魔法世界に降り立つ聖剣の主 (改訂版)
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2:仮面ライダーカ○トは設定だけ見ればチートの権化

 

 

 

 

目を覚ませば知らない天井…などではなく、何度も顔を合わせた事のある医務室の天井だった。

 

ここで寝てるって事はあのまま力尽きて意識を失ったんだろう。

全く、親父もスパルタ過ぎるんだよ。

 

まぁそれにムキになって付き合ってる俺も大概だろうけど。

だって癪じゃんか、途中ギブアップなんて格好悪いじゃん?

 

自分が意地っ張りだとか無駄な所で根性見せる面倒な質だってのは重々承知してるけど、これは前世から引き継いでしまったものなのだから仕方ない。

ガチで死んでも治らなかった辺り本当にどうしようも無いと思った方が良いだろう。

 

そんな自分の馬鹿さ加減に呆れつつ身体を起こそうとしたが、少し力を込めただけで身体中に筋肉痛なんてチャチなもんじゃ断じてない痛みが走った。

 

 

「ぎぃっ!?な、何だ…これ……?」

 

 

思わずあられもない声を上げる程に激しい痛みで身体をよじれば、また痛みが走り、またのたうち回ってはの繰り返しで医務室は一気に騒がしくなった。

 

俺以外の人達がいなかったのは幸いだった。こんな姿出来れば誰にも見せたくない。

 

ひとしきりバタバタしていると俺はついに身動き一つ取れなくなるまで疲れ果て、まるで泥の中に沈み込む様にしてふかふかのベッドに身体を埋める。

 

 

「クソ…一体…何だ…ってんだよ……。」

 

 

上手く言葉が発せられない。喋る度にあばらが軋むのだ。

しかし何故ここまでボロボロになっているのだろうか?

 

確かに限界ギリギリまで親父との打ち合いに付き合ってたけど、いくらなんでもここまで身体に負担を掛けるような無茶苦茶な動きはしていなかった筈だ。

 

 

「そうだ…最後の…あの時……」

 

 

一瞬だけ周囲の光景がスローに見えたあれだ。もしかしたらそのせいで……否、それは無いだろう。

 

あれは脳内でアドレナリンとかが分泌されて起こる現象であって、筋肉のリミッターが外れるとかそういうのじゃない。

 

もしそれによって何らかの反動が帰って来るのならそれは身体ではなく脳に来る筈。

 

となれば一体何がどうしてこうなった?てなことになる。

だが、いくら考えても分からない。まぁその辺は今無理して考える事もないだろう。

 

俺はそのまままた眠りにつこうとするが、その直前に扉の開く音がした。

 

 

 

 

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首を動かしたら痛いから視線だけそちらに向ける。

やっぱり真横が見れないから分かり辛いけど、入ってきたのは俺のよく知る人物だと分かった。

 

 

「漸く目をお覚ましになられましたか。良かった良かった。」

 

「アン婆。」

 

 

俺がアン婆と呼んだのは一人の老婆。その名をアンブローン・ジウスという。

 

まぁ知ってる人は知ってると思うけどあのマッドサイエンティストBBAだ。

 

けど、この人は原作のアンブローンとはかけ離れていて普通に良い人だ。

俺も初めは警戒してたけど、色々と面倒を見てもらう内にそんなものは彼方に吹っ飛んでしまっていた。

 

前世でも婆ちゃんに会ったことも無かった俺にとっては、アン婆の親のそれともまた違う愛情は何だか新鮮で、ついつい居心地が良くなってしまうのだ。

 

まぁそれでも若干マッドな所は残っていて、偶に珍しいモノとか現象を見たらバラしたくなるらしい。現象をバラすってどんだけ?

 

そんなちょっとお茶目な人だけど、この人のインサラウムに対する思いは本物だ。

 

先代当主…つまりは俺の爺ちゃんの代から仕えている人だから家の中でも人望厚く、俺もこうして親父にこっぴどくやられた時とかに傷の手当をしてもらっているから腕も人柄も含めて認めている。

 

 

「やれやれ、若様はまたご無理をなさった様で……婆めは肝が冷え切る思いでしたぞ?この老骨にそう何度も満身創痍のお姿を晒さんで下され。」

 

 

「死期が早まります」とか割りと洒落になっていない事を言いながらアン婆な溜め息をつく。

 

 

「なぁアン婆。さっきから身体がめっさいたいんだけど、俺ってそんなにボロ雑巾みたいになるまでやられちまったわけ?」

 

 

折角心配してもらってる所で悪いけど、これを何とかしないとベッドから起き上がる事も出来そうにない。

 

 

「若様は秘められた力を発現なさったのです。」

 

 

アン婆はあらかじめ聞かれる事を予期していたかのような素振りで即答した。

 

ていうか何だよその厨二臭い言い回しは。秘められた力って何ぞ?

 

 

「若様は“レアスキル”を発現されたのです。それもとびきり稀有な形のものを。」

 

「レアスキル?文字通り珍しい能力ってこと?」

 

「はい。あり体に言えばそうなりますな。若様が発現させたのは“魔力変換”魔力を特定の物体、または自然現象に変換プロセス無しで変化させるものです。」

 

 

あれ?何か聞いた限りだと大したことないように聞こえんだけど?どの辺がレアなの?

 

 

「腑に落ちないといった顔ですな。確かにこれだけならば単なる資質であってレアスキルとまではいかぬのですが、若様の場合は作り出すモノが問題なのです。」

 

「そんなにド偉いモノなのか?俺が作るモノって……」

 

 

アン婆って一々大袈裟なものの言い方するから聞いてると無駄に不安を煽るんだよね〜。

その辺どうにかしてよ頼むから。

 

 

「若様は“タキオン粒子”と言うモノを知っておりますか?」

 

「?」

 

 

タキオン粒子?確か宇宙戦艦ヤ○トの波○砲とか仮面ライダーカ○トのク○ックアップとかに使われてるって言うあれか?

 

よくSFで出て来る仮想の物体だったと思うけど、詳しい事は知らない。

ってかここでその話題が出るってことは……

 

 

「若様の思っている通りでございます。若様の魔力変換によって生み出されるのはタキオン粒子。常時光速で移動し続ける物体を生み出す、ある意味、“物質創造能力”の一種なのです。」

 

「マジで?Σ(゚д゚lll)」

 

 

ガ○ダムOOの○N粒子並みのチート粒子を作る能力とか……あのオッサン神は俺にどんなチート能力を押し付けて行きやがったんだ!?

 

 

「それに加えて、検査の結果若様には“魔力収束”というレアスキルを保有していることも判明しましたのです。これ程のポテンシャルを秘めた人物はそうはおりませぬ…!婆めも流石に驚きましたぞ!」

 

 

やばい、アン婆が軽く興奮してる。こんだけ絶賛するんなら本当にすんごい能力なんだろうな。

 

はぁ…俺はどうやら生まれつき人外と化していたようだ。

まぁ父親がアレだった時点で覚悟はしていたんだが……

 

 

「けどそうなると、俺がぶっ倒れてその後激痛に襲われたのはそのレアスキルってのが使えるようになった反動とかなわけ?」

 

「いえ、正確に言えばそうではありませぬ。若様はあの時全身に流れる魔力を一斉に変換されてしまったのです。それにより体組織に擬似的な加速術式が掛けられ、一瞬ですが若様は“光速”移動を可能にしたのです。」

 

「は?」

 

 

え?光速?高速じゃなくて光速?いやいやいや、ありえんでしょ物理的に……ありえないよね?

 

だけど、もしそうだとしたら辻褄は合う。あのガス欠寸前の土壇場でそんなもの使えば意識も途絶えるだろうし、いきなりそんなデタラメな速度で動いたんだから後になって反動が帰って来るのも当然だ。

 

まだちゃんと出来上がってもいない子供の身体で…否、それ以前に人間の身体でそんな速度は普通に無理がある。

 

本来なら一発で全身がバラバラになるようなレベルの話だ。

それがこうして五体満足でいられるのは恐らくこの身体のスペック故だろう。

 

どうやら本格的に人から離れて来たらしい。まぁ毎日のようにスパルタ訓練されてればおかしな話でもないが……

 

 

「けどそれなら何で治癒術式やってくんなかったんだよ?おかげで目覚めて早々過剰過ぎる気つけで危うく失神しかけたんだけど。」

 

「申し訳ありませぬ。検査や解析の前に一通りの治療は施したのですが、それでもお体の負担を取り除き切ることは出来なかったのです。」

 

 

こと治癒術に於いては最高峰の腕を持つアン婆でも治し切れないってことは相当な負荷がかかったってことだ。本当に死ぬ一歩手前だったんだな俺。

 

 

「少なくともあと一週間は絶対安静です。暫くはゆっくり身体を休めて下され。」

 

「はーい。」

 

 

ここで渋る理由も無い。それよか合法的にのんびり出来るから大歓迎だ。

俺が静かに喜びに浸っていると、アン婆がたった今思い出したようにハッとした顔をする。

 

 

「そうでした。ご当主から言伝を賜っていたのです。忘れる所でした。」

 

「へ?」

 

 

親父の伝言?何か嫌な予感が…

 

 

「治ったら休んだ分を取り戻す為に普段の数倍は特訓メニューを組むから覚悟しておくようにと。」

 

「orz」

 

どうやら俺の平穏は当分先の話になりそうだ。

 

 

 

 

 

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