いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第六十四話 誇り高い不屈の少女と寂しがり屋の獅子
「シュート!」
「うああっ!」
アースラが待機空している空域で緋色の収束砲が桜色の光を放つ少女に襲い掛かる。
「何をそんなに腑抜けているんですか!それでも私のオリジナルですか!」
星光と呼ばれるなのはに似た少女。
彼女はアースラを見つけるとそのまま砲撃という事はせずにその艦内にいるだろう。融合騎のリインフォース。正確には『悲しみの乙女』を差し出すように言ったがリンディがそれを認めるはずもなく、話し合いをしようとしたら構わず砲撃をぶっ放した。
砲撃した後も何とも思わないと無表情を貫いていた彼女の表情には怒りに染まっていた。
「…私は」
「っ。そんな目を見たくて私は貴方を倒しに来たわけでは無いのです!オリジナル!完全に全快の貴方を倒して私は貴方を超えられるというのに!」
一度戻ってきたフェイトやクロノは再び別の次元世界に現れた闇の書の欠片を担当しに行った。そして、はやてや守護騎士。アルフにユーノも今は出払っている状態で弱っているリインフォースを守る戦力はなのはだけだった。
なのはは自分が出ると言ったがその戦意はまるで自分の魔力を振るうのが恐ろしいのかと思わせるもの。いや、魔法の力自体を毛嫌いしているようにも見えた。
それでも、なのは以上に強い戦力はアースラの中にはリインフォースしかいない。
だが、彼女の身体は未だに要安静だ。
その為、なのはが戦線に出るしかなかった。
[カートリッジロード]
純白のレイジングハートと形春治しているものの、色彩が違う紫色のデバイスから彼女の怒りを表すかのように薬莢が吐き出される。
「貴女はそんなにも弱かったのですか!」
ズドオオオオオオオオオオオオオンッッ!
再びそのデバイスから生じた収束砲がなのはを呑みこむ。
収束砲の直撃によって生じた爆発からはじき出されるようになのはが飛び出してくる。
[マスター!]
「くぅっ。レイジングハート、カートリッジロー…」
なのははレイジングハートにカートリッジを使おうとしたが、同時に脳裏にクロウの事が思い浮かんだ。
彼の醜態を。後から知らされた事実。
自分の唯一と思っていた魔法の力で高志を傷つけようとしたという事を思いだすと体が魔力を使うということ拒絶する。
「…うぅ」
「…まだ。まだ((そんなこと|・・・・・))で悩んでいるんですか貴方は!」
なのはの躊躇い。ひいては彼女が全力を出せない状態を見越してか星光はなのはに高速で突貫していく。
その勢いに反応できなかったなのははアースラの甲板に押し付けられるように叩き付けられる。
「貴女はあの優しい閃光を止めるときに何を思って魔法を使った!あの闇の書を救ういう想いの力は!」
「…私は、魔法の力が怖い。人を狂わせるような力を使うのが…」
ゴッ。
なのはの言葉を聞いて星光は片手でデバイスを扱いながらなのはを押さえつけるとあいている手でなのはの顔を殴った。
「では、何で私の前に現れた!守ると決意したから出てきたのではないのですか!」
「私しか…。私しかいなかったから…」
「融合騎も戦えます!貴女が出しゃばらずとも他の仲間が来るまで持ちこたえることは出来ます!」
「それは…」
「貴女は迷っているだけです。魔法の力が、自分の力が誰かを傷つけてしまうかもしれない。と、誰も言ってあげないのなら私が言ってやります。貴女の魔法は傷つける力です!」
星光の言葉がなのはの心を深くえぐる。
「私は貴方を元にして作られた存在です!貴女の砲撃魔法を私は元にしています!この飛行魔法も!今こうして貴方を抑え込んでいる力も!」
「…うっ」
「私は、いえ、貴女はほぼ砲撃魔法に特化している。これだけでも十分に人を傷つけるという事は明らかです!」
星光の姿に自分の姿が重なっているかのように見えたなのは。
自分でも何度も自問自答した事を、誰にも言われなかった事を今こうして言われることになのは何とか言い返そうとする。
「…それでも。それでも私は」
「なんですか!」
星光はなのはの小さな声をかき消すかのように大声を上げて声を出す。
だが、
なのはは自分の思いを叫んだ。
「私は、私は誰かを助けたいの!もう、一人で待っているだけじゃ嫌!一人になるのは嫌なの!守りたいんだ!この魔法の力で、誰かの笑顔を!」
フェイトと友達になりたいと思ったのも、守護騎士達やはやてを助けたいと思ったのもその人の笑顔が見たいから。
その言葉を叫んだ自分の気持ちになのは自身も気が付いた。
自分はこの魔法の力で誰かの笑顔を守りたいことに。
「それは人を傷つける力でもですか?」
「例えそうだとしても私は、その力で救えることを知っているから。その力を振るうとしてもそれは…」
なのはは一度言葉を切ってから星光の瞳を見ながら言い放つ。
「それが誰かを助けることが出来る力だと信じて。…それを、魔法の力を使う!」
「…そうですか」
なのははその時に見た星光の表情に笑顔のような物を見た。
「…あなたは」
「そう言えば名乗っていませんでしたね。私は王や雷光からは星光と言われています」
そう言いながらなのはから離れる星光。
「あ、あの…」
「ようやく。…ようやくその強い瞳に逢えました。…ではやり合いますか」
星光の意図を何となく汲んだなのはは星光に声をかける。
「どうしてもやりあわなきゃ駄目かな」
「ええ、私達は『砕けえぬ闇』を手にする。この世界を破壊する。その確固たる目的の為に存在しています。が、私にはもう一つ目的があります」
「…それは?」
「貴女に勝つことです。オリジナル。いえ、高町なのは。私の元になった貴方を倒すことで私はコピーではない私に成れます。これは『砕けえぬ闇』を手に入れる過程にもなっていますが…」
「そんな!星光は…」
なのはは星光を一人の人物として捉えていた。それを伝えようとしたが星光は少しだけ意地悪な顔をするとなのはの言葉を遮る。
「と、言うのは建前です。もっと正直に言うと私は単にあなたと戦いたかった。貴方の強く誇り高い不屈の精神にどれだけ私の力が通用するか確かめたかったのです」
「…星光」
「受け止めてくれますか高町なのは?私の想いを?」
アースラからどんどん離れていく星光。
それはこれから起こりうる戦闘に巻き込まないため。
そして、それを行うことでなのはが全力を出せる為でもある。
「うん!受け止める!そして、貴女にも受け止めてもらう!」
アースラから離れた星光を追ってなのはは星光にレイジングハートを向ける。
「((なのは|私))の」
「((星光|私))の」
「「全力全開!真っ向勝負!」」
迷いを振り切ったなのはとそれに応じるかのように星光の魔力光がお互いの体を包み込み、強く輝いた。
「…負けましたか。ですが、とっても気持ちのいい勝負でした」
あれから三十分ほど経った頃。
お互いに最後の一手として放った収束砲のせめぎ合いを桜色の光が制した。
「…さすが本家本元のブレイカーは強いですね」
「…星光!体が!」
空中で力尽きた星光を受け止めたなのはは星光の体を更に強く抱きしめる。
「…構いませんよ。なのは。それに私は消えるわけではありません」
「…え?」
星光は話す。
自分達がもしも負けた時は海鳴に沈めている今暴れている闇の書の欠片の中で最も大きな欠片に集まるのだと。
闇の書の欠片で出来た分身はその集めた魔力を使って以前現れた暴走体を再び顕現させようというのだ。
そして、暴れながら『砕けえぬ闇』を手に入れる算段だ。
「…どうしてそれを私に教えてくれるの?」
彼女達にとってそれを知られるのは最もやってはいけない事なのに。と、なのはが尋ねると星光は少し笑いながら答えた。
「…最初に貴女を攻撃しまくったお詫びですよ」
そう言って星光の体は光のページになって消えていく間際にその目を大きく開いた。
「…ぬかりました!急いで『傷だらけの獅子』の所に向かいなさいなのは!欠片が彼の所に集められています!」
「えっ。えっ?!」
「『知りたがりの山羊』が動きました!急ぎなさい!」
ギインッ。
その頃、リインフォースは星光がなのはの腕の中で消えていくのを確認したと同時に自分の中にあるスフィアが何かに反応したのを感じ取ると同時に、カオス・レオーを倒した後も湧いて出てくるレオーを相手にしている高志が映し出された画面を見た。
すると、そこには白と黒の入り混じった不気味な太陽が現れた。そして、そこから現れたのは大量の海水に濡れた三メートルは超える巨大なサイだった。
ただし、その際の表面は醜い肉塊がその巨大な四肢あちこちから飛び出していた。
飛び出ていたのは肉塊だけではない。
脇や肩に無理矢理つけたかのような大砲のようなものが見える。
そして、体の所々には七色に光る宝石が付属していた。
そして、もう一つの影がその化物の後ろから現れる。
『やあ、タカシ。君は順調に二つのスフィアを育てているようだね』
黒騎士甲冑。シュロウガを身に纏ったアサキム。
彼は高志を見ると嬉しそうに手を叩いて見せた。
『さて、今の君は自分の『選択』に心を『痛めて』いるようだが、体の方にはまだ余裕があるようだね?』
『おかげさまでね。お前に命を狙われているという事を知ったら嫌でも強くならなきゃいけないんでね。毎日が特訓漬けだよ』
いけない!彼は疲弊しきっている。
カオス・レオーを粉砕した後、無限を思わせるレオーの群れを叩き潰してきた彼は魔力も体力も底を尽きかけている。
特に精神力の方はかなり消耗している。
彼がカオス・レオーを倒した後、明らかに高志の戦意は下がっていた。
今の彼はマグナモードを扱えるかどうかも危うい状態だ。
「リンディ!」
「分かっているわ!クロノ!急いで彼の救援に向かって!」
プレシアの声に答えるかのようにリンディ艦長も頷いて執務官殿に新たな指示を出す。
アサキム一人だけでも厄介なのにあの怪物も相手にするとなると高志は確実にやられる。
『そうかい。今の君にぴったりな相手を用意したよ。これなら君の相手に的確だと思うんだ』
『上から目線か…。実際上だから嫌になるぜ…』
怪物はガンレオンに視線を定めると肩の方まで裂けた口を開閉させながら荒い息を吐き出しながら足踏みをしている。
まるで主の命令を待つかのように…。
『君ならすぐに僕のいるところまで至れるさ…。なんといっても、君は僕と同じ((存在|・・))だからね』
『…勘弁してくれ』
『さて、邪魔者が来ないように僕は今からここにやってくる君の仲間を殺すよ。彼等を助けたければ、この闇の書の欠片を倒すんだ。((この事件|・・・・))はそれで終えるよ』
『やめろ!お前が欲しいのはスフィアだろ!他の奴は関係ない!』
『誇り高く、寂しがり屋の獅子。そんな君を育てるにはもっとも効率がいいと思うからね』
アサキムはそう言うと怪物の体についていた四基の大砲も高志のいる方向へと向けられる。
『アサキム!お前!』
『君がやる気を出せるように一つ情報を与えておくよ。今回の事件には『偽りの黒羊』が関係している。まあ、今はその怪物を相手にもがき続けるといいよ』
『偽りの黒羊』だと!?
そんな!闇の書の事件に関係しているのなら私が関知していないはずが…。
リインフォースが驚愕しているのをよそにアサキムはその場から転移してく。
「エイミィ!」
「はいっ!十秒で探して見せます!…見つけました。管理外世界第241世界!フェイトちゃんがいるところです!」
「そんな…」
プレシアの表情に焦りと絶望が宿る。
その時。リインフォースが『悲しみの乙女』の象徴たるガナリーカーバーを顕現させた。
「私が行きます!同じスフィアリアクターならやりようはあります!」
正直に言うと高志のことも気になる。が、彼がすぐにやられるはずがないとそう思ったリインフォースは主の命令を破り、アサキムを追うことにした。
「リインフォースさん!?駄目ですよ、貴女は…」
申し訳ありません。主はやて。しかし、あなたの御友人をここで殺されるわけにはいかないのです!
エイミィが止める間もなく、リインフォースはフェイトがいる。そして、アサキムが向かった世界へと転移した。
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第六十四話 誇り高い不屈の少女と寂しがり屋の獅子 | ||
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コメント | ||
確かにそんな動画も前に出されていましたからね〜…てかもちもち甘噛みするなら、首とか耳とかそういう所でしょ!後、最終的に唇とかwww(神薙) 皆さんのコメントありがとうございます。ところで神薙さんのコメント。BUNPと『ダンデライオン』の部分を見てとあるドーナツ屋のお菓子な獅子を想像してしまいました。アリシアが高志にもちもちと頭を甘噛みしている場面が一瞬で思いついた作者は悪でしょうか?(たかB) 早まるなリインフォース!死に急いではいかん!? 君の行動が、タカシのスフィアの成長を早まる事になるぞ!? 多分!!(孝(たか)) 寂しがりの獅子という題名を見て、場違いにもBUNPの『ダンデライオン』を思い出した俺は悪くない筈だ!(神薙) |
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