単一の幸福を求めて…第9話 |
第9話 白斗の珍道中 その弐
白斗は陳留を目指していた…
その途中にある街に立ち寄った白斗だったが、白斗が街に着いて暫くたった後、街は黄巾党に襲われてしまった。
街の城壁には白斗の姿があった…
白斗は城壁の上から眼下の黄巾党を見つめる。
白斗「敵の数は約三千か……さて、どうしたもんか……」
白斗は呟いた後、城壁から飛び降りる。
白斗「しょっ…っと、ん?これは…」
無事に着地した白斗は城壁にひび割れた箇所を見つける。
白斗「……此所だけ脆くなってるのか?…………これは使えるかもしれんな」
許緒「秋蘭さまっ! 西側の大通り、三つ目の防柵まで破られました!」
夏候淵「……ふむ、防柵はあと二つか。どのくらい保ちそうだ? 李典」
李典「せやなぁ……。応急で作ったもんやし、あと一刻保つかどうかって所やないかな?」
夏候淵「……微妙なところだな。姉者達が間に合えば良いのだが……」
白斗「恐らく、間に合わないだろうな……」
夏候淵の言葉に銀髪の青年が答える。
秋蘭「単福殿か……何故、間に合わないと?」
白斗「俺が此処に来る途中、黄巾党の別働隊がいたんだが、その進行経路が援軍の進軍経路に丁度重なるんだ」
秋蘭「なんだと!?」
白斗「俺の予想が当たればの話だがな……別働隊の数は多くはないがそれなりに数はいた、援軍も無傷では来られないだろう」
于禁「夏候淵さまー! 東側の防壁が破られたのー。向こうの防壁は、あと一つしかないの!」
李典「……あかん。東側の最後の防壁って、材料が足りひんかったからかなり脆いで。すぐ破られてまう!」
夏候淵「くっ……仕方がない西側は防御部隊に任せ……」
楽進「……夏候淵さま、後のことはお任せいたします。自分が討って出て……」
いかにも武人らしい女の子、楽進が覚悟を決めた目で発言する。
許緒「そんなのダメだよっ!」
楽進「……っ!」
許緒「そういう考えじゃ……ダメだよ…」
李典「……せやせや。突っ込んで犬死にしても、誰も褒めてくれへんよ」
楽進「……うむむ」
許緒「今日百人の民を助けるために死んじゃったら、その先助けられる何万の民を見捨てることになるんだよ。わかった?」
楽進「……肝に銘じておきます」
白斗「ふむ……許緒はなかなか良いことを言うな。それじゃ、万の民を助けるために策を出すとしますか」
夏候淵「何か策があるのか?」
白斗「ああ。ただ……策を実行するには此処にいる全員の力が必要だ……やってくれるか?」
楽進「はっ!」
于禁「わかったの!」
李典「おう! 死んでたまるかいな!」
許緒「秋蘭さま。ボクたちも……」
夏候淵「ああ。……皆、ここが正念場だ。力を尽くし、何としても生き残るぞ!」
こうして曹澡軍、大梁義勇軍、そして白斗による苛烈な防衛戦が開始するのだった。
許緒「ホントだー、ひび割れてるねー」
李典「兄さん、ここでええんやな?」
白斗「ああ、なるべく城壁を崩さないように頼む」
街の北側の城壁に白斗、許緒、李典の三人と200人の兵士がいた。
李典「了解、了解。 ほないくで。……螺旋撃ッ!」
ギュイイイイイイイイイイイイイインッ!
許緒「わぁあああ!すごいすごい!」
李典「どりゃどりゃどりゃどりゃーーーー!」
あっという間に城壁に穴が空き、数十人が一度に通れるぐらいの大きさになった。
李典「はぁ……氣を使う技は疲れるわ」
白斗「お疲れさん。…と言いたい所だが戦はこれからだぞ?」
李典「鬼ーーーー!」
李典は涙目だった。
白斗「それじゃ…許緒、西側は頼んだぞ?」
許緒「うん、兄ちゃんも頑張ってね」
白斗「おう! 李典も少し休んだら楽進達の方に合流してくれよ?」
李典「はいよー、まかしとき」
そういうと、三人は別れ、白斗と許緒はそれぞれ100人の兵を連れて城壁の穴から街の外へ出て、西と東に別れた。
それを見送った李典は急いで東側の守備をしている楽進達の下に向かった。
白斗の策はこうだった。
まず曹澡軍、大梁義勇軍の合計800人の中から精鋭200人を選別する。そして北の城壁に穴を空け、街から抜け出し、白斗が西に、許緒が東の黄巾党の部隊へ、それぞれ100人の兵士を連れて、背後から奇襲を仕掛ける。
この時、敵部隊の背後に周る際には敵に気付かれないように、大きく迂回しなければならないため、相応の時間が掛かってしまう。
その間、敵を食い止めるのは、東側はまだ暫く防柵が機能しているため夏候淵が一人で担当、西側は防柵が殆ど破られている為、楽進、于禁、そして穴を空け終えた李典の三人が担当、兵の数はどちらも300人とぎりぎりの人数であった。
ーーー西側防御部隊
西側では夏候淵が防御部隊の指揮を取っていた。
夏候淵「くっ……何とか持ちこたえているが、やはり数の差は厳しいな……」
兵士A「夏候淵将軍!四つ目の防柵が破られました!」
夏候淵「……残りは一つか……季衣、頼んだぞ」
西側は防柵のお陰でなんとか戦線を保っていたが、それも後一つとなっていた……
ーーー東側防御部隊
一方の東側では既に防柵が破られ、楽進、李典、于禁が先陣を切り戦線を支えていた。
楽進「くっ……!防ぐだけで精一杯か……!」
李典「アカン! 凪、もう戦線が持たんで!」
楽進「ここまでだな。……沙和、真桜。後は頼んだぞ」
于禁「え? でも凪ちゃんはどうするの?」
李典「……凪、死ぬ気でおるとかアホなこと言うたらアカンで?」
楽進「……大丈夫。死ぬ気は無い。ただ奴らに一矢報いたいだけだ」
于禁「凪ちゃん……」
兵士B「敵後方に砂塵を確認!」
楽進・李典・于禁「………っ!?」
ーーー西側奇襲部隊
兵士C「許緒将軍!準備完了しました!」
許緒「うん!すぐに突撃するよ!」
兵士C「はっ!」
許緒「兄ちゃんが派手にやれって言ってたし……本気で暴れるぞー!」
許緒が敵部隊の背後から奇襲を掛ける。
許緒「いっくよーーーーー!食らえーーー!」
巨大な鉄球を敵の集団にぶん投げる。
怒轟御音!!
黄巾党「「「うぎゃああああっ!」」」
許緒の鉄球を受けて、敵の部隊が吹き飛ぶ。
許緒「突撃ーーーーー!」
ーーー西側防御部隊
兵士D「夏候淵将軍、敵の後方から砂塵!許緒将軍です!」
夏候淵「間に合ったか! 良し、こちらも攻勢に転じるぞ」
兵士D「はっ!」
ーーー東側奇襲部隊
兵士E「単福様、奇襲準備完了!防御部隊も健在です!」
白斗「……なんとか間に合ったか。 良し、俺が先陣を切る!鋒矢の陣で敵部隊に突撃を掛けるぞ!」
兵士「「「応っ!」」」
白斗は素早く陣形を整えて突撃を開始する。
白斗「……防御部隊は壊滅寸前……敵の注意をこちらに引きつける必要があるな」
白斗の背中に青い炎が浮かび上がる。
白斗は氣を練り拳に力を込める。
白斗「はぁぁぁぁっ!!天翔龍撃ッ!!」
白斗の放った巨大な龍が前方の黄巾党の集団を食い破る。
黄巾党「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」
背後から突然の奇襲を受けた、黄巾党が恐慌状態に陥る。
白斗「……敵の三割は削れたか?
敵が慌ててる今が好機!突撃ーー!」
兵士「「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」」
ーーー東側防御部隊
楽進「…………凄い」
李典「あの兄さん、軍師やいうてたけど、あないに強かったんやね」
于禁「だよねー。青色の龍がドカーン!てなったの!」
楽進「………単福殿」
李典「ん?凪、どないしたん?」
楽進は目を輝かしていた。
于禁「あれ? 凪ちゃん、どうしたのー?」
楽進「えっ!? い、いや、何でもない」
李典「んー? もしかして、自分、あの兄さんに見惚れてたんかあ?」
楽進「そ、そんなこと……っ」
李典「凪ちゃん、もしかしてー?」
楽進「…………わ、私はただ、同じ武闘家として」
李典「意訳するとー、『凪にも手取り足取り教えて欲しい』ちゅーこっちゃな」
楽進「……………………」
楽進は顔を真っ赤にして俯いた。
李典「お、否定せえへんのや」
楽進「ぐ……っ、真桜っ!!」
李典「はははっ、まーまー怒ったらアカンって」
于禁「………凪ちゃんってば、真っ赤になっちゃて、かわいーの」
楽進「と、とにかく!今は戦闘中だぞ!二人共戦いに集中しろ!」
李典「おう!やったるで!!」
于禁「一発かましてやるのー!!」
三人は奇襲を受けて混乱している黄巾党に切り込んだ。
白斗の奇襲作戦は見事に成功し黄巾党の部隊は壊滅、残った敵も敗走を始めていた。
白斗「逃げる敵を追う必要はない!防御部隊の救援を最優先にしろ!」
兵士F「報告です!街の外、西側より大きな砂塵!大部隊の行軍のようです!」
白斗「っ! 旗印は!?」
兵士「はっ! 旗印は曹と夏候! 曹澡さまと、夏候惇さまですっ!」
白斗「……やっと来たか、もう大丈夫だな……………さてと」
夏候惇「秋蘭! 季衣! 無事かっ!」
秋蘭「危ない所だったがな……まあ見ての通りだ」
許緒「春蘭さまー! 大変だったんですよ!」
曹澡「二人とも無事で何よりだわ。損害は……大きかったようね」
夏候淵「はっ。しかし彼女らと軍師殿のお陰で、防壁こそ破られましたが、黄巾党を撃退し、最小限の損害で済みました。街の住人も皆無事です」
曹澡「……彼女らは?」
楽進「……我等は大梁義勇軍。黄巾党の暴乱に抵抗するため、こうして兵を挙げたのですが、黄巾の賊がまさかあれだけの規模になるとは思いもせず、こうして夏候淵さまに助けていただいている次第……」
曹澡「そう。己の実力を見誤ったことはともかくとして……街を守りたいというその心がけはたいしたものね」
楽進「面目次第もございません」
曹澡「とはいえ、貴女達がいなければ、私は大切な将を失う所だったわ。 秋蘭と季衣を助けてくれてありがとう」
楽進「はっ!しかし我々だけでは黄巾党の撃退は難しいかったでしょう……単福殿の策がのお陰です」
曹澡「そうなの?それで単福という軍師は何処にいるの?」
夏候淵「それが……戦が終わった直後に姿が見えなくなりまして……」
曹澡「なんですって?」
街から少し離れた丘の上に白斗の姿はあった…
白斗は丘の上から曹澡軍を見渡し、最後に曹澡を見ていた。
白斗「へぇ…あれが乱世の奸雄、曹澡か……凄まじい器だな。 だがあれは覇王の器……正直、俺には合わないな」
そう呟くと白斗は街に背を向けて次の目的地に歩きだした。
あとがき
第9話終了です!
宣言通りに時間がかかるようになりました…
今回は曹澡見物!……かな?
白斗の珍道中はまだ続きます。
白斗さんの次の目的地とは!?
涼しくなってきた今日この頃…
それでは皆様また次回〜!
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真・恋姫無双の二次創作です。 主人公を始めオリキャラ多数、苦手な方は御遠慮下さい。 白斗さんのフラグ集めの旅、第ニ弾です。 皆様お付き合いありがとうございます。 |
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