咲-saki-月宮編 第25局 希望 |
『倍満自漠だー!吾野高校、有栖川選手!ダマで倍満をツモ和了ったー!この和了りで2着から追い上げる月宮女子、城山選手の親番を一蹴!』
『そしてその城山選手に倍満を親被りですね、これでまた一気に差をつけました』
途中経過・大将戦後半戦・東三局開始時
1年 有栖川 雛姫 (吾野) 193600点
1年 城山 華南 (月宮女子) 144000点
1年 藤金 千尋 (越谷女子) 42700点
2年 坂上 穂波 (名細) 19700点
第25局 希望
東三局 親・坂上 穂波
(負けられません!絶対に!私は私の麻雀で、勝たせて貰います!)
『立…』
『ロン、平和一盃口ドラドラ、7700』
10順、千尋の立直をかけようとしたその牌で雛姫がダマで出和了る。
(もう張っていたの…?!もう局数も残り少ないっていうのに…)
渋い表情を浮かべながら雛姫に点棒を払う千尋。
『おっと!ここでロンです!和了ったのはまたも吾野の有栖川選手!藤金選手をダマできっちり討ち取って追撃を一切許さないー!』
東四局 親・藤金 千尋
『ロン、混一中赤、8000です』
『あっ』
2順目、またも雛姫がダマで出和了り、今度も千尋からの直取りだ。早すぎる和了りに最早ぽかーんとしてしまっている千尋。
(トップとはいえ2順目だっていうのに立直しないなんて…!)
堅実過ぎる、そう千尋は思った。
だがそれ故に雛姫は強かった。良配牌に甘えることなく自分を律して和了りに向かう。
(流れもいい、私を後押ししてくれてる…、勝つよ、絶対!)
『有栖川選手!3連続和了ー!2順で混一色を聴牌しましたがきっちりダマで出和了りました!磐石なトップの座が更に確固たる物になりました!』
『この局面でも立直しないのはまさに有栖川選手らしい打ち筋ですね、ストイックに勝ちに来ています』
南一局 親・有栖川 雛姫
(万事休す、だな…)
穂波は目を閉じ、華南の言葉を思い出す。
…麻雀って、楽しいよね。
(…楽しいか、私は今、楽しいのかな?楽しめているのかな…麻雀を…)
私は去年の個人戦、インターハイに出場し、ベスト16に入ったのだ。
その期待は大きいものだった。名細の麻雀部のエースとしての期待。
確かに重圧だったけど、決して嫌ではなかった。
大好きな仲間や友達、家族、そんな人達に期待を寄せてもらえる事が、嬉しかった。
初日の準決勝、圧倒的ビハインドから自分は逆転勝利した。
負けたくなかった、期待に応えたかった、それは人に強制されたものじゃない。
(そうだ…ここまで来たのは…自分の意思だ!)
『立直!』
9順、穂波の立直が入る。
当然の様にオリる他家の三人そして穂波のツモ。
(来い…高いほう…来い!)
盲牌する、その感触は望んだもので間違い無かった。
『自漠!メンタンピン一発ツモ二盃口、4000・8000!』
その牌を卓に叩き、力強くそう宣言する穂波。
(…まだ、まだ諦めない、まだ終わって欲しくない!初日だってそうだ、あのビハインドからでも逆転できたじゃないか!まだ、諦めるものか!)
穂波の瞳にもまた、光が宿った。
『おおっと!名細高校、坂上選手!ここに来て一発高目で倍満のツモです!初日の試合のようにここから捲る事が出来るか!』
『この局面で倍満を仕上げるとは、流石ですね、素晴らしい勝負強さです』
南二局 親・城山 華南
『立直!』
3順、華南の立直が入る。
(…ズラせないな、さて…どうする…?)
穂波は意を決して鳴きやすそうな中張牌を切ってみる。
(おしいけど…そこじゃない…!)
隣の雛姫の様子を伺う千尋、千尋も危険ではあるが雛姫が鳴きやすそうな牌を打ち出す。
(くっ、阻止出来ない、早すぎる…!)
一縷の望みにかけて生牌の白を打つ、だが誰も鳴かない。
『自漠!立直一発ツモ南…』
一発で南を引き入れツモる華南、そして…。
『裏3、6000オールです!』
『月宮女子、城山選手!ここで6000オールを自漠和了だー!トップの吾野に必死に喰らいついています!』
『最後の親番で少しでも蓮荘して点差を縮めたい所ですね』
南二局・一本場 親・城山 華南
『立直!』
9順、またも華南の立直が入る。
(相変わらず早い…今度もズラせない…)
隣の千尋の河を見て逡巡し、少しでも鳴ける可能性の高いと思われる牌を打ち出す穂波。
(そこじゃ無理…!有栖川…これならどうでしょう?)
だがその牌も鳴かれない。いや、雛姫は鳴かなかった。
(…間に合いました!)
『自漠!タンピンツモ赤1、1300・2600の一本付けです!』
ツモってきた牌をそのまま卓に叩き和了る。既に雛姫は張っていたのだ。
『おおっとー!ここで有栖川選手の自漠だあー!2着目である城山選手の立直をきっちりダマ和了りで潰しました!』
『この和了りで吾野高校のトップの可能性はとても高くなったと言えるでしょう、大きな意味のある和了りです』
南三局 親・坂上 穂波
(私だけ、まだ焼き鳥、だね…)
千尋は目を閉じ、華南の言葉を思い出す。
…麻雀って、楽しいよね。
そしてその言葉を発した主を見やる、前局、最後の親番を雛姫に和了り潰されてしまった。客観的にみたら逆転は絶望的な状況になってしまった。
だが、華南の表情は一転の曇りもない、その表情はまさに、麻雀を心から楽しんでいるようだった。
(最後の親番も蹴られて…点差も絶望的…だけどまだ、諦めてないんだね、あの人は…)
本当なら、ここには部長である小野崎先輩が座っていた筈だった。
その部長は、吾野の鮫島を止める為に先鋒になった。
自動的に副将であった私が大将になったのだ。
大将の器ではないと、自分でも分かっていた、だからオーダーを決めたあの日、私は部長にそれを進言したのだ。
だが、部長から返ってきた言葉は、私の予想したものと違ったのだ。
『鮫島が先鋒でなくても、私はお前を大将に据えるつもりだった』
『何故ですか?同じく3年の宮前先輩でも河野先輩でも堂寺先輩でも…』
『お前に期待しているんだよ、私は、頑張って一年生でレギュラーの座を掴んだお前を、私はな、いつかお前が、越谷女子麻雀部を引っ張っていく存在になる、そう信じてるんだ』
最後まで言い切る前に、樹がそう返した、越谷女子の一年生レギュラーは千尋だけだったのだ。
その言葉が嬉しくて、私はより一層努力した、信じてくれた部長の為に、そして…私自身の為に!
『立直!』
『カン!』
華南の立直に、反射的にカンをした千尋。
『あ…!』
嶺上牌を掴む、その感触は、紛れも無く自分の和了牌だった。
『自漠!嶺上開花対々三暗刻ドラ3、責任払いで16000です!』
(ごめんね月宮!私もまだ、諦めてないんだよ!)
説明 | ||
---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語--- |
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saki 美少女 麻雀 | ||
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