新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第011話 |
今日の一日は慌ただしく始まる。
ある一室の前では、一刀、椿(愛紗)、瞳、虎、三葉が控えており、虎に関してはハラハラと部屋の前を彷徨いている。
一刀「落ち着け、虎。お前が一番重昌さんと付き合いが長いのだから、別にこの事は珍しくないだろ?」
虎「ち、違う!また新しく家族が増えるので、興奮を抑えられないだけだ!」
三葉「それで落ち着けってお兄ちゃんは言ってるの」
新しく家族が増えると言うのは、今日は恋歌と柑奈の出産日。予定より少し早まった為、5人は自分の仕事を他の者に押し付けて、こうして立ち会いに来たという。
やがて部屋から甲高い鳴き声が聞こえた――
重昌「皆、産まれたぞ!!」
新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第011話「興味」
只今昼過ぎ。香蘭と胡花は、紙に筆を滑らせながら内政の仕事をしている。ちなみにここは胡花の部屋だ。
紙は・・・本来であれば、この時代の中国では紙は貴重な物であり、この様な仕事の場では使われるものでは無い。だが、1500年の日本から来た重昌達は、より簡単な紙の作り方を知っているので大量生産に成功し、今では西涼の国益の一部となっている。
紙は紙でも”和紙”だが。しかし、竹に墨を入れる感覚も忘れないようにと、”竹の仕事”、”紙の仕事”と分けて使っている。
とりあえず話を戻そう。2人は仕事を黙々としながらも、ずっとあの日の事を考えていた。一刀から言われた『俺たち5人を殺していけ』という言葉を。
2人は重昌の統率者としての能力、人を惹きつける力、それらは確かに認めているが、考え方に関しては今だ納得出来ないでいた。
胡花「・・・・・・香蘭」
香蘭「奇遇やな。ウチも呼ぼうとしたところや」
胡花「素に戻っているけど?」
香蘭「もうめんどくさぁなってきて。・・・・・・重昌さんについてやろ?」
2人の考えていることは同じであった。親友として、仲間として、2人は思っていた。『このままあの者に仕えていいのだろうか?』と。
しかし、自分たちが知っている中で、誰よりも慈悲深い自分たちの主が命を賭してでも守ろうとする者を、信じない訳にも行かない。
それである計画を実行に移す。
・・・・・・・・・
ここは街中。
魚屋「おう親父。今日はイキがいいのが入ってるよ。見ていかないかい?」
重昌「ハハハ、後で見させて貰うよ。ちょっと寄る所があるのでな」
老婆「おやおや親父様。恋華様の調子はどうですか?」
重昌「これはこれはキクばーちゃん。前に教えて貰った産後についての方法は良かったですよ」
キク老婆「いやいや、親父様はわしらの鏡。何かあればすぐにでも駆けつけますよ」
重昌「それは頼もしい」
彼は街行く人々・・・老若男女問わずに親父親父と声をかけられ、彼と共に人々が笑い合っている光景がある。
香蘭「・・・・・・・・・」
胡花「・・・・・・・・・あれは、先日。自らを暴君宣言した人で間違いないですね?」
香蘭「見た限り、民からの人望は厚い様やな・・・・・・大した暴君様やで」
2人はただいま重昌尾行作戦を決行中。はっきり言って、彼女達は彼(重昌)の事を全く知らない。だから尾行して彼の事を確かめようと踏んだわけだ。
胡花「あっ、動いた」
香蘭「追いかけるで!」
しばらく追跡して、重昌が向かった先は食品専門店であった。野菜、果物なんでも揃っている。
胡花「何をしているのでしょうか?」
香蘭「何って・・・・・・食品店に来てんやから、料理でもすんねやろ?」
彼は数点何かを買ったようで、紙袋を片手に店を出て行く。
胡花「移動した」
香蘭「追跡や!」
次に向かった先は絹屋。重昌の統治と戦国から持ってきた知識により、布や綿の量も増えた。
胡花「・・・・・・絹屋ですね。ここでは一体何を――?」
香蘭「服でも作るんとちゃう?」
そこでもまた数点の品を買った様な紙袋を片手に出てくる。
胡花「移動した」
香蘭「追跡や!」
次に来たのは服屋である。これは2人とも変装して中に入り追跡。
胡花「・・・・・・ここでは一体?」
香蘭「服でも買うんとちゃう?」
胡花「でも、選んでいるのは全て子供服だけど」
香蘭「・・・・・・う〜ん」
彼女達はますますわけが判らずにいるが、彼(重昌)は数点手に取り会計を済ませに行く。
服屋員「親父様。両手がそれだけの荷物があるようでしたら、後で城にお届けしますが?」
重昌「いや大丈夫。ちょうど良い荷物持ちがいるから――」
店員と重昌の会話に、2人はギョッとする。
今、重昌は一人であり。
近くにいる彼の見知っている見知りの中で、気軽に荷物持ちを頼める者(部下)は、少なくとも胡花と香蘭のみ。
尾行がバレた事に気付き、そっと逃げ出そうとするが。
彼は笑顔で彼女達を猫を捕まえる様に首元(服の後ろ襟元)を掴む。
重昌「それでは二人共。手伝ってね」
胡花「お、おおっ、大館様。いつからご存知で?」
重昌「私が魚屋のカクさんと話している少し前かな?」
香蘭「い、一番最初やん――」
2人は自分達の不甲斐なさに、ガクリと肩を落とす。
そして場所は城の厨房に移る。
重昌「さて二人共。昼食はまだかな?」
胡花「そういえば――」
香蘭「考えながら仕事しとったから、昼飯食べとらんなぁ」
重昌「それなら何か作ろう。夕食もあるから軽めで――」
胡花「え!?」
香蘭「重昌はん・・・・・・料理出来るんですか?」
重昌「そんなに不器用そうに見えるかい?それに、北騎隊達と初めて開いた宴の料理も、私が用意したものだが――」
胡花「い、いえいえ!そう言うわけでは・・・・・・・・・え!?あの絶品な料理全部――!」
重昌「まぁ待っていなさい。すぐできる」
彼は野菜を切り始め、中華鍋に油を少し注ぐ。
2人の意見としては、男で料理が出来るものは料理人ぐらいしか知らない者で、戦いに身を置く者が、その様な本格的な料理が作れるとは思っても見なかった。
重昌「さぁ出来たぞ。ピリ辛チンジェオロースと普通のご飯だ。ご飯と一緒に食べれば、さらに美味いぞ」
出来た料理はなんとも美味そうであり、2人は合掌し、箸を使い料理を口の中に運ぶ。
胡花「こ、これは!?口の中に溢れる肉汁!野菜の炒め具合!火の入れ加減――」
香蘭「それに加え、ご飯と一緒に食べた時の、まさかまさか組み合わせ・・・・・・合う!」
重昌「つまり、何が言いたいのだ?」
2人「「美味いです!!」」
重昌「そうか、それは良かった。ならば食べれば私の仕事を手伝ってもらおう」
2人はあまりの料理の美味さにペロリと平らげてしまい、彼は2人が平らげている間に、もう二つ料理を作る。
2人「「ごちそうさまでした!!」」
重昌「いえいえ、お粗末さまで。それじゃあ、皿はそこに置いておいて、君たちはこれを持て」
彼が2人に渡したのは、オボンに乗っている先程作っていた料理であった。
重昌「それじゃあ。2人とも付いて来なさい」
重昌は先程買っていた服などを持ち、やがて2人が連れられて来たのはとある一室。
重昌「『コンコン』恋歌、柑奈入るぞ?」
これは2人とも知っている。
一刀達がやっている、”ノック”というものだ。部屋に入ると赤ん坊を抱えた2人の女性が、それぞれのベッドの上に腰掛けていた。
恋歌「あら重昌。そちらの女性は新しく手篭めにした女官?」
重昌「違うと判ってからかうのは止めろ」
柑奈「初めまして。貴女達は姜維さんと徐庶さんですね。私の名前は・・・姓は正木、名は通綱(みちつな)、字はありません。それから真名は柑奈です。よろしくお願いします」
恋歌「私は・・・・・・姓は長尾、名は晴景、字は無し、真名は恋歌で虎の姉です」
胡花「い、いえ!わ、ワタクシは姜維泊約。まっ、真名は胡花です!」
香蘭「わ、ワタクシも名前は徐庶元直。お、おおっ!大館様にはい、いつもお世話になっております――」
恋歌「ふふふ。いつも主人に聞いていますよ。将来有望な若者だって」
香蘭「は、はい!ありがとうごz・・・・・・ん?主人?」
胡花「あ、あの、重昌様。このお方達はもしかして?」
重昌「そうだ。私の妻達だ」
柑奈「私は側室ですが」
恋歌「柑奈。ワタクシ達の間には、側室も正室もないのですよ」
柑奈「いえ、そう言われましても――」
重昌「まぁ、その話は後にして。今は食事にすればいいじゃないか。赤ん坊は私が持っていてあげるから。胡花、香蘭。2人に料理を渡して」
胡花「は、はい」
香蘭「わかりました」
重昌は恋歌と柑奈より赤ん坊を預かり、胡花と香蘭は手に持っている料理を渡し、2人は互いに耳打ちする。
胡花「そういえば、先日一刀さん達が、私たちにしばらく仕事を押し付けて『出産に立ち会う』とか言ってたよね?」
香蘭「そうやったな。最初は誰か孕ませたんかと思うたけど、椿はんが一緒やったから、あまり心配しなかってんなぁ」
胡花「だって・・・・・・あの椿さんと、見るからに規則とかに厳格そうな虎さんまでも他の人たちに仕事押し付けちゃったんだもの」
そんな事を2人で話していると、重昌が近づいてきて――
重昌「どうだ?2人とも。抱いてみるかい?」
胡花「へ?・・・・・・いやっ!そ、そのっ!あの!?」
香蘭「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ無理です無理です無理です!!」
重昌「遠慮はいらない。ほら。まず足元を肘から手の間に置き、頭と背中は水平に保たせて首に負担をかけない様にして――」
2人は緊張しながらも、彼の子供を手に取る。赤ん坊は眠いのか、目を閉じ唸りながら、何かムズ痒いそう様な動きをするが、それがちょうど愛嬌をそそる。
胡花「ふ、ふぇぇぇぇっ。可愛いぃぃぃぃっ」
香蘭「あ、あかん!あまりの愛くるしさに目眩がしそうや」
重昌「お姉ちゃん達が可愛いってさ。良かったな。華(はな)、輝希(てるき)」
胡花が抱いているのは、恋歌との子供で華。香蘭が抱いているのは、柑奈との間の子供で輝希。
2人は同じ日のほぼ同じ時間で生まれたので、重昌が『2人で輝く未来を華々しく切り開く、希望の光となれ』と思い付けた名前である。
やがて赤ん坊の寝る時間に入った時に、胡花と香蘭は名残り惜しそうに2人を元の母親の下に返す。
胡花と香蘭は重昌に、城の城壁に呼び出される。
重昌「2人とも。この城壁の風景からは、何が見える」
胡花「人です――」
香蘭「街です――」
重昌「他には?」
胡花「・・・・・・人々が笑っています――」
香蘭「争いなどとは無縁そうに」
重昌「そうだな。この街の外の大陸に出てみると、大陸全土に広がった黄巾党の横暴で今でも死んでいる者がいるかもしれないのに、下の民衆共は笑っているな」
胡花「・・・・・・・・・」
香蘭「・・・・・・・・・」
しばし無言が続き、風切り音が心地よく響くと、重昌は話し出す。
重昌「この何も知らない笑いが大陸全土に広がれば、さぞいいと思わないか?」
胡花「・・・・・・・・・」
香蘭「・・・・・・・・・」
重昌「2人とも。今までどれだけの人を殺したか覚えているか?私は1,000から数えるのを止めてしまった。あまりにも多すぎてね。自分の策の失敗で殺してしまった味方も含めれば、恐らく1億はゆうに超えるのじゃないのかな?私は天国にはいけないな。絶対地獄だな」
胡花「・・・・・・・・・」
香蘭「・・・・・・・・・」
重昌「君たちはどうだね?自分自身は天国に逝けると思っているかい?」
胡花「・・・・・・いえ、そんなことは考えたことはありませんが――」
香蘭「一刀はんの下でウチらも何人も殺してますので、恐らく地獄でしょう」
重昌「そうだな。我々は人殺しだ。今暴れまわっている黄巾党と元を正せば何も変わらない。いつか君たちも誰か心に決めた者と結婚し、子を産む。その子達に同じ地獄に入って欲しいと思うかい?」
胡花「そ、それは――」
重昌「そう!思うはずも無い。・・・・・・乱世を治める事を出来るのはどんな人物だと思う?」
香蘭「それは・・・・・・善政を施し、人を使うのが上手い優れたしd「違う!悪党だ!」なんやて!?」
重昌「いいかい。いくら善政を施し、人を上手く使い、民から信頼されていようとも、最後に死んでしまえば元も子も無い。かつて天下を統治した者は、様々な”戦”と言う名の騙し合いに勝ち残った悪党共だ。いくら民に信頼され国を創った者も、時には非情な手段を選び、勝ち残って来た者ばかりだ。誰かが非情にならなければならない!誰かが”鬼”となり、この戦乱を収めなければならない!」
胡花「・・・・・・・・・」
香蘭「・・・・・・・・・」
重昌「2人とも。自分たちは地獄に落ちると思っているのだろ?ならば一緒に落ちようじゃないか。とりあえずは”現世”にいる限り、悪名の全ては私がかぶってやるからさ」
2人は重昌を見据えて、まず香蘭が口を開く。
香蘭「なぜウチらにそこまでしてくれるんですか?」
重昌「あの時言っただろ?君たちはもう私の子供、家族だ。”子供の悪戯”を庇うのは、親の仕事だ」
胡花「・・・・・・判りました。それではこの大陸を庭に、存分に”悪戯”を働きかけましょう」
香蘭「ウチも”悪ガキ”になって存分に悪戯しようやないか。怒られるんは親やし、子供は”悪戯”してなんぼや」
重昌「そうだ。存分に迷惑をかけてやれ。君たちのお兄さん(一刀)達も対した悪ガキだぞ」
こうして・・・改めて徐庶元直と姜維泊約は、重昌の子供(臣下)として悪さ(力)を働きかける事を、ここに誓った。
説明 | ||
大学が始まり更新の速度がめっきり遅くなってしまいましたww だけど私は頑張っておりますので、応援お願いします。 それではどうぞ。 |
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破滅の焦土さん〉どうも。頑張ります(*´∇`*)(IFZ) 更新お疲れ様です。こういう話はいいですね〜大好きです。(破滅の焦土) |
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