出たところはファンタジー2 |
『僭主の刻印』
使い魔の能力を他の生き物に託して仮の使い魔とするルーン。
始祖ブリミルが用いたと伝えられるが真実は不明。
恐らく失われた虚無の魔法であると考えられる。
当然ながら現在では言伝えのみで使う者はいない。
(ガリア王立魔法研究所蔵書『虚無の考察』より)
「うにゃぁぁぁ〜〜〜んぅ」 スリスリスリ。ぷるぷるぷる。
金髪の女の子が頬を擦りつけると、それに応じるように
弾力性の高いゼライスマン教授のラウンドスライムバディが震える。
「何この子?」 困惑する私の問いかけに教授も答えられない。
私達の周りにはスキルニルはじめ様々な魔法具が散乱している。
先程までシェフィールドと名乗る女に操られ私達を襲っていた物だ。
しかしそれらは唐突に動きを止め、代りに茂みから女の子が現れた。
教授に頬ずりしている子だ。 ぷよよょん。ドサリ。「うにゃ」
あ、転けた。弾力性の高い教授の体に勢いよく抱き付くから。
でも良く分かるわ。教授の体って柔らかくて気持ちいいし。
でも、あんな風に瞳が潤んで、蕩けた表情なのは何かおかしい。
あれは、まるで泥酔した様じゃない。 ぺろぺろぺろ。
うわぁ、今度は教授を舐め始めたわ。
「ちょっとアンタ離れなさい」
襟首を摘んで教授から引き離すと、こちらを向かせる。
「にゅぅ。にゃにすんにょようぅ」
呂律の回らない口調で抗議する女の子。
その顔は耳まで真っ赤で額には使い魔のルーンが刻まれている。
「何するのって、それはコッチの科白よ。アンタ誰よ?
おデコにルーンなんか付け…て……?」 使い魔のルーン?
「しゅらいむしゃん良いにおいぃ……」
小さな体に似合わない力で私の手を振り解くとまた教授に擦寄る。
「アンタまさかガリアの虚無の使い魔?」驚く私に、
「みょずにとにるんだよぅおじょうちゃん」女の子が応じる。
って、誰がお嬢ちゃんだコラ、このクソガキ。
「〜〜〜爆発(エクスプロージョン)」
魔法で吹き飛ばしてやると、さっき教授が潜んでいた繁みに突っ込む。
大人げないと言うなかれ。
何かと暗躍するガリア王の使い魔と申告したのだ。
気絶する程度に加減もした。文句を言われる筋合いは……
「痛いなぁ、本当に何すんのよう」 何事もない様に起き上がる。
「……頑丈なのね。目は覚めたかしら?」
「お蔭様で。でもこれ位じゃ私を抑える事なんてできにゃい……。あるぇ?」
呂律がおかしい。また酔っ払った様だ。何なのホントにもう。
「にゃんか、また良いにおいぃ……」今度は繁みの蔦に頬ずりする。
その蔦は鋸葉で葉先が白い。そして葉の裏に白い花が咲いている。
「アレは確か木天蓼? でも何で酔っ払うの?」
そういえば、あの茂みにいた教授にも匂いが着いているかもしれない。
取り敢ず私は応援に来てくれた銃士の手を借りて、
木天蓼に夢中になっているミョズニトニルンを縛り上げた。
ガリア、グラントロワの一室。
「ううむ。僭主の刻印にこの様な落とし穴があるとは……」
膝の上の使い魔である丸猫を撫でながら呟くガリア王ジョゼフ。
猫の額にはミョズニトニルンのルーンがある。
「吸血鬼が昼間動けるようになるのはよかったのだが……
まさか、木天蓼(マタタビ)に弱いところまで性質を受け継ぐとはな」
「ヒアー」 ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らす球体生物。
使い勝手が悪いからと代替に吸血鬼のエルザを掠ってきたのも無駄になった。
「次は翼人にするか。いやエルフも良いかな。ビダーシャルはどうしている?」
「ヒアー」
「なに? 今朝方に急用ができたと言って出立した? ふん、鋭い奴だな……」
ジョゼフは召喚し直すなど思いもよらない様だった。
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