夜天の主とともに  28.それぞれの思い
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夜天の主とともに  28.それぞれの思い

 

 

 

はやてside

 

「えっ?けん君と出会った時のこと?」

 

いま私はすずかちゃんの家におる。暇だったら家に来ないというお誘いを受けて行くことにした。そんでゲームをしたり本について一緒に話したりしていた。にゃんこたちと戯れてたら急にすずかちゃんそんなことを聞いてきた。

 

「うん。健一君とすごく仲が良さそうだったからどんな感じだったのかなって思って。」

 

「う〜ん、別にええけどたいした話やないで?」

 

「全然いいよ。」

 

なんやえらいすずかちゃん顔が輝いとるなぁ。そういう話が好きなんやろか?そういえば読む本も恋愛ものが多かったような。

 

「えっとな、初めてけん君と会ったのはいつも行ってる図書館でなんや。」

 

「図書館で出会う……なんだかロマンチックだね。」

 

「それでたまたま来てたけん君とぶつかったのが最初やな。」

 

「それでそれで?」

 

身をずいっと乗り出して興味津々に聞いてくるすずかちゃんに思わず苦笑い。

 

「けん君が持ってた本がこれが男の子にしては珍しく料理本でな。それがばれたのが恥ずかったんかかすぐに逃げたんや。」

 

「なんていうか‥‥シャイだね。」

 

「シャイやな。」

 

けん君には悪いけど思わず笑ってしまった。よぉ考えたら結構可愛かったかもしれへん。一気に顔赤くさせとったからなぁ。今度会ったら久しぶりにこのネタでからかったろぉかな?

 

「そんで追いかけたらなんか苦しそうに蹲っとたからちょい助けたんや。んで、色々あって次の日も図書館であって、というか待ち構えッとたんやけどそこでいろいろ話して友達になってそれからやな、今みたいに仲がようなったんわ。」

 

今思い出してもけん君と出会ってよかったと思う。そんな風に考えてたらすずかちゃんがこっちを見て楽しそうに微笑んでる。

 

「どしたんや?」

 

「ううん、はやてちゃんってホントに健一君のことが好きなんだね♪」

 

「へっ?」

 

すずかちゃんの言葉を聞いて一瞬フリーズした。

 

「‥‥‥‥‥ええええええええええ!?」

 

そしてその言葉の意味を理解した途端一気に私の顔が赤くなるのが感じた。頭の中がショートしそうな勢いで熱くなっとる気がする。

 

「なななななにを言うとるん、すずかちゃん!!」

 

「だってはやてちゃん健一君のこと話してる時今もそうだったけどすごく楽しそうというか嬉しそうな顔してるんだもん。」

 

必死に否定してもむしろ嬉しそうな顔しとる。何とか誤解とかんと。

 

「ちゃ、ちゃうですずかちゃん!それはちゃうて!」

 

「じゃあはやてちゃんにとって健一君ってどんな人?」

 

火照った顔を冷やしてるとそんなことを聞いてきた。私にとってのけん君か‥‥。

 

「えっとそやな〜。まず料理上手いからええライバルやろ、そんでおもろいやろ。あとはそやなぁ、なんや知らんけどけん君と一緒におると楽しいし、あったかい気持ちになれるんや。」

 

(それって健一君のこと好きってことなんだと思うんだけどなぁ。でも自然にくっついていく二人……そういうのもいいかも。)

 

なんだかうっとりしているすずかちゃん。誤解解けたんやろか?まぁええけどね、仲良しなのには変わりないし。

 

「でもな……けん君最近おかしいんよ。」

 

最近のけん君を思い出しつい言葉にも暗さが出る。

 

「ほとんどけん君と会うことがなくなったんよ。けん君にもやることはあるやろから別にそれはいいんよ。そんで会った時なんかはいつものように話したりするんやけどなんか表情が疲れた感じがするんよ。それになんとなくなんやけどな…隠し事しとる気がするんや。」

 

「う〜ん、健一君にも内緒にしたい事が一つぐらいあるのかもしれないよ?」

 

なかなか大人びた考えを返してくるすずかちゃん。まぁ私も人のことは言えないが。

 

「それは私もわかっとるつもりや。内緒にしとることは別にこれが初めてやないし。でも、今回のは今までの内緒とは違う気がするんよ。なんて言うたらいいかわからんけど……。」

 

あのいつものように楽しそうな表情の裏に見え隠れする何か危うい感じをけん君から感じるたびにどうしたのかと心配になってしまう。

 

「‥‥これは少し前に私の友達のなのはちゃんが言ってたことの受け売りになるんだけど、『相手が何か思いつめてたり悲しい表情をしてたら精一杯向き合ってお話しするのが一番なの。当たり前だけどそれだけに大切なことなんだよ。』って。」

 

「精一杯向き合って話をする‥か。でも私にはいきなりそんなことできそうもあらへんわ。」

 

今までもけん君とは向き合ってきたつもりやけど今回ばかりはわからない。無理に聞き出すのは嫌やし、かといって放っておくわけにもいかんし。

 

「ごめんね、あまり力になれないで。」

 

「ううんそんなことないよ。ありがとう、すずかちゃん。」

 

よし、帰ったらちょっとザフィーラに様子見に行ってもらおう。けっこうけん君と仲ええみたいやし。

 

はやてend

 

 

 

 

はやてに頼まれたザフィーラはいつもの狼の姿ではなく人型を取っていた。

 

「着いたか。しかし、やはりこの服は慣れんな。」

 

健一の家の前で立つザフィーラは自分の姿を見ながらため息する。転移魔法を使えば管理局に感知される可能性があった為徒歩で行くことにしたのだが狼形態で行くとどうしても人目につく。

よって人の姿で行くことにしたのが戦闘時での騎士服で行くのも少々目立つ。それで健一が買っておいた服を着たのだが慣れないらしい。もちろん耳と尻尾は消している。

 

「まぁそうも言ってられんか。それにしてもここに来るのは久しいな。」

 

呟きながらインターホンを押す。しかし、誰も出てくる気配は無い。家から健一の魔力反応があることから家にいるのは間違いないのだが。

 

何かがおかしいと思ったザフィーラはドアノブに手を掛けるとガチャと音を立ててドアが開いた。ここで警戒度はさらに上がった。健一は几帳面な所があるため鍵をかけ忘れるというのはまず無いからだ。

 

ザフィーラは音を立てないように静かに家の中へ入った。靴を見る限り外出はしていない。ということは家にいるのは間違いない。

 

私服から騎士服へ切り替えリビングに入った。電気はついておらず薄暗くなっていた。辺りを警戒していると奥のほうから、詳しく言えば洗面台があるほうから声のような音が聞こえた。

 

すぐさまザフィーラは音も無くそこへ向かった。そしてそこで見たのは、

 

「健一!?」

 

洗面台に向かって血を吐いている健一の姿があった。健一はよほどきついのかザフィーラに気づいていないようだった。

 

「健一!一体どうした!?」

 

「げほっ、……ザフィーラか?」

 

ザフィーラの声にやっと気づいた健一が顔を向けると嫌な脂汗を流しながら苦しそうな表情をする健一の顔があった。

 

「どうして…ここに?」

 

「今はそのようなことをいっている場合ではないだろう!今すぐシャマルを呼びに。」

 

治癒が得意なシャマルならと駆け出そうとするとそれを口を拭いながら健一が止めた。

 

「無理だ。これはシャマルでも治せない。俺自身のことだからよくわかるんだ。そもそもこれが初めてじゃないんだ。」

 

「どういうことだ?」

 

「以前からもこういうことがあったてことさ。」

 

「……魔力行使のせいか。」

 

「たぶんそれもある。決定的だったのは俺自身を媒介にして闇の書の魔法を発動させてからだったかな。」

 

すでに落ち着いた様子の健一は他人事のように淡々と説明する。

 

「健一、やはりお前は蒐集活動から外れるべきだ。魔力がそれを蝕むというのならば尚更。」

 

「そういうと思ったよ。だけどそれは断る。」

 

「こちらもそれは予想していた。私一人にお前を止められないのならばこのことをシグナムたちにも話す。」

 

するとそれまで表情を変えなかった健一が初めてあせったような顔をした。

 

「頼む、それだけはやめてくれ!俺には……俺にはもう時間は無いんだ。」

 

「………なんだと?」

 

ザフィーラは自分の耳を疑った。もし自分が考えている通りの意味ならば健一の命は……。

 

「言ったろ。自分の体のことは自分がよくわかってるって。たぶん、最初から魔法を使ってなくってもきっと俺は長生きは出来なかったと思う。そういう診断だったから。」

 

9月に健一が発作で倒れ病院へ行った時のことだった。診断が終わり両親から聞かされた話の内容は健一の病気がかなり深刻でただの咳ではなく原因不明のもので、このままではいずれ死んでしまうといった衝撃的なものだったのだ。

 

今両親が家にいないのも海外の至るところに出向いて健一の治療方法を探しているからだ。

 

それを聞いたザフィーラの胸のうちには罪悪感が芽生えていた。自分たちが魔法を教えさえしなければ、自分たちと出会わなければこんなことにならなかったのではないかと。

 

「先に言っておくけど魔法を教えなければとか出会わなければとか思ってるならそれは違うからね。俺はザフィーラたちに出会えて本当に良かったって思ってるし、これからもそうだ。これはただ死ぬのが少し早くなっただけ。」

 

「だが…。」

 

「……きっと完成まではもつ。いや、もたせてみせる。俺が死ぬのははやての命が救われてからだ。だから頼む、何も言わずこれまで通りにさせてくれ!!」

 

真剣な眼差しで見つめる健一をザフィーラは見た。そして少しの沈黙が流れた後口を開いた。

 

「わかった。だが、これからは私が一緒に行動する。そしてこれ以上は本当に無理だと私が判断したら何が何でも止めさせてもらう。」

 

「……ありがとう、ザフィーラ。」

 

 

闇の書の完成まで後わずか。

説明
A's編っす
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コメント
ちょっと待って!、はやてと健一の症状に。健一が使っている闇の書についていたデバイス。・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・・(アサシン)
けんいちいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!彼こそまさに漢だ!!・・・・けどこのまま死ぬわけないでしょ?(鎖紅十字)
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