咲-saki-月宮編 第10局 救済 |
ちょっぴり感動回だったり?
良い子は未成年でレート麻雀は打っちゃダメだぞ(`・ω・´)
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地区大会予選の一日目が終わり、部室に集まった月宮女子麻雀部の5人、決勝進出を決め、決勝に向けて他校の研究及び更なる調整をしようと思ってた矢先、高校麻雀連盟から一通の手紙が届いた。
『えっとね、こういうことみたいなの』
『えっ、どういうこと?』
『…出場資格…剥奪…?』
手紙の内容はこうである。
月宮高校麻雀部に通達。
先日の地区大会会場において、貴校の代表選手である生徒が地元の雀荘にて賭博麻雀を行っていたという報告を受けました。
事態をを重く見た我々は、連盟での協議の末、真に遺憾ではございますが、貴校の今回の地区大会決勝戦の出場資格を剥奪致しますことを決定致しました。
今後はこのような不祥事がございません様一層規律ある、高校生に相応しい行動を心がけて頂きます様お願いします。
高校麻雀連盟会長 有栖川 真紀子
第10局 救済
---先日・地区大会会場
『結局有栖川の番が回って来なかったなー』
『えーっ、仕方ないじゃん、京子ちゃんが削りすぎちゃうからー』
『えっ、私のせいになんの?これっ』
『まあまあ、それだけ先輩方が強かったということです、流石です』
『まあなあ、鮫島のおかげで私達も大分楽できてる』
いち早く準決勝を終え、決勝進出を決めた吾野高校が他校の試合の終了を待たずに学校に戻ろうとしている所だった。
『先輩方はもう戻られてしまうのですか?』
『あーうん、越谷女子以外特に興味もないしねー後で学校で準決勝の試合だけ撮ってもらったの見るとするよ』
『雛姫は見てく?戻っても何かするわけじゃないし、見たいなら見てってもいいよー』
『私は帰るけどな、対局より取材で疲れちゃったしね』
『そうですか、じゃあお言葉に甘えて、夕方までには学校に戻りますね』
5人の中で一番小柄な金髪の娘、((有栖川|ありすがわ)) ((雛姫|ひなき))は会場を後にする先輩4人を見送ってから観客席へ向かった。
『さっきまでAブロックの試合見てきてたんだけどさあ、月宮女子すごくないか?結局一度も副将に回すことなく決勝進出を決めたらしいよ』
『うわーまじ?確かAブロックって若葉台とかいなかったっけ、しかし月宮って初めて聞いたなあ』
『なんか麻雀部が出来たのは今年らしいよ、部員も5人しかいないとか』
『へえー』
Dブロックの観客席に雛姫は居た、試合の模様はこのままいけば順当に越谷が決勝進出を決定しそうであった。
試合の結果がほぼ見えてしまってるだけに、雛姫は対局よりも後ろのAブロックの試合の会話が気になっていた。
(月宮女子…ダークホース的な存在になるのでしょうか、帰ったら先輩達に一応報告しておきましょうか)
『しっかしあれだってよ、月宮女子の誰かが雀荘通ってたって噂があるらしいよ、しかも賭け麻雀してたとか』
『マジで?だからあんなに強かったりしてねー』
『ははっ、確かにそれはありえるかもなあー』
(賭け麻雀って…高校生なのにそんな…それが本当だったら…麻雀を愛するものとして、許せません!)
『ちょっとその話!詳しくお聞かせ願えますかっ!お願いします!』
『うわぁっ』
突然声を上げ、後ろで話していた二人組みを問いただす雛姫。これが全ての事の発端だった。
『…ごめんなさい、私のせいです』
『華南ちゃん、気にすることないよー』
『そうだよ華南、華南が入部してくれなかったら、どっちみち大会には出られなかったんだからさ』
『そうですよ、城山さんだけが悪いわけじゃ、誘っちゃった私も責任がありますし…』
『みんなの言うとおりよー今回のことは仕方ないわー、そんなに落ち込まないで、ねっ?』
『しかし部長、これまでのみんなの努力が、それに部長は最後の大会なのに、ごめんなさい…』
責任を感じ、頭を下げ4人に謝罪する華南、それを窘める4人、重苦しい空気が流れる。
〜〜♪
そんな張り詰めた空気の中、羽衣の携帯の着メロが鳴り響く、空気を読まない携帯である。
『あら、ちょっとごめんなさいねー』
ささっと部屋の端に移動し、通話ボタンを押す、番号は覚えのない番号だった。
『はい高天原です、どちら様でしょうか?…あ、はいそうです、月宮女子の…え、えっ、あ、はい、分かりました!あ、すみません、わざわざありがとうございました、…はい、失礼します!』
誰と話していたのだろうか、後半の方は声色が良かったけど。
『みんな!今連盟の会長さんからお電話だったのですけど、私達、決勝でられるみたいよ!よかったわねー』
『へっ?』
『マジで?』
『本当ですかっ!』
『えっ、どうしてまた…』
暗かった皆の表情が明るくなる、ただ華南だけは疑問の表情を浮かべていた。
そう、実際にレート麻雀を打っていた事実はあった、それなのにどうして…。
『んーなんか分からないけど?雀荘の人が、そんな事実はないって言ってくれたらしいわよ?』
泉やりりあ、あかりの3人は腕を組んだり、手を叩き合ってはしゃぎ合っている。そんな中華南だけがまだ難しい顔をしていた。
『そうなんですか…』
雀荘のおじさんが…迷惑かけてしまったのに…どうしてだろう…?
『まーいいんじゃない?大会にはでられるみたいだしー』
『そうなんですが…すみません、ちょっと出てきます、なるべく早く戻ってきますね』
華南は一礼して、部室を飛び出していった、羽衣ははいはい、といって止める事もなく見送る。
『どしたんだろーね?』
『んー、まあ華南のことだし、心配はないと思うけど…』
『もしかしたら、その雀荘に向かってるのかもしれないですっ』
訳が分からないといった感じで顔を見合わせるりりあと泉に、あかりがそう言う。
『そうなのか、あかり、場所分かるかな?私達も行こう』
『はいっ、案内しますっ』
そして4人も華南の後を追うことに。
(ここに来るのも久しぶりだな…)
華南は以前通っていた雀荘の前まで来ていた、思えば出禁になってからもうすぐ3ヶ月位が経つ。
戸を空けようとすると、中から見知った顔が出てきた。
『っと、ごめんなさいね。…って華南ちゃんかあ、久しぶりだね』
『店長…』
しばしの沈黙、沈黙を破ったのは店長の方だった
『部活、頑張ってるみたいじゃないか、華南ちゃんの高校、決勝進出だってね、おめでとう』
『あ、はい…ありがとう、ございます』
高校生であることもやはりバレていたらしい、何故怒らないのだろうか。
…っと、それよりも訊かなきゃいけないことがあったんだった。
『…どうして、庇ってくれたんですか?嘘までついて、迷惑ばかりかけてしまったのに』
『あはは、久々に来たと思ったらそれでだったんだね』
優しく笑う店長、そしてカウンターの方を指差す。その先には誰かのサインがあった。
『あれ、キミのお母さんのサインなんだ、僕はデビュー当時からのお母さんのファンでね、亡くなったと聞いたときにはとてもショックだったよ』
店長はそのまま続ける。
『ずっと前だなあ、多分華南ちゃんが丁度生まれた位だと思う、キミのお母さん、華恋さんがうちの店に来てくれてね、その時に頂いたんだ』
視線を華南の方に戻した店長、昔を思い出すように続けて語る。
『キミの様に凛として、それでいて力強い、そんな麻雀を打つ人だったよ、だからすぐ気づいた、初めて家に来た時から、華恋さんの娘だって。キミの中に見たんだ、華恋さんの影をね』
『…だから、見逃してくれてたんですか?』
『うん、最初はそうだった、両親が亡くなって大変なのも知ってたしね、でも、このままだと華南ちゃんの為にならないと思って、来ないように言ったんだ、ごめんね』
華南は首を横に振った、そんなことはないと、結果として、大事な仲間や家族が出来た。
『華南ちゃんが高校の麻雀部で頑張ってるって聞いて、嬉しかったんだ、だから有栖川さんに僕から事情を説明してお願いしたんだ、どうか華南ちゃんの道を閉ざさないであげてくれってね』
『…!!ありがとうございます…どうお礼をしたらいいか…』
店長の優しさに、涙が溢れそうになったが、ぐっと堪えた華南。
『はっは、会長とは古くからの友達だからね、何とかなって良かったよ、それに、ずっと黙認していた僕にも責任はあるからね、気にしなくていいんだよ』
華南の肩を優しく叩き、そういう店長。そして、何かを思いついたように。
『んー折角だからそうだなあ、お礼…うん、じゃあこれなんてどうかな?プロ雀士の娘にしてインターハイ優勝校の大将のサイン、どうだい?華恋さんのサインの横に並べようと思ってるんだけど』
皺だらけの顔が悪戯っぽく微笑む。
『はいっ…!必ず!』
瞳には涙を溜めながら、満面の笑みで華南はそう言った。
応援してくれる人がいる。
後押ししてくれる人がいる。
こんなにも…嬉しいことはない。
『あ、いたいたー華南ちゃーん』
『用事はすんだかしらー?早速決勝に向けて調整よー』
遠くから仲間達の声がする。
『…さあ、いっといで』
『…はい!』
店長に一礼し、みんなの元へ駆け寄る華南。
おかあさん…私は…一人じゃなかったんだね。
『私、頑張るから』
『お、どうした、なんかやる気だなあー』
『あらあら、いいことじゃないのーうふふ』
『かなっちが頑張ってくれたら100人力だねー』
『うんっ、一緒に頑張ろう!』
華南は自分の帰るべき場所に戻る、大事な家族と一緒に…。
説明 | ||
---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語--- |
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