IS~音撃の織斑 三十八の巻:けじめの一騎打ち
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一夏達はクレーターだらけのグラウンドに着地し、辺りを見回した。確かに、血が飛び散った後や、破れたISスーツの切れ端、肉片等が散乱している。余程食い意地の張った魔化魍なのか、食い散らかし方が派手だ。思わず目を覆いたくなる様な光景が広がっていた。

 

「マズいな・・・・学園に侵入している。IS程度じゃ魔化魍所か姫や童子にすら負けるぞ。絶対防御なんてあっても無くても変わらない。」

 

石動鬼は斬劉と雷火を振り回して群がる白狐と紅狐の群れをまるでジャングルの蔦か雑草の様に叩き斬りながら前進する。一夏も音撃管と烈火剣で道を切り開いて行く。到着したのは、シールドバリアーが破られた第三アリーナだ。そこでは千冬が二人のIS乗りと戦っているが、圧倒的に状況は不利だと言うのは明白だ。

 

「ファントム・タスク。お前らの狙いは、((白式|コイツ))だろ?」

 

一夏は右手を突き出してガントレットをこれ見よがしに見せた。

 

「やっと会えたわね、織斑一夏君。私はスコールよ、よろしくね♪」

 

妖艶な雰囲気を振り撒く腰まである金髪の美女が口を開いた。その隣にいる、千冬にそっくりの女も口の端を吊り上げた。

 

「織斑、一夏・・・・私が、私たる為に・・・・お前には死んでもらう!」

 

サイレント・ゼフィルスの銃剣付きの大型ライフル、スターブレイカーが火を噴いた。飛んで来る実弾と四方八方に曲がりくねるレーザーを部分展開した雪羅と涅槃で防御し、瞬時に鬼哭で撃ち返す。だがそれはシールドビットによって阻まれる。

 

「一夏!大丈夫?!」

 

「援護、任せて・・・」

 

「ああ、悪い。頼むぞ。ビットか・・・それも六つ。厄介な・・・・その様子じゃフレキシブルも出来るんだろうしな。お前がエムか?俺の姉が自分そっくりの奴とやり合ったと聞いたが・・・」

 

「そう。私はエム。織斑・・・・マドカ。お前の」

 

「ふざけるなよ。俺には姉も妹もいない。俺は織斑の姓は捨てたんだ!俺をあいつの弟だと思うなよ。そもそも何故そっちにいる?」

 

「貴様には関係無い!!」

 

スターブレイカーの銃剣を振り回して来るのを草薙で相対し、斬り結ぶ。だが幾ら刀と銃剣ではリーチの差が違い過ぎるとしても、一夏はそれをハンデとも考えずに草薙を振るった。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

一夏は刀を左右に持ち替えて攻撃、エネルギー節約の為に加速やエネルギー系の攻撃の類いはほぼ使わずに回避、防御を繰り返す。そうしている内にビットの動きが僅かだが雑になり始めた。クリア・パッションの防御も受けながらビームガトリングの雨を掻い潜り、ビットの一つをクローで掴んだ。

 

「くっ・・・!!」

 

だがビットは一夏が握った物も加えて六つ。残り五つのビットとスターブレイカーを使って一斉射撃を行った。ギリギリまでそれを引きつけると、握り潰したビットの残骸をそれに投げつけ、爆発させる。その爆発の中に紛れ込み、二人はぶつかり合った。草薙、インターセプターに似たピンク色のショートブレード、そしてスターブレイカーが交差する。

 

「貴様には分かるまい!私がどれだけの苦痛を、屈辱を受けて来たかを!!ぬくぬくと温室で育って来た矮小な貴様に!!」

 

「ああ、分からねえよ!!俺はお前じゃないし、お前も俺じゃない!お前だけが苦痛を受けて来たと思うなよ!被害者面してんじゃねえ!!!全部ひっくるめて心の中にしまって・・・・悲観して立ち止まって、それで何になる?!」

 

再び距離を取られ、銃撃の餌食にしようとビットが迫る。

 

「 私の存在意義の為に、お前には死んでもらう!私が、私たる為に!!」

 

「存在する理由の為に俺が死ぬのか?!あ?!お前の存在する理由なんて自分で探しやがれ!お前は既にこの世界に存在している!認める奴がいねえなら、俺が認めてやる!お前はお前だ!!道具でも何でもない、マドカと言う、一人の人間だ!」

 

「黙れええええええええええええ!!!!」

 

残った五つのビットの動きが一瞬止まった。それを見逃さず、簪が山嵐でそれを全て撃ち落とした。楯無もクリア・パッションを発動させ、サイレント・ゼフィルスにダメージを与える。

 

「一夏、行って!!!」

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

 

イグニッションブーストを使って押し切り、零落白夜を発動させ、零距離で雪羅のカノンが腹に命中した。最後にもう一度カノンの零落白夜を草薙に纏わせ、それを振り被る事によって発生した残月破でシールドエネルギーを完全に削り切った。Sが解除され、一夏は気絶していたマドカを連れて行こうとしたが、突然左から飛んで来た大出力のビーム攻撃で吹き飛ばされる。大木に激突する事でようやく止まった。

 

「だらしないわね、エム。その程度の戯言に踊らされるなんて・」

 

スコールのISの肩に装備されていた砲口から煙が上がっている。

 

「う、ぐ・・・・(やばい・・・・今ので半分近く持ってかれちまった・・・・)」

 

一夏はISを解除して立ち上がった。

 

「お前らの・・・・目的は何なんだ?!こんな事をして何になる?!只世界が破壊されるのを楽しむのか?!変革を望むのか?!」

 

「さあ、何かしらね?貴方に教えた所で、分かる筈無いわ。」

 

「よう、スコール。」

 

変身を解いた状態で前に進み出た。両手には音叉剣が握られていた。

 

「貴方は・・・!」

 

「そう。征服されない奴。コードネーム:((i|アイ))。またの名を、インヴィクタス、((不死身|イモータル))。そして、イフリート。」

 

「この・・・・裏切り者があああああああああ!!!」

 

突如スコールが豹変し、市に襲いかかって来た。肩に担いでいたランチャーの残弾を放ち、更に両手にコールしたマシンガンを使って弾幕を張っているのだ。だが、市は涼しい顔で弾丸を切り落とし、飛んで来るミサイルを得意の居合いで真っ二つに縦断した。

 

「ようし、お前ら、よく見ていろ。ISが現存する最強兵器だと言う事が違うと証明してやる。最終的に、最強なのは究極の状況に置かれた、リミッターを外された生身の人間なんだよ。」

 

市は着ていたシャツを脱いだ。無駄な脂肪を一切省いた筋肉質の体が露わになる。体中には刺青がある。深呼吸をすると、両手の親指でこめかみ、首筋、両手首、そして最後に全ての指を胸筋に押し当てた。

 

「これが・・・・(鬼の)力を持つ人間の、本当の強さだ!」

 

いつの間にか一夏の腰から拝借した忍者刀二本を背中に結びつけ、刀と直刀を左腰に差す。そして・・・・市は走り出した。一歩踏み出しただけで地面が数センチ抉れ、銃から放たれる弾丸の様に驚異的なスピードでスコールに近付いた。

 

「戦鬼流:((修羅斬刃|しゅらざんじん))!!」

 

両手の音叉剣を使って文字通り修羅の如く怒濤の斬撃を浴びせ、スコールに攻撃を仕掛けた。鬼石と術によって強化された刀はIS装甲に傷を入れ、傷が更に深くなり、遂には腕の装甲が完全に叩き斬られた。絶対防御が発動し、シールドエネルギーをかなり削る。

 

「そんな・・・・!!」

 

「どうした?お前の((土砂降り|こうげき))は、この程度で止む筈無いだろう?」

 

持っている武器を納め、背中の忍者刀を抜き放ち、柄を連結させて薙刀の様な物に変わった。

 

「やはり間違いだったな。((そこ|・・))を出る前にお前を殺しておくべきだったよ。お前は優秀だった。だが、優秀過ぎる故の驕りが、お前を落とした。」

 

刀身を指でなぞり、ブツブツと呪詛を唱える。

 

「戦鬼流、奥義其の一:?の衣・((銀錦|ぎんぎん))。」

 

すると、刀身から燃え盛る炎が現れ、その零れ出る炎が市の体を包み、刀身すら炎に包まれた。その炎は・・・

 

「灰・・・いや、銀色の炎・・・・だと?!」

 

そう、その炎はまるで雪山の様に美しくも威圧的な銀色をしていた。

 

「一夏・・・・・あれ、何・・・?!」

 

「あ、ああ・・・・そんな・・・・これで・・・・俺が知ってるだけでも二度目だ・・・・師匠がこれを使ったのは・・・・あれは・・・術者の体内にある『気』を全て一気に放出して炎に変える術だ。そして名前の通り、その衣は炎で出来ている。何であろうと、確実に灰になるまで燃え尽くす。絶対に触れられない。でも、体内の気を全て放出し続けていられる時間は限られる。術を発動し続けていれば・・・・衰弱するし、最悪の場合、体は壊死する。師匠があれを保っていられるのは精々二時間弱・・・・十分過ぎる時間だ・・・・師匠は本気で、殺すつもりだ・・・」

 

一夏の絞り出した声は震えていた。それも恐怖一色に染まった声だ。だが、我に返り、指示を出した。

 

「楯無、他の専用機持ちと教師達に連絡を取ってくれ。動ける奴らは全員一般生徒と従業員の避難誘導をしなきゃならない。何より、重体の奴らがいるんだ、こんな戦場の真っ只中に残すわけにはいかない。簪はそこら辺に残された怪我人がいないかハイパーセンサーで探索を。」

 

「オッケー。」

 

「分かった・・・」

 

「そいつは私が預かる。」

 

千冬はマドカを背負い、その場から避難した。

 

「さてと。」

 

「この人殺し・・・よくも・・・・よくも私の弟をーーーーーー!!!!」

 

両腕の装甲を破壊されるのも厭わず、再び武装をコールして乱射し始めた。

 

「((炎陣壁|えんじんへき))。」

 

薙刀を回転させ、円状の炎の壁を作り出して攻撃を全て防御した。

 

「あいつが死んだのは確かに俺の所為さ。対応が甘かった。だが、奴は勝手に人の物を持ち出して、失敗して、勝手に死んだ。元はと言えば、あいつがお前と一緒にあれをちょろまかしさえしなければ、死ぬ事は無かったんだ。俺の未熟さの所為さ、けじめは俺がつける。お前は、俺が必ずこの手で息の根を止める。」

説明
さあ、いよいよファントム・タスクとの戦いです。原作よりちょっと弱くしてしまったかどうかが心配ですが・・・そして五十嵐市の過去が・・・!!
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響鬼 IS 

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