ViVidに転生した。うん、そのはず………。 その7
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「じゃあ試合……開始!」

 

 

 

 なのはさんの声と同時に、

 

 

「ウイングロードッ!」

 

 

 スバルさんは光の道をこちらまで伸ばし、ローラーブーツ型のデバイス『マッハキャリバー』で一気にこちらへと突っ込んできた。

 

 取り敢えず俺は飛行魔法でスバルさんの元へある程度の早さで飛ぶ。

 

「いっくよー!」

 

 はいどうぞいらっしゃい。でも残念ながら……

 

 

 

「こっちが、先です」

 

 

『Sonic Move』

 

 

 

 一気に零距離まで詰める。相対速度を見誤ったスバルさんが戸惑っている間に高速で拳打の嵐を浴びせる。

 

 スバルさんも迎撃をしてくるが、俺は相手の力を上手く利用してさらに打撃を加える。七発ほど打撃を入れたところで、

 

「っやぁ!」

 

 しびれを切らしたのか、スバルさんは思い切りパンチを繰り出してくる。

 

 ぎりぎりで躱し、その手首をどうにか掴む。そして襟元を掴み……

 

(一気に投げ飛ばす!)

 

 建物に直撃させればダメージは大きいはず……!

 

「っつぁああああああ!」

 

 装備もあるし体格差もあるのでかなりきついが背負い投げを………

 

 

 

『Wing Road』

 

 

 

 思い切りしようとした時、デバイスの音声が響く。

 

 ギュルルルルルル!

 

 その瞬間、投げられるルートを逆流するように、空の道を足が駆け抜け、体勢が元の状態に戻ろうとする。

 

(このままじゃまずい……!)

 

 とっさに掴んでいた手を離し、即座に後ろに下がりつつ防御術式を展開するが……

 

 

「うぉおおおおおおお!」

 

 

 

 スバルさんの膝蹴りに一瞬で砕かれた。

 

 そのまま打撃を、防御のためにクロスした腕に受け、吹っ飛ばされる。

 

 

「ぐっ………!」

 

 

 防御術式を展開し、衝撃を緩和するために後ろに跳び下がったのに、

 ビリビリとした、衝撃………!

 

「きっつ……!」

 

 幸い、建物の方には飛ばされなかったので、空中で体勢を立て直す。

 

 

「やるね、レーヴェ!」

 

「まだまだですよ……」

 

 

 これで第一ラウンド終了ってとこか。

 元気ばりばりのスバルさんに苦笑しつつ、念話でロイに告げる。

 

(レアスキルはともかく、さっき言ってたアレ、試してみないか?)

 

(アレ……アレですか)

 

(まあ調整すんでないとはいえ、一発くらいならいけるだろ? 牽制に使う)

 

(……分かりました。確かに我々としては短期決戦を狙った方がいいですし、ここでぶっつけ本番で狙うのもありでしょう)

 

 そう。俺達には短期決戦を狙った方がいい理由がある。

 

 持久力スタミナだ。今は変身してスバルさんの身長よりも高いとはいえ元はガキ。訓練していると言っても俺は学生。一日中修練ばかりのエリオやキャロよりも体力は足りていないはずだ。そして相手はスバルさん。年齢的に考えて体力の量には絶対的な差があると見ていい。

 

「じゃあ、続きっ!」

 

 また一気に駆け抜けてくるスバルさん。

 

 今度は俺は動かない。ある程度引き付けてから、人差し指をスバルさんへと向け、

 

「……撃ち抜け」

 

『Photon Bullet High-speed』

 

 指先から一発の緋色の弾丸……通常の魔力弾のような球状ではなく質量兵器、実弾のような形状をした弾丸が、回転して螺旋を描きながらスバルさんのもとへ一直線に向かう。

 

「うわ、早!」

 

『Protection』

 

 即座に防御障壁を張るがそれだけの隙があれば十分。

 

『Sonic Move』

 

 また一気に懐に飛び込み、攻撃を……

 

「させないっ!」

 

 懐に飛び込む前にと考えたのだろう、右腕のストレートがこちらの顔面に叩き込もうとされ……

 

「……え?」

 

 スバルさんが惚けたような言葉を発する。

 

 当然だろう。俺は格闘技で相手の攻撃を避ける時に普通やるとまずい真似………。

 すなわち、思い切りのけぞり、上体を泳がせるという真似をしでかしていたのだから。

 

(……けど!)

 

 ここまで((全て|・・))がフェイント。そしてここから先を作るための布石。

 

 第一ラウンドと同じように隙を作らせて懐に飛び込むという真似をしようとしたことも、それを上体を泳がせて躱したことも!

 そしてその前、第一ラウンドでああいう攻撃を仕掛け、懐に飛び込ませてはならないと思わせたのも!

 

 投げて相手を地面なり壁なりに叩き付ければそれなりのダメージにはなる。

 だが、決め手にはならない!

 

(だから……、これで、決めるっ!)

 

 スバルさんが我に返って攻撃…恐らく下半身を崩すための蹴りだ……を繰り出そうとした時、俺は彼女が生み出した光の道……ウイングロードに相手に指先を向けた状態で両手をついていた。その時、逆立ちの要領でもう既に足は垂直に持ち上がっている。

 体を一回転させて勢いをつけ、一気に振り子の要領で蹴りだす!

 

 両足に魔力付与。打撃強化と加速のブースト付き!

 

「烈風、一迅……!」

 

『Version Rolling Thunder』

 

 どこぞの雌火竜が繰り出すサマーソルトの要領で、全身のバネと回転の力を使っておもいっきり蹴りを入れる。

 

 狙いは、相手の意識を一瞬で刈り取る顎の先!

 

 

 

「やぁあああああ!」

 

 

 

 風を切る音が耳に響く。会心の一撃を入れた。そう思ったのだが、

 

 ほよん。ズザッ!

 

 柔らかい何かに阻まれ、顎と思われる固い何かをかするのに少しラグがあった。衝撃も緩和されたし。ちなみに俺は宙返りの途中なので何も見えていない。

 だが、そのラグを用いて、俺が顎を蹴り抜いた瞬間に脇腹にスバルさんの蹴りが決まる。

 

 

「……がっ」

 

 そのまま俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

「………知らない天井だ」

 

 言ってみたかったんだよな、この台詞。俺はベッドの上、白い天井を見上げていた。

 

「あら、目が覚めたの?」

 

「……ええ」

 

 どうにか起き上がった。そこには金髪の、白衣を着た女性がいた。

 

「私はシャマル、ここの医務官よ。なのはちゃんとスバルを呼んでくるわね。あ、水がそこにあるから」

 

「はい」

 

 言われたところの水を飲んで一息つく。

 

 傍らにある俺の愛機を見て、呟いた。

 

「……負けたな」

 

『そうですね』

 

「次は、勝とうな」

 

『勿論です』

 

 扉が開く。

 

「レーヴェ!」

 

 と、すぐさま金色の固まりが突っ込んできた。

 

「え、ヴィヴィ……ぐふぉ!」

 

 脇腹直撃。

 

 腹を抑えうずくまる俺を心配そうな表情でヴィヴィオはんにんは見つめる。目に少し涙がたまっていた。

 

「だいじょうぶ?」

 

「ちょ、ちょっと大丈夫じゃないけど……」

 

 まさか「お前が原因だ」とは言えない。とそこにフォワードメンバーと、フェイトさん以外の隊長格がやってきた。

 

「よかったー」

 

「ちょっとスバル、あんたもふらふらなんだからそんな動こうとしないの」

 

「凄かったよ!」

 

「さ、最後はちょっとアレだったけど……」

 

 ……『アレ』? フォワード陣の言葉に耳を傾けていたものの、最後のキャロの言葉に首を傾げる。

 

「……なのはさん」

 

「何かな?」

 

「最後、どうなったんですか? 意識飛ぶ直前辺り最後の一撃がどうなったのか分からなかったんで」

 

 苦笑しているなのはさんに問うと、すこし居心地悪そうな顔になった。

 

「あ?、最後ねー」

 

「あはは……」

 

「あれはね……」

 

 あの、スターズ陣? なんでそんな微妙な顔なんですか!? しかもなんかお茶を濁すような感じ!

 

 その中で唯一まともだったヴィータさんが答える。

 

「あそこまでの組み立ては凄くよかった。きっちり最後に勝利をつかみ取ろうという姿勢もな」

 

「は、はぁ」

 

「ただ、最後の詰めがお前は甘かったんだ」

 

「最後の詰め? 何ですかそれ?」

 

「それはな」

 

 俺の質問にヴィータさんが遠い目をする。

 

 

 

「スバルの胸がめったやたらとデケェってことだ」

 

 

 

 瞬間、世界が凍り付いた。少なくとも、俺はそう感じた。

 

 

「……………は?」

 

 俺はそんな声を上げるしかなかった。横でライトニングの二人……エリオとキャロが顔を赤らめているが、そんなことはどうでもよろしい。

 

 

「あの技は本当に((決め技|フィニッシュ・ブロー))になりそうだった。恐らくあのままだったらナカジマの蹴りは間に合わなかっただろう」

 

「けど、それをわずかに阻んだのがスバルの無駄にでかい胸だ。それのせいで蹴りのダメージが軽減され、時間にもラグが出来た」

 

 シグナムさんの説明の後、ヴィータさんが心無しか苦い顔で言葉を続ける。

 

「結果としてお前は負けたってわけだ。まあ、ほぼ引き分け同然だけどな。顎の先かすってたから、スバルは脳を揺らされて今でもふらふらしてやがるし。今回スバルはその重そうなモンのおかげで助かったようなもんだ」

 

「………あの、ヴィータ副隊長? なんで私の胸をそんなに睨みつけているんでしょうか……?」

 

 親の敵のような目で胸を見てくるヴィータさんにスバルさんは泣きそうな顔で質問する。

 

「…………チッ」

 

「舌打ちされた!?」

 

 

 

 ………しまらねえなあ。

 

 俯いて、ため息をつきたくなる。

 

「でも、本当にいい試合だったよ」

 

「……え?」

 

 なのはさんの言葉に俺は顔を上げた。

 

「まだまだ足りないところはあるけど、上手く組み合わせて補って戦ってた。そのうちもっと強くなれるよ」

 

「そうだな」

 

「……確かにな」

 

 他の副隊長達も頷く。

 

「……ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げる。

 

「うん、今度のエリオとの試合も楽しみだ」

 

「お互い頑張ろうね、レーヴェ!」

 

「ああ! ……スバルさん」

 

 エリオの笑みに力強く頷いたあと、スバルさんの方へ向き直る。

 

「何?」

 

「俺、もっと強くなります。だからまた今度試合をしましょう。今度は勝ちます」

 

「うん! でも、私も年上だからね、そう簡単には負けないよ!」

 

 お互い笑いあい、この試合は幕を閉じた。

 

 

 

説明
ラッキースケベって自覚できなきゃラッキーでもなんでもない
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魔法少女リリカルなのはシリーズ ヤンデレ バトル 

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