真恋姫†夢想 弓史に一生 第四章 第七話 スカウト
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〜聖side〜

 

 

 

食事が始まってから早三刻。

 

 

 

 

 

「ん…お腹一杯…。」

 

 

 

と言う触覚娘のギブアップ宣言により、この戦いは幕を閉じた。

 

そうだ、俺は勝ったのだ!!この娘との勝負に俺は勝ったのだ!!

 

しかし、彼女の与えた被害は相当なもので…夕飯時用に仕込んでいた材料まで総動員して挑んだ結果、夕飯用が明らかに足りない…。勝負に勝って試合に負けた気分だ…。

 

 

 

 

「いや〜しっかし、何時見ても恋の食いっぷりは見てて気持ちええな〜。」

 

「恋どの!!口の周りが汚れてますぞ!! ねねが拭いてあげますから、こっちを向いてくださいなのです!!」

 

「ん…ねね…自分で出来る…。」

 

「あぅ〜…。恋どの〜…。そんなこと言わずに〜!!」

 

「ふふふっ。そうですね〜…。恋さんの食べっぷりは見てて気持ちいいくらいです…。」

 

「こらっ、ねね!!あんまり暴れないでよ!!狭いんだから!!」

 

「……狭くてすいませんね…。」

 

 

 

 

そんな俺の言葉もむなしく、彼女達は食後の余韻に浸っている。

 

 

 

 

「徳種〜!!アンタの料理も美味しかったで〜…。」

 

「ありがとう。満足してくれたみたいで嬉しいよ。」

 

「美味しかったです…店長さん。」

 

「まぁ、腕が良いのは認めてあげるわ。それと、入ってきたときにただの屋台って言っちゃってごめんなさい。軽はずみな発言だったわ。」

 

「いえいえ…。あくまで趣味の域を脱してないので…。」

 

「いっそこのまま料理人になったらええんやない!? そしたら、お城で雇ったるんに…。なぁ、月?」

 

「霞さん…流石にそれは…。」

 

「霞…それは宮廷料理人に酷でしょ…。彼らだって必死なのよ?」

 

「そうですよ。そこに俺みたいな生半可な奴がいたら不味いですって…。それに、張遼さんには言いましたよね?俺にはやることがあるって。」

 

「そう言えばそうやったかな…?」

 

「まったく…。」

 

「店長さん…。今日は本当に美味しいお食事をありがとうございました…。 …申し訳ないんですが。お名前を伺ってもよろしいですか?」

 

「もちろんです。俺は徳種聖と言います。今後ともご贔屓にどうぞ。」

 

 

俺は軽く微笑みかける。

 

 

 

すると、先ほどまで普通にお茶を飲んでいた面々の顔が固まる。

 

 

 

 

 

……あれっ? 俺なんかマズいことしちゃったかな…。

 

 

 

 

 

「…あの〜…。俺なんかマズいことしました?」

 

「…はっ…。いえ、その…へぅ〜…。( ///)」

 

 

 

俺の中のモスピに火がついた!!!! この娘は絶対的萌え神様だな…。

 

 

他の人を見ても皆一様に顔を赤くしてる様子…。

 

 

今日はそれなりに気温も高いし…御飯食べた後だから体温が上がってるのかな??

 

何か後ろからは全員からジト目の嵐。すいません、俺の所為でこんな空気にしちゃって!!

 

 

 

「なんや、ずっこいな〜…徳ちゃんは…。」

 

「徳ちゃん?」

 

「徳種やから徳ちゃん!! ええやろ!?」

 

「まぁ、張遼さんにはこうして紹介もしてもらってるわけだし、別に気にしないから呼びたいように呼んでよ。」

 

「………はっ!! …まったくあんたは……聖って言ったかしら? …あんた『ガギンッ!!』ひっ!!?」

 

 

 

眼鏡っ娘が喋ってる最中に両脇から剣と槍が突き出る。

 

そしてそれを張遼さんと触覚娘がそれぞれの武器で止めていた。

 

 

 

……場違いなのは分かってるが、どこから取り出したんだよその武器…。

 

 

 

「…何やあんた。ウチ等とやろうって言うんか?」

 

「…詠、守る…。」

 

 

二人は静かに、しかし目には闘気を宿しながら、静かに対処している。

 

そして、眼鏡っ娘の両脇から剣と槍を突き出したのが、芽衣と奏であるのにようやく気付く俺。

 

 

 

「芽衣、奏、やめろ!! お客さんに失礼だぞ!!」

 

「しかし!! こいつは聖様の真名を許可なく呼んだのですよ!! 万死に値します!!」

 

「あぁ、許せる状況じゃないよな!!」

 

 

二人がそう言うと、眼鏡っ娘は状況を理解したようで、顔を真っ青にした後、俺に頭を下げてきた。

 

 

「ごっ…ごめんなさい!! 真名だなんて知らなくて!! この通り、謝るから!!」

 

「…徳種さん…。詠ちゃんを許してあげてくれませんか…? 真名を穢そう何て、そんなことまったく詠ちゃんは考えてませんから…。」

 

「いやっ…許すも何も…俺怒ってすらないから…。はぁ〜…。芽衣、奏!! とりあえず武器を置け!!」

 

「「でっ…でも……。」」

 

「良いから置け!!!!」

 

「「(ビクッ!!) ……はい…。」」

 

 

 

少しキツイ言い方になってしまったが、二人は言うことを聞いてくれた。

 

……後でキツイ言い方の件は謝っておこう……。

 

 

 

「ふぅ〜…。すいませんでした。俺の仲間が皆さんに迷惑を…。今日のお代は要りません…。これで許されるとは思ってませんが、俺の顔に免じて許してもらえないでしょうか。」

 

 

 

俺は深々とお辞儀をする。誠心誠意、相手に思いが伝わるように…。

 

 

 

「そんな…私達の方が悪かったんですから…頭を上げてください…。」

 

「いえ、仲間を止められなかった俺の責任です。すいませんでした。」

 

「よくないわよ!! ボクはあんたの真名を呼んだのよ!? それなら悪いのはボクでしょ!!  …罰なら甘んじて受けるわ…。でも、月は何も悪くないから、月を罰するのは止めて!!」

 

「詠ちゃん…。」

 

「…これについても説明しないとな…。  ……信じられないかもしれないけど…とりあえず聞いて欲しい…。」

 

「聖様…その話は…。」

 

「芽衣。こうなった以上本当のことを話さないとしょうがないさ。それにこの人たちは悪い人ではない。そう思うんだ…。」

 

「……分かりました…。」

 

 

 

俺はそこから、自分の素性を話し始めた。

 

自分がこの国の出身ではないこと、広陵の県令をしていたこと、そしてこの旅の目的も…。ただし、天の御使いというのだけは隠した。

 

 

「……と言うわけで、俺には真名の概念は無いわけだ…。だから、真名に当たるなら『聖』なんだろうけど、俺にはそこまで神聖な物でもないし、呼ばれたから穢されたということでもない…。まぁ、否定されれば怒りはするかもしれないけどね。」

 

「…徳ちゃん、それホンマの話なん?」

 

「嘘っぽく聞こえるかもしれないけど、これが事実なんだ…。」

 

 

 

俺がそう言うと、彼女達は無言のままずっと俯いていた。

 

まぁ、直ぐに信じろって言うのは無理な話だろうし、一勢力となろうとしてる人に…自分達と敵対するかもしれない人たちに町並みを見せるというのはちゃんちゃらおかしな話だ。

 

しかし、

 

 

「…私は…信じます…。徳種さんが言ったこと…。」

 

 

銀髪の少女は俺の話を信じたみたいだ…。

 

 

 

「月っ!!」

 

「だって詠ちゃん…。徳種さんの目は嘘を言っている目じゃないもん…。」

 

「はぁ〜〜〜…。もう、月は直ぐにそうやって信じ込んじゃうんだから〜…。」

 

「…恋もそう思う…。」

 

「恋まで〜!!! もう〜…。分かったわよ…信じるわよ…。でも、真名に当たるものを呼んじゃった事は事実。それは、ボクがちゃんと罰を受けないといけないわ!!」

 

「…そうですか…。では…。」

 

 

眼鏡っ娘は目をつぶって首を差し出す。死ぬ覚悟は出来ているということだ。

 

 

俺は苦笑して右手を彼女の頭の上に持って行き、そのまま頭を撫でながら、。

 

 

「その覚悟は素晴らしいけど、俺はそんなことしないよ…。そうだな〜…。じゃあ名前教えてよ!! 何て呼んだら良いのか俺も分からないし…。」

 

 

それだけ要求した。

 

 

 

当然、そんな要求が来るとは思ってなかったその娘は、

 

 

「そんなことで…良いの?」

 

 

と、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしながら聞き返した。

 

 

「本人が言ってんだから良いんじゃないかな?」

 

「…ボっ…ボクの名前は賈駆、字は文和…。 …って何時まで頭撫でてるのよ!!」

 

「おっと…ゴメンゴメン…賈駆ちゃん。俺のことは何て呼んでも良いよ。もちろん聖でも構わないさ。」

 

「ふんっ!!これでこの件はチャラだからね!!」

 

「詠ちゃん…徳種さんがせっかく許してくれたのにそんな態度じゃ駄目だよ〜…。」

 

「うっ…。」

 

「徳種さん…。私は姓は董卓、字は仲穎。この洛陽を治めてます。」

 

「ちょっと!!月!!」

 

「詠ちゃん…。徳種さんたちは秘密を教えてくれたんだよ…? だったらその誠意に答えないと失礼だよ…。」

 

「…そうか、君が…。実を言うと会いたかったんだ…。」

 

「ちょっと!!唯でさえ月は今大変なの!! あんたのことは分かったけど、変な事にこれ以上私達を巻き込まないで!!」

 

「詠ちゃん…。」

 

「…変なことか…。変って言えば変かもな…。実を言うと、俺達を雇って欲しいんだ。」

 

「…一体何を考えてるのあんた…。」

 

「だからさっき言っただろ!? 俺達の旅の目的は色んな街を見てそれを参考にすること。そのためにこの町にいなきゃいけないんだけど…このまま店をやってても良いんだが、正直割に合わない…。そこで俺達を用兵として雇って欲しい…。ただそれだけだよ。」

 

「…そんな余裕、ボク達にはないわ…。」

 

「さっきのことを水に流したくないのか?」

 

「うっ…。それは終わったことじゃない!!」

 

「まぁ、終わったことだよ…。口上は…。」

 

「………卑怯よ…。」

 

「ゴメンな…。やっぱり忘れてくれ…。今のは卑怯だった。雇ってもらうからには俺達の力を認めてもらわないとな。」

 

「うぅ…。何か調子が狂うわね…。」

 

「詠ちゃん…。徳種さんたちどうにかならないかな…?」

 

「う〜ん、確かにそろそろ黄巾賊の討伐が命じられそうだし…将が多いに超したことはないんだけど…。」

 

「賈駆っち!!ウチ戦ってみたい!! …さっきからこの娘の槍が気になってしょうがないんよ〜。」

 

「ちょっ!!霞!!  …まぁ、雇うにしても力は見なきゃいけないわね…。勝負は…明日で良い?」

 

「あぁ。因みに相手は誰がしてくれるんだ?」

 

「はいは〜い!!ウチがやる!!」

 

「じゃあ霞にお願いするわ。そっちは武官候補は誰?」

 

「奏と俺の二人かな…。後は文官として雇って欲しいな…。」

 

「分かったわ。それと…今日は美味しい御飯をありがとう。それだけは言っておくわ!!」

 

「毎度どうもです。 …そちらのお嬢さんもたくさん食べてもらってありがとうございます。」

 

「…恋…。」

 

「へっ!?」

 

「ちょ!!恋どの!!」

 

「…美味しい御飯を作ってくれた…。だから…そのお礼…。」

 

「…分かった。恋、今日はありがとう。美味しかった?」

 

「……。(コクン)」

 

「そりゃ良かった。また来てな!!」

 

「……。(コクン)」

 

「恋殿が真名を預けるなら、ねねも名前くらいは教えてやるのです!! ねねは名は陳宮、字は公台なのです。よろしくしてやるのですよ!!」

 

「ありがとう、陳宮。俺のことは呼びやすいように呼んでね。」

 

「…ふんっ。」

 

 

こうして、董卓軍御一行は帰っていった。

 

明日は勝負か…。雇ってもらうために全力で挑まないとな…。

 

 

 

「なぁ聖。さっきの女の子達って…。」

 

「あぁ、董卓軍の娘達だろう。多分恋は呂布だろうな…。凄まじい闘気を感じた…。」

 

「はい…。私も剣を防がれた瞬間に怖ろしいほどの殺気を感じました…。」

 

「あたいの槍を防いだあの張遼って奴もやるね…。相当な使い手だよ…。」

 

「なんだ、知らないのか? 彼女は神速の張遼だろ。」

 

「そんな二つ名があるのかい? こりゃあ厄介な奴と戦うことになりそうだね…。」

 

「まっ…何とかするしかないね♪」

 

「はぁ〜…。聖はお気楽で良いな…。」

 

「そりゃあ気楽に生きなきゃ大変だからね〜。」

 

「…羨ましい…です…。」

 

「さて、恋に思いっきり食べられたからな…。芽衣、奏、藍里。夕飯の仕込みのために買出しに行ってきてくれ〜!!」

 

「「「は〜い!!!!」」」

 

 

こうして急遽決まった勝負。

 

 

相手はあの神速の張遼。手を抜けるような相手じゃないだけに緊張する…。

 

 

気付くと手が微かに震えている…。

 

 

武者震いなのかそれとも怖いのか…。こりゃ、明日になって見なきゃ分からないな…。

 

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

遂に前話から登場したあの方々…。

しかし、書いていて思うんですが…どうも原作通り書くのは難しい…。

似せて書いていても、どこか自分色が出てしまうんですよね〜…。

なので、これから少し原作崩壊を起こすことがあるかもしれませんが…ご了承ください…。


次話ですが、日曜日にあげます。

それではお楽しみに……。
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コメント
詠はその後「…あんたのやりたいことって何よ? 食事の例に聞くだけ聞いてあげるわ。」って言うつもりでした。でも聖って呼んでしまったので本編のような展開に……。(kikkoman)
「………はっ!! …まったくあんたは……聖って言ったかしら? …あんた    この後何を言おうとしたのでしょうか(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
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