デジモンクロスウォーズ 絆の将と魔道の戦士 |
機動六課に査察が来た次の日の事である。
「突然だけど、すぐに出かけられる準備をしておいて。」
朝一番、タイキは起きるや否やはやてにこう言われた。なので、いつでも出かけられる準備をして部隊長の部屋に行くと、はやてともう一人、フェイトも一緒だった。
「とりあえずいつでも出かけられる準備はしたけど、どこかに行くんですか?」
部屋に入り、タイキが訊くと、
「これから聖王教会の本部に行くんや。そこで重要な話をするからタイキ君にも来てほしいんや。」
はやてはこう答えた、
「重要な話って?それならなおの事、」
タイキは、なおの事部外者当然の自分が参加するのはまずいのでは、と言おうとしたが、
「これからの動きにかかわる重要な話なんや、それにタイキ君に訊きたいこともあるし。」
はやてはこう言って、
「なのはちゃんはさっき帰ってきたはずやけど。」
と言って、なのはと連絡を取ろうとした。しかし、回線がつながった時、聞こえてきたのはなのはの声ではなく、子供が元気に泣きじゃくる声だった。
見ると、アインハルトと同様に両目の虹彩の色の違う幼い少女が、なのはにしがみ付いて泣いていた。当のなのはは困りきっており、周りにいるフォワードの四人も困っていた。
まさしく、迷子を見つけたはいいが、その子から家の場所も自分の名前も分からないと言われたお巡りさんのようだった。
(あれ、あの子は確か)
タイキはその様子を見ながら思った。そういえばこの間救出した女の子だ、と。
(うう、どうしよう)
自分の目線の先には泣きじゃくる女の子。なのはは今猛烈に困っていた。
「行っちゃやだー!!」
彼女はそう言って自分にしがみついている。
何故こんな事になっているかと言うと、病院に行って彼女を連れてきたは良いものの、自分に懐いてしまったようで全然離れてくれない。なんとかスバル達に面倒を見てもらおうと思ったが、四人がかりでもまるで太刀打ちできていない。
「ああもうヴィヴィオ、お願いだから泣かないで。」
なのははこう言いながら思った、泣く子には勝てないと言うが本当だ、と。
すると、扉が開いて、はやて、フェイト、タイキが現れた。
「エースオブエースでも勝てない相手がいるんやね。」
なのはは面白がっているはやて達に、
(なんとかして)
と、念話で訴えた。
様子を見ていたタイキは、
(それなら)
と考え、
「リロード!」
クロスローダーを掲げると、手始めにキュートモン、チビカメモン、スターモンズ、バステモンを出した。
「あれをどうにかできる?」
タイキは泣きじゃくるヴィヴィオを片目で見ながら、キュートモン達に訊いた。
「任せるっキュ!」
キュートモンはこう言って、先陣切って向かっていった。
「泣いたらダメだっキュ。」
キュートモンはヴィヴィオを撫でながら言った。
「そうだぜシスター!そしたら俺たちも悲しいぜ!」
続いてスターモンズもやって来た、少しばかり低くなっているとはいえ、相変わらずテンションが高い。
「僕たちヴィヴィオと友達になりたいんだカメ。」
チビカメモンも加わったところで、ヴィヴィオは泣き止んだ。最後にバステモンが、
「別にヴィヴィオはなのはさんに迷惑をかけたいわけじゃないんでしょう。でもなのはさんはこれから大事な用事があって出かけなくちゃいけないの、でもヴィヴィオが泣いてるとなのはさんはいつまでも出かけられないし、この子たちは悲しい。だからなのはさんが帰ってくるまでお姉さん達といい子で待ってましょう。」
とヴィヴィオに言ったら、しぶしぶと言った感じだったが、ヴィヴィオは了承した。
と言うことで、タイキはクロスローダーの中のデジモンの中で、今の四体とドルルモン、ナイトモン、ポーンチェスモンズ、ピノッキモン、スパーダモン、ルーチェモン、ワイズモンをお守り係りとして残していくことにした。
また、バリスタモンはメンテナンスを行う為、グラウンドラモンは眠いという事で、機動六課の隊舎に置いて行った。
「それにしても、ええ物見せてもらったわ。」
ヘリに乗って移動する最中に、はやてがなのはに言った。
「もう、笑いごとじゃないよ。」
なのはにとっても困る事である。これから里親を探さないといけないというのに、このままではそれをヴィヴィオが了承してくれそうにないからである。だからと言って、無碍に突き放すのもどうかと思われるが。
「せっかくだし、なのはさんが直々に里親になればいいんじゃ。」
クロスローダーの中のスパロウモンが言った。
「無理に引き離す必要も無いと思うよ。」
なのは本人は、
「帰ったら私がもう少し話してみるよ。今は周りに頼れる人がいなくて、不安なだけだと思うから。」
と、言った。
そして一同は、聖王教会の本部へとやって来た。
「うおお!すげぇ!!」
周りにそびえる教会を模した建物を見ながら、シャウトモンはクロスローダーの中で感嘆の声を上げた。
「確かにすごいな、教会をイメージして作ってるだけあって、なかなか凝ってる。」
タイキも周りを見ながら感心していると、
「こっちやー!!」
遠くではやて達が呼んでいたので、先を急いだ。
そして、教会の建物でも特に警備の固い施設「教会騎士団本部」のとある部屋にやって来た。
「どうぞ。」
二回ノックをすると、中から落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
「失礼します。」
とりあえず、まずはなのは、はやて、フェイトが入った。
「高町なのは一等空尉です。」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。」
仮にも上官に会うということで、二人は真面目な挨拶を行った。そして、最後に入ってきたタイキは、
「そいで、彼が民間協力者の工藤タイキ君。」
と、はやてが紹介した。
「いらっしゃい、それに初めまして。私は教会騎士団騎士、カリム・グラシアです。」
そして、四人を出迎えた修道服を身に着けた金髪の女性カリムに案内された席には、先客だろう黒い服を身に着けた男がいた。
「それで、この人はクロノ・ハラオウン提督。フェイトちゃんの義理のお兄ちゃんなんや。」
彼の事は、はやてが紹介した。
クロノと呼ばれた男は一回咳払いをした。余計なことを言うな、と言いたいのだろう。
しかし、いつまでも世間話のようなことをしていても何も起こらないので。
「とりあえず、今回はこれまでの活動のまとめと、今後の話、それと改めて機動六課設立の本当の意味を話すな。」
と、はやてが言った。
そして、部屋のカーテンが閉まったところで、話が始まった。
「知ってのとおり、六課設立の表向きの理由は、ロストロギア、主にレリックの取り締まりと、独立性の高い少数部隊の試験運用。」
まずは、クロノが口を開いた。
「後見人は僕と騎士カリム、それと僕とフェイトの母で上官の「リンディ・ハラオウン」非公式とはいえ三提督の後ろ盾もある。」
(少数部隊、それも試験運用でここまで贅沢な後ろ盾。一体なんで)
ここまでの話を聞いて、タイキは思った。
「これについては、私の能力と関係があります。」
すると、おもむろに立ち上がったカリムがこう言って、持っている紙の束の帯をほどいた。
「私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。」
すると、彼女の周りを束になっている紙が回り始めた。
「これは最短で半年、長いときは数年先の未来の出来事を詩文形式で記録した予言書を作成する能力。二つの月の魔力がそろわないと発動させられないため、年に一度しかページを作ることができません。」
そして、その中のうち三枚が、なのは、フェイト、タイキの元に飛んできた。とりあえず、そこに書いてある事はちゃんと意味はあるのだろうが、タイキにしてみれば完全にチンプンカンプンである。
「書いてあることは古代ベルカ語で、解釈によっては違う意味になることがあるので、的中率は割とよく当たる占い程度。」
カリムはあまり便利な能力ではないと言ったが、
「それでも、聖王教会や管理局の大物達はこの予言に目を通す。」
と、クロノが補足した。ある意味では事件の予防策の一環らしい。
「ちなみに、地上本部の指導者はこの能力がお嫌いや。」
と、はやても付け足した。その指導者の事を知るタイキとその仲間たちは、
(確かに)
一様にあの強面を思い出しながら思った、
「そして、ここからが重要な部分だ。その予言書にある事件が書き出されてる。」
クロノがこう言うと、カリムは一枚の予言書を手に取り、その内容を読み上げた。
「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地、死せる王の元、聖地よりかの翼が蘇る。死者たちが踊り、なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、それをさきがけに、あまたの海を守る法の船も崩れ落ちる。」
ここまで聞いた時、皆は思った。それはまさか、と。
「ロストロギアをきっかけに始まる、管理局地上本部の壊滅と、そして、管理局システムの崩壊。」
タイキはここで気が付いた、これに抗するため機動六課があそこまで贅沢な後ろ盾になったんだと。そして、
(しかし、死せる王とか、かの翼って?)
と、考えていると、
「ですが、ちょうどタイキさんとはやてが出会ったころに、新しい予言が追加されたんです。」
カリムはこう言うと、別の紙を取ってその内容を音読した。
「偽りの竜王の元、異世界の獣が世界を駆け、破滅の炎が森羅万象を焼き尽くす。」
ここまで聞いた時、タイキとデジモン達は気が付いた。
「それってまさかD5じゃ?!」
かつて、バグラモンがコードクラウンの力を使ってあらゆる世界を破滅させようとした事を思い出したのだ。
「D5とは?」
と、クロノがタイキに訊ねた。知らないのは当然である。
「DIMENSION(次元のパワー)、DELETE(で消去し)、DEADLY(あらゆるものを破滅させ)、DESTRUCION・DAY(破壊する日)、これを略してD5と言うんです。」
タイキはこの場にいる皆に、実際に人間界でこうなった時のことを話した。あらゆる生命体は活動を停止し、建造物は荒廃して、あのまま自分たちがバグラモンを止められなかったら、あらゆる次元世界が滅んでいただろうと。
「私達の知らないところでそんな事があったなんて。」
なのは達は驚いたが、一番驚いたのはカリムだった。何故なら、その事件は自分の能力で予言されていたのだという。
「というのは後回しにして、この予言には続きがあるんです。」
カリムはこう言って、続きを読み始めた。
「絆の将と魔王が手を与し時、真なる竜王と二人の王の元、偽りの竜王の野望打ち砕かれる。」
「つまり、俺がここに呼ばれたのも。」
ここまで聞いたタイキは気づいた、ここにいる皆は「絆の将」を自分の事だと思っているのだと。
「そうや、絆の将はタイキ君やと思ったからや。ところで、魔王と真なる竜王、二人の王に心あたりはある?」
はやてがタイキに説明を行うと同時に訊ねた。
そして、魔王が誰なのかを考えた時、この場にいる人間の目がすべてなのはに集まった。
「ええ?!ひどいよみんな!」
彼女は九歳のころから悪魔と呼ばれていたのだ、大人になったのだからそろそろ魔王に昇格する所だろうと考えたらしい。
(とりあえず、ベルゼブモンとルーチェモンは魔王型のデジモンだけど、竜王はともかく二人の王って何者だ?)
タイキも考えてみたが、自分の知り合いに該当する人物は一人もいなかった。それでも、分かったことが一つだけあった。
「つまり機動六課は、実際にこの予言の中に書かれていることが起こった時、すぐに対処できるように一年限定で?」
と、タイキは訊いた。ここまでの話を整理した結果、この結論に至ったのだ。
「そうや、それでやけどな。きっとこれからは今まで以上に厳しい戦いになると思う。そもそも君たちにとっては蚊帳の外やけど。でも私たちはこの世界を守りたいんや。だからこれからも機動六課に協力してくれへんか?」
はやては真剣な口調でタイキに言った。勿論、ここでのタイキの返答は決まっている。
「ああ、誰かが傷つこうとしてるなら。俺はほっとけない。」
「そう、ありがとうな。」
そして、この場での話はお開きとなった。
ちなみに、彼らが機動六課の隊舎に帰った時、隊舎が3割ほど壊れていたという。
カットマン
「カットマンと。」
モニタモンズ
「モニタモンズの。」
全員
「デジモン紹介のコーナ―!」
カットマン
「さて、今回のテーマはナイトモン。ナイトモンは鎧を身に着けた戦士型のデジモン。必殺技は持ち前の大剣を振る「ベルセルクソード」だ。」
モニタモンA
「途轍もない重さの鎧を身に着けながら、それでもなお巨大な剣を振り回す怪力の持ち主ですな。」
モニタモンB
「一説では強すぎる力を制御するために重い鎧を身に着けてるらしいですな。」
モニタモンC
「鎧の中は汗臭そうだな。」
全員
「それじゃあ、またね。」
次回予告
ある日の事、突如機動六課を竜王を名乗る少年「キサキ」が襲撃する。そして彼とタイキの全面抗争となる。
次回「絆の将と暴君の激突 タイキVSキサキ」
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第十四話 戦いの予兆 | ||
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