勇者伝説セイバスター 第10話「見れない時間」 |
第10話「見れない時間」
ここはHBCグレートオーダールーム。
「う〜む……」
石橋は前回の戦闘の記録をじっと見ながら何やら変にうなっていた。
「どうしたんですか、石橋司令官?」
その時、平山が石橋の姿をあまりにも変に思い、話しかけてみた。
「いや、何度考えてもやはりファイナル君と空人君が融合するのがどうもおかしくてな……」
そう、うなっていた原因はファイナルと空人が融合した事である。
「そうですね。我々が作ったはずのバーニングダッシャーにあの機構はつけていませんし……」
「……平山君。今考え付いたのだが、もしかすると……」
「もしかすると、何ですか?」
「……空人君の『勇気』が成長している『証』なのではないか、と思う」
画面に映る空人の姿を見ながら、石橋は振り向かずに平山にそう語った。
「空人君の……ですか?」
「ああ。空人君は恐怖を乗り越えて戦いに参加した。
あの時の恐怖を克服したという事は、代わりにその分勇気を手に入れた……と考えてもおかしくはないだろう?」
「ええ、まあ……おかしくはないですね」
考えながらも、平山は石橋の勢いに負けてうなずいてしまう。
「その勇気がファイナル君と空人君の融合を可能にさせた……そう言いたいんだろ?」
その時、後ろの方から瞬治の声が聞こえてきた。
「瞬治君か」
「どっちにしろ、悪い結果だったわけじゃない。いちいち難癖つけたってしょうがないんじゃないか?」
「別に難癖つけているつもりはないぞ」
瞬治の言葉に石橋は少し怒りを覚える。
「ふう……俺達、しばらくはバーニングセイバスターを頼りにするしかないんだな」
瞬治はなぜかため息をつきながら、画面に映るバーニングセイバスターに言うようにつぶやいた。
「ヴァリアント達のサポートメカが直るまでの辛抱です。それまでは何とかがんばって下さい」
「それ、あまり励ましになってないけど、平山さん」
「えっ?」
瞬治の冷めた視線と言葉に平山は固まってしまう。後は笑ってごまかすしか選択はなく、瞬治は「きっと平山はそうするだろう」と軽く予測をしていた。
「ハハ、ハハハハハハハ……」
「はぁ……」
瞬治は、予想通りに平山が笑ってごまかしたので再びため息をつく。
「ところで、瞬治君。何か用があるのかね?」
少し重くなった雰囲気を変えるために石橋は話をそらした。
「っと、そうだった。明日、悪いがここには来ないからな」
「それはまた唐突だな。なぜなんだ?」
「………………」
石橋の質問に瞬治はしばらく目と口を閉ざしていたが、やがて口だけ開いてこう言った。
「明日は、俺にとって大切な日なんだ」
「……?」
瞬治の抽象的な言葉に石橋は首をかしげる。
「大丈夫だ。もし明日地球外知生体が出てきてもちゃんと出撃するから」
「まあ、それならいいんだが……」
「じゃあな」
そう言い残して、瞬治はそのままグレートオーダールームを出ていった。
「………………」
「そう言えば、誠也君も明日は用があるって言ってましたね」
平山は石橋に確認するように、誠也の言っていた事を思い出して口に出す。
「……明日は、何事も起こらなければいいのだがな」
石橋の言葉は、誰の耳にも届く事はなかった。
翌日。再びHBCグレートオーダールームにて。
「え? 瞬治さんも誠也さんもいないんですか?」
瞬治と誠也に会うためにHBCへ来た空人だが、二人ともいない事を聞いて思わず確認の言葉を石橋にかける。
「ああ、二人とも用事があってな」
「それじゃ、仕方ないですね」
晴香も少し残念そうに小さく下を向いた。
「ところで、瞬治さんと誠也さんの用事ってなんですか?」
「残念だが、二人とも訳を話してくれなかったんだ。本当にすまないな」
「あ、そうなんですか……」
さっきから空人と晴香はがっかりした表情しかしていない。
「ところで、二人に何か用だったのか? 伝言なら聞いてあげるぞ」
そんな雰囲気を変えるために石橋は話題をそらす。
「いえ、ちょっと勉強を教えてもらおうと思って……」
空人はそういってカバンから教科書とノートを取り出して石橋に見せた。
「失礼します」
「なんだそんなことか。それだったら平山君がやってくれるぞ」
「は?」
その時、ちょうどいいタイミングで入ってきた平山に、自分が逃れるかのように石橋は指差しながら空人達の事を押し付けた。
「何のことですか?」
全く事情を知らない平山は石橋に聞き返す。
「平山君、空人君達に勉強を教えなさい」
「はぁ? なんで僕が……」
「平山さん、よろしくお願いします」
「ええっ!?」
平山はすぐに石橋の言葉を棄却しようとしたが、晴香にお願いされたので思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「そういうわけだ。平山君、よろしくな」
「はぁ……(なんで僕が……)」
にやけた顔をした石橋に言われながらも、仕方なく平山は空人達の事を引き受ける事にした。
だが、心の中はものすごく不満でいっぱいだった。
「平山君はな、こう見えても東大出身なんだぞ」
「ええっ!? そうなんですか?」
平山が東京大学出身と聞いて空人と晴香は驚きの声を上げる。
「そ、そんな事自慢になりませんよ」
「何を言うか、この秀才男!」
「いっ!?」
石橋は平山の背中を思いきり叩いた。
「いたた……その言葉、誉めてるのかけなしているのか分かりませんよ……」
「何を言う。誉めてやったのだ。感謝しなさい」
(そのノリ、やだなぁ……)
石橋の態度の大きさに平山は完全にあきれていた。
ここは京才市新泰原町のとある墓地。その一つの墓の前で瞬治は手を合わせて拝んでいた。
「………………」
そして拝み終わるとゆっくりと立ち上がり、じっと『堀井家之墓』と書いてある墓を見つめて次にこうつぶやいた。
「父さん、母さん、今回の戦いが終わったらまたくるよ。俺はまだやらなきゃならない事があるんだ」
言い終えると、そのまま墓地を出てどこかへと歩いていった。
さっきの瞬治の言葉から察すると、どうやらその墓は瞬治の両親の墓らしい。つまり、瞬治が石橋に言った『用』とは墓参りの事だったのである。
一方、誠也はというと。
「よっ! はっ!」
「オオーッ!」
ゲームセンターでダンスゲームを楽しんでいた。
「あいつ、これでハイスコアだぜ……」
「ああ。しかもまだ疲れを知らないって顔をしてるぜ」
「下手するとぶっちぎりになるんじゃねーか?」
誠也のあまりにもすごいプレイにまわりの観客はほれぼれとしていた。
ダンスゲームの機械からは軽快な音楽がずっと流れつづけ、誠也はそれに合わせて軽々とステップを踏んでいた。
「……つまんねーな」
「え?」
だが、誠也は突然何を言い出したかと思うと、プレイの途中でゲームの機械から降りてどこかへと歩き去っていった。
「やっぱり、今日一日はだめだな。あまり気分が乗らねーや」
「あっ……」
観客の一人が誠也を止めようとするがすでに遅く、誠也は外にでており、ゲームはとっくに『ゲームオーバー』という文字を表示していた。
「もったいねーな。完全クリアだったらハイスコア入れられたのに……」
「あ〜あ……なんかこう、スカッとするよーなことねーかな……」
頭の後ろで手を組みながら誠也は独り言をもらす。よほど今日は気分が乗らないらしい。
「例えば、いきなり強盗事件の犯人が現れて俺を人質にして「動くな!」とか……」
「待てー!!」
誠也が変な妄想をしていると、突然前の方からどう見たって不審な人物が手にボストンバッグと拳銃を持って誠也に向かって走ってきた。
「げっ!? マジで?」
「動くな!!」
その男は誠也の首を腕で絞め、包丁を誠也の頬に突き付ける。
(なんで俺の妄想が本当に起こるんだろーな? まったく、偶然っていうのは恐ろしいぜ)
危険な状況に自分が陥ってるにもかかわらず、誠也は頭の中でのんきな事を考えていた。
「……ん?」
瞬治が街を歩いていると、前方に人だかりが出来ているのに目がいった。
「なんだ?」
瞬治は後方からその人だかりが見ているものを眺める。
「!!」
その光景に、瞬治は驚きを隠さずにいられなかった。それは、誠也が頬に包丁を突き付けられている姿だったのだ。
「なんで誠也が……」
一方、誠也の方も瞬治の姿に気づいていないわけではなかった。
(……! 瞬治!)
誠也が瞬治に気を取られていると、
「動くんじゃねえ!」
男は怒って包丁を持っている手に力をこめる。すると、誠也の頬が少し切れて血が流れる。
「ってーな……」
その時、誠也の表情が一転して怒ったようになる。
「は?」
「聞こえなかったか? 「痛ってーな」っつったんだよ!」
その時、誠也が激しい怒声を上げたかと思うと、男の腕を払って腹に向かって思いきりパンチを入れ、
「ぐっ!?」
「これは俺を人質にした分。そしてこれがっ!」
続けて誠也は男の股間に向かって蹴りを打ち込んだ。
「がっ!?」
男は二発のダメージにたまらず(特に二発目)、包丁を落とし、股間と腹を抑えながらその場にうずくまってしまった。
「俺を傷つけた分だ」
「………………」
警察官は、誠也の意外な行動によってあ然とその光景を見つめていた。
「逮捕しねーのか、おまわりさん?」
「あ? ああ……」
誠也に言われて警察官は慌てて男に手錠をかける。
「逮捕のご協力、感謝いたします!」
「いやいや、礼を言われるほどのことじゃないって。ただ手を払って腹と股間に打撃を与えただけさ」
「は、はあ……」
誠也が動きをリプレイして説明するが、警察官は既にあきれた表情を見せていた。
「それじゃーな」
そういって誠也は警察官に向かって軽く手を振り、満足げな表情で再び歩きはじめた。
「あ、そうそう、俺の名は『剣持誠也』だ。よーく覚えといてくれよ」
誠也は、なぜか自分の名前を告げて再び向き直してそのまま去っていった。
「変な少年だ……」
「嫌なガキだ……」
警察官と男は、ほぼ同じタイミングでそうつぶやいた。
「よう、瞬治!」
誠也は、まるで何事もなかったように瞬治に声をかける。だが、瞬治は少し呆れ返っていた。
「お前、二撃目は辛いだろ……」
「ああ、あれか? 俺を傷つけた罰が当たったんだよ。まったく、どうしてくれんだよ、この傷……」
そういって頬の傷から流れる血を手で拭う。
「……まあ、誠也が無事ならいいか」
「あー、なんか動いたら腹減ってきたな。そこらへんでなんか食うか、瞬治」
「ああ」
誠也に言われ、瞬治は誠也と共に近くのファーストフード店に入っていった。
「きゃああああああっ!?」
「!!」
その時、外から激しい悲鳴が聞こえてきたので、二人は慌てて外に出ようとした。だが、
ズドオォォォン!!
「なっ!?」
突然頭上が爆発し、二人の上に瓦礫が落ちてきた。
「うわっ!」
二人はそのまま瓦礫の下敷きになってしまい、気を失ってしまった。
時は少しさかのぼり、ここはとある街の上空。
「畜生……おもしろくねぇ……」
そこでゴルヴォルフは愚痴をもらしながら地上を眺めていた。
「勇者はパワーアップしちまうし、俺の任務も上手くいかねーし……くそっ! こうなったら最強の魔物を召喚してやる!」
ゴルヴォルフはいつものように黒い種みたいなものを取りだし、手のひらに載せて力をこめる。
「怒りと破壊の魔神よ。地上の全てを奈落と化せよ……」
すると、その種が黒く光っていった。
「出でよ、『ヘルマスター』!!」
ゴルヴォルフが魔物の名前を叫びながら種を地上に向かって投げつけると、その種は変化して黒い闘牛みたいな顔をした死神のような魔物となる。
「ヘルマスター! いつものようにあらゆる物を破壊しちまいな! 俺の怒りの分もこめてな!」
「グオォォォォォォ!!」
魔物はゴルヴォルフの言葉に叫びで答え、手から雷を発して近くにあった建物を破壊した。
ズドオォォォン!!
「ヒャーッハッハッハ!! いいぜ! もっと、もっと破壊しろ!」
爽快に建物を破壊する魔物の姿を見て、ゴルヴォルフは狂喜の高笑いをする。
なお、ヘルマスターが破壊した建物は、瞬治と誠也のいたファーストフード店だったという事を追記しておく。
HBCグレートオーダールーム。
いつものように魔物の出現を知らせる非常警報が鳴り響いた。
「地球外知生体か!?」
「はい!」
「すぐに瞬治君と誠也君に知らせるんだ!」
「了解!」
石橋に言われ、荒井はすぐに二人にむかって連絡を取ろうとする。
「空人君! 急いで地球外知生体のいる現場に向かってくれ!」
「分かりました!」
空人は出撃するために急いでグレートオーダールームから出ていった。
「! 石橋司令官!」
二人に連絡を取っていたはずの荒井が、驚いた表情をしながら急に石橋の方を振り向く。
「どうした!?」
「二人との連絡が取れません!」
「なに!?」
荒井の口から出た言葉に、石橋だけではなく、他のスタッフも声を揃えて驚いた。
「おそらく電波の届かないところに行ったか、通信機が壊れたか……」
「そんなばかな! 電波の届かないところは離島でない限りありえないし、通信機だって簡単に壊れるほどやわじゃないはずだ!」
「じゃあ、どうして……」
グレートオーダールームにいた全員は、一瞬嫌な想像をしてしまう。
「そんなはずはない! 勇者は必ず奇跡を起こしているものなのだ!」
(その言葉、遠回しに「死んでる可能性がある」っていってる気がするなぁ……)
石橋の言葉に対して、スタッフの何人かは密かにそう思っていた。
「く……」
瞬治は、鼻を突くような煙の匂いや、目を閉じていても見える閃光によって目が覚めた。
「やっと生き返ったか、瞬治」
すると、目の前に誠也の顔があったため、
「うわっ!?」
ゴンッ!
「痛っ!」
瞬治は飛び上がってしまい、そのまま誠也と頭をぶつけてしまった。
「いてて……」
二人は、互いに不意打ちだったためあまりの痛さに頭を抱える。
「せ、誠也……人の目の前に顔を置くな……びっくりするじゃないか」
「だってよ、いくら起こしても目が覚めないから人工呼吸しようと思って……」
誠也は冗談を口にするも、瞬治は逆に怒ったらしく、まるで蛇みたいに誠也を睨んだ。
「そ、そんな怖い顔するなよ。冗談に決まってるじゃないか」
「お前、よくこんな状況で冗談が口にできるな」
瞬治があきれて座り込んだその時、
ズバアン!
「!!」
激しい爆音のような音が聞こえてきたので、二人は慌てて外の方を向いた。
「あ、あれは……」
そこには、さっきの魔物とそれに対抗するバーニングセイバスターの姿があった。
「地球外知生体!」
「それにバーニングセイバスター!」
バーニングセイバスターは、半壊した街の中で魔物と戦っていた。
「ファイヤーバスター!!」
バーニングセイバスターはキャノン砲を魔物に向け、炎の弾を打ち出した。
「グオォッ!」
真っ正面から攻撃を受けてしまった魔物は反動で後ろによろける。
「がんばれ、ファイナル!」
バーニングセイバスターの中で、空人はバーニングセイバスターとなっているファイナルを応援する。
「ファイヤーバルカン!!」
それに答えるようにバーニングセイバスターは腕から炎の銃弾を撃ちだし、少しずつ魔物にダメージを重ねていった。
(瞬治さんと誠也さん、どうしたのかな……用事があってもこういう時はちゃんと来るはずなのに……)
(ヴァリアントとグランドレオンがまだ来ないか……このぐらいなら私一人でなんとかなりそうだが………瞬治と誠也に何かあったのだろうか……心配だ……)
戦闘の途中で、二人は瞬治たちの心配をしていた。
いつもなら必ず横にいるはずの二人がいないと、どうも調子が狂ってしまうのだ。
「俺達もグランドレオン達を呼ぼうぜ!」
「ああ!」
二人は、それぞれの勇者を呼ぶために自分の腕についている通信機に目を向ける。
「………………」
だが、その通信機を見た瞬間に固まってしまった。
なぜなら、通信機は瓦礫に潰された時のショックにより壊れていたからである。
「おい……」
「これじゃ、呼ぶ事ができないな」
よほどのことがない限り、常に冷静な瞬治はこんな時も冷静だ。
「くそ!」
だが、それが逆に誠也の頭に来たのか、誠也は瓦礫を思いきり蹴飛ばした。
「落ち着け、誠也。仕方ないが、ここはバーニングセイバスターと空人に任せるしかない」
「く……」
誠也を何とかなだめようとする瞬治。だが、誠也は少し前に出ると、
「負けんじゃねえぞ! バーニングセイバスター!!」
バーニングセイバスターを自分の言葉で応援した。
自分は戦う事ができない、だからバーニングセイバスターに自分の分まで戦って欲しいと言う思いを込めて応援しているのだ。
「誠也……」
「ほら、瞬治も応援するんだ!」
「……地球の平和のために、俺達の分まで戦ってくれ! バーニングセイバスター!」
瞬治も、誠也に言われてバーニングセイバスターを応援した。
「……ん?」
「どうしたの、ファイナル?」
その時、バーニングセイバスターは誰かに呼ばれたような気がした。
「今、誰かが私を呼んだような……」
バーニングセイバスターはふと声の聞こえた方に振り向く。すると、そこには瞬治と誠也の姿があった。
「瞬治さん! 誠也さん!」
「二人とも無事だったか!」
空人とバーニングセイバスターの表情が明るくなる。
「俺達は大丈夫だ! それよりも早くその地球外知生体を!」
「グオォォォォォォォォッ!!」
瞬治の言葉と同時に、魔物が激しい咆哮をあげてバーニングセイバスターに向かって雷撃を放った。
「!!」
バーニングセイバスターはかろうじて防御に成功する。だが、魔物はすぐさま第二撃を放とうとしていた。
「空人、決めるぞ!」
「うん!」
空人に確認を取ったバーニングセイバスターは、キャノン砲を魔物に向けて照準を合わせる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バーニングセイバスターは咆哮しながらキャノン砲にエネルギーをためていき、そして、
「ハイパーバーニングバスター!!!」
技の名前を叫ぶと巨大な火炎の渦が撃ち出された!
ズバアァァァァァァン!!
火炎の渦は、魔物と衝突すると爆発、そして四散した。
「グ……グアァァァァァァ!!」
ドオォォォォォォォォン!!
魔物は蓄積されたダメージに耐え切れず、大爆発をおこして消滅した。
「やったあ!」
空人はいつものように全身で喜ぶ。
「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)
そして、いつもとは違うところから瞬治の決めゼリフが聞こえてきた。
それが聞こえてくると、空人達は全員笑顔になった。
「なあ、瞬治」
「なんだ?」
帰り道で、誠也はどうしても気になる事があったので、思い切って聞いてみる事にした。
「お前、あの時なんであそこにいたんだ?」
「ああ。墓参りの帰りだったんだ」
「墓参り? 誰のだよ」
誠也の質問に、しばらく空を見上げて黙っていた瞬治だがやがて重い口調で次の言葉を口にする。
「……俺の、両親だ」
「なっ……?」
その言葉に、誠也は絶句した。
「俺の両親は、二年前に地球外知生体の襲撃で死んでしまった。
だから、俺は地球を襲う地球外知生体の手から地球を守る事を決意した。地球を守る事が、俺みたいな奴を出さないようにする事に繋がるからな」
「………………」
瞬治の話に誠也は真剣に耳を傾けていた。こんなに真剣になる誠也は、もしかしたら始めてかもしれない。
「お前こそ、なんであの時あそこにいたんだ?」
今度は逆に瞬治が誠也に質問をかけた。
「俺は、単に憂さ晴らしをしていただけだよ」
「憂さ晴らし?」
瞬治の表情が一瞬険しくなる。
「俺の両親は、俺が小一の頃に離婚したんだ。おまけに、俺を引き取った親父は俺をほったらかしにするし……
それで、今日は両親が離婚した日なんだよ。だから今日になる度に怒りが込み上げてきてよ……」
誠也が怒りを抑えるように拳を握り締める。
「そうだったのか……」
「……でも、別に俺はそれを毎日根に持ってるわけじゃないぜ。俺の信条は『人生明るく楽しく』だからな」
だが、誠也は急に表情を変え笑顔を瞬治に見せた。
「今日が来るとどうしてもムカッとくるけどよ、いちいち根に持ってたらイヤな人間になっちまうからな」
「……そうだな」
そんな誠也の笑顔を見て、瞬治も軽く笑顔になる。
「……誠也」
「なんだ?」
「今日、初めてお前の事『いい奴』って思ったかもしれない」
瞬治の口から出た言葉に誠也は一瞬固まってしまったが、
「……何言ってんだよ。俺はいつだって『いい奴』だぜ。お前、気づくのが遅せーんだよ」
すぐに大笑いするような勢いで瞬治の背中をバンバンと叩く。
「……前言撤回、だな」
いつもどおりの誠也を見て、瞬治はまだどこか笑みを残しながらもそうつぶやいた。
同じ頃、ゴルヴォルフは二人が和んでいる光景を睨むように眺めていた。
「くそ! 俺の最強の魔物までも倒しやがって! ほんっとにムカつくヤロー達だな」
「ゴルヴォルフ……」
その時、ゴルヴォルフの後ろにレクイストが突然現れた。
「てめえか。まったく、こうムカつく時に出てくんなよ」
しかし、ゴルヴォルフは全く動じずに振り向きながら憎まれ口を叩く。
「ほう……私にそんな口をきくとは……どうなっても責任は取らないぞ」
「てめえに責任を取らせるようなことなんざ、地獄に落ちたってするわけねーだろ」
そういってゴルヴォルフはその場から立ち去ろうとした。だが、
「次からは私が出る」
「何っ!?」
突然レクイストが思いがけない事を口にしたため、ゴルヴォルフは驚きの声を上げて振り返る。
「冗談じゃない! なぜなんだ!」
「お前も、ソルダーズと同じように失敗続きだからだ。自分で気づかなかったのか?」
「ぐっ……」
レクイストの言葉があまりにも図星だったために、ゴルヴォルフは反論が出来なかった。
「安心しろ。お前にはあえて処分は出さない。だが、お前は粗大ゴミ同然だ。邪魔になるからさっさと消える事だな」
言いたい事を言い終えるとレクイストはその場から姿を消す。
「くそ……俺まで地位がやばくなったか……」
ゴルヴォルフはさっきまで見せなかった焦りを初めて顔に出した。
「次を強情でやるわけにもいかないしな。あいつには、悔しいが手ぇだすことが出来ねーからな……」
いつもゴルヴォルフは強気のはずが、今日はなぜかやけに弱気だった。それほどレクイストの力が恐ろしいのであろうか。
「だったら見てろよ……俺はソルダーズと違うという事を……」
捨て台詞を既にいなくなったレクイストに向けて吐くと、ゴルヴォルフはそのままどこかへと去っていった。
第11話に続く
次回予告
石橋だ! 君達に次の任務を与えよう!
空人君が『夢』について瞬治君達にいろいろと聞いているようだ。
子供というのは、夢をかなえる力がある。空人君達も自分の夢をかなえて欲しいものだな。
だが、平和なはずのその時にあのレクイストがより強力な力を持って勇者達の前に再び現れた!
さらに運の悪い事に、この勇者研究所までもが狙われてしまった!
く……こうなったら、『アレ』を起動させる! 神波君、急いで準備するんだ!!
次回、勇者伝説セイバスター『夢と希望』
頼んだぞ、セイバスター! 今は我々が地球を守るのだ!
説明 | ||
アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。 | ||
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