(戦国BSR/佐幸)豆腐の角に頭をぶつけ、馬に蹴られてなんとやら
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 佐助は最近、ひと目もはばからず「好きだよ旦那」と言うようになった。気配を機敏に察知する忍ゆえ、人の居ないのは見計らっているようだが。

 

「可愛い」「格好良いよねえ」「流石、俺様の惚れた旦那」「旦那の声って良いよね」「顔立ちも整ってるし」「髪も俺様が手入れしてるから綺麗だし」「ほんと可愛い」と、可愛いは受け入れがたいが、賛辞の嵐が吹き荒れておる。

 

 言葉だけでは足りないのか、額や頬にと、時折唇を落としてくる。中でも、接吻が一番多いのが難点だ。される度に、それがしの心の臓が止まりそうになる。

 

 あれだけ励んできた鍛錬は、なんだったのだ。不甲斐なし。

 

 しかし当の佐助は飄々と、時には嬉しそうに言うものだから、腹立たしいやらむず痒いやらで、難儀な日々となっている。

 

 一種の開き直りにも見えるが、一体どうしたのか。

 

 少し順応性が出てきた、ある日。思い切って尋ねてみた。すると、佐助は夕餉の品目を教えるように答えた。

 

「どれだけ言いたくても触れたくてもね、本当に出来なくなる前に言っておきたくなったの」

 

 両方の口角を上げた男が、どこまでの真意で紡いだ物なのかなど愚問だった。

 

「ならばついでだ、俺の名を敬称無しで言え」

 

「・・・・・・無理、です、まだ・・・・・・当分、は・・・・・・」

 

 あれだけ口舌(くぜつ)だった奴が、名前一つの問題で口ごもるや、顔を赤くして目を反らした。

 

 よくは分からないが、そんな佐助は可愛く見えた。だからそれがしも、思ったままを告げる。

 

「言葉は重ねれば、かえって重さは無くなるものだが、佐助からくれる物は嬉しさが増えるから好きだぞ」

 

 

<了>

説明
イベントのオマケSSでした。普段の作品がシリアス暗めの中、短いとはいえ甘め。これからの更新(主にサイト)の為に、お茶を濁す感じで投下。
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