いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第六十七話 『この世界』の沢高志
リインフォース達とはやて達が合流する少し前。
ドオオオオオンッ!
モービディックのゼロ距離射撃を受けた高志は思ったよりダメージを受けていないことに気が付いた。
「タカシ!無事!」
「何やってんだい!早くそんな奴ぶっ飛ばしちまいなよ!」
見ればモービディックの持つ砲門に絡みつくように二色の光る鎖がついていた。
それは彼に声をかけるユーノとアルフから伸びた光の鎖だった。
それだけじゃない。俺の体を覆う形で桜色の半球体の光の壁があった。
「なんで…?」
アサキムが見逃したというのか?それは考えにくい。あのアサキムがスフィア以外で温情をかけるようにも感じられない。
「今、リインフォースさんとはやてちゃんが切札を使っている間はアサキムもこっちには来れないよ」
「なのは?!」
謹慎を喰らっていたはずの彼女がどうして?
「…うん。星光に言われてこっちに来たんだ。あ、星光っていうのは私の姿をした私に似ている」
「なのは!そんなことを言っている場合じゃないよ!早くそいつをどうにかしないと!」
「あう。そうだった!レイジングハート」
なのははガンレオンを着込んだ俺の背中出っ張り(マグナモードを使うと翼に変化する部分)を掴んで空に浮かび上がる。
ある程度空に浮かび上がるとユーノが用意してくれた空に浮かぶ魔方陣の上に乗せられた。
「これの上にいれば少しずつだけど回復するはずだから」
「…助かる」
と、俺が魔方陣の上に座ると同時にアルフとユーノの鎖によって動きを封じ込められていたモービディックがそれを振りほどく。
「…ちっ。あいつが動き出すよ!」
アルフが動き出したモービディックを見て舌打ちをしながら迎撃に入ろうとした。が、それは杞憂に終わる。
「デュランダル!奴を凍らせろ!」
[オーケー、ボス!]
ガキィイイイイインッ。
モービディックの足元から生えたかのように出現してきた氷の大樹にモービディックは吸い込まれていく。
そして、モービディックを中に閉じ込めた氷の大樹が出来上がると同時にその氷の主はなのはを怒鳴りつけた!
「なのは!これで二回目だぞ!」
「あうっ。ごめんなさい」
クロノもリンディから事情を聞き、タカシの救援に駆け付けたのだがなのはがいることには多少なりにも驚いていた。
叱責を受けているなのはをフォローしようとアルフが口を挟む。
「まあ、いいじゃないか。タカシも助けきれたんだから。それにあの四本足も完璧に凍っているし…」
「だけど、あのガンレオンに似ているあのライオンはどうしようか」
レオーの姿を見たユーノがそう呟くとレオー達の表面が赤黒く発熱していく。そして、レオー達は高志の方を見て呪いの言葉を呟く。
「求めろ、求めろ」と。
「なんだい、あいつ等は…」
「…何か嫌だよ。なんか怖い」
「タカシを見ている?」
おおおおおおおおおおおおおっ。
レオー達は呪詛のように呟きながら体を白熱させながらモービディックを捕えている氷の大樹に体当たりしていく。
その発熱して体当たりした衝撃でレオー達はどんどん砕けていくがその分だけ氷の大樹も溶けていく。
「あいつ等、あの氷の樹を溶かすつもりか!」
その様子になのはとアルフは誘導弾を放ちレオー達を蹴散らす。
「させないよ!アクセルシュート!」
「フォトランサー!」
だが、それでもレオーの数は多いいくら撃っても撃ってもそれ以上にいるレオー達はどんどん氷の大樹にぶつかっていく。
「クロノ!」
「…駄目だ。封印が解ける」
レオー達が一機残らず氷の大樹にぶつかっていったことにより全滅した。
その代わり、モービディックが活動を再開する。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!
モービディックの咆哮が鳴り響く。
その咆哮を聞いた者全員があのクリスマスの時に見た、闇の書の暴走体を思い出していた。
だが、サイズは今、相手にしている奴の方が小さいし障壁も少ない。
今の自分達でも倒せる。
…タカシが万全なら。
「…く、マグナモード展開準備」
高志は言葉にしてガンレオンに命令するが高志の目の前に現れたモニターには『使用不可』とだけ書かれていた。
(…こっちも駄目。なんかスフィアが力を出すのを嫌がっているみたいだよ)
「…なんで。なんでこんな時に限ってマグナモードが使えない!」
アリシアの声を聴いて高志も何度も使おうとしたが使えなくなっていた。
そして、以前クロウに言った言葉を思い出した。
『スフィアが見限った』。という言葉。
高志は自分が『傷だらけの獅子』に嫌われるようなことをしたかどうかを思い直す。
『傷だらけの獅子』は『痛み』を糧にする。痛みならこの戦闘中にも日常的にも受けてきている。だとしたら…帰りたいという『本能』に背いているから?
「来るぞ!散開!」
モービディックはまるで見えない螺旋階段を上って来るかのように上空にいるなのは達に襲い掛かる。
モービディックが突貫してきた場所には誰もいなくなっていた。そして、その空間に入り込んだモービディックを桜色の砲撃が襲う。
更にはアルフから放たれる魔法弾も追撃に入る。が、障壁に阻まれる。
逆に障壁が働いている間に大砲を彼女達に向けられた。が、その四本の大砲を押さえつける。
「魔力攻撃じゃ無理だ!」
「タカシ。あんたが決めてくれ!」
確かにあいつを倒すならマグナモードでのペイン・シャウター。もしくはザ・ヒート・クラッシュ。もしくはなのはのスターライトブレイカーだ。
「…なのはがやってくれないか。俺は…」
俺はまだ迷っている?
『元の世界』と『この世界』を。
『世界の危機』と『世界の平穏』を。
俺はどちらを選択する。
ギャオオオオオオオオオオオッッ!!
モービディックがユーノの拘束を解いて咆哮をあげながらなのはに突進していく。
[ラウンドシールド]
ガアンッ。
と、一度なのはの前に発生した盾とぶつかった音が鳴り響くと同時になのははその場所に踏ん張れることなく後ろに流されていく。
ズガガガガガガガガガガガッ。
「ああああああああああ!」
引きずられていくかのようにモービディックに引きずられるなのはを慌てて追うアルフ、ユーノ、クロノの三人。
「「なのは!」」
「くそっ。なのはぁ!」
そんな中、高志一人は動くに動けずにいた。
ガンレオンの鎧が重い。まるで意志を失った鉄のかせのように重い。
「動け、動いてくれガンレオン!」
(駄目!どんどん力が抜けていく!?どうして…)
アリシアの声を最後に俺は意識が急に遠ざかっていくのを感じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何も見えない真っ白空間で気が付くとそこには緑色の光の球が目の前にあった。。
…選べ。
…っ。
…選択の時だ。
俺にかけてくる声。…お前、まさか
そうだ。『揺れる天秤だ』。
お前は元いた世界に帰るという『本能』と、それにはこの世界でであって来た人達を犠牲にする『覚悟』。
そして、
この世界に留まるという『理性』と、それを行うには((最大の敵|・・・・))と立ち向かわなければならないという『覚悟』。
お前はどちらを取る。どちらに天秤は傾く?
俺は…。
『きゃああああああああ!』
『ぐあああああああああ!』
クロノ!なのは!
俺は…。
『よくも、やってくれたな四本足ぃいいいいいいい!!』
『アルフ!駄目だよ!』
ユーノとアルフの声も聞こえる。だけど、聞こえるのは声だけで外の映像は流れてこない。
俺は…。
選択しろ。
『この世界』か『元の世界』か。
俺は…。
(お兄ちゃん。起きて!早く!)
俺は。
(私達を…)
俺はぁあああああああ!
(助けてよぉおおおおおおお!)
ガァオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
そうだ。俺はアリシアを。家族を守るんだぁあああああああああ!!
体中にガンレオンの鎧がいつの間にか展開されていた。代わりに目の前にあった『揺れる天秤』の光はひび割れて弱々しいものになっていた。
な、ぜ?『傷だらけの獅子』に見放されたというのにお前は…。
思い出しただけだ。
何を?
俺は『この世界』の沢高志だという事を。さ。
諦めたのか?元の世界に帰る事を。
違う。
では『太極』を求めるのか?
それも違う。今はだけどな。
ではお前は何をする?
俺はな、アリシアの『お兄ちゃん』なんだよ。
アリシアだけじゃない。ちびっ子たちが目の前で戦っているのにここで大人である俺だけが傍観するわけにはいかないんだよ。
俺は目の前にいる奴等は俺の半分くらいしか笑っていない。楽しんでもいない。だから俺は選択するんだ。
こいつ等が大人になるまでの世界を守らなきゃいけないんだよ。それが俺の『選択』だ。
それを行っていくには、こいつ等の前に立って倒していかなきゃいけないことがあるんだ。だから、力を貸してくれ…。
ガンレオォオオオオオオオオオオオオンッッ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(ほえっ!?ガンレオンの状態異常が全快した。スフィアの力も一杯一杯)
「よし!これなら…」
と、同時に目の前のアイコンには
『揺れる天秤』が封印されました。
と表示された。
アリシアの声と目の前のアイコンを見て俺は思った。
俺が元いた世界に帰るべきかどうかで悩んでいたから『揺れる天秤』が表面部分に出て『傷だらけの獅子』を引っ込めた。が、俺が『傷だらけの獅子』を選択したことにより本調子が戻ってきたということだ。
「アリシア!」
(な、なに?)
「マグナモード。一気に決めるぞ」
アリシアもまた高志がいつもの調子に戻ったことに気が付いた。
さっきまで心の中にため込んでいた物が吐き出されたかのような爽快さ感じたアリシアのテンションも上がった。
(う、うん♪)
「よし。それじゃあ…。クロノ、アルフ、なのは、ユーノ。五秒でいい。そいつの足を止めてくれ!」
高志の声を聴いた四人は高志の方を見ると、ガンレオンの所々から零れだしているスフィアの光が煌々と染まっていることを確認してなのはを除く全員がモービディックにバインドをかける。
モービディックは動けないながらも大砲を動かして何とか攻撃しようとした。が、次の瞬間にはその砲身はなのはのディバインバスターで薙ぎ払われた。
「よしっ。行けぇえええええ、タカシ!」
「よっしゃぁあああっ、全力全開!」
(マグナモード!)
クロノの声を聴いて高志はマグナモードを発動させる。
分厚い装甲は悪魔の再来を再現するかのごとく、獅子の背中に悪魔じみた翼と炎の羽が出現すると、空中を駆け抜けているモービディックにその手に持った巨大なレンチを叩き付ける。
ガギャアアアアアアンッッ!
モービディックの角を折りながら顔面部分にも亀裂と凹み生じさせながら空へと打ち上げる。が、打ち上げた対象よりもさらに高速移動いして移動先で待ち構えていると飛んできたモービディックを再度撃ちあげる。
バギャアアアアアアンッッ!
モービディックは口から大量の血らしき物を吐き出しながら今度は垂直に打ち上げられたが、それにすらもガンレオンは追いつき、それを抑え込むようにして地面に叩き付ける。
ザンッ。ドシュッ。ドボッ。グチャアッ!
叩き落されたモービディックの背中にまたがると肉を引き潰したり引き千切っていたりする生々しい音が響く。
そして、そんな行為の中一際大きなリンカーコアを見つけた高志はライアット・ジャレンチを召喚して、その矛先でリンカーコアを掴み、抉り出す。
モービディックの体も突如自分の体の大事な一部を取られたのでもがき苦しんでいたがもう遅い。
「大!解!たああああああああい!!」
ズドン、ズドンッ、ズドン!ズドン!!
ジャレンチに挟まれたモービディックのリンカーコアはライアットジャレンチから伸びてきた鋼の杭を打ち込まれ続けた結果、ヒビだらけの応対でどうにかコアとしての状態を保っていた。
しかし、それを天高々に持ち上げて、最後にレンチ締め上げるとガラスが擦り合うような悲痛な音が鳴ったのは一瞬。そして、
ガキイイイイイイイイインッ!
と、はかなく消えていった。
以前の闇の書の暴走体ならここで欠片が変化してタコの足のようになって高志を襲うのだが、今回はそんなことはなかった。
「今回はレンチの先に魔力を集中したから、な」
(うん。でも。これで…)
高志はライアット・ジャレンチを地面に突き刺していった。
「俺達の完全勝利だ!」
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第六十七話 『この世界』の沢高志 | ||
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コメント | ||
xekudrei さんへ。 いや、さすがにここであれを使うと集中力がきれて、マグナモードも解けて、モービディックにペチャンコにされていますよ?!基本、プレシアかアリシアが高志をおちょくるシステムなので。…まあ、いずれはそれも使う予定ですけどね(たかB) トラウマヴォイスでCDSを期待してたから天秤封印はちょっと残念、使うたびに別の意味でもだえ苦しむから主人公的にはないほうが幸せか(xekudrei) やっぱりこういう王道は大好きだあああああああああああああああああああああああ(孝(たか)) ……………ふぅ、取り敢えず一言いいか?…よし…惚れてまうやろうが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!…失敬、取り乱してしまいました。(神薙) |
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