英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 356 |
〜隠者の庭園〜
「う〜、まぶしかった〜。一体何があったって言うのよ………」
メイド姿の女性――マリーニャは顔を顰めて、溜息を吐いた。
「フフ……さすがの私も驚いたよ。まさかマリーニャちゃんまで巻き込まれていたなんて。」
「へ………?って、リタ??あんた、いつの間に屋敷に来たのよ??しかも知らない人達を連れて……ってあれ???ここ………どこ?」
リタの言葉を聞いたマリーニャは呆けた声を出した後、リタやケビン達を見て驚き、さらに周囲の景色を見て首を傾げた。
「フフ………とっても驚くかもしれないけど、最後まで聞いてね。」
そしてリタは自己紹介をしたケビン達と共に現状や異世界の事を説明した。
「……………あ、あたし達の世界以外にも世界があって、さらにこの状況………あ〜、もう!頭がこんがらがって来るわ!こういう事はエクリアやリ・クアルーとかなら理解できるでしょうけど、あたしには何が何やらサッパリよ〜!」
現状や異なる世界が繋がっている事を聞いたマリーニャは疲れた様子で溜息を吐いた。
「それで確認なんだけど、マリーニャちゃんも巻き込まれた状況は私達と同じ?」
「ええ。突然目の前が白く輝いたと思ったら………後は記憶がないわ。」
リタに尋ねられたマリーニャは頷いた。
「ふむ………話に聞くところ、マリーニャさん?でしたか。どうやらマリーニャさんはリタちゃんの世界の人のようですけど…………」
「もしかして巻き込まれた時は異世界にいたんですか?」
「あたしからすればあんた達も異世界の人達なんだけどね………ま、そうよ。レウィニアっていう国の王都にあるセリカ様の屋敷で明日の朝食の下ごしらえをレシェンテと一緒にしていたのよ。」
ケビンとリースに尋ねられたマリーニャは溜息を吐いて頷いた。
「ま、まさかリベールどころか世界を超えるなんて………」
「とてつもない事だな………」
”方石”が巻き込んだ人物が異世界にいた事を知ったティータやユリアは驚いた。
「それでマリーニャちゃんはこれからどうする?」
「ここでジッとしていたって屋敷に帰れないし、あたしもあんた達に協力するわ。一緒に巻き込まれたレシェンテも探したいし、それにもしかしたらご主人様達も巻き込まれているかもしれないし………」
「そっか。フフ………マリーニャちゃんと一緒に冒険する日がまた来るなんて思わなかったよ。」
マリーニャの申し出を聞いたリタは微笑んだ。
「あ〜……申し出はありがたいんですけど、大丈夫でしょうか?できれば非戦闘員のマリーニャさんは一応今の所安全なこの場所で待っててほしいんですけど………」
一方マリーニャの申し出を聞いたケビンは苦笑しながら言ったが
「―――いや、その心配は無用だろう。」
「へ?」
静かな表情で呟いたユリアの言葉に驚き、ケビンはユリアを見た。
「マリーニャ殿は見た目は女官の服装をしているようだが………相当の腕を持っている。私では恐らく彼女に敵わないだろう。」
「ふ、ふえええ〜!?マリーニャさん、メイドさんなのにそんなに強いんですか!?」
「ユ、ユリア大尉がそこまで言うなんて……」
「………驚きました。」
ユリアの説明を聞いたティータとケビン、リースは驚いた。
「フフ、ユリアさんの言う通り、マリーニャちゃん、とっても強いですよ?なんてたって主の”使徒”なんですから。」
「ま、自慢はするつもりはないけどこう見えてもご主人様やリタ達と共にそれなりの修羅場は経験しているから、戦闘に関しては心配は無用よ。」
ケビン達の様子を見たリタは微笑み、マリーニャは何でもない風に答えた。
「あの………気になる事があるのですが。」
「ん?何が気になったの?」
リースの疑問を聞いたマリーニャはリースを見て尋ねた。
「先ほどリタさんがおっしゃった”使徒”という言葉が気になったのですが。”使徒”とはいったい何なのでしょうか?」
「あ〜…………よりにもよってそこが気になったのね。できればその話題は避けたかったんだけどな〜………ま、いいわ。」
そしてマリーニャはリタと共に”使徒”に関しての説明をケビン達にした。
「「……………………」」
”使徒”の説明を聞いたケビンは口をパクパクさせ、リースは驚きの表情でマリーニャを見つめ
「ふ、ふええええ〜!?マリーニャさん、神様から力を与えられて生きているんですか!?」
「まさに神話に出てくるような存在だな…………」
ティータやユリアは信じられない表情でマリーニャを見つめた。
「う〜ん………ご主人様の場合、一応”神”になるのかしら?」
「主の肉体は”神”だから間違ってはいないと思うよ?」
ケビン達の様子を見たマリーニャは考え込み、リタはマリーニャの疑問に答えた。
「つくづくとんでもない世界やな、異世界っていうのは………。………ん?肉体が”神”ってどういう事や?」
「げ。リタ!神父やシスターの前でその言葉を口にしたら不味いわよ!」
ケビンの疑問を聞いたマリーニャは焦った様子でリタに指摘した。
「フフ、大丈夫だよ。ケビンさん達は主の事は説明してあるし、ケビンさん達の教会はまだ主を敵と断定していないよ?」
「”まだ”でしょうが。どうすんのよ、もう〜………」
「………詳しく説明をお願いしたいのですが。」
リタ達の会話を聞いていたリースは真剣な表情で尋ねた。
「う………どうする、リタ。」
「説明をしないと納得してくれなさそうだからね。説明をした方がいいと思うよ。」
「は〜………わかったわ。………あたしが仕え、そしてあたしに力を与えてくれるご主人様―――セリカ様の事はあんた達はどこまで知っているの?」
リタに言われたマリーニャは溜息を吐いた後、真剣な表情でケビン達に尋ねた。
「セリカ………聞き覚えのある名前だな……?」
「ユリアさんもですか?わたしも聞き覚えがあるんです。」
セリカの名前を聞いたユリアとティータは首を傾げたが
「セリカ………………んな!?まさかプリネ姫が言ってた”神殺し”っちゅう奴か!?」
ケビンは考え込んだ後信じられない表情で叫んだ。
「”神殺し”………?ケビン、一体何なの?」
一方訳がわからなかったリースはケビンに尋ねた。そしてケビンはかつてプリネから聞いた”神殺し”の存在をリースに説明した。
「……………………」
ケビンの説明を聞き終えたリースは厳しい表情でマリーニャを睨んだ。
「あ〜、もう。宗教関係者に話したらこうなるから説明したくなかったのよね〜。」
リースの様子にマリーニャは疲れた様子で溜息を吐いた。
「こらこら、リース。そう睨んだらあかんやろ。」
「けど、ケビン。神を殺して肉体を奪った存在なんて私達にとっては。」
ケビンに指摘されたリースは反論しようとしたが
「リース。」
「…………………ごめん、軽率だった。………申し訳ありません、マリーニャさん。貴女が何かした訳でもないのに睨んでしまって………」
真剣な表情のケビンを見て、状況を理解したリースはマリーニャに謝罪した。
「別にいいわよ、慣れてるから。それで?あたしがご主人様――”神殺し”の”使徒”と知って、それでも協力していいの?」
「オレ等の世界では”神殺し”さんの事は一部の人しか知らんし、”神殺し”さんの存在は上に報告してまへん。ですから協力をお願いします。」
「へ〜……神に仕えているのに、ご主人様の事を黙っててくれるんだ?」
「プリネ姫もこちらの世界に来ることはないと言ってましたし。………それより話によるとマリーニャさんは”第二使徒”と言ってましたが、他にも”使徒”がいるんですか?」
「ええ。あたしを含めて”使徒”は全員で5人よ。」
「という事はマリーニャさんのように”神殺し”さんや”使徒”さん達も巻き込まれている可能性はありそうですな………」
マリーニャの説明を聞いたケビンは考え込んだ。
「ええ、ご主人様を含めたみんなを探すためにもあんた達に力を貸すから、よろしくね!」
こうしてマリーニャを仲間に加えたケビン達は探索に戻り、ある広い場所に到着すると、中央から妖しげな光陣が出現した!
〜翡翠回廊〜
「………来る!」
「予想通りや!」
「………気を付けて!そこらの雑魚とは格が違うわ!」
妖しげな光陣から何か出てくる事を察し、仲間と共に武器を構えたリースとケビンは全員に忠告し、同じように自分の武器である短剣――”盗賊神の短刀”と”リヴェルナイフ”をそれぞれ片手に構えたマリーニャは警告した!すると妖しげ光陣から今まで戦った”魔物”数倍の大きさはある”魔物”が現れ、さらに今まで戦った石像の”魔物”が数体現れた!
「ふええっ!?」
「な、なんだあれは………!」
今まで戦った事のないタイプの敵の登場にティータは不安そうな表情で叫び、ユリアは驚きながらも警戒していた。
「黄泉の渡し守。死せる魂を導く霊櫃(れいひつ)。聖典に記された七十七の悪魔の一匹、”嘆きの櫃”ベヌウ………!」
「あら。だったらある意味私とナベリウスの仲間という事ですか。」
敵―――ベヌウの説明を警戒しながら説明したリースの話を聞いたリタは若干驚いた。
「まさかソロモンの悪魔以外にも聖典に記されていた本物の悪魔と対面できる日が来るとはな………上等や!女神の僕の力、思い知らせたる!」
「”冥き途”の守護者の力………見せてあげる!」
そしてケビン達は戦闘を開始した…………!
後書き という事で予想していたと思いますがまずはマリーニャ登場です!!………感想お待ちしております。
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第356話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます。まあ、神殺し誕生の真実を知らないからそうなっちゃうんですよね………(sorano) マリーニャのリアクションは予想通りでしたねw セリカに対するリースの反応は間違ってはいないですけど・・・セリカの過去を知ったらそんな反応できなくなると思いますよ・・・。(本郷 刃) |
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