勇者伝説セイバスター 第7話「飛翔の獅子」 |
第7話「飛翔の獅子」
ここはHBC治療ルーム。ベッドには前回の戦闘で傷ついた空人がおり、それを囲むように瞬治たちが並んでいた。
「………………」
瞬治たちの表情はかなり暗い。その中で特に誠也は一番暗い表情をしていた。
空人の近くにいながら空人を守る事ができなかった、そんな辛い気持ちが誠也の中で傷ついた空人を見るたびに大きくなっているのである。
(あの時、俺が助けてやる事ができていれば……)
誠也は思わず手に力を入れてしまう。
と、そこに石橋が治療ルームに入ってきた。
「石橋司令官……空人は、空人はどうなんだ!?」
「そんなに慌てるな。頭部の傷はたいしたことない。それに、今は気絶しているが2、3日で目を覚ますそうだ」
「よかった……」
石橋のその言葉を聞いて全員が胸をなで下ろす。特に晴香は一番安心していた。
だが、誠也はまだ安心しきれていないような表情のままだ。
「さて、もう日が暮れる時間だ。空人君と晴香君は私が送っていこう。いくぞ、晴香君」
「はい」
石橋はまだ気絶している空人を背負い、晴香と共に治療ルームを出ていった。
「さてと、空人についてはどうやら安心してよさそうだし、俺も帰るか。誠也はどうするんだ?」
「俺はもう少しHBCにいるよ」
「そうか。じゃあな」
「おう、じゃーな」
瞬治が部屋を出て行くと同時に手を振ったので、誠也も無理に作った笑顔で手を振ってかえした。
「………………」
ドアが閉まると、誠也の顔は豹変して真剣な顔になり、瞬治の出ていったドアをしばらくの間、黙って眺めていた。
HBCフォースオーダールーム。そこに誠也がさっきと変わらない表情で黙ったまま入ってきた。そしてそのままグランドレオンの方へと向かう。
「……グランドレオン」
「おう、どうした?」
グランドレオンはライオンの姿をしたメカのままで誠也の方を向く。その格好はまるで一休みしている猫のようだった。ただ、サイズはあまりにも違いすぎるが。
「ちょっと話があるんだけど、いいか?」
「いいぜ、何でも言ってみな」
「あのな……」
誠也は言葉を続けようとしたが、言いにくいのだろうか、その先がなかなか口から出てこないので途中で止まってしまった。
「おい、もったいぶらないでさっさと言えよ」
グランドレオンはそれを黙ってきいていたが少しもどかしくなり、誠也を急かす。
「別にもったいぶってるわけじゃねーのに……」
誠也はグランドレオンに聞こえないぐらいの声でぼやいた。
「何か言ったか?」
「別に………あのな、お前、合体できるか?」
「は?」
その言葉はあまりにも唐突で、抽象的すぎたのでグランドレオンは思わず目が点になってしまう。
「いいから答えろ。合体できるのか? できないのか?」
「悪いが、俺は他の奴と違って合体できねーんだ」
「なんだ……」
「だけど『融合』なら可能だぜ」
「『融合』?」
グランドレオンの言葉に反応して誠也は再びグランドレオンに詰め寄る。
「そうだ。俺の相棒、『ウインドホーク』と俺が融合すれば俺は空を飛ぶ事ができるようになるし、力だって格段に強くなるんだぜ」
「……あのな、その事を俺達は『合体』って言ってんだよ」
得意げになって話すグランドレオンに誠也はやや怒りながら訂正する。
「そうなのか? まあ、俺は昔こんな機械の体じゃなくて生き物の体だったからな。『合体』って言うよりも『融合』って言ったほうが言葉として正しかったからな」
「今は生き物の体じゃなくてロボットの体だから『合体』のほうが正しいんだよ」
「そうだな。ハハハハ……」
誠也の訂正をグランドレオンは笑ってごまかした。
「……フッ」
それを見て誠也は思わず軽く吹き出してしまう。
「それじゃ、そのお前の相棒ってのはどこにいるんだ?」
「知らない!」
「だっ!?」
グランドレオンが自信たっぷりに言った言葉に誠也は思わず激しくズッコケてしまった。
「お、おい……知らないってどういう事だよ」
「んなこと言われてもな、知らないもんは知らないんだよ」
グランドレオンのほうもなぜか怒っている。
「はあ……そんなんだったら合体できねーも同然じゃねーかよ……」
誠也は再び落ち込んでしまった。だが、さっきとは違っていつものような感じで落ち込んでいる。
その事から、いつもの誠也に戻ったと考えてもいいだろう。
「俺の近くにいたってことだけはわかってんだけどな……」
「………………」
グランドレオンのその言葉を聞いて誠也はグランドレオンを冗談気味に睨み付ける。
「……おい、知ってるんじゃねーかよ」
「ああ、悪い悪い。でもそれ以上の事は本当に知らないぜ」
「それだけ情報がありゃ充分だよ。後は地道に探せばいいんだからな。よし、ウインドホークを何としても見つけだしてやるぞ!」
誠也は決心したように立ち上がり、気合いを入れて自分の意志を確認した。
「そうか。まあ、がんばれよ。俺のためにも、な」
グランドレオンも誠也をグランドレオンなりに応援する。
「ああ」
それを聞いて誠也はグランドレオンに向かって精一杯の笑顔でサムズアップをした。それは作った笑顔ではなく、心の底から出てきた笑顔というほうがふさわしかった。
翌日。誠也はいろいろと荷物を背負って再びフォースオーダールームに入ってきた。グランドレオンの仲間『ウインドホーク』を探すために。
「それじゃ行くぞ、グランドレオン」
「いつでもいいぜ!」
グランドレオンが返事をすると、誠也はグランドレオンの口に入り込んだ。
「しかし、お前って人が乗れるようなスペースとかってないのかよ? 収納庫でもなんでもいいから……」
「そんなのあったら、俺が変な気分になるぜ。お前を口に入れてるだけでも気持ち悪いってのに……」
「そりゃそうだな。ハハハハハ……」
その言葉で誠也は苦笑いも含めて笑った。
「さあ、おしゃべりはここまでにして、改めていくぞ!」
「おう!」
二人は改めて気を引き締め、ウインドホークを探すために出動した。
「………………」
それを瞬治は隠れながら黙って眺めていた。
「あいつもあいつなりにがんばっている、ってとこか……」
瞬治は笑顔で軽くため息をつきながら静かに見送った。
ここはグランドレオンを見つけた林のある明日ヶ丘市の町外れ。そこに誠也をのせたグランドレオンがたどり着いた。
誠也はグランドレオンの言った「自分の近くにいる」という言葉をヒントにして、ここを選んだのである。
「よし、早速探すか。ここは前にも来た事があるからだいたいの地形はわかるしな」
「迷子になったら俺が見つけてやるよ」
グランドレオンは誠也を皮肉る。もちろん、本気で皮肉っているわけではない。
「迷子になるほど俺は馬鹿じゃないって」
笑顔でそういいながら誠也は林の奥へと入っていった。
「………………」
グランドレオンはその後ろ姿を黙って送った。
「……あっ!」
誠也の姿が見えなくなったその時、急に何かを思い付いたかのようにグランドレオンが声を上げる。
「そういや、言うのを忘れてたな。ウインドホークは『アースクリスタル』に封印されてるって事……。ま、いっか。どうせすぐに分かるだろ」
グランドレオンのその独り言ともいうべき言葉は、もちろん誠也の耳に入る事はなかった。
数時間後。誠也はかなり疲れていながらも、まだ捜索を続けていた。
「くそ……いったい何処にいるんだ? いくら探しても見つからないなんておかしいぞ……」
誠也は辺りをかなり雑に見まわしながら思わず愚痴をもらす。
誠也らしく、『雑に』探しているのだからなかなか見つからないのも無理はない。それに、誠也はウインドホークもグランドレオンみたいになっていると思っているから余計に遅れているのだ。
「まったく……いくら自分で言ったとはいえ、こんなに時間がかかるとは思わなかったぜ……ん?」
そのとき、誠也はこの光景に完全に溶け込んだ一つのほこらを発見した。
「なんだ、ありゃ?」
それはかなり昔からあったものらしく、石で作られた小さい家みたいなほこらはクモの巣だらけであった。
ほこらの中には、水晶玉みたいな物が大切そうに飾られてあった。水晶玉はまるで誠也を誘うかのようにキラッと光る。
「……まさかこれが?」
誠也はゆっくりとほこらに近づき、飾られている『物』を手にしようとした刹那、
ズドオォォォォン!!
「うわっ!?」
誠也の近くで激しい爆発が起こった。その爆発を受けた地点は一瞬にして地面がえぐれ、もはや林という情景ではなくなってしまった。
「い、いったい何だ?」
時は少しさかのぼり、同じ明日ヶ丘市の上空。やけに破壊するための気合いが入ったゴルヴォルフがあらわれた。
「さてと、邪魔者はいなくなった事だし、後はおもいっきり破壊し尽くしてやるぜぇ……クックック……」
ゴルヴォルフは小さく不敵な笑いをした。そして腰につけていた袋から種みたいなものを取り出す。
「破壊のために生を受けた邪鬼よ、我の命に従いこの星を闇に変えよ……」
ゴルヴォルフが呪文を唱えていくとその手に握られている種が黒く光っていく。そして
「出でよ、『オーガデストロイヤー』!!」
その種を地面に向かって思いきり投げつけた。するとその種は形を変え、角を二本はやした黒い鬼のような姿をした魔物に変化した。
「さあ、今回は偵察なんかじゃねえ。全力ですべてを破壊しちまいな!」
「ガアァァァァァァァ!!」
ゴルヴォルフの言葉により、魔物は使命である破壊を始める。その手始めとして近くにあった林に向かって持っていた棍棒から火炎弾を打ち出した。
ズドオォォォォン!!
「あれは!?」
誠也は木々の隙間から見える光景を目にして驚いた。なぜなら、それは魔物だったからである。
「くそ! よりによってこんな時に現れやがったか! 急いでグランドレオンに……」
誠也は急いでグランドレオンの所に戻ろうとした。だが、突然何かを思い出したかのようにその場で立ち止まってしまう。
(なぜだ。なぜここから動こうとしないんだ? ……あの水晶みたいなものが俺を引き止めてんのか?)
「くそっ!」
やけくそ気味に誠也は振り返り、ほこらにあった物を手にしようとした。だが、ほこらの中には何もなかった。
「な、ない!?」
その光景に驚き、周りを見回す。
「……飛んでる? なんであんな物が飛ぶんだよ……」
するとほこらにあった『物』はまるで何かに吸い寄せられるかのように何処かへと飛んでいった。
「ええい、そんな事を考えてる暇はないな! 待て、この野郎!」
誠也は慌ててそれを追いかけていった。
一方、同じ明日ヶ丘市にある晴香の家では、ベッドでいまだに眠りつづけている空人とそれを見守っている晴香がいた。
「………………」
晴香は眠りつづけている空人の横顔をずっと見つめていた。「はやく目が覚めてほしい」ただその思いでずっと見つめつづけていた。
(空人……)
その時、突然家の電話が鳴り響く。それを聞いた晴香は急いで電話のあるところへと向かい、受話器を取った。
「もしもし……あ、石橋さん。空人はまだ………えっ、でも……はい、わかりました」
晴香は石橋との電話を切ると軽くため息をつく。その会話の内容は分からないが、おそらく魔物の出現を告げるものだったであろう。
「空人、早く起きて……」
晴香は祈った。空人が早く目を覚ますように、と……
再び誠也のいる林。誠也はいまだに複雑な動きをしながら飛び回っている物を必死になって追いかけていた。なぜ水晶らしき物体がそんな動きをするかなど全く気にも止めないで。
「待てって……言ってんだろ……この野郎……」
その姿は完全に疲れ果てているはずなのだが、どうやら気力や執念で動いているらしい。「何としてでも捕まえてやる。」おそらく、執念の理由はそんなところだろう。
「くそっ、一体何処まで行きやがるんだ?」
誠也はだんだんまどろっこしくなってきたので、焦りはじめてくる。
その時、誠也と物は林からぬけてグランドレオンとヴァリアントセイバスターが魔物と戦っている場所へとたどり着いた。
「ん? あれは……グランドレオン! ……まさか、こいつが『ウインドホーク』なのか?」
誠也は追いかけながらもそのものをじっと見詰める。そう、その『物』こそウインドホークの封印されている『アースクリスタル』なのだ。
「それだったらなおさら捕まえてやる!」
その事にやっと気づいた誠也は気力を振り絞ってアースクリスタルに飛びついた。すると、偶然かどうかはわからないが、何とかアースクリスタルを手にする事ができた。
「よしっ!」
誠也は思わずガッツポーズをとり、アースクリスタルを掲げてみる。アースクリスタルは太陽の光を反射して青と緑に輝いていた。
「お前がウインドホークなら俺の呼び掛けに反応しろよ……」
そう言うと誠也は軽く深呼吸をして呼吸を整える。そして、
「目覚めるんだ! ウインドホーク! お前も勇者なら目覚めて俺達と戦うんだ!!」
アースクリスタルに向かって思いきり叫んだ。
「うお!?」
すると、アースクリスタルは誠也の手から再び浮かび上がり、まぶしいほどの光を放った。
「くっ……」
誠也は驚き、慌てて手をかざす。その光が消えて誠也が目を開けると、
「………お、お前が……ウインドホークか……」
アースクリスタルはその姿を変え、鳥の姿をしたメカとなっていた。紛れもなくそれは『ウインドホーク』だった。
「なんだ? じっと俺の事見つめて……」
ウインドホークは誠也のことをじっと見つめていた。その目を見ていると、何かを訴えかけているようにも見える。それを感じ取ったのか、誠也は頭の中に入ってきた情報そのままを口にした。
「『乗れ』って言ってるのか? でもどうやって……うわっ!」
その時、誠也の体が浮き上がり、ウインドホークの額にある飾りへと吸い込まれていった。
「……なるほどな。さすがにこれは俺でも驚きだぜ」
誠也の目にはウインドホークの視点で見ているのと同じ光景が見えていた。まるで自分がウインドホークにでもなったかのように。
「いわゆる『融合』だな。よーし、あらためていくぜ! ウインドホーク!」
「クエェェェェェェェェ!!」
誠也の呼びかけにウインドホークは大きな声で返事をし、グランドレオンの方へと飛んでいった。
「ヴァリアントエッジ!!」
「レオンクロー!!」
一方、グランドレオンとヴァリアントセイバスターはそんな事が起こっているとも知らずにひたすら魔物と戦っていた。
「ガアッ!」
だが、やはりファイナルセイバスターがいないせいなのか、なかなかダメージを与えられずにてこずっていた。
「くそ! これじゃきりがないぜ!」
グランドレオンが思わず愚痴をもらす。なぜなら、こんな状態が数十分も続いていたからだ。さすがに進展のない戦いだと誰だって焦ってくるだろう。
「あまり無駄口をいってる暇はないぞ!」
瞬治がグランドレオンに向かって忠告をしたその時、魔物がグランドレオンに向かって今まさに棍棒で殴ろうとしていた。
「なっ!?」
ドガッ!!
「ぐはっ!」
その一撃をまともに受けてしまい、グランドレオンは吹き飛ばされてしまった。
「グランドレオン!」
「来るぞ!」
ヴァリアントセイバスターが自らの意志でグランドレオンを助けようとした。だが、それと同時に魔物はヴァリアントセイバスターのほうに火炎弾で攻撃してきた。
「サンダーシールド、オン!!」
その攻撃はサンダーシールドでかろうじて防御することができた。だが、魔物はすぐさま二回目の火炎弾を打とうとしていた。
「そうはさせるか! アイフラッシャー!!」
だが、グランドレオンの頭部となっている獅子の目から放たれた光によって魔物は動きを封じられる。
「このままじゃ、本当にきりがないぞ!」
「だったら俺がけりをつけてやるぜ!」
その時、誠也の声が何処からともなく聞こえてきた。
「誠也!?」
全員が周りを見まわすと、空中にウインドホークの姿があった。
「ウインドホーク! ウインドホークだな!」
「ああ。お前の相棒、ウインドホークだ!」
グランドレオンの喜びの言葉に対して誠也が話すことのできないウインドホークの代わりに答える。
「グランドレオン、待ちに待った『合体』だ! いくぞ!」
「おう!」
誠也の掛け声でグランドレオンは構えを取る。
「レオン・クロス!!」
誠也がそう叫ぶとウインドホークは地上を滑空し、仁王立ちしているグランドレオンの横を通って真上に急上昇した。
グランドレオンとウインドホークの合体が始まる!
グランドレオンが飛び上がると、グランドレオンの顔が収納されて元の獅子の顔になる。そして頭部が胸に移動し、結合した。
ウインドホークは上昇した形のまま、変形を始めた。
ウインドホークの足が分離され、首から頭部が後ろに収納される。そしてそのままグランドレオンの背部と結合した。
次にウインドホークの分離した足は爪が後ろに回転して爪先が現れ、グランドレオンの足の裏と結合する。
「翔獣合体!!」
グランドレオンが叫ぶと同時に体からグランドレオンの時とは違った顔が現れた。そして、
「レオンセイバスター!!!」
レオンセイバスターはファイティングポーズのような構えを取った。
胸部にある今にも激しく咆哮しそうな獅子の顔、大空を自由に飛びまわることができるであろう大きな翼。その姿はグランドレオンの時と大差はないが、性能は格段にパワーアップしているはずだ。
「く〜、やっぱり合体するのって気持ちいいな」
誠也は合体できたことに思いっきり満足していた。
「よし、これならあいつだって倒せる! いくぜ、誠也!」
「よっしゃ!」
レオンセイバスターは改めて魔物に向かって構えを取る。
「レオンクロー!!」
右腕に収納されていた爪(クロー)が展開し、レオンセイバスターの手の甲に装着された。そしてそのまま魔物に向かって地上を滑空しながら切り付けた。
「グアァッ!」
魔物は今までのレオンクローより何倍も威力の増したレオンクローを受けて激しく苦痛を受ける。
「まだまだ、次いくぜ!」
そういってレオンセイバスターが再び構えると今度は右の爪が展開して、左手の甲に装着された。
「レオンクロー・ダブル!!」
レオンセイバスターは再び魔物に向かって切り付けた。しかも今度は両手の爪で。
「よし、効いてるぞ!」
誠也は魔物の苦しんでいる姿を見てガッツポーズをとる。
「俺達も負けていられないな。VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)
「ヴァリアントボウガン!」
ヴァリアントセイバスターはどこからかともなく銃を取り出し、右腕を上に突き上げる。するとその右腕に装着されていたV字の装飾品が飛び上がって銃に装着された。
「VALIANTBOWGUN、MACHIN GUN MODE!!」(ヴァリアントボウガン、連射モード!!)
瞬治はそういいながらレバーのボタンを押す。
ドォン! ドォン! ドォン!
すると、ヴァリアントボウガンから何発も雷の弾が発射された。その一発一発の威力は小さいが、連射で同じところを狙うことによって威力が倍増するのだ。
ズドオォン!
その弾がすべて魔物に命中し、強力な一撃となった。
「グオォォ……」
魔物は今までのダメージに激しく苦しんでいた。
「よし、止めだ!」
「レオンアタック、ゴー!!」
レオンセイバスターはそういいながら魔物に向かって走りだした。
「覚悟しろよ!!」
そして魔物の目の前に来た瞬間、レオンクローで魔物を激しく、何度も殴りはじめた。
バキッ! ズガッ! ドゴッ!
まるでそんな擬音語が当てはまるかのように、グランドレオンは何度も何度も魔物を殴り続ける。
「ううわっ……」
誠也は思わず驚きの声を上げながら、目を大きくして眺めてしまった。
誠也が見たその光景は、いくら仲間とはいえ仲間が魔物をたこ殴りにするのは少し残酷にも見えてしまっているからだ。
いわゆる誠也の行動は、少し違うかもしれないが『怖いもの見たさ』というものだ。
「はぁっ!!」
レオンセイバスターは魔物を上に殴り上げ、自分も飛び上がった。
「フィニッシュ!!!」
最後の一撃としてレオンセイバスターは魔物を上から両手で殴り、地面に叩き付けた!
ズドオッ!!!
「グアアッ!!」
魔物はレオンアタックによって強烈なダメージを受けてしまい、立つのがやっとという状態になってしまった。
「後はヴァリアントセイバスターに任せたぜ!」
「OK、いくぞ!」
瞬治はそういいながらヴァリアントボウガンの照準を魔物に合わせる。
「THUNDERARROW,FIRE!!!」(サンダーアロー、発射!!!)
瞬治がそう叫ぶとヴァリアントセイバスターはすかさず引き金を引く。
ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!
その瞬間、銃声と共にヴァリアントボウガンから雷の矢が魔物に向かって飛んでいった!
ズドオォォォォォォォン!!
そして魔物に突き刺さった瞬間、激しい大爆発をおこして魔物と共に消滅した。
「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)
瞬治はいつもどおりに消滅した魔物に向かって決めゼリフを言った。
同じ頃、明日ヶ丘市の上空では魔物が無残にやられる姿を無言で眺めていたゴルヴォルフがいた。
「ちっ、まさかまた勇者がパワーアップするとはな。これはかなり厄介だな……」
ゴルヴォルフは独り言をつぶやきながら頬に手を当てる。
「『あいつ』も動いてるからな、もたもたしてるとソルダーズの二の舞になっちまうぜ」
「ゴルヴォルフ……」
その時、ゴルヴォルフの背後にソルダーズを何処かへと連れ去った男が忽然と現れた。
「うおっ!? て、てめえいつのまに……?」
「こんなところで無駄な独り言をするぐらいなら次の作戦でも練ってろ。それとも、お前も『墜ちたい』のか?」
「わ、わかったよ……」
ゴルヴォルフは普段なら反抗をするはずなのに、なぜか男の脅しですごすごと逃げていった。
「……『勇者』か……今度会う時は我が『笛』の音のえじきだ……」
男は喜んでいる誠也達をちらっと見てそう言うと、マントをひるがえしてどこかへと去っていった。
時を同じくして、ここは晴香の家。
「ん……」
まるで瞬治たちが魔物を倒したのを知ったかのように空人は目を覚ました。
「空人……」
「……晴香」
そして、そのままゆっくりと体を起こす。
「よかった……」
目を覚ました空人を見て晴香は安堵の表情を浮かべ、そして嬉しさのあまり涙を流してしまった。
「な、何で泣くの、晴香? ねえってば……」
「だって……空人が……やっと目を……覚ましたから……」
涙のせいで晴香は上手く喋ることができなかった。だが、晴香の心の中は安心感でいっぱいのことだろう。
「困ったな……」
そんな晴香の気持ちを知らずしてか、空人は少し困ってしまう。そしてそのまましばらく時は過ぎていった……
第8話に続く
次回予告
瞬治だ。俺達の次の任務を教える。
街に突然現れた謎の男。そいつがいきなり街を破壊しはじめた!
すぐに現場に向かう俺達。だが、そいつは勇者達と互角以上に戦える力を持っていた。
あまりの強さに勇者達も押され気味になってきている。
それを見ていた空人は男を止めようと説得した。だが、男はそれを無視して空人に向かって何かを始めた。
…空人。おい、空人! いったいどうしたんだ!?
次回、勇者伝説セイバスター『死へと誘う者』
行くぞ! 「VALIANT、Let’s go!」
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アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。 | ||
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