新訳 真紅の鬼神 第一六鬼 〜鬼の怒り 中編〜 |
『官渡』そこでは袁紹軍と曹操軍による熾烈な戦闘が繰り広げられていた。
30万の兵力を有する袁紹に対して曹操軍は10万余。
圧倒的兵力差にも関わらず曹操軍は善戦していた。
袁紹軍は確かに兵力はだけはあるが、それを率いる将が少ない。情報統制が取れていない。
対して曹操軍は指揮能力の高い将に練度の高い兵。統率の取れた動き、優秀な軍師。絶対的カリスマ性をもった主君。
しかし、中々終わらないのはやはり、数の暴力には中々勝てないと言うことか。
既に戦いの火蓋がきられて5日が経っていた。
そしてその戦いを崖の上から見つめる影があった。
曹操軍SIDE
「桂花、戦況は?」
「ハッ・・・春蘭、秋蘭が前線で奮戦しており、徐々に袁紹軍は後退し始めてます。」
「そう・・・もう少しの辛抱よ。」
現在、曹操軍は敵将許ユウが齎した
「30万の袁紹軍を支えるための兵糧が持ち込めれ、官渡の北にある烏巣に集めれている」
という情報に直ぐに兵を動かし、楽進、于禁が兵を率いて向かっている。
「前線に伝令を、力はなるべく温存しておきなさい」
「ハッ」
伝令兵は直ぐに前線に向かう。
「報告!!」
伝令兵と入れ違いに血相を変えた兵が転がり込んできた。
目で話すように促すと兵は大きな声で話し出した。
「正体不明の軍勢が西にある崖に現れました!!」
「なんですって?」
敵の援軍か?
だとしたら不味い。
華琳は天幕から出てその方向を向く。
「なっ」
「な、なによ!あの軍勢は!!!」
其処にはほぼ垂直の崖を駆け下りている軍勢の姿があった。
勢いをそのままにその軍勢は袁紹軍へとぶつかった。
「ウゥゥォオォォォォオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
人のものとは思えない雄叫びと共に人が吹き飛んだのが遠くからでも良く見えた。
袁紹軍SIDE
「報告!!!謎の軍勢が出現!我々の軍へと突っ込んできました!」
「そんなの早く倒しなさい」
「ハッしかし、その兵が強く・・」
「そんなの関係ありませんわ!この名門袁家の兵がそんな謎の軍勢何かに負けるはずありませんわ!オーホッホホホホ」
袁紹が報告にきた兵を怒鳴っていると、顔の色を青色を通り越して土色にした兵が転がりこんできた。
「ほ、ほ報告!!!謎の軍勢の正体が判明!!」
「フン。何処の軍ですの?名門袁家たる私に向かってきた愚か者は」
「そ、それが・・・」
「なんですの?はっきり言いなさい」
「りょ、りょ・・・呂布です!!」
一瞬の沈黙の後、袁紹軍の本陣にて悲鳴にも似る叫び声が響いた。
「見つけたぞ。袁紹ォ」
崖の上、金に光る悪趣味な鎧の軍勢の先にある一つの軍営。
一際目立つ天幕に牙門旗。
アイツが父さん母さん、羽入さん・・・村の皆をッ
「全兵士に告ぐ・・・皆殺しだ。向かってくるものは容赦なく殺せ、殺して殺して殺し尽せ」
地獄から這出てきた魔物のような声に兵達は胸に復讐心を募らせる。
見ず知らずの自分達を優しく迎えてくれた村人達に恩がある彼らには十分に仇であった。
「行くぞ・・・」
赤兎が走り、崖を降りていく。
ほぼ垂直の崖を誰一人と脱落することなく降り、その勢いのまま袁紹軍の横っ腹に突っ込む。
「ウゥゥォオォォォォオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
人間の声量を遥かに凌ぐ雄叫びは遠くにある袁紹軍はおろか曹操軍の本陣までも響いた。
「コロスコロスコロスコロスコロス」
恋はブツブツと呟きながら容赦なく殺していく。
一振りで4人を斬り飛ばし、黒兎で容赦なく踏み潰していく。
身体を血に染めるすがたは何処か妖艶であった。
「あぁぁぁ!!!なんだよテメェ等!クソッこのゴミがぁぁぁ!!」
魏続は得物の斧を振り回す。
偶に癇癪を起こす魏続は今回はそれも激しかった。
「おいおいおいッんだよお前等、ねぇよ・・・こんな腑抜けに殺されたんじゃ浮かばれないだろ!!もっと根性だせや!!!」
候成は大きな金棒で頭やら身体やらを吹き飛ばしながら叫ぶ。
「どうした?この程度か?ほら、かかってこい」
クルクルと高速で円を描きながら剣を振るう。
普段からは考えれない程の変わりようだった。
中でもやはり焔は激しかった。
積もらせた怒りと憎しみを一気に爆発させた焔を止める者はもはや誰も居なかった。
焔の通った道には無残な亡骸しか残らず、通る度に大量の血飛沫と肉が舞った。
片手で持った鬼焔を縦横無尽に振るい、片手では兵の頭を兜から握りつぶしそれを振り回し武器として、モノとして扱った。
前進を真っ赤に染めて怒号と共に攻め続ける姿は正に鬼そのものだった。
反董卓連合軍での活躍はすでに知らぬ者はおらず、また初めて見る者はその強大さに腰を抜かしていた。
焔の腕の筋肉が隆起し、その力強さを辺りに見せつける。
その見事に割れた腹筋は血に濡れ妖艶に光っている。
その光景を少し後ろで見ていた騰は自身の身体が震えるのに気付いた。
「(殿の怒りが、哀しみが全兵士に直接流れているようだ)」
確かに、自分たちに優しくしてくれ友となった村人達を殺され怒りに燃えるのは当たり前だが、兵達の怒りは尋常じゃない。
ここまで人を兵達の心を掴み、感情を共用できる将がどれほどいるか・・・。
素直に尊敬したがそれと同時に恐怖も抱いた。
そんな事を考えていると、声がかかった。
「騰、左を殺れ。なるべく曹操の兵は殺すな・・・迎撃してきたら容赦するな」
「ハッ」
その表情は分からないが、言葉だけでもどれだけ信頼を寄せられているか分かった。
ならばその信頼に答える働きをするのが己の役目。
そうだ、殿に対して抱く気持ちに恐怖など要らん。いるのは・・・・絶対の忠義と信頼だけだ。
偃月刀が煌めき袁紹軍の一角へと降りおろされた。
「ちょ、やばいって!姫、逃げましょうよ!!」
「何を言っておりますの猪々子さん!名門袁家があんな野蛮な者共に退くことは許されませんのよ!!」
その耳に残るような高い声を更に高くして叫ぶ。
しかし、言っている事とは裏腹に顔は青白く、足はガタガタと震えていた。
そうしている間にも呂布は着々とこの本陣へと向かっている。
「どうして」
斗詩・・・顔良には何故あそこまで呂布が激怒しているか分からなかった。
確かに、反董卓連合の時の怒りをぶつけられても仕方ない。
だが、あれは異常過ぎる・・・。
兵だったモノを唯見つめることしか出来ず、己の握る得物さえ気を抜けば落としてしまいそうだった。
本能が告げているのだ。その場にいた全員に、否、この戦場にいる全ての兵達に・・・・
逃げろと
曹操軍は巻き込まれないようにかいつの間にか後方へ下がっていた。
そうなると、必然的に兵達は曹操軍の動きを気にしながら呂布と戦う事になった。
しかし、戦うと言っても余りの過激な攻撃に既に瓦解寸前だった。
元々、曹操軍との兵の練度の差を兵数で補っていたのだ。
そこへ大陸が認める最強の武将、呂布とその配下の精鋭が一丸となって襲ってきたら長い戦場で疲労していた兵達の心は直ぐに折れてしまうだろう。
しかも袁家の兵ならばなおさらだ。
金で雇った兵は既に逃げ始めている。
逃げない者は腰が抜けているもの、余りの光景に絶望した者。混乱しなにをすれば良いか分からなくなった者だけだ。
総じて言えるのは、誰も戦う意思が反撃するだけの勇気が無いというだけだ。
袁家の将達は悉く討たれていく。
「姫様・・・逃げて下さい」
「斗詩さんまで何を言っておりますの!?」
「麗羽様ッ!」
初めて聞く怒声に辺りは静まり、聞こえるのは戦場からの断末魔だった。
「麗羽様・・・逃げてください。このままだったら直ぐに呂布が此処に来ます。」
「斗詩・・・」
「りょ、呂布など我が精鋭たる兵が「麗羽様!!」ッ!!」
「目を開けて良く見てください!!兵は逃げ、戸惑いただ殺されているだけです!!最早戦う意思さえありません!!」
「そ、そんな」
そこで漸く現実を見たのか力なく地面へと座り込む。
「ど、どうすれば」
「逃げてください!!わ、私が残って食い止めますから!」
「なら、アタイも斗詩と残って足止めするかな」
「・・・文ちゃん、ありがと」
「い、いやですわ・・・」
「麗羽様、お願いします」
「姫が生きてればなんとか袁家は大丈夫だろうしな?」
そんな二人を見て袁紹は涙を流す。
「まぁ、逃がさんがな」
そこに低く腹に直接響く様な声が聞こえた。
次の瞬間、濃厚な殺気が充満し、全員が苦しそうにしゃがみ、震え出した。
「よぉやく会えたな・・・・袁紹ォ」
その声と共に天幕が薙ぎ払われた。
そこに現れるは全身を血に濡らし、一切の感情を無くした様な顔をした鬼がいた。
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コメント | ||
これもしも冤罪だったらどうしよう・・・って思考がここに一人;^^(M.N.F.) 殺戮!!!!!(ロドリゲス) ヒャッハー!汚物は消毒だぁぁぁぁぁ!!今更こいつを殺してもしんでいった者達は浮かばれないとかいわないよなぁ?こいつは人を不幸にする!生きてちゃいけない奴なんだ!!(ラーズグリーズ1) ここでの袁紹の振る舞いによって、死に様が変わりそうですね。もはや生死を問えるような段階じゃありませんから。(h995) ( ゚∀゚)o彡°蹂躙!( ゚∀゚)o彡°蹂躙!( ゚∀゚)o彡°蹂躙!(eitogu) |
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