勇者伝説セイバスター 第11話「夢と希望」
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第11話「夢と希望」

 

 ある日の事であった。

「……でさー……」

「マジかよー?」

「それで、その男っていったらね……」

 人々の話し声、車のエンジン音、さらには電子音まで街中に響いている。

「………………」

 その街の中を、レクイストは歩いていた。

「一体なんだ、この騒音は……?」

 街にあふれる騒音は、地球の人々にとってはごく日常となっているが、レクイストは非常に不快に感じていた。

「なぜ我々の侵略にもかかわらず、コイツらは平然といられるのだ……?」

 何度も行なわれている地球の襲撃。

 それにもかかわらず、人々が平然と街を歩いていられるのが、レクイストにとって最大の疑問なのだ。

「やっぱり、あのロボットのおかげで平和でいられるよなー」

「そうそう、ホントにあのロボットさまさまだぜ」

 いつもと変わらない日常、それが保たれている理由はやはり『勇者』なのであった。

 魔物たちの襲撃は、確かに人々に恐怖心を与えている。だが、その恐怖心のもとを断っているのが勇者なのだ。

 勇者達のおかげで、人々は平和な日常を保ち続けられているのだ。

「『勇者』ども……やはり、我々の邪魔となるか……」

 そういって、レクイストが鎌に手をかけたその時、

「……の『夢』って何?」

「私の『夢』はね、ステキな人見つけて結婚する事なんだー」

 ふと、レクイストは少女たちの会話を耳にした。

「『ユメ』?」

「へー、そうなんだ。私はね、ケーキ屋さん!」

「そっかー。なれるといいね」

 少女たちの笑い声もレクイストの耳に届く。

 その希望に満ち溢れたような声は、レクイストにとって疑問を抱かせる物にしかならなかった。

「『ユメ』とはなんだ? なぜそんな『希望』に満ち溢れる事が出来る? 希望など、無意味な感情でしかないはずなのに……?」

 『夢』に関して、希望に関して、レクイストは大きな疑問を抱いた。

 レクイストにとって夢や希望というのは、一時の物であり永久に残る物ではない。

 永久に残る物でなければ、レクイストにとっては全て不要の物なのだ。

ズキッ!

「ぐっ……!?」

 その時、レクイストは頭に激しい痛みを感じる。

ズキッ! ズキッ!

「何だ、この痛みは……!?」

 疑問を抱けば抱くほど、レクイストは頭の中に原因のわからない激しい痛みを感じていた。

「く……一度、出直すしかないな……」

 レクイストはこの激痛から解放されるために、一度出直すことにしてその場から消えた。

 だが、レクイストの抱いた疑問は残ったままである……

 

 

「……では、みなさん、明日までに自分の『夢』について作文に書いてきてくださいね」

「はーい」

 教室を生徒達の元気のいい返事が包む。

「夢かぁ……なあ、空人。お前の夢って何だ?」

「僕の? う〜ん……」

 力也に突然質問され、空人は少し戸惑いながらも考えに耽った。

「………………」

「……空人?」

「……まだ、決まってないや」

 そういって空人が見せた無邪気な笑顔に、力也は思いきり脱力した。

「何だよ……それならそうと早く言えっての」

「ごめんごめん」

 空人は冗談交じりで力也に謝る。

「それじゃ、力也君の夢って何?」

 今度は逆に、空人が力也に質問を投げかけた。

「俺か? 俺はもちろん、プロのサッカー選手になって世界一になる事だぜ!」

 空人の質問に力也は自信をもって答える。その目は、いつもより輝いているように見えた。

「そっかー。がんばってね!」

「おう!」

「ムリムリ。力也じゃ、途中で挫折しちゃうわよ」

 元気に答えた力也を頭から否定して、恭子は晴香と共にその場に現れる。

「なんだよ、俺はそんなに飽きっぽい性格じゃねーぞ」

 恭子の言葉に怒りを覚える力也。

「そうじゃないの。力也だったら、きっと練習が辛くてやめちゃうとかそんなところよ」

「俺は練習がきつくてやめるほど我慢強くないわけじゃねーぞ!」

 そして、とうとう怒りを爆発させ、恭子と言い争いになってしまった。

「なによ! この前だって……! ……!!」

「お前こそ……! ……!!」

 そんな二人を空人と晴香は苦笑いしながら見ていた。

「……なんか、すごい事になったね」

「うん……」

 二人は止めようともせず、ただ黙って眺めてそのまま時を過ごしていった。

 

 

「う〜ん……『夢』、かぁ……」

 学校からの帰り道。空人はいまだに出された宿題、『夢』についての作文で悩んでいた。

 この年頃の小学生なら何か一つは夢があるものだが、空人は今まで気楽に物事を考えていたせいか、夢を決めていなかったのだ。

「ねえ、晴香の夢ってなんなの?」

「私? 私は、幼稚園の先生になりたいな!」

 晴香は空人の質問に明るく答える。

「へー、なんで?」

「だって、私子供と遊ぶのが好きだから」

「晴香も僕もまだ子供だよ」

「あっ、そっか……」

 二人は笑った。その笑いは、いつもより純粋に笑っているように見えた。

「……あっ、ねえねえ、瞬治さん達に聞いてみたら?」

「瞬治さん達に? なんで?」

 その時、晴香は急に何かを思い付き、それを空人に提案した。それを聞いて、空人は逆に晴香に質問を返す。

「瞬治さん達の夢も聞いて、それを参考にすれば空人の夢も決まるよ」

「そっか……それじゃ、HBCに行こう!」

「うん!」

 晴香の提案に従う事にし、空人達はHBCに向かった。もちろん、ファイナルを呼び出してだが……

 

 

 HBCフォースオーダールーム。

「俺達の夢? なんでまたそんなモンを聞くんだ?」

 空人に聞かれた質問に、誠也は理由を問いただす。

「実は……」

「『夢』についての作文を出されたが、自分の夢が無く他の人の夢を聞いて参考にしよう……というところだな」

 空人が事情を説明しようとしたその時、どこからかともなく現れた瞬治が正確にその事情を言い当てた。

「………………」

 瞬治の説明があまりにも正確だった為、空人は驚いた表情で瞬治を眺める。

「どうした? 何か違う所があったか?」

「い、いえ、何で分かったのかなって……」

「他人に夢を聞くとしたら、だいたいそんなところが理由だ。事実、俺もそうだったからな」

 瞬治はそう言いながら自分の手にはめているグラブを外してポケットにしまった。

「瞬治も夢について悩んでいたのか?」

「まあな。あの時は、まだ先の事なんて考えていなかったからな」

 そういって、瞬治は遠くを見つめるような目になる。

「あの、それで瞬治さんの夢って何ですか?」

 晴香が質問する。それは、思い出に浸る瞬治を呼び戻すような言葉であった。

「俺は、特にない」

「ないのかよ!」

 瞬治の返答にすばやくツッコミを入れる誠也。

「だが、あえて言うなら地球の平和を取り戻すことだ。戦っているよりかはやっぱり平和なほうがいい」

「そうだな。平和のためにも早いところ地球外地生体を倒そうぜ!」

「ああ」

 瞬治は軽くうなずいた。誠也は瞬治の返事を聞いて笑顔を見せる。

「それじゃ、誠也さんの夢は?」

 続いて、空人は誠也に向かって晴香と同じ質問をした。

「俺は芸能界に入って日本全国を俺のファンで埋め尽くしてやるぜ!」

 誠也の夢に、全員は思わずひいてしまう。

「……り、理由は何ですか?」

「そんなの決まってるだろ。全国の女の子の黄色い声援を受けたいからさ!」

 その理由に、全員はますますひいてしまった。

「ひ、人それぞれですね……」

 空人はそれを悟られない為に必死に作り笑いをするが、やはりどこか引きつっている。

「なんなら、今すぐサインしてやろうか?」

「そこまでにしておけ、誠也。空人達が困っているじゃないか」

 どこか暴走気味になった誠也を瞬治が止めた。瞬治の言うとおり、空人たちは少し困った表情で誠也を見ていた。

「そこまでいったら冗談だって。でも、芸能人になりたいって言うのは本当の夢だぜ」

「ところで、芸能人っていっても、どんなのになりたいんですか? たとえば歌手とか、俳優とか……」

「もちろん、アイドル!」

 誠也はなぜかマイクを持ったポーズを取り、自分にとって最高と思っている笑顔を空人達に見せた。

「……誠也なら、芸人が妥当だな」

 瞬治が誠也の見たままのイメージをそのまま口にする。

「何か言ったか、瞬治?」

 だが、誠也の耳には届かなかったらしく、いまだに歌う真似をしながら瞬治に聞き返した。

「いや、別に……」

 自分で言った事が少しおかしかったのか、瞬治は軽く笑いながら言葉を返す。

 

 ここは勇者研究所の上空。

「………………」

 レクイストは音も立てずに、その場に現れた。

「ソルダーズ……ゴルヴォルフ……少なくとも、私に勇者どものデータを提供するぐらいの役目にはなったな……」

 そういってレクイストは怪しげな笑みを浮かべる。そして、鎌を手にして上に構えた。

「今までのデータから、勇者どもの出現方角はここからだった。ならば……」

 レクイストは鎌を瞬時に振り下ろす。すると、鎌から衝撃波が放たれて勇者研究所の辺り一帯を押しつぶした。

 

ズドオォォォォォォォン!!

 

「うわあっ!?」

 地上の衝撃波による揺れは、地下にあるHBCにまで届いた。

 その揺れによって空人達は驚き、そして体勢を崩してしまう。

「な、なんだ!?」

『みんな、急いで出撃してくれ!』

 スピーカーから石橋の慌てた声が聞こえてくる。その慌てぶりだと、どうやらただ事ではないらしい。

「一体どうしたんですか!?」

『勇者研究所一帯が、地球外知生体に襲われているのだ!』

「何!?」

 石橋の言葉に、全員は驚きを隠せなかった。

『どうやら、地球外知生体はここが我々勇者の基地だと見抜いたらしい。急いでくれ!』

「了解!」

 空人はファイナルと、瞬治はヴァリアントと、そして誠也はグランドレオンと共に出撃した。

 

ドオォォォン!!

 

「きゃあっ!」

 空人達が勇者と共に出撃した直後、HBCは再び激しい揺れに襲われる。

「晴香ちゃん!」

「荒井さん!」

 そこに、心配になって荒井が駆けつけてきてくれた。

「早く、グレートオーダールームに!」

「え、ここから逃げないんですか?」

 荒井の口から発せられた言葉に、晴香は疑問を抱く。

 普通、襲撃されているなら一刻も早くその場から逃げるはずなのに、なぜ逃げないのか。

「私にも分からないわ。ただ、石橋司令官が「グレートオーダールームに全員を避難させるんだ!」って……」

 その答えは荒井も知らなかった。石橋司令官の指示により荒井は行動を起こしているだけなのである。

「石橋さんが……?」

 石橋がなぜそう言ったのか、それは今の時点では石橋ともう一人、『ある人物』のみしか知らない事であった。

 

「神波君、『F−System』の起動準備を急ぐんだ!」

「はい!」

 グレートオーダールームでは、石橋と神波が慌ただしく動いていた。

「あ、あの〜……石橋司令官?」

「今は話す事ができない! すまないが、全員は所定の位置で待機していてくれ!」

 誰の言葉にも耳を貸すことなく、石橋はコンピュータのディスプレイとにらみ合いをしている。

『こうなってしまった以上、これを起動させるしか手段はない!』

 石橋と神波は同じ事を口にした。そして、二人の開いているファイルの名前には『HBF』の3つのアルファベットが並んでいた。

 

 

「!!」

 出撃口から出た直後、勇者達は全員驚いてしまった。

「やはりな……」

「レクイスト!?」

 なぜなら、そこにレクイストがいたからである。

 石橋の言葉では、地球外知生体としか聞いていなかった勇者達は魔物が襲っていると思っていたのだ。

「やはり、ここが貴様らの本拠地だったか……」

「全ては、見通していたという事か!?」

 ファイナルの口調が思わず強くなる。

「見通す? 正確に言うなら、データ提供をした貴様らが間抜けだっただけだ……」

「く……いちいちうるせーんだよ! レオンクロー!!」

 怒りに燃えたグランドレオンは手の甲に装着された爪で攻撃する。

「無駄だ……」

 だが、その攻撃もレクイストは簡単にかわし、逆にグランドレオンを地面に叩き付けた。

「ぐああっ!」

「さあ、その目で見るがいい。貴様らの拠点が消え失せる姿を……」

 流れるようにレクイストは再び鎌を持ち、半壊した勇者研究所に向かって振り上げる。

「やめてぇーっ!!」

「やめろぉーっ!!」

「やめろーっ! バカヤロー!!」

 3人は一斉に叫んだ。しかし、その叫びも虚しくレクイストは勢いよく鎌を振り下ろした!

 

ズドオォォォォォォォン!!

 

 激しい爆音と共に、勇者研究所は元の姿とはかけ離れた、つぶれた姿と化してしまった。

「…………………」

 その悲惨な姿に三人は言葉を失う。その表情には絶望の影がかかり始めていた。

「ククク……どうだ、目の前で破壊される光景は?」

 レクイストが勝ち誇った笑みを勇者達に見せる。

 

「『F-System』、起動!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 勇者達が絶望しかけたその時に、激しい地響きが聞こえてきた。

「ん?」

「な、なんだ?」

 しかも、その地響きは勇者研究所跡地から聞こえてくる。

「な、なにあれ!?」

 空人は勇者研究所跡地を指差した。その光景は、思わず目を疑うようなものがあった。

 地面が隆起しているのだ。いや、隆起していると言うより、その部分だけ切り取られて持ち上げられてるようなのだ。

「な……!?」

 目の前で起こっている異常な光景に、レクイストも呆気に取られている。

「こ、これは……」

「巨大な、船……?」

 誠也はその『姿』を見て、正直に思った事を口にした。

 目の前で見えているもの、それは勇者達よりもはるかに巨大な『船』だった。

 その船は乗っかっていた瓦礫をバラバラと落としながら空中に浮かび上がっていく。

『ハーッハッハッハッハ!!』

 突然、スイッチの入るような音がしたかと思うとその船から石橋の大きな笑い声が聞こえてきた。

 喜劇を見て大爆笑したような笑い声を聞き、その場にいた勇者も含む全員は激しくズッコケてしまった。

「い、石橋さん?」

『どうだ! これが『Holy Brave Concentrate』訳して『聖勇者結集』の本当の姿!その名も、『Holy Brave Fortress』だ!!』

 石橋はさっきまでの出来事がなかったように、いつものような調子でその船の名前を叫ぶ。

「ホーリーブレイブフォートレス……」

「そんなの、初めて聞いたぞ……」

『当然だ。これは私と神波君しか知らない事実だったからな。あ、ちなみに略称『HBF』で呼んでくれたまえ』

 呆気に取られる空人達。だが、その雰囲気をレクイストは打ち破った。

「何だか知らないが、破壊すれば同じ事。この場から消えるがいい!」

 レクイストは鎌を三度構え直し、HBFに向かって鎌から衝撃波を放つ。

「危ない!」

 

 

 HBFグレートオーダールーム。

「石橋司令官! あの衝撃波がまた来ます!」

「大丈夫だ。神波君! 『リフレクションシールド』だ!!」

「了解!」

 石橋の言葉を聞き、神波はキーボードを打ちたたいてある装置を起動させる。

「リフレクションシールド!!」

 

 

 レクイストの放った衝撃波がHBFを破壊しようとした次の瞬間、

「何っ!?」

 衝撃波がHBFを包んだシールドとぶつかり、ガラスの割れるような音がして衝撃波がそのままレクイストに向かって跳ね返ってきた。

「ぐっ!?」

 予想する事の出来ない反撃に、レクイストは自ら放った衝撃波にダメージを受ける。

『ハーッハッハッハ! どうだ、我がHBFの防御システム『リフレクションシールド』は!!』

 まるで自分自身の力で勝利したかのように、石橋は再び高笑いをする。

「く……どうやら、先に勇者たちを倒した方が得策のようだな……」

 レクイストは苦しみながらも、勇者達に目を向けた。

「空人!」

「うん!」

 いつものように空人はファイナルの呼びかけにうなずき、

「バーニング・ブレイブ!!」

 大きな声で新たな合体のためのキーワードを唱える。

「バーニングダッシャー!!」

 ファイナルが思い切り叫ぶと、地平線の彼方からバーニングダッシャーが現れた。

 ファイナルの新たなるサポートメカ『バーニングダッシャー』とファイナルの合体が始まる!

 

 バーニングダッシャーの最後尾にあるパーツが上を向き、足の爪先を形成する。

 機体がゆっくりと立ち上がり、完全に直立すると機体の上半分が横に半回転した。

 機体の上部の後ろにあるパーツが立ち上がり、機体上部が二つに割れ、腕を形成する。

 機体の左右についている巨大なバスター砲が機体から分離し、後ろに上がっている腕が下りた。

 その機体の後ろには、セイバードラゴンの時と同じように空洞があった。

「たあっ!」

 ファイナルはバーニングダッシャーに向かって飛び上がり、背中と結合した。そしてそれと同時に空人は浮き上がり、胸の飾りから機体の中へと吸い込まれていく。

 一通りの動作が完了すると両腕から炎を上げながら手が現れ、握り拳をつくると機体から顔が現れた。

 最後に巨大なバスター砲が背中と結合し、砲口が前を向いた。

「烈火合体!!」

 ファイナルが叫ぶと同時に両手を振り上げ、

「バーニングセイバスター!!!」

 最後の掛け声でバーニングセイバスターはファイティングポーズを取った。

 

『ヴァリアント、それにグランドレオン! 君達のサポートメカが直った! 今すぐ合体するのだ!』

 そこに、石橋からの吉報が勇者達の耳に届く。

「よし!」

 瞬治はそれを聞いて軽くうなずき、

「VALIANT・DRIVE! Come on、THUNDERJET!!」

 キーワードを叫びながら指を鳴らす。すると空の彼方からサンダージェットが現れた。

 サポートメカ『サンダージェット』とヴァリアントの合体が始まる!

 

 サンダージェットの後部、エンジンとなっている部分が左右に分かれる。その左右に分かれたエンジン部分が半回転し、半分から外側が下にさがると上半身を形成した。

 上半身の左腕についていた翼が分離して右の翼と結合する。それは『V』の形をしている装飾品となった。

 次にサンダージェットのコクピット部分が分離し、機体の前部が戦闘を中心にして前に回転する。完全に前に来ると横についていたパネルが開き、回転の中心となっていた部分を閉じた。

 そして前に降りた機体前部が二つに分かれ、爪先が降りると足を形成する。

 今まで機体後部の位置の横にあった翼が分離してボディの背中と結合する。

 その機体は胸の部分が欠乏していた。

「はっ!」

 ヴァリアントがその胸の部分に向かって飛んでいく。するとその姿を変形させて機体の胸へと結合した。

 それが終わると同時に機体の腕から手が現れる。

「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)

 瞬治がそう言うと機体から顔が現れた。

「雷光合体!!」

 ヴァリアントは叫ぶと同時に顔の前で腕を交差させ、

「ヴァリアントセイバスター!!!」

 腕を振り下ろし、構えを取ると背中の翼にもう一つ、V字の翼が現れた。

 

「俺達も行くぜ、グランドレオン!」

「よっしゃ!」

「来い! ウインドホーク!!」

 誠也は掛け声と同時にブレスレットのついた左腕を大きく上にかざす。

 するとブレスレットが光を放ち、ウインドホークをその場に出現させた。

「クエェェェェェェェェ!!」

 ウインドホークは大きく鳴き声を上げると、額の飾りに誠也を収納する。

「レオン・クロス!!」

 ウインドホークの中で誠也がそう叫ぶとウインドホークは地上を滑空し、仁王立ちしているグランドレオンの横を通って真上に急上昇した。

 グランドレオンとウインドホークの合体が始まる!

 

 グランドレオンが飛び上がると、グランドレオンの顔が収納されて元の獅子の顔になる。そして頭部が胸に移動し、結合した。

 ウインドホークは上昇した形のまま、変形を始めた。

 ウインドホークの足が分離され、首から頭部が後ろに収納される。そしてそのままグランドレオンの背部と結合した。

 次にウインドホークの分離した足は爪が後ろに回転して爪先が現れ、グランドレオンの足の裏と結合する。

「翔獣合体!!」

 グランドレオンが叫ぶと同時に体からグランドレオンの時とは違った顔が現れた。そして、

「レオンセイバスター!!!」

 レオンセイバスターはファイティングポーズのような構えを取った。

 

 

「戦う前に、聞きたい事がある」

「何だ?」

 レクイストは攻撃を仕掛ける前に、一つ質問を投げかける。

「なぜ貴様ら人間は『夢』や『希望』などを持つ?」

 それは、ついこの間生み出された疑問だった。

「それは……自分のためだ」

 一瞬戸惑ってしまうが、瞬治はその答えを口にする。

「夢や希望を持ち、それに向かって己を奮い立たせ、一生懸命になる。さまざまな何かに向かって人間は生きていくものなんだ」

 瞬治は自分の思っている事をレクイストに返した。

 「何かに向かって人間は生きていく。」それが瞬治の答えだった。

「一時のものでしかないはずだ。それなのになぜ……?」

「その一時のものを一生のものにするために持ってるんだよ。自分が抱いた夢や希望は、人間誰しも叶えたいって思ってるんだ」

 誠也も同様にレクイストに自分の言葉で返す。

 「一時のものを一生のものにする。」それが誠也の答えだった。

「叶わなければ『苦痛』になるはずだ。その苦痛から逃すためにわれわれは闇の世界を作ろうとしているのだ」

「そんなの、僕は嫌だ!」

 レクイストの言葉に怒りを感じ、空人は思わず叫んだ。

「僕はまだ夢は持ってないけど、でもいつか夢を持ってそれを叶えたいって思ってるんだ!」

 空人は自分の思いをレクイストに言葉でぶつける。

 「闇に逃げるより、夢を持って叶えたい。」それが空人の答えだった。

「……やはり、我ら宇宙帝国デストメアと貴様ら勇者どもとは戦うべき運命の中にいるようだな」

 だが、レクイストはそれぞれの意見を受け止めようとせず、戦いのために構えを取る。

「来るぞ!」

 同時に、勇者達も迎撃のため身構えた。

「これが運命ならば、私も全力で行こう……」

 そう言いながらレクイストはヘルズゲート・フルートを手に持った。

「! また、あれが……」

「大丈夫だ、空人。私がついている」

「ファイナル………うん!」

 空人はあの時の恐怖を思いだし、少し後ずさりしそうになるがバーニングセイバスターの言葉を聞いて安心する。

「独奏曲第零番『襲来』……」

 レクイストは、空人に恐怖を与えたのとは違う音楽を奏でた。それはどこか軽快であり、されど悲しい響きを辺りに漂わせる。

「……な!?」

 少しその音楽に聞き取れていた全員は次の瞬間、驚くべき光景を目にした。

 空が二つに割れ、中から巨大な布の固まりが現れたのだ。

 いや、正確には布をかぶったロボットだ。なぜなら、その布の頂には白いロボットの顔があったからである。

「融合……」

 レクイストが演奏を止め、キーワードを口にするとレクイストはロボットに吸収され、融合する。

 融合が完了するとロボットの目に光りがともる。

「さあ、始めようではないか……」

 そして、レクイストは鎌を手にして勇者達に向かって構えた。

「気をつけろ! 人間サイズであの強さだ。あの姿だとどれほどの強さか分かったものじゃない!」

 瞬治は全員に向かって忠告する。

「んなこといっても、攻撃しなきゃわかんねーだろ! 行くぜ、切り込み隊長!」

「おう!」

 だが、その忠告を無視してレオンセイバスターは誠也の指示でレクイストに向かっていった。

「誠也!」

「レオンクロー・ダブル!!」

 レオンセイバスターは両手の甲に装着された爪でレクイストに切りかかる。

 

ガキィン!

 

「やったか!?」

 誠也の表情が一瞬明るくなる。

 だが、次の瞬間に誠也はレオンセイバスターが思いがけない状態になっているのに気づいた。

「なっ!?」

「ぐっ……」

 なんと、レオンクローが布の中から出ている腕に受けとめられているのだ。

 レオンセイバスターは今まで以上に素早く、強力に攻撃したのだ。それなのにレクイストはいとも簡単に受けとめてしまっている。

「遅い……」

 

ドガアッ!

 

「ぐはっ!?」

 レクイストはがら空きになっていたレオンセイバスターの体に向かって強力な蹴りを入れて吹き飛ばした。

「ヴァリアントバルカン!!」

 一瞬の隙をつこうと思い、ヴァリアントセイバスターはレクイストに向かってすかさずバルカンを撃ち出す。

「何っ!?」

 だが、その銃弾はすべてレクイストの手にある鎌によって弾かれてしまった。

「ファイヤーバスター!!」

 続けてバーニングセイバスターがキャノン砲をレクイストに向け、炎の弾を撃ち出す。

ズバアン!

 レクイストはまともに炎の弾を受けてしまい、体勢を崩す。

「レオンクロー!!」

「ヴァリアントエッジ・サンダー!!」

 それに続くようにレオンセイバスターとヴァリアントセイバスターもそれぞれの武器で攻撃した。

「どうだ!」

 自信満々に誠也がガッツポーズをとる。

 しかし、レクイストはほとんどダメージを受けておらずに無傷だった。

「そんな!?」

「無駄だ……貴様らの攻撃は全て『影転換』によりダメージが消える……」

 レクイストは勇者達に向かって冷徹な笑みをする。

「ふざけんな! 俺達は負けない! 行くぞ、レオンセイバスター!!」

 誠也は怒りの言葉をレクイストにぶつけ、再びレオンセイバスターはレクイストに向かって突進していった。

「レオンクロー!!」

「無駄だといってるのがわからないのか……?」

 あきれた様子でレクイストは鎌を持ち振り上げた瞬間、あることに気づいた。

「!」

 レオンセイバスターの手の甲にレオンクローが装着されていないのだ。

「ひっかかったなっ!」

 レオンセイバスターはレクイストの手前でジャンプし、

「トライアングルフィールド!!!」

 手からバリアを発生させてその中にレクイストを閉じ込める……はずだった。

「はっ!」

 その事に気づいたレクイストは身を翻してトライアングルフィールドをかわす。

「くだらん変則技だな……」

「まだ終わっちゃいないぜ!」

「何っ!?」

「アイフラッシャー!!」

 レクイストが完全にかわしたと思ったその時、レオンセイバスターの胸の獅子の瞳から光が放たれた。

「ぐっ!?」

 アイフラッシャーによって空中でレクイストの動きが止まり、隙が出来る。

「もう一回!」

「トライアングルフィールド!!!」

 再びレクイストの頭上に来るとレオンセイバスターは手からバリアを発生し、今度は確実にレクイストを閉じ込めた。

「ぐあぁ……!」

 その中でレクイストは身動きできずに苦しんでいる。

「今だ!!」

「了解!」

「ヴァリアントボウガン!」

 ヴァリアントセイバスターはどこからかともなく銃を取り出し、右腕を上に突き上げる。

 するとその右腕に装着されていたV字の装飾品が飛び上がって銃に装着された。

「いくぜ……」

 瞬治はその照準をレクイストに合わせる。

「THUNDERARROW,FIRE!!!」(サンダーアロー、発射!!!)

 瞬治がそう叫ぶとヴァリアントセイバスターはすかさず引き金を引く。

 

ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 その瞬間、銃声と共にヴァリアントボウガンから雷の矢がレクイストに向かって飛んでいった!

「ハイパーバーニングバスター!!!」

 同時に、バーニングセイバスターはバスター砲から巨大な火炎の渦を撃ち出した!

「く………はあっ!!」

「なっ!?」

 二つの必殺技がレクイストを貫こうとしたその時、レクイストは無理やりバリアの中から脱出してギリギリのところでかわす。

 二つの必殺技は貫くはずの相手にかわされてしまい、空の彼方へと消えていった。

「そ、そんなバカな……」

 破られるはずのないトライアングルフィールドを破られ、レオンセイバスターはショックを受ける。

「ぐぅ……」

 だが、レクイストの方もかなり体力を消耗しており、既に余裕はなくなっていた。

「どうやら、この勝負はお預けだな……」

 そういってレクイストはその場から煙のように消える。

「ま、待て!」

 勇者達はレクイストを追いかけようとしたが、既にレクイストは消え失せていた。

「く……」

『よくやった、勇者達』

 少し悔しがっている勇者達を励ますように、石橋がHBFから声をかける。

『レクイストは逃がしてしまったが、危機は回避できたのだ。それだけで良いではないか』

「石橋さん……」

『さあ、疲れただろう。このHBFで体を休めるがいい』

 石橋の言葉に甘え、勇者達はHBFへと向かって体を休める事にした。

 

 

 翌日。空人は『夢』についての作文でこんな事を書いていた。

「僕の夢はまだはっきり決まっていません。だけど、将来は人のためになるような仕事がしたいです。

僕みたいに夢が決まってない人がいたら夢を持たせてあげたり、夢に向かって頑張ってる人がいたらその人を応援してあげたいです」

 

第12話に続く

 

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次回予告

 

こんにちは! 僕、空人。

 

ねえねえ、今度僕の父さんと母さんが一時帰国してくるんだ!

やったあ! 本当に嬉しいよ……なんて、喜んでいたら突然、ゴルヴォルフが闇の力を使って街を壊し始めた!

そこに向かう僕とファイナルたち。だけどものすごい強さにやられそうになってしまう。

でも、あきらめないで守らなきゃならないんだ! 僕は勇者だから!

『最後の勇気』を持つ勇者なんだから!!

 

次回、勇者伝説セイバスター『勇気が光り輝く時』

 

僕と一緒に、「ファイナル・ブレイブ!!」

説明
アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。
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