IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
時間は経ってお昼休み。
食堂にやって来た瑛斗たちは、顔見知りの新入生を見つけた。
「蘭、よかったな。IS学園に入学できて」
「はい! 頑張った甲斐がありました!」
五反田蘭。一夏の友達の五反田弾の妹だ。瑛斗は数回顔を合わせただけなのだが、一夏は旧知の間柄なので先ほどから楽しそうに話をしている。
「お兄なんか泣いて喜んじゃって、こっちまでちょっともらい泣きしちゃいました」
「へぇ、俺、弾から何も聞いてなかったけどな…」
「きっと、一夏さ…先輩を驚かせたかったんだと思います」
「ちょっと」
そこに鈴がカットイン。
「な、なんですか、凰先輩」
「なぁにが先輩よ。一夏にデレデレして」
なぜか不機嫌な鈴。
「先輩なんですから、先輩って呼んで何が悪いんですか?」
「ぐっ…可愛げのない後輩ね……!」
バチバチとメンチを切り合う蘭と鈴。
そんな二人に戸惑う一夏が声をかけた。
「お、おい二人とも…」
「なんですか」
「なによ」
「いや……なんでも」
射すくめられた一夏は黙り込む。
「そ、それはそうと、整備科ってうちのクラスからは誰か行くのか?」
一夏は話題を変えようと整備科の話を持ち出した。
「そうだなぁ…のほほんさんなんかがそうなんじゃないのか? 簪、なにか聞いてないか?」
瑛斗が簪に顔を向けると、簪は箸を置いて答えた。
「本音は…整備科に行く………よ」
「ほー、やっぱりな。あんだけの腕があればスカウトだったりして」
「本音も、整備科の方が…自分に合ってる、って」
「そうだな」
「お前はどうなんだ?」
食器を戻してきたラウラが瑛斗に聞いた。
「なにが?」
「整備科のことだ。お前は元々IS研究者なのだろう? 興味はないのか?」
ふーむ、と瑛斗は手を頭の後ろに組んだ。
「別に興味がないわけじゃないけど、こいつらがいるからなぁ」
瑛斗は首を右手で触り、左手を軽く上げた。
「首には制御不能の、左手には愛用のISがいちゃうからさ」
瑛斗は肩を竦めてみせる。
「休みが明けるちょっと前にみんなに付き合ってもらったけど、セフィロトはうんともすんとも言わないからな」
実は瑛斗たちは数日前にセフィロトの制御をしようと考えたのだが、セフィロトは展開こそするものの、肝心のサイコフレームは何も変化せず、『一般のものよりも少し性能が高い第三世代IS』という状態になってしまっている。
「腕と背中のクローアームも動かないもんね」
シャルロットがお茶を飲みながら言う。
「実習訓練はG-soulを使うけど、放課後はセフィロトの制御訓練をしねえと」
瑛斗は苦笑しながら言った。
「ま、そういうことだから整備科への異動はな――――――――」
ビュンッ!
『!?』
突然、一夏たちの視界から瑛斗が消えた。
「瑛斗っ!?」
いち早く反応したラウラが食堂の出口の方を見ると、
「た〜すけて〜!」
数名の女子に掲げられて運ばれる瑛斗が小さく確認できた。
「くっ! 待てっ!」
ラウラは瑛斗を追うべく走り出す。
一同は、ぽか〜んとするばかりだ。
「な、なんだったんだ?」
「よ、よくわからないけど……瑛斗が拉致られたような………」
鈴の『拉致られた』の言葉に全員がハッとした。
「大変だ! 瑛斗が拉致られた!」
「ぼ、僕たちも行かなきゃ!」
シャルロットたちが席を立って、瑛斗を追いかける。
「え? ええ?」
一人取り残された蘭はまだ状況を把握できていない。
(え、えっと、桐野さんが攫われて、一夏さんも行っちゃって…)
「わ、私も行かないと―――――!」
動き出そうとした蘭の肩に手が置かれ、蘭の動きを止めた。
「待って」
「え?」
振り返ると、蘭の後ろには短めの栗色の髪の、蘭と背が同じくらいの少女が立っていた。
蘭はその少女の顔に見覚えがあった。
「…あ! 同じクラスの」
「戸宮梢 (とみや こずえ)………」
ぼそ、と梢の声が聞こえた。
「う、うん。よろしく」
蘭は梢に軽く会釈をする。
(不思議な雰囲気の子だなぁ…)
梢のまわりに蘭は不思議ななにかを感じた。
「えっと、そ、それじゃあ私行かなきゃ」
足を動かそうとした蘭を梢は腕を掴んで止めた。
「……………」
「な、なに?」
無言の梢に蘭は少し警戒する。
「私…あなたに………」
真っ直ぐ澄んだ瞳で蘭を見つめながら梢は言った。
「あなたに、運命を感じる」
「………………」
その一言に蘭の思考は一時停止した。そして再び回り始める。
(え? え?? ど、どういうこと? 運命? デスティニー? い、いやいや! そうじゃなくて、この子はえっと、その、私に運命を感じて……ハッ! これっていつか読んだあの本のシチュエーション…)
「ってそうでもないのー!」
再回転した思考があさっての方向にいっているのに気づき、我に返る。
「…………?」
首を捻る梢。蘭は誤魔化すようにあうあうと言って梢から離れた。
「そ、それじゃあ急いでるから!」
走り去る蘭を見送りながら、梢は笑みを浮かべた。
「………見つけた」
その瞳は、嬉しそうにも、泣きそうにも見えるものだった。
「あの!? みなさん!? これはどういうことでしょうかっ!?」
みんなと昼食を取っていたはずの俺は突如攫われた。
いつの間にか手を後ろに縛られて、担ぎ上げられるように運ばれている。
しかし俺を拉致っているのは三年生の先輩たちだった。同じ二年生の女子も数人混じっている。
「お、俺が何かしましたか!?」
「よっしゃ! このまま行くぞっ!」
「全員、もう少しよ! 頑張ってー!」
「「「「「おー!」」」」」
「話を聞いてえぇぇぇぇっ!!」
俺のシャウトを無視して、女子たちがやって来たのは真っ暗な部屋だった。
「おわっ」
俺は椅子に座らされ、手の拘束を外された。
明かりがつくと、そこには大勢の二年生から三年生の女子生徒がいた。黛さんなんかもいる。
「か、重ねて聞くけど、俺…何かしましたか?」
「…瑛斗くん」
「は、はい?」
黛さんが俺に近づいてきた。
「……………」
「……………」
なぜか無言のまま動かない。い、一体、何が始まるんだ?
俺が警戒していると、すぅ、と黛さんが息を吸った。
そして………
「お願い! 整備科に入って!!」
思いっきり頭を下げてきた。
「…え?」
俺が聞き返すと、後ろにいた女子たちも頭を下げてきた。
「「「「「私たちからもお願い!」」」」」
「え……え?」
急展開すぎて思考が追いついていないと、ガラッと扉が開いた。
「瑛斗! 無事―――――」
ラウラが入ってきた。だがその焦りの表情は頭を下げる黛さんたちを見てみるみる消えた。
「お、おお、流石は私の嫁だ。一瞬でこの場を制圧したのか。やるな」
腕を組んでふふんと笑うラウラ。
「い、いや…制圧っつーか…………と、とりあえず」
俺は黛さんたちに顔を向けた。
「どういうことか、説明してくれますか?」
〜説明され中〜
「…はぁ、俺をスカウトしたい、と」
「そうなの。あなたのISへの技術があれば一気に整備の範囲が広がるわ。だからお願い!」
「そう言われてもなぁ…どうしよう」
俺が考えていると、ラウラが口を開いた。
「黛先輩。申し訳ないが瑛斗は整備科へは興味がない」
「ちょ!?」
いきなり何を言うんだコイツは!?
「え…? 興味ない、の?」
や、ヤバい! 黛さんが捨てられそうな子犬のような目をして俺を見てる!
「お、おいラウラ」
「お前も言っていただろう。セフィロトの訓練もあるから整備科への異動は考えていないと」
「それは、そうだけどよ…ISを弄り放題触り放題できるっつー魅力に惹かれてる俺もいないわけじゃない」
「では、G-soulとセフィロトはどうするつもりだ?」
「ぐっ…それは………」
言葉を詰まらせる俺にラウラはさらに、
「整備科はISを整備するための技術を学ぶと聞く。お前にはすでにそれがあると思うが」
「うぅ、そう言われると…」
「第一、整備科は実践戦闘の戦術を学ぶことはないぞ」
「ちょっと待て!」
ラウラのその言葉に一人の生徒が声を荒げた。
それはいつか簪の打鉄弐式の整備を手伝ってくれた京子さんの声だった。
「ってことは何か? お前は整備科の連中は弱いって言いたいのか?」
「そう言いたいのではありません。だが戦闘力は通常訓練の生徒よりは低いでしょう?」
「何ぃ!?」
「わぁぁっ! やめろラウラ! すいません! こいつが変なことを!」
俺はラウラと京子さんの間に割って入った。
「何をする瑛斗。お前は整備科に行く気はないのだろう? 私はお前の意志を伝えたまでだ」
「伝え方ってもんがあるだろうが!」
「…………」
「ほらぁ、黛さんがショック受けて凹んじまったじゃねえか」
「………じゃあ、こうしましょう」
「ん?」
「む?」
俯いていた黛さんがポツリと言った。
「私たち整備科と瑛斗くんの勝負よ!」
「は?」
俺は思わずつぶやいた。
「整備科が組み上げたISを私たち整備科の誰かが操縦して、瑛斗くんのISと模擬戦闘をするの。瑛斗くんが勝ったらこの話は無かったことにしていいわ。でも私たちが勝ったら!」
黛さんはずいっと俺に顔を近づけて言った。
「その時は瑛斗くんは整備科に入ってもらうわ!」
「えー………」
話がものっそい飛躍してるような気がするんだけど………
「や、あの―――――」
「いいでしょう。その挑戦、受けて立ちます」
「え、ちょ、ラウラ?」
ラウラが俺の代わりに黛さんの提案を呑んだ。
「私の嫁は強いはずだ。その嫁を負かすことができるのなら、文句は言わない」
「お、おい、お前はいつの間に俺の保護者になった」
「ふふふ…整備科の意地を見せてあげるわ」
「こっちこそ、瑛斗の実力を見せてあげましょう」
「お、おーい? 二人ともー? 俺の意見は反映されないのかなー?」
「日程は今週の日曜日でどう?」
「分かった。では失礼する。行くぞ瑛斗」
ラウラが俺の腕を引いて部屋から出た。
部屋を出る寸前、黛さんの自信に満ちた笑みが俺の視界に映った。
「おいおい、何勝手に決めてくれてんだよ。あんなこと言って、戦うのは俺ってことを忘れてないか?」
俺は廊下を歩くラウラの横に立って口を尖らせた。
「いいや、忘れてなどいない」
「じゃあ、なんで―――――」
ラウラは手で俺の言葉を制した。
「いいか瑛斗。これは好都合だ」
「好都合って……なにが?」
「お前はいまG-soulとセフィロトという二つのISを所持している。だがセフィロトを使いこなせていない」
ラウラに言われ、俺は首に手をやる。
「今回の模擬戦闘で、そのセフィロトを使いこなすきっかけになれば好都合だということだ」
俺はそこでハッとした。
「つまり…俺は整備科の人達にセフィロトで相手をする、と?」
「そういうことだ」
ラウラは頷く。
「いくらなんでも危険すぎないか? まだセフィロトが完全に使いこなせてるわけじゃないんだぞ?」
「だからそれを改善するために整備科と戦うのだろう?」
「それに、お前たちを襲ったって時みたいなことになったら………」
「安心しろ。その時は……」
ラウラはそこで言葉を区切った。
「その時は私が全力で止めてやる」
俺の目を真っ直ぐ見て言いやがる。
(簡単に言ってくれるよ、まったく………)
俺がそう言って頭を掻くのと、予鈴がなるのはほぼ同時だった。
一&瑛「「インフィニット・ストラトス〜G−soul〜ラジオ! 略して!」」
一&瑛「「ラジオISG!」」
瑛「読者のみなさん、こんばどやぁー!」
一「こんばど―――――なにそれ?!」
瑛「このラジオの挨拶だ。『どやぁ』と『こんばんわ』を合わせてみた」
一「そ、それは分かるけどよ…」
瑛「ちなみにさっき考えたぞ」
一「思いつきか!」
瑛「さあ! それでは二回目の今回も桐野瑛斗と織斑一夏がお送りします! 張り切ってまいりましょう!」
一「え? そのまま普通に進行するの?」
瑛「さて、前回募集した質問がなんと一気に二つも来てました! しかも同じ読者の方です!」
一「おお! 想像以上に早いな!」
瑛「嬉しいことです。この作品を愛してくれていますね」
一「そうだな。っつか、なんでそんな口調?」
瑛「それではさっそく参りましょう! 一つ目の質問!」
一「瑛斗が普段の授業でG-soulを使うのか、それともセフィロトを使うのか、っていう質問だな」
瑛「そうだな。今回の本編の通り、普段の授業はG-soul、放課後はセフィロトって感じだな」
一「あ、口調が戻った」
瑛「授業中に暴走なんてことになった日にゃみんなに迷惑かけちまう。それだけは避けたい」
一「セフィロトの制御の訓練もしてるけど、サイコフレームは光らなよな」
瑛「春休みの明ける前にみんなに付き合ってもらったけど、展開こそするけどそれ以上のことは起きないんだよな」
一「早く使いこなせるように努力しないといけないぞ」
瑛「わかってるよ。さて、次の質問! マドカと同じ部屋の一夏。生活で困ることは?」
一「こ、この質問した人…結構ノリノリだな……」
瑛「さあ答えてもらいましょう。どうだ? 何かあるのか? んん?」
一「ニヤニヤすんなよ…そうだな、困ることか……うーん」
瑛「アレは? マドカが織斑先生と超ソックリだから、朝起きたときびっくりするとかは? そういうのないの?」
一「………………」
瑛「………………?」
一「………………」
瑛「お、お前まさか………」
一「…………///」
瑛「図星!? まさかの図星かよ!」
一「う、うるせえな………いいだろ別に…」
瑛「うわ赤っ! 一夏顔赤っ!」
一「な、なんだよ! 逆に他に何かあるのかよ!?」
瑛「そりゃあるだろ! 女子と同じ部屋だから緊張するとか、そういうスタンダードなの!」
一「それは箒と相部屋だったときので慣れた」
瑛「あ、ああ、そうなの? ほ、他には? スタンダードなので」
一「なんか引っかかる言い方だな……あ」
瑛「お? なんだ?」
一「マドカが楯無さんに言われたことを本当に俺にしてくること」
瑛「あ〜、悪戯とか?」
一「そうそう。それそれ。アレは敵わないよ。麦茶と思わせてめんつゆだったとか、麦茶と思わせて醤油だったりとか」
瑛「なんだその麦茶フェイク攻撃………」
一「それを面白がるマドカも大概だけどな」
瑛「でも、可愛い妹だろう?」
一「…………///」
瑛「あ、また赤くなった」
一「う、うるせえ! こ、これで終わりだな? 帰るぞ!」
瑛「待て。まだ終わってない」
一「え?」
瑛「せっかくだから、アイツにも聞こう」
一「ま、まさか……」
瑛「そのまさかさ。それでは今日のゲスト! 織斑マドカさんでーす!」
マ「こんばんはー!」
一「ま、マドカ!? いつの間に!?」
マ「んーと、お兄ちゃんの顔が赤くなったくらいから」
一「うわああああっ!?」
瑛「恥ずかしさのあまり机に頭を打ち付けてる一夏はさておき」
マ「さておいちゃうんだ」
瑛「それじゃあ聞いちゃいましょう。マドカ、一夏との生活で何か困ることは?」
マ「うーん、困ること、困ることかぁ………」
一「な、無いならいいんだぞ?」
マ「うーん…お兄ちゃんのジョークの感想を聞かれることとかかな」
瑛「おー、一夏の精神にダメ押しの一撃のカミングアウトだ。詳しく」
一「やめて!?」
マ「えっとね、あまりに酷すぎて読者のみなさんに教えられないのとかもあるから、詳しくは言えないけど、お兄ちゃん、酷い時はとっても酷いんだよ」
瑛「へぇ、たとえば?」
マ「え? 言うの?」
瑛「俺にだけ聞かせてくれ。ヒソヒソと」
マ「う、うん。たとえば……」(ヒソヒソヒソヒソ)
瑛「ふんふん」
マ「……………とか」(ヒソヒソヒソヒソ)
瑛「…………」
マ「…とか、かな」
瑛「そ、それは酷いな…一体どういう勝算があったんだ………」
一「もうやめてくれぇぇぇっ!!」ダダダダッ!
マ「あ、お兄ちゃんが逃げた」
瑛「流石に可哀想なことしたかな」
マ「でも、たまには面白いこと言ったりするんだよ」
瑛「そうか。じゃあ一夏のセンスが上がることを祈りつつ、エンディングだ」
マ「あ、もう終わりなんだね」
瑛「せっかく来てもらったのに悪いな。お礼代わりっちゃなんだが、最後のセリフは言わせてやるよ。カンペカモッ!」
マ「わ、どこからともなくカンペが。えっと、グラムサイト2さん、質問ありがとうございました。他にも質問やコメントがあったらどんどん送ってくださいね。他の読者さんたちも待ってまーす!」
瑛「はい、最後はノリノリで締めてくれました。それじゃあ今日も本家ISのエンディングテーマでお別れだ」
流れ出す本家ISのエンディング。
マ「………これ誰が歌ってるの? 声が何か違うような…」
瑛「ああ、今日はたまたまいた女子高生の人に歌ってもらってる。なんでも、けいおん部らしい」
マ「けいおん? 軽音じゃなくて?」
瑛「あ、間違えた。ま、いいか。それでは!」
マ「またカンペだ。みなさん!」
瑛&マ「「さようならー!」」
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瑛斗と一夏に質問です。 もし、白式を瑛斗、一夏がG-soulを操れたら、どう戦いますか?(グラムサイト2) 瑛斗と一夏に質問です。 もし、一回だけ過去を変えられるとしたら、変えますか?変えませんか?(グラムサイト2) |
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