単一の幸福を求めて…第7話
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第7話 二度目の旅立ち

 

白斗達が水鏡塾に来てから約三年の月日が流れていた…

 

今日も水鏡塾の裏にある竹林には白斗の姿があった…

 

白斗「すぅ〜〜……はぁぁ〜〜」

 

白斗は身体に氣を巡らせて身体能力を向上させる技「軽身功」を発動させる。軽身功は撃剣での基本技であり、この技を使えないと撃剣は取得できないとされていた。

 

白斗「……最近、安定して発動できるようになってきたな……これなら長時間の戦闘も可能かも…」

 

 

約三年前の役人屋敷襲撃の際には僅か半刻で疲労がきていたが今では長時間使用しても疲労はしなくなっていた。

 

白斗「これも肉体的な成長のお陰か……それとも鍛練の成果なのか……両方かもしれないな」

 

言いながら、白斗は朝日が昇りだした空を見上げる。

 

白斗「そろそろ時間か……いつものように敵を想定した鍛練をして終わりにするか……………ん?」

 

白斗は一度目を閉じて、意識を集中する。

 

 

すると微かだが人の気配を感じた。白斗は目を開き叫ぶ、

 

白斗「そこにいるのは誰だ!隠れてないででてこい!」

 

白斗がそう言うと竹藪に身を潜めていた者が姿をあらわす。

 

『……賊か?……人数は五人か…』

 

その者達はあまり良くない身なりをしており、見るからに賊という風貌をしていた。

 

賊「ちっ!見つかっちまったらしょうがねぇ!お前達!やっちまうぞ!」

 

賊「「応!!」」

 

おそらく賊の頭だと思われる長棍を持った賊がそう言った瞬間、他の賊と共に白斗の方へ向かってきた。

 

 

白斗は再び集中し、軽身功を発動させる。

 

『賊は五人……実戦鍛練には丁度いいか……いずれも手には異なる武器……かなりの手練……たが……勝てない相手ではない!』

 

瞬間、白斗は眼前の賊に向かって行く…

 

目の前には、剣、槍、斧、矛、長棍を持った賊が五人。

 

白斗が向かってくると、槍と長棍を持った賊が同時に白斗に突きを放つ。

 

白斗はそれを跳躍して躱し、跳躍と同時に目前にいる剣を持った賊に足刀を放つ。

 

賊「がっ!?」

 

足刀は賊の首に命中し、剣を持った賊が倒れる。

 

『……まずは一人目』

すると死角から斧を持った賊が斧を横薙ぎに振う。

 

白斗は倒した賊の剣を掴み、賊の斬撃を柄尻で受け流し、その勢いを利用して体を半回転、その勢いをのせたまま賊の胸を突く。

 

賊「ぐはっ!?」

 

剣は賊の胸に深く突き刺さる。

 

『……これで二人目』

すると今度は矛を持った賊が上段から矛を降り下ろす。

 

賊「死ねぇぇぇぇえ!!」

 

白斗は剣で刺したままの賊の屍体を力まかせに持ち上げて賊の降り下ろしを防ぐ。

 

矛が賊の屍体に刺さるが白斗は気にせず、屍体を更に高く持ち上げると矛を持った賊に向かって叩きつける。

 

賊「ぐぅっ!?……」

落下重力と屍体の重さによって賊は圧死する。

 

『……これで三人……残るは二人』

 

体勢を立て直した槍と棍を持った敵が白斗に向き直り、再び構える。

 

白斗は屍体に刺さったままの剣を引き抜き、賊の方に放り投げる。

 

剣は白斗と賊の中間地点辺りに柄の部分を上にして突き刺さる。

 

それと同時に白斗は賊に向かって走り、賊も白斗に向かってくる。

長棍を持った賊が先程と同じように白斗に突きを放つ。

 

白斗も先程と同じように跳躍して躱すが、槍を持った賊に読まれており、跳躍した所に槍先が迫っていた。

 

賊「貰ったーー!!」

しかし、白斗は先程投げた剣の柄尻を踏み台に更に跳躍して槍を持った賊の後ろに着地すると同時に賊の首に手刀を放つ。

 

賊「がひゅっ!?」

 

槍を持った賊が倒れる。

 

『……残るは一人』

 

白斗は再び長棍を持つ賊に向き直り、賊に向かって行く。

 

賊「ちくしょう!何だてめぇーは!!」

 

賊は白斗に向かって突きを放つが既に速さを見切っていた白斗は、長棍の柄を掴む。

 

『……取った!』

 

白斗がそう思った瞬間、賊がニヤリと笑う、長棍の連結部分がはずれ白斗が掴んだ方とは逆側の棍が白斗を襲う。

 

『三節棍か!?』

 

白斗は咄嗟に地に深く沈みこみ賊の攻撃を躱すと、無防備な賊の足に蹴りを放ち、足払いをする。

 

賊「がっ!?」

 

白斗は倒れた賊に馬乗りになると、とどめを刺す為に拳を振り上げる。

 

賊「やっ!やめてくれえぇぇ!」

 

賊がそう言いながら再びニヤリと笑う…

 

白斗の後頭部に向かって一本の矢が迫ってきていた…

 

しかし白斗は振り向きもせずに振り上げた手で矢を掴む。

 

賊「なっ!?」

 

白斗に馬乗りになられたままの賊が驚愕の声を上げる。

 

白斗「悪いな、こういう状況は想定内なんだよ」

 

白斗はそう言うと掴んだ矢をへし折り、放り投げると再び拳を握る。

 

白斗「はっ!」

 

白斗は短く氣を込めると拳ぐらいの氣弾を恐らく賊がいるであろう方向に飛ばす。

 

ヒュッ!……………

 

 

ドオォォォォォン!!

 

賊「ぎゃぁぁぁああ!!」

 

氣弾はまるで矢のように竹藪の間を擦り抜けて賊に命中した。

 

 

白斗「……さてと」

 

白斗は氣弾が当たったのを確認すると馬乗りになったままの賊に向き直る。

 

賊「す、すまねぇ!おれが悪かった!だから助けっ…がっ!?」

 

賊が命乞いをするが、白斗は聞かず賊の顔面に拳を降り下ろした。

……………

 

動かなくなった賊に馬乗り状態だった白斗は立ち上がる。

 

白斗「ふぅ……それにしても、この辺も物騒になってきたな……乱世はもうすぐそこかもしれないな……」

 

呟くと白斗は辺りを見回して周囲を確認する。

 

白斗「賊はもういないな……………ん?…あれは……」

 

白斗は倒れている賊に近づくと、ある物を拾い上げる…

 

白斗「……これは………黄色い布?」

 

 

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ーーーー水鏡塾

 

そこでは四人の少女と一人の女性が大陸の状勢についで話し合っていた…

 

 

朱里「黄巾賊…ですか…」

 

咲耶「ええ…賊とは言うけれどその正体は暴政に耐えかねた民が暴徒とかしたものだけれどね…」

 

雛里「民が…」

 

柚「漢の治政が原因…ですね…」

 

真衣「それ以外にも、匪賊の横行、大飢饉、そして極めつけは疫病の猛威…」

 

朱里「暴力に晒され、慎ましく生きようとしても、その日食べるものにも困り、あげくに病に倒れる……」

 

雛里「そうなれば、大陸の人々の心が安定するはずもないです…」

 

 

柚「……そういえば白斗は?いつもの鍛練にしては遅いけど……」

 

真衣「あれ?言われてみればそうだね?」

 

 

パタンッ!

 

 

真衣がそう言った途端、白斗が帰ってくる。

柚「あっ!白斗お帰り…って!どうしたのよ、その血!?」

 

朱里「はわっ!?」

 

雛里「あわわっ!?」

真衣「大丈夫なの!?」

 

白斗「ん?ああ、これか……これは返り血だよ」

 

柚「そっか…返り血か…良かった……って返り血!?」

 

咲耶「白斗くん、どういう事なの?」

 

白斗「ええ……裏の竹林で鍛練していたら賊に襲われまして……それと……咲耶さん、賊がこんな物を持ってました」

 

そう言うと白斗は懐から黄色い布を取り出す。

 

朱里「黄色い布…………黄巾賊!!」

 

白斗「ああ…多分、当たりだな……大陸の暴乱はもうこんな所まで広がっている…」

 

みんな「「………」」

一同が押し黙り、重い沈黙の中、白斗が決意を秘めた目で咲耶に向かって口を開く。

 

白斗「咲耶さん……俺、決めたよ……旅に出る」

 

柚「えっ!?」

 

咲耶「白斗くん…」

 

白斗「知識も蓄え、腕も磨いた…そして乱が起った…士官を探すなら時は今だと思うんです…」

 

 

咲耶「……………そうね、わかったわ…白斗くん」

 

柚「先生!」

 

真衣「いいんですか!?」

 

咲耶「ええ、後は…そうねぇ…朱里ちゃんと雛里ちゃんもそろそろ時期じゃないかしら?」

 

朱里「はわ!?私達もですか!?」

 

雛里「あわわっ!?」

 

柚「あ、あの!先生!」

 

咲耶「どうしたの?」

 

柚「…私と真衣ちゃんは?」

 

咲耶「貴女達はまだ時期じゃないわ……貴女達二人は軍略よりも政治に秀でているわ、今はまだどの国も政治どころではないでしょう…」

 

柚「そんな……」

 

呆然とする柚を白斗は抱き締める。

 

白斗「柚…聞いてくれ…俺はこの時の為に知識を学び、武を磨いたんだ…頼む…行かしてくれ」

 

 

柚「白斗………うん、わかった。 いってらっしゃい…」

 

白斗の腕の中で柚はしばらく悩んでいたが、白斗の決意を理解してうなずいた。

 

白斗「柚…ありがと」

 

白斗は抱き締めていた柚を離して頭を撫でる。

 

柚「えへへ♪」

 

 

咲耶「好々、それで白斗くんはいつ出発するの?」

 

白斗「そうですね…明日にします」

 

真衣「明日!?」

 

白斗「本当は今日にでも出発したいんだけどね…朱里達はどうするんだ?」

 

朱里「えっと…そうですね…わたし達は白斗さんより準備に時間がかかりそうなので一緒には行けそうにないです…」

 

 

白斗「そうか…わかった」

 

 

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翌日の早朝…水鏡塾の玄関には旅の荷物をもった白斗と見送りにきた少女達と咲耶がいた。

 

 

白斗「それでは、水鏡先生…行って参ります」

 

白斗は咲耶に向かって包拳礼をする。

 

咲耶「ええ…気をつけて…そうだわ白斗くん、士官先を探すなら劉備という名を覚えておくといいわ」

 

白斗「劉備…ですか…」

咲耶「ええ、彼女が幼い頃に一度だけ見たのだけど中々の人物になっているはずよ」

 

『劉備……劉備か…』

 

白斗は何処か惹かれるものを感じていたが、その正体は良く解らなかった。

 

 

白斗「朱里、雛里…それじゃ、俺は先に行くな」

 

朱里「はい!白斗さんもお元気で!」

 

雛里「あ、あの…お気をつけて…」

 

白斗「…もしかしたら敵同士になるかもしれないが……その時はお手柔らかにな」

 

白斗は笑い、二人を帽子の上から撫でる。

 

朱里・雛里「「はぅ〜〜……」」

 

朱里と雛里の二人は照れていた。

 

白斗は二人を撫でるのを止めて今度は柚と真衣の方に向き直る。

 

白斗「二人はまだここにいるんだろ?」

 

柚「……うん」

 

真衣「先生に時期じゃないって言われちゃったしね!」

 

元気のない柚の代わりに真衣が元気に答える。

 

「そうだな…確かに今は世が乱れきっている。だけど、この乱が収まればすぐに柚と真衣の知識が必要になると思う………それまでしっかり知識を蓄えるんだぞ?」

 

そしてこちらも白斗は帽子の上から二人を撫でる。

 

柚「………うん」

 

真衣「わかった!」

 

真衣は元気に、柚は元気はないが笑顔で白斗の言葉に答えた。

 

 

白斗「それじゃあ!みんな!行ってきます!」

 

みんな「「いってらっしゃい!」」

 

白斗は寂しさを降り払うように声を出し、少女達も答えてくれる。

食料等が入った袋を背負い直して白斗は水鏡塾を出て行った。

 

 

 

 

咲耶「……行ってしまったわね」

 

柚「うっ、ぐすっ…えぐっ…」

 

咲耶「泣かないの、柚ちゃん…白斗くんなら大丈夫よ、きっとまた会えるわ」

 

 

そう言うと咲耶は柚を優しく抱き締める。

 

柚「……本当?」

 

咲耶「ええ、きっと会えるわ…きっとね」

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、水鏡塾から少し離れた荒野には白斗の姿があった。

 

白斗「さてと…旅に出るのはこれで二度目だな……まずは何処に行くかねぇ……劉備にも会ってみたいが……はてさて……」

 

 

急いで出発したは良いが特に目的地を決めていなかった白斗は無人の荒野を歩いて行くのだった……

 

 

 

 

あとがき

 

 

第7話終了!

 

前半の賊との戦闘で字数かかり過ぎて後半がえらい単純になってしまいました……

 

 

とうとう始まった黄巾の乱!

 

士官先を求めて旅だった白斗くん!

 

彼はいったい何処へ向かうのか!

 

それは大陸の風だけが知っている……

 

既にフラグたってる気もするけどね…

 

次回からはしばらく白斗の珍道中が続きます。

 

15話ぐらいには黄巾終わる予定…フラグ集めは大変ですね……

 

 

そろそろクーラーを封印しようと決意した今日この頃…

 

 

それではまた次回〜!

 

 

説明
真・恋姫無双の二次創作です。

主人公を始めオリキャラ多数、苦手な方は御遠慮下さい。


皆様お付き合いありがとうございます。
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