魔法少女と呼ばれて
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夕闇の空に浮かぶ細い月は宵闇の住人がほくそ笑むような下弦の姿を見せていた。落ちた陽が闇を生み、闇と混じった影が見慣れた住宅街の風景を異質な物へと侵食していく。その暗がりから"彼等"は生まれた。

 

民家のブロック塀と庭木の陰から…カーブミラーとガードレールの狭間から…路上のマンホールの隙間から…じわりと湧き出す油のように黒い影が湧き出し、やがてそれは人の形の影となる。

 

歩道の最中にある町内会の掲示板に貼られた文書がある。【不審者情報をお知らせします】学区内で付きまとい事例が発生しました(以下の事例を参照)【事例】小学女児1名が帰宅途中、黒い格好の人物に付きまとい行為を受けました。実害はありませんでしたが注意するよう宜しくお願い致します。

 

その掲示板の脇を黒い影達は歩数と移動距離が合わない不可思議な歩みでひたひたと進む。影の数は合わせて三体。改めて気付く、影の足は獣の後脚の如く爪先立ちになった逆関節を思わせる形になっている。それが人型ではあるが人間ではないのは明白だ。

 

影は薄暗い茜色の世界の歩道を無防備に歩く一人の少女を追いかけていた。年の頃は十歳に満たないだろう。活発そうなボーイッシュな服装とポニーテールは少女の元気さの現れでもある。その少女を三つの影は執拗に追いかける。少女は気付いていなかった。

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「…」三つの影がヒソヒソと聞き取れない耳障りなテープの早回しに似た音を立てる。それが"ソレ"のコミュニケーション手段のようだ。影達の動きが変わる。それは肉食の獣が獲物に襲い掛かる前の一瞬の緊張にも似ていた。

 

少女は立ち止まる。「掛かったね、夜魔(サテュロス)のクズが」愛らしい中に野生の雄々しさを秘めた声が告げ、少女は振り向いた。印象的な猛禽を思わせる鋭い瞳が影を睨め付ける。「在るべき場所に還りな。下級悪魔の尖兵が!」

 

次の瞬間、少女の身体が勢い良く踏み込み一瞬にして間合いを詰めて来た。その速さは尋常ではなく、影等はまるで対応できなかった。瞬く間に叩き込まれた少女の拳により影の二人が後方に吹き飛ばされる。その威力はとてもただの女児が叩き出せる物とは思えなかった。

 

反応が遅れた最後の影が後方に突き飛ばされた仲間を振り返る仕草を見せる。おそらく、その視界に写ったのは紅蓮の炎を上げて燃え上がる仲間の姿だったろう。「…」ひそひそと耳障りな音を立てて二人の影が崩れ落ちる。

 

「余所見してんなよ…」少女の声に振り向いた影は見た。暮れ行く茜色の世界の中で更に紅い緋色の炎に包まれた少女の姿を。薄いピンク色をしたワンピースを飾るひらひらのフリルと、ふわりとしたスカートのフレア部分から生じたレース状の炎めいたエフェクト。

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少女趣味じみた装束に身を包み、反して肩を怒らせ悪鬼の如くにじり寄る少女の姿を! 不意打ちとは言え二体の仲間を失った黒い影…夜魔兵は不利を悟ったのか逃走を始める。「逃がすと思うか!?」叫ぶと少女は地を蹴り空高く飛び上がった。

 

膝を抱えて空中で一回転すると跳び蹴りの構えを見せる。蹴り足の先に炎で描かれた五芒星の魔方陣が浮かび上がった。「おおおおおおおぉぉぉぉっ! 魔法(マジカル)☆キィィィィ―――ック!」

 

気合と共に少女の体から炎が吹き上がり、炎の塊となった少女の蹴りが夜魔兵を無防備な背中に叩き込まれる。衝撃に潰され夜魔兵はアスファルトに全身を打ち付けられた。少女は同時に後方に一回転して飛び退ると片膝を付いて着地する。

 

その背後で夜魔兵の身体が炎を上げて爆散した。「俺の名はキズナ…」ゆるりと立ち上がり徐に名乗りを上げる「魔法少女キズナ! 地獄へ還っても覚えておけ!」

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―Begins―

意(生まれる、成立する、起こる、発生する)

それは始まりの物語―――。

 

説明
小学四年生の少女"天城絆"は魔法少女である。彼女を改造したS・O・S(Secret of Secret)は世界征服を企む悪の魔術結社である。魔女になる為に無理矢理改造手術を受けた彼女は洗脳処置の前にS・O・Sのアジトから脱出。魔法少女キズナとなり、復讐の為S・O・Sと戦うのだ!
この小説は上記の思い付きを勢いで書く小説です。
ツイッターで【魔法少女キズナ】と言うタイトルのツイッター小説として書いているので、通常の小説形態と違っていますが、そこはまあ気にせずにお気楽に読んでください(゚∀゚)
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