう。

「それは能力? それとも彼女自身が魅力だから?」

「両方よ―――私は、アーシアを妹のように思っているのだから」

「―――っ!! 部長さんっ!」

「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由では

 ダメかしら? それに求婚した女性をトレードで手に入れようというのもどうか

 しらね。あなた、求婚の意味を理解しているかしら」

 迫力のある笑顔で問い返す部長。キレているのは俺達から見てもわかった。

 しかし、ディオドラは笑みを浮かべたままだ。それがかえって不気味だ。

「わかりました。今日は帰ります。けれど、僕は諦めません」

 ディオドラは立ち上がり、アーシアへ近寄ってくる。

「アーシア、僕はキミを愛しているよ。大丈夫、運命は僕達を裏切らない。

 この世のすべてが僕達の間を引き裂こうとしても僕はそれを乗り越えるよ」

 ディオドラがしゃがみこみ、アーシアの手の甲にキスしようとしたとき――

 

 一誠がディオドラの肩を掴んでキスを防いでいた。あれはキレている表情だ。

 ディオドラは爽やかな笑顔で言った。

「話してくれないか? 薄汚いドラゴンに触れられるのはちょっとね」

 ―――っ!! こいつ、これが本性ってわけだな…! 俺の親友をバカにしやがって…!

 俺がディオドラを殴り飛ばそうとしたとき、

 バチッ!

 アーシアがディオドラの頬にビンタを放った。少し、すっきりとした。

 アーシアは一誠に抱きつき、叫ぶように言った。

「そんなこと言わないでください!」

 ディオドラはビンタされても、笑みを浮かべたままだ。

「なるほど、わかったよ――では、こうしようかな。次のゲーム、僕は赤龍帝の

 兵藤一誠を倒そう。そうしたら、アーシアは僕の愛に応えてほし―――」

「お前に負けるわけねぇだろッ!」

 一誠は面と向かって言い切った。

「赤龍帝、兵藤一誠。次のゲームで僕はキミを倒すよ」

「ディオドラ・アスタロト、お前が薄汚いって言ったドラゴンの力、存分に

 みせてやるさっ!」

 にらみ合う二人。そのとき、アザゼルの携帯がなった。

 いくつかの応対をしたあと、先生は告げる。

「リアス、ディオドラ、ちょうどいい。ゲームの日取りが決まった。五日後だ」

 その日はそれで終わり、ディオドラは帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本屋でラノベを買い、その帰り道。意外な人たちと出会った。

「おひさ、多重の創造者」

「おお、美猴か」

 偶然だな、こんなところへ会うとは。

「何でここにいるんだ?」

「まぁ、相棒の付き添いでね」

 後ろから現れたのは

「二ヶ月ぶりだな、神矢クリス」

 白ワイシャツ姿のヴァーリだった。

「久しぶりだな、ヴァーリ。元気だったか?」

「おかげさまで。さっき、兵藤一誠に会ったが、あいつは警戒心が最大だったぞ?

 お前は俺を警戒しないのか?」

「何で、敵意も殺意もない相手を警戒しないといけない。お前達も俺を警戒

 していないだろ?」

 俺は嘆息しながら言った。

 ヴァーリは俺に手を向けながら言った

「確かに。でも、俺が敵意なしでお前を攻撃したらどうする?」

 ヴァーリの問いかけに俺は答える。

「そのときは…死ぬ覚悟をするさ」

  

 その言葉を聞いてヴァーリは苦笑した。

「そうか。――ていうかそんな話をしに来たわけではない」

 …意外と話すのが好きかも知れないな、こいつは

「レーティングゲームをするそうだな、相手はアスタロト家の次期当主」

 一体、こいつらの情報網はどうなっている? 誰かが情報を売っているのか?

 それとも、こいつらの組織が単純にすごいだけか?

「記録映像は見たのだろう? 気をつけたほうがいいぞ」

 確かに、ディオドラはあの試合のとき急激に強くなった。

 部長もアザゼルも言っていた。ディオドラはあそこまで強くなかったと。

 まぁ映像を見ての感想は、『王』の皆様は一騎打ちという脅迫概念が

 どこかで働いているのだろうというぐらいだ。

「忠告ありがとな。―――ヴァーリ、お前と取引をしたい」

「取引?」

 ヴァーリが反応した。一応、後で部長にも言うけどな。

「内容は…『禍の団』の部隊を知りたいだけだ。持っている能力は教えなくてもいい」

「お前は、俺に何をくれる?」

「そうだな…。俺が二週間に一回のペースでお前と闘うというのはどうだ?」

 その言葉に、ヴァーリは戦闘狂特有の笑みを浮かべた。

「それは何とも魅力的な条件だな。その取引、応じよう」

 よし、取引成立だな。俺も、ヴァーリと本気で闘いたいからな。

 

「俺達『禍の団』は主に、三つの部隊に分かれているんだ。一つが俺達。

 二つ目が、三大勢力会談テロをやった『旧魔王派』。そして、三つ目が

 『英雄派(えいゆうは)』だ」

「英雄派…?」

 英雄ということは、人間か。

「英雄派は、ただの人間じゃない。皆が神器を身に宿している。そして、

 英雄派の神器使いの中には――」

「禁手(バランス・ブレイカー)使いもいるってわけだな」

 俺の言葉にヴァーリは頷いた。

 禁手ってのは、確か『世界の均衡を崩すほどの力』なんだよな。それが何人も

 いるってのは、嫌だな。

「中には『神滅具(ロンギヌス)』を所持している奴もいる。もちろん、そいつ

 らも禁手に至っている可能性が高い」

 『神滅具』の禁手か…。一応、俺もいくつかは使えるけどな。知っているのは

 堕天使の幹部と魔王様ぐらいだ。部長にも言っていない。今はまだ早い

 ということらしい。

「英雄派については今はここまでだ。クリス、ディオドラには『旧魔王派』が

 関っている。あいつらはお前を相当警戒視しているぞ。『旧魔王派』の

 幹部をたった数秒で終わらせたんだからな」

 

「ご忠告、ありがとよ。俺も負けるわけにはいかないからな。部長の為にも、

 俺の為にも。じゃあな。今度会うときは、本気で闘うからな」

 と、俺はヴァーリに別れを告げて、家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤家に着いて、自分の部屋の扉を開けたとき―――

「………」

 何かのコスプレ衣装に着替えているゼノヴィアと小猫がいた。

「おかえり。早速だがクリス。似合っているか?」

「……似合っていますか? にゃん♪」

 小猫のにゃんという声で、未知の領域を見た気がした。

 えっ? 何この子…可愛すぎる! それだけで、誰かを殺せるのではないかと

 思えるほどだった。

 ゼノヴィアのほうも、とても似合っていた。さっきからチラチラ見えている

 太ももとか扇情的すぎる。

 ――ドクンッ!――

 やばっ!! 本日二度目のヒステリア性の血流だ…! 体育倉庫ではなってしまった

 が、ここでなってしまうと、俺の広くなったベッドで、二人を相手に何かを

 しかねん!

「あ、ああ、似合っているよ。二人とも、とても似合っている」

 二人を褒めつつ、後退していく俺。

 それに気づいたのか、二人とも俺の腕にからみついてきた。

「逃がさないよ、クリス」

「……逃がしません、先輩」

 

 …これは、本当に逃げるのは無理かもしれない…。

 一か八か、これにかけるとしよう。

「俺はヒスって…あー、二人を…あそこのベッドに連れ込んで何かをさせない

 為に俺はここから逃げるんだ。…出来る事なら見逃して欲しい、かな?」

 俺の必死の願いも、ゼノヴィアには通用しなかった。

「私は…クリスと性交しても構わんと前から言っているが?」

 ですよねー。

「……私は、先輩と付き合いだして…もう数週間になりますけど、ま、まだ

 そういう行為は早いと思います」

 小猫は恥じらいながらも言ってくれた。どうやら、小猫には通用したようだ。

 小猫、お前のおかげで、ヒスらなくてすんだ。ありがとよ。

 ふと腕時計を見ると、時刻は深夜0時を過ぎていた。

「時間も時間だし。俺、風呂入ってくる。じゃ、おやすみー」

「……おやすみなさい、先輩」

「ああ、おやすみ。クリス」

 俺は着替えを持って、風呂場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂入った後、部長にヴァーリがいっていたことを(英雄派については言わ

 なかったが)説明して、アザゼルに連絡してヴァーリとの取引の事を話し、

 そこで眠くなって、部屋に戻って寝た。

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第55話〜取材と旧魔王派の襲来〜

 

 

今日はテレビ収録の日。俺達グレモリー眷属は、若手悪魔特集的なもの

 でテレビ出演をする。

 今朝から、一誠は発声練習をしている。

 皆も緊張しているようだ。俺も、少しは緊張しているけどな。

 で、今はその会場にいる。冥界の皆さんも、温かく迎えてくれた。

「お待ちしておりました、リアス・グレモリーさま。そして、眷属の皆様。

 さぁ、こちらへどうぞ」

 プロデューサーの人に連れられて、上層階へエレベーターを使っていく。

 廊下を歩いていくと、廊下の先からサイラオーグがやってきた。

「サイラオーグ、あなたも来ていたのね」

 この人も取材にきていたらしい。

「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」

「ええ、サイラオーグは終わったの?」

「これからだ。おそろくリアス達とは別のスタジオなのだろう――試合、見たぞ」

 その言葉に部長は少し顔をしかめた。

「お互い、素人臭さが抜けないものだな」

 サイラオーグは苦笑しながら、視線を一誠に向ける。

「どんなにパワーが強大にでもカタにはまれば負ける。相手は一瞬の隙を全力で

 ついてくるのだからな。だが――」

 ポンっと一誠の肩をたたく。

「お前とは理屈抜きのパワー勝負をしてみたいもんだよ」

 サイラオーグは、それだけを言うと去っていった。

 一誠も少し感激しているようだ。

 若手ナンバーワンの上級悪魔、か。俺の夢の妨げになりそうだ。

 

 あいさつの後、俺達は一度楽屋に通された。そこに荷物を置く。

 その後、スタジオに案内され、インタビュアーのお姉さんが部長に挨拶

 をしていた。

「お初にお目にかかります。冥界第一放送で局アナをしているものです」

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」

 部長も笑顔で応じる。ふむ、営業スマイルって奴か。

『失礼よ? 部長さんに』

 久しぶりにエリスが話しかけてきた。

 まぁな。一誠に見せる笑顔とは何か違うなーと思ったからさ。

『確かに、社会人の半数は営業スマイルを習得しているけれども…』

 そうなのか。まぁ、これから取材があるんだ。じゃあな、エリス。

『そうね、邪魔して悪かったわ。またね』

 と意識を神器からスタジオに向けると――

「えーと、木場祐斗さんと姫島朱乃さんと神矢クリスさんは

 いらっしゃいますか?」

「あ、僕が木場祐斗です」

「私が姫島朱乃ですわ」

「神矢クリスですけど…何か?」

「お三方に質問はそこそこいくと思います。三名とも人気上昇中ですから」

 祐斗や朱乃さんはわかるとして…何で俺もなんだ?

「木場祐斗さんは女性ファン、姫島朱乃さんは男性ファン。神矢クリスさんは

 その両方のファンが増えてきているのですよ」

 おおー、俺ってそんなに人気だったのか。

 

「えっと、もう一方の兵藤一誠さんは…?」

「はい、俺です」 

「えっと、あなたは…?」

 どうやら、素の一誠はわからないようだ。かわいそうな奴だ。

「あの俺が『兵士』の兵藤一誠です。一応、赤龍帝で…」

「あっ! あなたがっ! いやー、鎧姿が印象的で素の兵藤さんがわかりませんでした」

 あー、なんとなくわかるぞ、その気持ち。

 あの鎧は存在感がすごいからな。そりゃあ、素の状態がわからなくなっても

 おかしくない。

「兵藤さんは別スタジオでも収録があります。何せ、『乳龍帝(ちちりゅうてい)』として有名

 ですから」

「乳龍帝ぇぇぇぇぇぇっ!!?」

「くっ…! ゴホンッ!」

 一誠の訳の分からない二つ名に、俺は笑いそうになったが、咳で誤魔化す。

 スタッフさんは嬉々として話す。

「子供にすごく人気になっているんですよ。子供達から『おっぱいドラゴン』と

 よばれているそうですよ? シトリー戦の映像がお茶の間にも流れまして、

 それを見た子供たちの中で大フィーバーしてるんですよ」

 一誠は…将来的には、女性じゃなくて子供に囲まれていそうだな。

 少し大人になった一誠が、子供達に囲まれて困っているところを想像して

 いた。意外と面白い光景だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 収録後、俺達は楽屋でぐったりしていた。なんかすごく疲れた。

 番組は終始部長への質問だった。たまに祐斗に質問がいくと、女の人が

 黄色い歓声を上げていた。朱乃さんも男性の歓声が響いていた。

 俺の場合は…その両方の声が歓声だった。ぎこちない笑みを浮かべながら

 手を振ると、その声が大きくなっていた。

 この貴重な体験の感想は、悪魔も人間もイケメンと美人の女性が好きって

 ことだ。これは意外な発見だったな

 

 コンコン…。

「はい。どうぞー」

 ガチャ

「クリスさまはいらっしゃいますか?」

 俺を呼んでいるのは、金髪縦ロールのレイヴェルだった。

「レイヴェル、どうしてここに?」

 一瞬、ぱぁと顔が輝いたかのように見えたが、すぐに不機嫌そうな表情に

 戻った。

 レイヴェルは持っていたバスケットをこちらへ突きだす。

「こ、これ! ケーキですわ! この局に次兄の番組があるものですからついでです!」

 バスケットを受け取り中身を確認すると、ケーキが入っていた。

「これ、レイヴェルが作ったのか? 美味しそうだな」

「え、ええ! 当然ですわ! ケーキだけは自信がありますのよ! そ、それにケーキ

 をご馳走するって約束しましたし!」

「ありがとう、お茶の時にでもよかったのに」

「ぶ、無粋な事はしましませんわ! アスタロト家との一戦が控えているのでしょう?

 ただ、ケーキだけでもと思っただけです。あ、ありがたく思ってくださいな!」

 いい子ではあるよな、レイヴェルって。

 

「で、では私はこれで―――」

「ちょっと待て、レイヴェル」

 そそくさと立ち去ろうとするレイヴェルを引きとめ、ケーキ用のナイフを創り、

 その場で食べる。

 うん、これは俺好みの味だ。レイヴェル、ケーキ作るのうまいなぁ。

「うん、美味しいぞ。今度、いつ会えるかわからんから今お礼と感想を言おうと

 思ったんだ。お茶も別の機会にだ」

 そう言うと、レイヴェルは目を潤ませ、顔を最大に紅潮させていた。

「……クリスさま、今度の試合、応援しています!」

 レイヴェルは一礼すると、足早に去っていった。その時――

 ゾクッ!!

 寒気が走り、おそるおそる後ろを向くと

 血涙を流しながら殺気を放つ一誠と、無言で俺を睨んでいる小猫がいた。

 俺は一誠を黙らせ、怒っている小猫に謝った。

 何で謝っているのか分からんが、謝ったほうがいいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 ゼノヴィアがデュランダルを振るい、聖なるオーラが俺に向かって流れてくる。

「ふっ!」

 消滅の力を纏わせた鎌で、オーラを切り刻む。

 その間にゼノヴィアが距離をつめ、デュランダルの刃を俺の首目掛けてなぎった。

 バチィィィッッ!!!

 俺はOFG(オープンフィンガーグローブ)「オロチ」を装備した右手で受け止める。

「まさかデュランダルを受け止めるとは…!」

「…俺だって冥界の合宿で強くなったんだ。通常状態の俺でもこれぐらいはできる」

 一応、五分五分だったけどなと付け加える。

 デュランダルを離し、距離をとり、「精霊使いの剣舞」のカミトの武装になる。

 『魔王殺しの聖剣(デモン・スレイヤー)』と『真実を貫く剣(ヴォーパル・ソード)』

 をゼノヴィアに向ける。

 聖剣を持っているので、今の俺はHSS状態だ。

「さぁ来い。今の俺はさっきの俺とは違うぞ」

「む…。はぁっ!」

 ゼノヴィアは俺の言葉に一瞬怯んだが、俺に詰め寄り、デュランダルを振るう。

 ギィィィィィンッッ!!

 『魔王殺しの聖剣』で受け流し、『真実を貫く剣』をゼノヴィアの首へもってくる。

「ぐっ…!」

「詰み(チェックメイト)だ。――ゼノヴィア、何を焦っている?」

 俺の問いにゼノヴィアは答えた。

 

「私は――木場よりも弱い。でも、一番許せないのは前の試合で何もできずに敗退した

 自分自身なんだ!」

 それで焦っていたんだな。

「確かに、祐斗はとても速さで成長していっている。でも、ゼノヴィアが焦る

 ことがないじゃないか? 俺も前の試合だって、前半は何もしなくて、後半は

 軽く暴走していたしな」

 別に励ましの言葉にもなっていない俺の言葉にゼノヴィアは笑んだ。

「そうだな。クリスの言うとおり、焦る必要はないんだ。ありがとう、少し

 もやもやがとれた気がするよ」

 どうやら励ましの言葉になったらしい。

「じゃあ、終わろうか。これ以上やると倒れるぞ」

「そうだね」

 俺とゼノヴィアは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決戦当日。俺達は魔方陣で会場に転送された。

 だが、いつもとは何か違う気がした。まず、審判がいない。

 それと――目の前の魔方陣だ。

「……アスタロトの紋様じゃない!」

「魔方陣に共通性はありませんわ。ただ―――」

「全員、悪魔。しかも記憶が正しければ…!」

 魔方陣からでてきたのは、旧魔王派の連中だったのだ!

 

 

 

説明
神様の悪戯で、死んでしまった俺―――神矢クリスはハイスクールD×Dの世界に転生した。原作の主人公、兵藤一誠らに会っていろんな事に巻き込まれる。
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