単一の幸福を求めて…第6話 |
第6話 日常
荊州にある水鏡塾…
早朝であるにも関わらず屋敷の裏にある竹林には一人の人影があった。
白斗「………ふう、もうそろそろ時間か」
竹林では白斗が早朝から鍛練をしていた。
白斗「最後に敵を想定した鍛練でもやるか」
そう言うと白斗は拳を構えると、身体の内に氣を込める。
白斗「すう〜〜……」
息を吸い、気持ちを落ち着け、見据えるのは眼前の敵。
『敵は一人……手にしてるのは槍……』
『懐に潜りこめば正気はあるが、なかなか難しそうだ』
『まずは出方を窺うか…』
そう思った刹那、敵が動く。
槍のリーチを生かした突き。
『この距離なら、躱すのは難しくない』
敵はこちらの出方を窺っている……。
続けて、更に突きが放たれた。
『穂先を受け止めるには無理があるか……っだが!』
白斗は身を捻って躱し、そのまま踏み込むと同時に槍の柄の部分に拳を叩き付ける。
槍の穂先が地面に突き刺さり敵が動けなくなる。白斗は更に踏み込み、
『……間合いに入った!』
白斗「はあっ!」
踏み込みと同時に敵の水月に拳を当てる。
白斗「よしっ、………!?」
突然、新手の弓兵が現れ白斗に矢を放つ。
白斗の後頭部に向けて迫る矢を、白斗は転がって躱す。
白斗は転がりながら敵の位置を確認し、立ち上がると同時に拳から氣弾を放つ。
白斗「はああぁぁぁぁーっ」
ドカドカドカーッ。
氣弾が竹林をなぎ倒していく。
「………あっ」
メキメキと倒れる竹林。
ドオォォォォォンッ!!
白斗が敵と想定していた岩に氣弾が命中する。
岩が粉々に粉砕される。
白斗「……あ〜あ、……またやっちまったか」
白斗は竹林の惨状を見て溜め息を吐く。
白斗「また咲耶さんに叱られるな……はぁ…」
一日はまだ始まったばかりだと言うのに、白斗は重い足取りで屋敷に戻っていった。
ザバァーーーーッ!!
屋敷に戻ってきた白斗は屋敷にある井戸で軽く汗を流す。
白斗「……ふぅ、さっぱりした」
白斗は濡れた自分の銀髪を布で拭き取り、乾かしながら着替えを取りに自分の部屋へ向かう。
「……ん?あれは…朱里か?」
屋敷の廊下を歩いていると自分の部屋から出て来た朱里に合う。
白斗「朱里、おはよう。」
諸葛亮「はわっ!…あ、白斗さんおはようございましゅ!」
白斗「また噛んでるぞ、朱里」
朱里「はうぅ〜〜……」
白斗「そう言えば今日は朱里が朝飯の当番だったな、雛里はまだ中か?」
朱里「はい、でもそろそろ起きてくると思いますよ」
白斗「そっか…それじゃ、俺も着替えて柚達を起こしたら食堂に行くよ」
朱里「はい、美味しいの作りますね♪」
白斗「ああ、楽しみにしてるよ」
白斗と柚が水鏡塾に来て約一年後…
来た当初は、いろいろと問題があったりもしたが、今ではそれも解決し白斗は順調に知識を得ていた。
問題の例としては…屋敷に空き部屋が無く、白斗と柚が何処で住むかという話になった際、相部屋にしようということになり、みんなで話しあった。
最初は朱里と雛里、白斗と柚という話しが出たが、白斗が男という事もあり結局は朱里と雛里、柚と真衣が相部屋、そして白斗と咲耶が一人部屋という風に落ち着いた。
白斗「……さてと」
自分の部屋に戻り、汚れた服を脱ぎ、いつもの服に着替えた白斗は柚の部屋に向かう。
白斗「柚〜〜真衣〜〜起きてるか〜〜?」
白斗「…………返事は無し、か」
白斗「いつもの事ながら…二人共寝起きが悪いからな…はぁ」
溜め息を吐きながら白斗は部屋の中に入って行く。
柚「くぅ〜…くぅ〜…」
真衣「すぴ〜…すぴ〜…」
二人は気持ち良さそうに布団にくるまっていた。
『二人共…気持ち良さそうだな……まっ、いつまでも寝かしてるわけにはいかないか…』
白斗「起きろ〜二人共〜」
白斗が二人の身体を優しく揺する。
柚「…ん〜?…白斗〜?」
真衣「うぅ〜……もう朝〜〜?」
白斗「ああ、そうだよ。 そろそろ朝飯ができる頃だから、二人共顔洗って早くこいよ」
柚・真衣「「は〜〜い」」
二人の返事を聞き白斗は二人を残して部屋を後にした。
パタンッ
柚達の部屋の扉を閉めて食堂に向かう白斗、
すると、隣りの部屋の扉が開き中から雛里が出てくる。
白斗「雛里、おはよう」
雛里「あ…白斗さん、おはようございます」
白斗「今から食堂か?」
雛里「はい、そうですよ」
白斗「なら一緒に行こうか?」
雛里「はいっ♪」
二人は揃って食堂に向かった。
ーーーー食堂
食堂の台所では、既に咲耶と朱里が朝食を作っていた。
白斗「咲耶さん、おはようございます」
咲耶「あら、白斗くんおはよう」
白斗「準備手伝いますよ」
咲耶「ありがとう♪じゃあ、食器を並べてくれる?」
白斗「わかりました」
咲耶「ああ、そうだ白斗くん?」
白斗「はい?何ですか?」
咲耶「また裏の竹林を目茶苦茶にしたみたいね……」
咲耶の顔は笑っていたが、その怒気は半端ではなかった。
白斗は冷や汗をたらしながら、
白斗「ハ…ハハ…ハハハ………スイマセンデシタ」
白斗は素直に謝った。
朝食の準備を終え、遅れて来た柚と真衣の二人が食卓に着く。
咲耶「みんな揃ったわね、それじゃ…」
みんな「「いただきまーす」」
食卓に着いて皆が声を揃えた。
柚「そう言えば白斗!また竹林を目茶苦茶にしたんだって?」
白斗「うっ!?」
朱里「はわっ!またですか!?」
白斗「……面目ない」
雛里「でも…いつも朝早くから鍛練してますね」
真衣「ほんとよね〜、よくあんなに早く起きれるわよ」
白斗「習慣だからね」
朱里「白斗さんは文武両道で凄いですね」
白斗「文武両道と言っても、何かを極めた人には勝てないさ」
雛里「そんなことないです!白斗さんの虚実入り混ぜた策は凄いです」
白斗「まあ、相手が武神だろうと簡単に負けるとは思ってないさ、それに俺は騙し合いは得意だからな」
咲耶「そうね…白斗くんの嘘を見破る力は軍師としては破格の能力ね」
白斗「俺は人を見て策を考えてるだけなんだけどね」
白斗はそう言って笑った。
朝飯を食べて片付けを終えた後、全員で教室に向かう。教卓には咲耶が立ち、白斗達はその向かいの席に座っている。
咲耶「それでは今日の授業を始めましょうか、今日はそうねぇ…孫子の復習でもしましょうか」
みんな「「はいっ!」」
咲耶「それでは…上兵は謀を伐つ、これの意味を…朱里」
朱里「はい!謀というのは作戦のこと。つまり相手の作戦を、戦争になる前に中止させるのが良い。ということです!」
咲耶「はい、その通りですね。これは、主に軍師のことを指しています。加えて言えば間者もこのような裏工作に使うことが多いので、この意味の一部とも言えなくわないわね」
咲耶「では次に…彼を知り己を知らば、百戦して殆うからず。 これを……白斗くんお願いね」
白斗「はいっ!敵の実力や現況をよく把握し、自分自身の実力をよくわきまえて戦えば、何度戦っても勝てるものっていう意味ですね。」
咲耶「ええ、その通り。 白斗くんの得意分野ね♪」
……
このようにして水鏡塾での授業は進んでいった。
授業を終えて、休憩も兼ねたお茶の時間。
ーーーー食堂
みんな「「いただきまーす!」」
真衣「ぱくっ、ん〜♪美味しい!」
柚「今日のお菓子も美味しいね♪」
咲耶「やっぱり、甘いものはよいわね〜」
朱里「これも白斗さんのお陰ですね!」
白斗「ありがとう、朱里も雛里も真衣もたいしたものだと思うぞ?たった一年足らずでここまで上達するとは思わなかったよ」
朱里「はわっ!そ、そうですか?………えへへ♪」
雛里「朱里ちゃん、嬉しそう」
真衣「だね!この中じゃ朱里が一番上手いもんね♪」
朱里「ええっ!?そんなことないよ!」
水鏡塾でのお茶の時間はみんなが笑顔で楽しむ時間であった。
その日の夜…白斗は眠れず、中庭で一人…月を眺めていた…
白斗「………」
白斗は何をするわけでもなく、ぼーっと月を見ていた。
咲耶「どうしたの白斗くん?」
そこへ、いつものように神秘的なローブをきた女性…咲耶が白斗の後ろから声をかけた。
白斗「…咲耶さん」
白斗は振り返らずに咲耶の言葉に答える。
咲耶「どうしたの?」
白斗「世が乱れるな…と思って…」
咲耶「…それは、どうして?」
白斗「……十二代皇帝の霊帝治世において、朝廷の政治は金で買われ、皇帝の母の一族が、幼い皇帝を担ぎ上げて政治を私物かし、次の皇帝を生み出す後宮を司る宦官たちも、特権を与えれ己が欲のために専横する始末……飢饉の兆しがあるにも関わらず、民から搾り上げられた富が、愚かしい争いの下、浪費されていく……各地では盗賊が横行しているとも聞きます………これだけのことがあって乱が起きない訳がない!!」
白斗は最初こそは落ち着いていたが、話していく内に怒りを露にして拳をきつく握っていた。その手には微かに血が滲んでいた…
咲耶「………そうね」
咲耶は未だに背を向けている白斗の背中を後ろから抱き締める。
白斗「咲耶…さん?」
咲耶「確かに今のあなたは何も出来ないかもしれない…でもいつかきっと天下があなたを必要とする時がきっとくる。だから今は我慢の時…知識を蓄え、武の腕を磨き、来たる乱世に備えるのです」
白斗「咲…耶…さん…」
いつの間にか白斗は涙を流していた。
咲耶はローブの裾で白斗の涙を拭ってやり、優しく頭を撫でる。
咲耶「好々好々」
夜が深まる中、二人の姿を月だけが照らしていた…
あとがき
第6話終了!お疲れ様でした。皆様!
さて今回は白斗が水鏡塾に来て一年くらいたった後の話しだったのですが…
次回は更に時が立ち、二年後の話しになります!
原作の時間軸でいうと、一刀くんが落ちて来て少したったぐらいでしょうかね?
偽オリキャラ紹介 第1弾!
今回は偽!ということでキャラクターの基本設定ではなく、オリキャラが成長などをした際の追加設定を書かせて貰います。
今回は白斗の武器・戦術・戦闘術について書きます。
武器 双刀
名称 干将・莫耶
長さ120cm 重さ1.4kg
俗に言う倭刀(日本刀に似た中国の刀)
白斗の父親が所有していたが、死去した際に形見として白斗が受け継いだ。
二振りの夫婦刀であり、名刀でもあるので気を流しやすいと言う特質がある。
それなりに長さも重さもあるため、普通は二刀流では扱いにくいが白斗は気で身体能力を強化することで二刀でも素早く動き、変幻自在な剣術を可能としている。
戦術
虚実入り混ぜた策を得意とし相手を騙し、逆に嘘を見抜く。
策も場所や状況だけでなく敵や味方の人柄を見て判断する。
なので行動のほとんどが勘で動いている孫策や、行動や発想が読めない一刀などは白斗からすれば天敵。
戦闘術
撃剣・撃拳
剣撃を遠くから放って敵に当てる術。
この剣術を取得するにはある程度の気を扱う素質がいる。
白斗はこの術を応用して拳撃を遠くから放って敵に当てる術、撃拳も扱える。
また、水鏡塾にいた頃は勉強とは別に体術の修行もしていた為、剣術と体術を合わせた我流の刀術も使えるようになった。
と追加設定は以上です。次回はとうとう黄色の布が大陸に!
秋の虫が騒ぎ出す今日この頃…
それではまた次回〜!
説明 | ||
真・恋姫無双の二次創作です。 主人公を始めオリキャラ多数、苦手な方は御遠慮下さい。 今回は水鏡塾での生活の一日です。 間話と言っても良いかもしれません。 |
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「青年」って歳の割に思慮皆無だった白斗が帝国の情勢をみすえる……だと……。水鏡塾すげえ!!(ナック) | ||
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