本編補足 |
貴族主義者凶行
C1 朝飯
C2 別れ
C3 出仕
C4 謁見
C1 朝飯
ロズマール共和国首都ロズマリー。ベンゾウリックスの館。扉が開き、ベンゾウリックスの少年召使リュトが一礼して現れる。背後にはロズマール共和国治安維持部隊隊員Aとロズマール共和国治安維持部隊隊員B。
蝋燭の灯された薄暗い部屋の中で黒く濁った空から大粒の雨が降る様子を切り取るガムテープで補強された四角い窓の方を見ながら、ナイフとフォークを動かして朝食を食べるベンゾウリックス。時折、稲光と共に雷鳴が鳴り響く。
ベンゾウリックスがリュトに目配せし、リュトはベンゾウリックスの傍らに寄る。扉が軋む音と共に閉まる。ベンゾウリックスはナイフとフォークの動きを止め朝食の方を向いた後、ロズマール共和国治安維持部隊隊員達の方を向く。
ベンゾウリックス『食事中ですまない。連日の騒ぎで何せここにはもうこいつとわししかおらぬものでな。』
ベンゾウリックスはリュトの方を向いた後、ロズマール共和国治安維持部隊隊員達の方を向く。
ベンゾウリックス『最もこいつも後2、3日の勤めだが。』
ベンゾウリックスはナイフで目玉焼きを切り取り、フォークで口の中に入れる。ロズマール共和国治安維持部隊隊員達は顔を見合わせ、ロズマール共和国治安維持部隊隊員Aが一歩前に出る。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員A『それは御気の毒に…。』
ベンゾウリックスは喉を鳴らす。
ベンゾウリックス『何、パレードの護衛官として任務を果たせなかったどころか、多大な犠牲を出してしまった。民衆が怒るのも最もなことだろうて。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員Bが一歩前に出る。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員B『確かにあれほど用意周到に人型機構を配置していながら取り逃すとは、まるで暗殺者の位置を知っているかのごとく。』
ベンゾウリックスが眉を顰める。
ベンゾウリックス『わしは長年警護を勤めてきた。だいたい狙いそうな位置は分かる。経験と勘でな。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員達は互いに顔を合わせ頷いてベンゾウリックスの方を向く。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員A『実は…ハビタ大聖堂における密談のビデオテープが発見されまして。そこには如実にパリオンとゴーリキ、他名だたる貴族の面々が揃っております。無論、ゼオンどのの暗殺計画のことも。』
稲光がベンゾウリックスを照らし、雷鳴が鳴り響く。ベンゾウリックスは眼を見開き、その手からナイフが床に落ち、金属音を立てて転がる。リュトは床に落ちたナイフを拾い、新しいナイフをベンゾウリックスの手元に置く。
ベンゾウリックス『これは失敬。』
ベンゾウリックスはフォークを手元に置いて目を閉じ、ナプキンで口元を拭う。
ベンゾウリックス『パリオンとゴーリキは大それたことを考えたものだな。』
ベンゾウリックスは窓の方を向く。
ベンゾウリックス『おかげでわしはこのザマだ。投石、放火、罵詈雑言!挙句に妻子には逃げられ、使用人には愛想をつかされたわい。ハーハハハハハ、ハーハハハハハ。』
リュトは眼を見開き、ベンゾウリックスを見つめる。ロズマール共和国治安維持部隊隊員達は眉を顰めて顔を見合わせる。ロズマール共和国治安維持部隊隊員Aがベンゾウリックスの方を向き、頭を下げる。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員A『失礼な言動をお許しいただきたい。』
ベンゾウリックスはナプキンをテーブルの上に置くとロズマール共和国治安維持部隊隊員Aの方を向く。
ベンゾウリックス『何、気にすることはない。それがあなた方の勤めよ。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員Bが上体を前にだし、テーブルに手をかける。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員B『パリオン一派は都から姿を消しております。何かありましたら我々にすぐご連絡ください。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員Aがポケットから名刺を取り出す。リュトが彼に近づいてそれを受け取るとベンゾウリックスに渡す。ベンゾウリックスは名刺とロズマール共和国治安維持部隊隊員を2、3度見た後、頷く。
ベンゾウリックス『あい分かった。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員達は一礼する。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員A『では、我々はこれにて。』
ロズマール共和国治安維持部隊隊員達は後ろを向き、歩き出す。彼らの前に駆けていくリュト。ベンゾウリックスはナイフとフォークを握り、目玉焼きを切りはじめる。
リュトが食堂の扉を開ける。雷光が部屋の中を照らし、振り返るロズマール共和国治安維持部隊隊員B。雷鳴が鳴り響く中、ナイフとフォークを握りながら、口を動かすベンゾウリックス。
ロズマール共和国治安維持部隊隊員Bの方を見つめるロズマール共和国治安維持部隊隊員A。ロズマール共和国治安維持部隊隊員Bは首を横に振り、リュトと共に食堂から出ていく。
C1 朝飯 END
C2 別れ
ロズマール共和国首都ロズマリー。ベンゾウリックスの館。降りしきる雨。玄関の前にはベンゾウリックスとリュトが居る。傘を差して歩いてくるリュトの母親。リュトの母親はベンゾウリックスの方を向き一礼する。ベンゾウリックスは屈んでリュトの方を向き、彼の頭を撫でる。
ベンゾウリックス『今まで世話になったな。』
リュトは母親の方を向き、暫くしてリュトはベンゾウリックスの方を向き、俯く。
リュト『あ、あの…。』
ベンゾウリックス『何だ?』
リュトは顔を上げてベンゾウリックスの眼を見つめる。
リュト『ベンゾウリックス様、何故嘘をつかれたのです。ベンゾウリックス様は民衆の暴動から僕らを守る為に使用人達にお暇を出して、奥様と息子様を離縁したのでしょう。』
眼を見開くベンゾウリックス。
リュト『何で…あれではベンゾウリックス様がますます悪者にされてしまいます。』
ベンゾウリックスは溜息を付き、リュトの母親の方を向いた後、リュトを見つめて彼の肩に手をかける。
ベンゾウリックス『わしは貴族派連中と付き合いが長い。要らぬ疑いがかからぬようにしたまでよ。』
リュトは首をかしげる。
リュト『要らぬ疑い?』
ベンゾウリックス『良いか。もし、わし自身の意思で妻子を離縁し、使用人達に暇を出したと言い出したら奴らはきっとわしが何か企んでいるのではないのかと思ったはずだ。しかし、これが逃げ出したとなれば話は別、わしの意思が介入することもできまい。』
リュト『は、はあ。』
ベンゾウリックス『もっともわしは何も企んではおらんがな。』
ベンゾウリックスはリュトの眼を見つめる。
ベンゾウリックス『この館で過ごしたことは夢として忘れよ。』
ベンゾウリックスはリュトの母親の方を見た後、リュトを見る。
ベンゾウリックス『家族を大切にして暮らせよ。』
ベンゾウリックスはリュトの頭を撫でる。リュトは頷いて、彼の母親の傍らに寄り、ベンゾウリックスに向けて一礼する。
リュト『では、ベンゾウリックス様。お元気で。』
手を振るベンゾウリックス。リュトは彼の母親と共にベンゾウリックスの館を背にして歩き出す。母親に手を握られて歩いていくリュトの横を馬車が通り過ぎる。リュトの眼に映える馬車の窓の中にいる黒いドレスに身を包んだ細見の娼婦とたくまい太めの娼婦。いずれも帽子を深くかぶり顔は見えない。
振り返るリュト。馬車はベンゾウリックスの館の前で止まり、ベンゾウリックスが馬車に駆け寄る。眉を顰めるリュト。母親がリュトの手を引っ張り、去っていく。響くベンゾウリックスの笑い声。
C2 別れ END
C3 出仕
ロズマール共和国首都ロズマリー。ロズマリー城の階段を上るベンゾウリックス。門衛たちが槍で道を閉ざす。左側の門衛Aがベンゾウリックスを見つめ、槍を下げる。
門衛A『これはベンゾウリックス殿ではありませんか。一体何の御用で?』
ベンゾウリックスは門衛Aの傍らに寄る。
ベンゾウリックス『この度の警備の不手際を私が起こしたというのに何もお咎めが無い。どうかガギグルス殿にお目通りをと。』
門衛A『何をおっしゃいます。あれは貴族派の悪巧みによるもの…。ベンゾウリックス殿には何の落ち度もないのでは?』
ベンゾウリックスは笑い出す。
ベンゾウリックス『その悪巧みも見抜けなかったわしの間抜けさが悪いのだ。警護において最悪な被害を出した。それで咎めが無いのはおかしなことであろう。』
門衛Aは眉を顰めてベンゾウリックスの方を向いた後、右側の門衛Bに目配せする。門衛Bは頷く。
門衛A『暫しお待ちを。』
門衛Aは扉を開けて城内へと入っていく。ベンゾウリックスは手を後ろで組み、階段の上から晴れた空を見る。槍を下ろし、ベンゾウリックスを見つめる門衛B。足音が鳴り、扉が開くと門衛Aとゼオン・ゼンゼノスが現れる。振り返るベンゾウリックスに向けて一礼するゼオン・ゼンゼノス。
ゼオン・ゼンゼノス『この度は誠に…。』
ベンゾウリックスはゼオン・ゼンゼノスの前に手を出す。
ベンゾウリックス『堅苦しい挨拶は抜きだ。これも身から出た錆よ。』
ゼオン・ゼンゼノスは眉を顰め、溜息を付き、ベンゾウリックスに深々と頭を下げる。ベンゾウリックスはしゃがみ、ゼオン・ゼンゼノスの肩に手を当てる。
ベンゾウリックス『何、それよりも元気そうで何よりだ。』
ゼオン・ゼンゼノスは顔を上げる。
ゼオン・ゼンゼノス『はぁ、お陰様で大した怪我もなく。』
ベンゾウリックス『では、そろそろ参ろうか。』
ベンゾウリックスはゼオン・ゼンゼノスの横を通って門の中へと入って行く。続くゼオン・ゼンゼノス。
C3 出仕
C4 謁見
ロズマリー城玉座の間。
ロズマール共和国官僚A『よもや娼婦に化けて脱出するとは思いもよりませんでした。』
ガギグルス『広大なパトシェット砂漠へ逃げ込むとは厄介だな。』
玉座の間の門が開き、ゼオン・ゼンゼノスとベンゾウリックスが現れる。玉座に座る蝙蝠獣人でロズマール共和国代表ガギグルスと周りの官僚及び重臣達は彼らの方を向く。跪くベンゾウリックス。
ベンゾウリックス『此度のパレードの警護の任務に就きまして多大な犠牲を払ったことは全て私の責任でございます。本日はその咎を受けに参りました。』
ガギグルスは地図を見ながら口を動かす。
ガギグルス『今回の事は貴公の不手際ではあるまい。パリオン率いる貴族派連中の企みによることだ。貴公に咎を与える必要は無い。民衆の暴動により随分とひどい目にあわされているという報告も受けている。』
ベンゾウリックスは立ち上がる。
ベンゾウリックス『真でございますか。ガギグルス様。』
ガギグルス『左様。貴公を罪に問うことができようか。』
ベンゾウリックスは一礼する。
ベンゾウリックス『感謝してもしきれないくらいであります。』
ベンゾウリックスは玉座のへ向かい歩いていく。ゼオン・ゼンゼノスはベンゾウリックスに向かい手を伸ばす。
ゼオン・ゼンゼノス『ベンゾウリックス殿?』
ベンゾウリックスはガギグルスの前まで来ると満面の笑みを浮かべる。
ベンゾウリックス『貴族主義者万歳!』
眼を見開くガギグルス及び官僚達。ゼオン・ゼンゼノスがベンゾウリックスに体当たりする。爆発音が鳴り響き、爆風で飛ばされる瓦礫。ガギグルスは呪文を唱え、官僚たちと共に伏せる。煤で染まり壁に穴が開いた玉座の間に四散し、灰となって飛び散るベンゾウリックスの肉片が蹲るゼオン・ゼンゼノスに振りかかる。
C4 謁見END
END
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・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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