IS 〈インフィニット・ストラトス〉 蘇りし帝国の亡霊 第三話 急変 |
第三話 急変
「全く、一体この犯人は何者なんだ?絶壁のような壁を、難なく登れるような奴が本当にいるのか…?」
「大丈夫ですか?あまり根を詰めると、倒れてしまいますよ?」
「ああ、ミス・シュナイダー『キャロル。キャロルで構いませんよ』分かりましたミス・キャロル。だったら私もケヴィンで結構です。だがこの一週間なんの進展もなし…。『上層部』は『増員する』の一点張り。その割に逆に人員を減らしたり、本部の人間が乗り込んできてがなり立てたりして捜査の邪魔をするような事ばかりする。いい加減煮えますよ…」
「本当に…。あと鑑識の方も、直接聞きに行ってやっと聞けた答えなんですが、驚きましたよ。まさか上層部から鑑定するのを止めるよう言われていたなんて…」
「事件は数カ月前から起こってて、しかも犠牲者の中には有力な者の身内もいるのに何故…?」
「この事件、簡単に片付きそうもありませんね」
彼らは今まで警察署内にある捜査本部で状況整理や、事件現場を見て回っていた。
しかしブラスコヴィッツが述べたように、この一週間全くと言っていい程、事件に進展が見られなかったのである。
また、今彼が言ったように、「上層部」の『増員』云々は全く当てにならず、逆に第二回モンドグロッソの警備の為に人員を割かれたりしてしまったりしている。
そしてそれだけでなく、どこから聞きつけたのかその「上層部」の人間が突然やってきて、??―その時来る人間が、男か女かによってその文句の内容は変わるが??―大まかに言えば皆同じ内容を言いに来るのだ。
『下手に現場を荒らされては困る』『何で男が捜査の手伝いをしているのか』『これは我が国の問題、部外者は手を出さないでほしい』等である。
しかしこの捜査が(秘密裏にだが)国を挙げてのもので、自分が国から応援を要請されて来ている事を懇切丁寧に説明して??―つまり正式な書類を見せたりする事等で、黙らせいていたのだ。
だがそれでも連日同じ事の繰り返しで、貴重な時間を浪費する事が彼には我慢出来なかった。
「ミスター・ブラスコヴィッツ。お客さんですよ」
「……今日も、か?」
「ええ、そうです。早く行って下さいね。あの金切り声を聞いてると、思わず鉛玉食らわしたくなるので」
そんな事を考えている内に、また例の「上層部」の人間??今日は女性らしい??が乗り込んでくるのが目に入った。
「失礼します!」
「一体何の御用でしょうか?我々は今から、事件現場の検証に向かう所なのですが」
「その事について色々とお話があって、ここに来たのです。率直に言わせてもらいますが、部外者のあなたが、これ以上捜査に関わるのを止めていただきたいのです!!」
「何故そんな事を?確かあなたは、この事件に無関係だった筈です」
「ハッ、何故?そんな事決まっています。部外者だけならまだしも、男のあなたが、これ以上事件現場を荒らす事が我慢出来ないからです!」
どうやら今日乗り込んできた女性は、女尊男卑者らしい。ブラスコヴィッツの質問に対し、嘲笑を浮かべつつ、まるで「自分こそが正しい」というかのような態度で返してきた。
確かに第二回モンドグロッソが始まる中、国の恥とも取れる事件を部外者が手伝う事に関して不満を持つのは珍しくない。
「今まで自分達がしてきた事は大したものじゃない」そう言っているのと同義でもある。
だがそれだけでなく、『男』というだけで、捜査を手伝う事に対しても極端なまでに目くじらを立てる。正直捜査の邪魔者以外の何物でもない。
「失礼ですが、ミス?あなた方の同僚にも同じ事を述べているのですが、これは国家間が決めた正式な要請ですので、あなた一人の一存ではどうにも出来ません。なんなら書類を見せましょうか?」
「いいえ結構!国が決めたからと言って、全てを鵜呑みにした訳ではありません。これはあなたが断れば良いだけの事です!早速今から捜査を断る事を伝えに行きましょう。さぁ早く!!」
「…お断りさせて頂きます、ミス。どうやらあなたは勘違いしているらしい。これは国を挙げての捜査、もう私はそれに正式に協力する事になっているんです」
「ッうるさいわね!!そんな事知らないわよ!男の癖に!大体あんたみたいな奴見てると、イライラするのよ!!それにこの事件は、あなたにとって無関係のものじゃない!!」
いつもの如く彼は国の要請を受けてここにいる事を説明しようとしたが、女性はそれでも「聞く耳を持たない」と言わんばかりに彼を連れて行こうとしたが、彼はそれを拒否した。
その事に対し、口調を乱しながらも自分の思い通りにしようとしたが、それをしない彼に対し口にしてはならない事を言ってしまっていた。
「…失礼。私の聞き違いでなければ、今『この事件は私にとって無関係』とあなたは、そう仰いましたね?」
「え、ええそうよ…。そ、それが何か?」
今の今まで強気だった「上層部」から派遣された女性は、今まで物腰が柔らかだった男が突然雰囲気を変えた事に驚き、それまでの威勢の良さは瞬く間に鳴りを潜めてしまっていた。
「…『無関係』だと?いいか、よく聞け。私自身の事はどうでもいい。だがな、この事件で私は同僚や昔からの友人を、何人も殺されてるんだ。それを、『男だから、捜査を止めろ』?ふざけるのもいい加減にしろ…!」
「ひ、ひっ…!」
目の前の、これまで幾度もの激戦をくぐり抜けてきた男から発せられる言葉と殺気をまともに受け、彼女はそれ以上言葉を発する事が出来なかった。
それは彼の隣にいるキャロラインも同様であったが、彼女は口を引き攣らせながらも、なんとか言葉を口にする事が出来た。
「し、失礼、ミスター・ブラスコヴィッツ…。あの、は、早くしないと事件現場を見て回る時間がなくなりますが?」
「…そうですね、行きましょう」
彼はやって来た女性の脇を通り抜け、BMWまで向かおうとした。その途中で何かを思い出したかのように、その女性の方を向き新たに言葉を紡いだ。
「ああそうだ。他の『上層部』の方々に伝えておいて下さい。『次に邪魔をしたら、容赦はしない』と…」
「は、は、はぃぃ…」
「さ、行きましょう」
「え、ええ」
ブラスコヴィッツから発せられた殺気に、派遣された女性はただただそこで腰を抜かし、警官に声を掛けられるまで、へたり込み震えていた。彼等はそれを尻目に、車に乗り込み目的地へと車を走らせた。
「今日の見回る所は…」
「今日は軍の駐屯地近くの倉庫近辺です。確か、あそこは使われなくなった軍の施設の一部の筈です」
「軍のいる近くでの殺人とは…。やはり犯人は余程度胸があるのか、それとも馬鹿なのか」
「両方では、ないですか?今の時勢、全てを失い犯罪に走る人間もいますから」
「ああ…。だが、まだ疑問が残る。どうやって、絶壁を難なく登れるのか」
「ええ…あっ、あそこです。あの建物の近くです」
「なるほど、確かに犯罪を行うにはうってつけですね。まぁ近くに軍の駐屯地がなければですが」
「近くだからこそなんじゃないですか?よく言うでしょ、『灯台下暗し』」
「ハハッ、確かに」
彼等は車を降り現場周辺を見て回ったが、事件に関わりがありそうな証拠は何も見つからなかった。
最も、あの空気の揺らぎのようなものはここでも見つかったが、それは彼だけしか見えていないようであり、彼女や他の捜査員に言っても何も見えていないようであり、逆に心配される有様だった。
「やはり何も見当たらない…か。完全に行き詰まったな」
「ええ…。ちょっと待って下さい、あれは?」
「何だ?…全員静かに。物音を立てるな」
キャロラインが倉庫の方で何かを見つけたと思ったのか、ブラスコヴィッツが彼女が示した方向を見ると、とある集団が二人の子供を抱え、慌ただしげに倉庫に入っていくのが見えた。
その集団は軍の駐屯地近くであるにも関わらず、命が惜しくないと言わんばかりに、サブマシンガンで武装しているのが見えた。
「誘拐!?」
「全く、次から次へと厄介事が舞い込んでくる。殺人で手一杯だというのに…クソッ」
彼はぼやきつつも、何とか近づき犯人達を確認しようとしたが、残念ながら内部は既にシャッターが閉められ確認する事は出来なかった。だが、見張り役の人間がどんな装備なのか知る事は出来た。
「少なくとも犯人はサブマシンガンやアサルトライフルで武装しているな。誰か、至急本部に応援を。あと特殊部隊の要請もお願いします」
「はい!!」
捜査員の一人がブラスコヴィッツの指示を受け、すぐに車に戻り本部へ誘拐の事を知らせた。本部からは「すぐに増援を送る」という事を聞き、安堵していた。そして「捜査の増員も、このぐらい早くしてくれると有難いのだが」と余計な事を考えたが、すぐに頭から追いやりブラスコヴィッツの元へ戻った。
「すぐに応援が来るそうです!」
「よし。だが、捜査の方もこれぐらい力を入れてくれれば嬉しいのだが…」
「ふふっ」
「何だ?」
「いえ、自分も全く同じ事を思ったのでつい…」
二人は互いに顔を見やり一瞬笑みを浮かべたが、暫くして遠くから特殊部隊を乗せたバンが来るのを見え、それもすぐに消えた。
数台のバンから降りた隊員達はすぐに散開し、それぞれの位置についた。
「私は隊長のルッソです。通報はあなた達が?」
「はい。二人の子供があの倉庫に連れ込まれるのを目撃しました。外にいる連中はサブマシンガンで武装していますが、中はどうなっているのか…」
「分かりました、有難う御座います」
彼は捜査員達から事情を聞き、そして倉庫の設計図等を軍の駐屯地から取り寄せ、時間を掛け入念な突入計画を練った。そしてもし、敵にISを装備した者がいたら自分達の火力だけでは圧倒的に不利な為、駐屯地から臨時にIS操縦者が呼ばれた。
偶然この基地に来ていたISの操縦者は、クラリッサ・ハルフォーフという名前だった。
「よし。ではまず表を見張っている連中を倒した後に、少人数の者が室内を確認。確認が取れたら直ちに突入だ。いいか、何処に人質がいるか等が重要だ。もし爆発物の近くにいたら、迂闊に手が出せない。ハルフォーフ准尉は、上空で待機していて下さい。犯人の中にISを装備している者がいるかもしれない。もし何かあったら、直ちに援護をお願いします」
「分かりました」
「よし、では作戦開始だ」
ルッソ隊長の合図で、シャッターの前にいた数人の見張りが狙撃で倒れた。着弾点は頭。間違いなく即死だろう。
そして他の隊員も裏口へと周り、徐々に包囲網は形成されつつあった。後は室内を確認し、突入するだけだった。
しかしここで計画に大きな狂いが生じ始めた。突如、室内から悲痛な叫び声や怒声、そして銃声が聞こえてきたからだ。
ハーヴィング・ヴェルスコリーニは、何故今自分がこんな薄暗い倉庫の中で、アサルトライフルを抱え誘拐等をしているのか、何気なしにふと考えていた。
彼は元々単なるしがないサラリーマンであった。しかしISの台等によって、軍関係だけでなく様々な仕事等に影響を与えた。彼の会社もその例外ではなかった。
大会社ではないが、そこそこ中堅だった彼の会社は間接的にISに潰されたようなものだった。
それまで自分の会社に回っていた仕事の大半が、先方の一方的とも言える内容から急遽破棄され、会社の経営は急速に悪化し、半月もしない内に倒産してしまった。
後から知ったが何故一方的に契約が破棄されたのか、その理由自体は簡単なもの―――「男が多くいる会社に仕事なんか回したくない」と、それだけの理由だった。
だが彼はそれまで仲間や上司と築き上げてきたものが、そんな理由で潰されたのかと知った時、思わず彼は銃を乱射しそうになった。
しかしそれを懸命に抑え、なんとか再就職しようと頑張った。しかし「男だから」という理由で悉く落されたのである。
また彼が勤めていた会社を潰された事に、彼を含む有志は先方の会社を相手に訴訟を起こした。しかし一ヶ月も立たない内に、その面々の殆どが不自然な自殺や失踪を遂げていた。
そして彼も命を狙われる事になった。買い物帰りにいきなり銃を乱射され、太腿に傷を受けたのである。
その傷の療養中に裁判が終わってしまい、敗訴が決定してしまった。また逆に、訴訟を起こした彼等に対し裁判所は『先方の会社に対し、慰謝料を払わなければならない』等の理不尽な命令を下した。
ヴェルスコリーニは、腹を括った。
まともな職に就けず、更に莫大な慰謝料を払わなければならなくなってしまった彼に、残る道はとても残されていた。
裕福な女性の愛玩物になるか、自殺するか。或いは――テロリストになるか、だ。
女性の愛玩物なんて死んでも御免であり、また何故女性の為に自分が死ななければならないのか。
彼は迷わなかった。
そして軍に務めていた友人――彼もISの配備の影響で首にされていた――の伝から、反社会勢力に身を落とし5年近く立った。
その間に、各国の主要都市や発電所等の様々な施設を標的にした為、メンバーの大半が各国から指名手配されるまでになっていたのである。
また彼等は傭兵染みた事もしていた為、武器や資金等に不都合はしていなかった。それが彼等の勢力を発展させる原動力にもなっていたのだ。
そんな中、ある日とびきりとも言える仕事が舞い込んできた。
「『第二回モンドグロッソ』の日に、<ブリュンヒルデ>織斑千冬の弟、織斑一夏とドイツ首相の娘を誘拐し、彼女を決勝戦に出させるな」という依頼であった。
額としては10億ドル。中々の額であったが、依頼主からの条件として「自分の子飼いのISが一機、行動を共にする」事が提示された。
これにはメンバーの大半が難色を示したが、「主導権は我々側、こちらの命令に従うのであれば承諾する」として、結果的に仕事を請け負ったのである。
案の定、顔合わせの時メンバーの大半がISの操縦者を白い目で見ていた。
だがそのISの操縦者は、「家族が女尊男卑の影響でばらばらになり自殺し、一人になっていた所を今回の依頼主に拾われた」と、そう紹介されたのである。
それを聞いたメンバーの多くは半信半疑だったが、仕事に支障がなければ構わないという方針で決まっていた為、多くは聞かなかった。
そして第二回モンドグロッソの当日、誘拐する事に成功した。後は<ブリュンヒルデ>がこちらに着く前に逃亡する手筈になっていたが、会場からは何も連絡がなかった為、今回のアジトの軍の駐屯地付近の倉庫に身を隠していたのである。
彼は仲間のジャック・マルローと共に倉庫の中を巡回していたが、その時マルローは異常を知らせてきた。
「おいハーヴィ、これ一体なんだか分かるか?」
「どうした」
「いや、前ここら辺を巡回した時にこんな物無かった筈だろ」
それは医療ポッドであった。
軍施設ならば当然医療関係の類の物もあるかもしれないが、彼等がアジトとして使っている倉庫は数年前に廃棄されたものである。
それ故に、最新型にも見えるような代物が、こんな場所に置いてある事が可笑しいのだ。
また中身は入っているように感じられたが、あいにくその中身は漆黒に染まっていた為に、何が入っているか皆目見当がつかなかった。
「見た限り、医療ポッドみたいだな。でも、いつの間に…」
「分からない。だがここには俺達しかいない筈だ。もしかしたら、誰かがここに出入りしているのかもしれない。そうなると…」
「ああ、色々と厄介だ。こちらアルファ5、異常を確認!聞こえるか?」
『こちらブラボー7。一体どうした?』
「この間まで無かった医療ポッドみたいなのが置いてあるんだ。ポッドなんて搬入したのか?」
『ポッドだと?…いや、そんなの搬入した覚えはないぞ』
「クソッ!じゃあ俺達が知らない間に搬入された可能性がある。全員に警戒態勢を撮るように言ってくれ!」
『分かった!』
「それと確認の為、もう2〜3人こっちに回してくれ。オーバー」
『了解!オーバー』
「すぐに増援が来る。俺達はここで待機だ」
「了ー解」
彼等は増援を待つ事にしたが、漆黒の液体に満たされたポッドの中から、青白く光る眼が覗いているのを見て、反応する事が遅れてしまった。
しかし5年近く危険な場所に身を置いていたヴェルスコリーニは、それにいち早く行動しようとしたがポッドを破壊し自身に飛びかかってきた者をどうこうする間もなく、鋭い刃物が自分の体に吸い込まれるのを目にした。
激痛が襲い掛かり薄れ行く意識の中で彼が見た姿とは、布らしきもので顔を覆い、青白く光る眼を持ち、まるで死神を連想させた。
「死…に、神…」
それが彼がこの世で最後に口にした言葉だった。
その死神らしき者は刃を引き抜き、自分が刺した人物の首を刎ね飛ばしたのである。
テロリストで元サラリーマンだった彼は、自分の世界が反転していくのを見ながら視界が暗くなってくのを感じた。
ジャック・マルローは目の前で起きた事を到底信じる事が出来なかった。今まで会話をしていた仲間が刺され、そして首を刎ねられたのだ。
それを行った者は漆黒の液体を滴らせつつも正に死神を連想させるものだったが、おかしな所もあった。
・・・ ・・・・・
それは漆黒のコートを羽織い、漆黒のヘルメットを被っていたのである。
黒でない所を挙げるならば、青白い眼とその体を包むように巻かれている電線のようなものや、その背中にある電磁コイルのような機械があった。
そして特筆すべきは、両腕に巻かれている腕章らしきものであった。それにはドイツだけでなく、全世界でも忌むべきものとされ、決して存在を認められない紋章がそこに存在していたのである。
それは第二次世界大戦の引き金とされ、世界に恐怖と混沌を巻き起こした恐るべき集団の証―――鉤十字の紋章がそこに施されていたのだ。
そんな時代錯誤ともいえる者が、何故こんな倉庫で仲間を殺したのか。
マルローはそんな事ばかり考えていたが、次の瞬間には雄叫びと共に不審者にアサルトライフルを叩き込んでいた。
しかし叩き込んだ瞬間、その者は不気味な笑い声を挙げ姿を消した。彼は周囲を見渡したが何処にいるのか見当もつかなかった。
だが腕や足を次々と斬りつけられ、恐怖心からか仇討ちどころではなくなった彼は仲間の元へ一目散に駆け出したのだ。
「敵だ!敵だーーーーー!!」
しかしそこは元々が軍の倉庫という事もあり、ただでさえ広大な所に使われなくなった物資やコンテナ等が所狭しと置かれていた為、さながら迷路のようになっていたのだ。
彼はその中をなんとか通り抜け、仲間の目と鼻の先まで来る事が出来た。
「おーい!誰かーーーーー!!」
「おい、どうした!!」
「敵だ!敵がいr」
彼は仲間達に先程の惨状を知らせようとした。しかしそのすぐ背後には、漆黒の暗殺者がいた事を彼は気付かなかったのだ。
気付いた時には、鋭く大きめである刃物が彼の背中から生えていた。
彼はそこで、断末魔を挙げた。
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
『ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!』
『なっ!?』
『マ、マルローーーー!!』
『な、何だこいつ!い、いきなり現れやがったぞ!!』
『畜生、消えた!あいつ消えたぞ!!くそったれ、何処行きやがった!!?』
『うぎゃーーーーーーーーーーーーーー……!!』
『ひ、ヒィイイイ!!』
『ま、まただ!!』
『フフフ、ヒヒハハハハッ!!』
『畜生!なんなんだよ。なんなんだよ、あいつは!?』
『くぐもった笑い声…ま、まさか例の連続殺人犯!?』
『な、何だって!?クソ、なんでこんな所に!!』
『畜生!何処だ、何処にいる!!』
『アハハ、アハハハハハハッ!!』
『いたぞ、奴だ!撃ち殺せ!!』
―ガガガガガッ!!ガガガガガガッ!!!―
「まずい!突入、突入、突入!!」
予定よりも早いが、隊長の合図で隊員達は一斉に倉庫内へ突入した。
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今回ばかりから少々展開が早いです。 | ||
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