勇者伝説セイバスター 第12話「勇気が光り輝く時」
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第12話「勇気が光り輝く時」

 

 それはある日のことであった。

「ただいま!」

 いつものように空人と晴香が学校から帰ってくる。

 晴香は日課となっている郵便受けの確認をする。今日は何枚かのチラシと、一通手紙が入っていた。

「え〜と……あれ?」

 晴香はその手紙を見て首をかしげる。なぜなら、その手紙はエアメールであり、しかも空人宛なのだ。

「空人、空人に手紙が来てるよ」

「僕に? 誰だろう……?」

 空人は晴香から手紙を受け取り、裏面に書いてある差出人の名前を見る。

「あっ!」

 すると空人は急に表情が明るくなり、急いで封を空けて中身を読んだ。

「そ、空人……?」

「………………」

 晴香が声をかけても全く返事をせず、ただ目を見開いて読み続ける空人。

「空人、誰からの手紙なの?」

 晴香はあきらめず、空人に質問をかけた。

「あのね、父さんと母さんからの手紙なんだ!」

「えっ!?」

 空人の答えを聞いて、晴香は驚いた。

 以前にも書いたが、空人の両親は仕事の都合上海外に住まなければならなくなり、空人だけは日本に残ったのだ。

 それ以来、空人の両親は手紙をくれていなかったのだが、今回初めて手紙が来たので驚いたのだ。

「それで、今度の日曜日に一時帰国してくるんだって!」

 空人の口調が熱くなってくる。それほど嬉しさで興奮しているのだろう。

「よかったね、空人」

「うん!」

 晴香とほぼ同じタイミングで空人は微笑んだ。

 

 

 そして、日曜日。空人は晴香と共にHBFにいた。

「早く時間にならないかな……」

「空人の奴、随分嬉しそうだけど何かあったのか?」

 空人がやけに嬉しそうなのを見て、誠也は晴香に向かって質問した。

「はい。今日、空人のお父さんとお母さんが一時帰国してくるんです」

「一時帰国って……空人の両親は海外にでも行ってるのか?」

 続けて瞬治が質問する。瞬治たちは当然空人の両親が海外にいるということは知らなかった。

「はい」

「そりゃ嬉しいだろうな……俺もそんな嬉しい事があればな……」

 遠い目で何かを見ながら誠也はぼそっとつぶやいた。

「例えば、綺麗なお姉さんが目の前に現れるとか」

「絶対にありえない」

 誠也の妄想に瞬治は冷たく返す。

「……そんなこと言うなよ、瞬治」

「そういえば、何で空人はここにいるんだ?」

 誠也を無視して話を進める瞬治。

「空港までいって迎えに行きたいって空人が石橋さんに頼んで、それで……」

「なるほどな……」

「空港ってことは、海外からの綺麗な女性とか当然いるよな?」

 そこに誠也が割り込んで再び話をそらしてしまう。

「……付き合っていられないな」

 そんな誠也にあきれて瞬治はどこかへといってしまった。

「お、おい、瞬治……」

 あわてて誠也は瞬治を追いかけていく。

「おっ?」

「あっ」

 瞬治がHBFフォースオーダールームを出て行こうとしたその時、ほぼ同じタイミング石橋が入ってきたので立ち止まった。

「だっ!?」

「うわっ!?」

 だが、そのせいで誠也は瞬治にぶつかってしまい、瞬治はその反動で石橋にぶつかってしまう。

「しゅ、瞬治……いきなり止まるなよ……」

「勝手にぶつかってきたお前の方が悪いだろ……」

「二人とも、早く離れてくれ……」

 瞬治と誠也が軽く言い争っていると、石橋が寄りかかっている二人に対してやや怒ったような口調で言った。

「わ、悪い……」

 瞬治と誠也はあわてて石橋から離れる。

「空人君、晴香君、そろそろ時間だから行こうか?」

「はい!」

 石橋の言葉を待っていたらしく、空人は急いでファイナルに乗り込んだ。それに続いて晴香も乗り込む。

「それじゃ、いってくる。何かあったらすぐ連絡してくれ」

 そういい残すと石橋もファイナルに乗り込み、HBFから空港へと向かっていった。

「両親、か……」

 瞬治は空人のことを思い出し、独り言をつぶやく。瞬治の両親は二年前に亡くなっているので、空人の事が少しうらやましいのだ。

「家族って、そんなにいいものなのか?」

 逆に、誠也はあまりどうとか思っていなかった。誠也の両親は離婚したため、逆に両親に対するイメージがあまりよくないのだ。

「当然だ。人間は一人で生きていくものじゃないからな……」

「それには同感だな」

 瞬治の意見に同感を抱く誠也。瞬治は逆に驚いていたが、

「やっぱり彼女ってモンは必要だよな。一人でいるよりかはやっぱり彼女持ちの方がいいよな……」

「そういうことか……」

 誠也の意見を聞いて再びあきれてしまい、瞬治は再びどこかへと行こうとする。

 

ビーッ! ビーッ!

 

「!!」

 その時、HBFに非常警報が鳴り響いた。

「地球外知生体か!」

 二人は急いで出撃の準備をする。

 

 

 時間は少し前にさかのぼる。

 この間、レクイストに追放されたゴルヴォルフがとある街の上空に現れた。

「これが最後だ……もちろん、この青の星のな……」

 ゴルヴォルフは笑みを浮かべると黒い種みたいなものを取り出す。

「闇の力を司る『悪魔の種』よ、鎧となりて我に力を与えよ!」

 ゴルヴォルフが呪文を唱えるとその種が黒く光りだした。

「ハアッ!!」

 すると、ゴルヴォルフは何を思ったのかその種を自らの体内にうずめる。

「グ……グアアァァァァァァァァァァァ!!!」

 すると、ゴルヴォルフは激しい雄たけびを上げながらその姿を変えていった。

 体は今までの何十倍にも巨大化し、それは今までの魔物以上に凶悪で異形な姿となっていく。

「全て……破壊してやる!!」

 その変貌を終えると、ゴルヴォルフは手のひらから巨大なエネルギー弾をビルに向かって打ち出した。

 

ズドオォォォォォン!!

 

 ビルはいとも簡単に爆発し、巨大な瓦礫の山と化してしまう。

「ヒャーッハッハッハ!! 壊れろ、全て壊れろぉ!!」

 ゴルヴォルフは狂気に満ちた笑いをしながら次々と建物を破壊していく。

「待て!」

「あン?」

 そこに、いつものように勇者たちがすでに合体を終えた姿で現れた。

「ケッ、俺をどん底に陥れやがった勇者か。ちょうどいい、お前らもここで始末してやる!」

「ち、地球外知生体がしゃべりやがった!?」

 誠也は、目の前にいる魔物がゴルヴォルフだと知らずにしゃべったことに驚く。

「いや、あの声は聞いた事がある。確か……」

「俺の名を忘れたなら思い出させてやる。俺の名はゴルヴォルフ、お前らのせいで最っ低にまで落ちぶれてしまったけどな!」

 勇者たちに向かって憎々しげに話すゴルヴォルフ。それほど勇者たちに恨みを持っているのだ。

「僕達のせい……?」

「今日こそはお前らを倒し、この星を闇の世界にしてやる! くらえ! ダークナイトメア!!」

 ゴルヴォルフは両手からコウモリのようなエネルギー弾を勇者達に向かって打ち出す。

「ファイヤーバスター!!」

「サンダーシールド、オン!!」

「はっ!」

 バーニングセイバスターは炎の弾で、ヴァリアントセイバスターは雷の盾で防ぎ、レオンセイバスターは高くジャンプして回避した。

「続けていくぜ! ディスペアマグナム!!」

 だが、ゴルヴォルフは続けざまに黒いエネルギー弾を放ってくる。

「ぐぅっ!」

 これにはたまらず、勇者たちはダメージを受けてしまう。

「今まで散々負かされた分、きっちり返してやるぜ!」

 ゴルヴォルフは攻撃の手を休めず、勇者たちに連続で攻撃した。

「ぐあぁ……」

 何とか防いでいるものの、この状態が続いたらさすがに危険だ。

「く……はあっ!」

 その時、レオンセイバスターがゴルヴォルフの攻撃をかわして飛び上がり、

「レオンクロー!!」

手の甲に装着された爪で攻撃する。

「だあっ!」

「なにっ!?」

 ゴルヴォルフはその攻撃も見切り、素早くレオンセイバスターの方に黒いエネルギー弾を放った。

「ぐわっ!」

 空中からの攻撃だったためレオンセイバスターはよけることができずに直撃してしまう。

「俺に奇襲をかけようなんて、そうはいかねーんだよ」

 倒れているレオンセイバスターを見てゴルヴォルフはあざ笑う。

「お前ら勇者の力っていうのはこんなものか? 手ごたえがねーな。何にも出来ねークズどもが」

「僕達は……クズなんかじゃない!」

 ゴルヴォルフが勇者たちをののしったその時、空人がゴルヴォルフに言い返した。

「お前たちは宇宙から見りゃこの星と同じ小っちぇえ存在なんだよ」

「確かに、宇宙の全てから見たら僕達は小さな存在かもしれない。でも、だからってそこであきらめたらいけないんだ!」

 空人の叫びが響いた瞬間、

「!!」

 

ズドォン!

 

「ぐわあっ!」

 ゴルヴォルフがバーニングセイバスターに向かってエネルギー弾を打ち出した。

「いちいちうるせーんだよ。何が「力をあわせれば何にも負けない力になる」だ。俺に負けているくせに、よくそんな事がいえるな」

 ゴルヴォルフは全く空人の言葉に対して耳を貸していなかった。

 それどころか、憎しみを込めて攻撃をしてきたのだ。

「空人!」

「ファイナル!」

「遊びは終わりだ。とっとと消えろ」

 そういってゴルヴォルフがバーニングセイバスターに向かって手をかざした瞬間、

「ファイヤーバスター!!」

 バーニングセイバスターは一瞬の隙をついてキャノン砲をゴルヴォルフに向け、炎の弾を撃ち出す。

「なにっ!? くそっ!」

 ゴルヴォルフは軽く舌打ちしながら炎の弾をエネルギー弾でかき消した。

「てめえ、そんな気力がどこにあった!?」

「私たちは……この地球を守らなければならないのだ」

「僕達は、力をあわせて戦っているんだ。この地球を守っているんだ! だから、絶対にあきらめたりなんてしない!」

 空人が思い切り叫んだその時、バーニングセイバスターの体が光り輝き始めた。

「空人!」

「うん!」

 空人はバーニングセイバスターと意思が疎通し、『ある言葉』が頭の中に浮かぶ。それは……

 

「ファイナル・ブレイブ!」

空人が力強く叫ぶ。すると、バーニングセイバスターは合体を自らの意思で解除し、ファイナルへと戻る。そして、

「セイバードラゴン!!」

ファイナルが空に向かってそう叫ぶと胸の飾りから1本の光が飛び出す。その光の先から竜の姿をしたメカが姿を現わす。

そのメカ『セイバードラゴン』とファイナルの合体が始まる!

 

セイバードラゴンの前足の上腕部分のみが上に回転する。 足の前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。

そして前足の下腕部分が伸び、前足全体が横に回転して腕を形成する。

次にセイバードラゴンの膝の部分が前に倒れる。その形は足をさかさまにしたようだ。

そして今まで腰の真横についていた足が移動して腰の下へ移動する。腕の時と同じように前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。

足を逆さにしたようなすねの部分が縦に回転し、下半身全体が横に半回転して足を形成する。

背中の翼が起き上がるとそこには一つのくぼみがあった。

「とうっ!」

ファイナルが飛び上がると車へと変形し、そのくぼみと結合する。そして翼が元に戻ると両腕から手が現れ、背中にあったキャノン砲が前に回転して砲口が正面を向く。

 それと同時に空人は機体の胸からの光に包まれ、機体と融合した。

最後に竜の顔が首から分離し、胸と結合する。そして首が後ろに倒れると機体から顔が出現する。

「火焔合体!!」

ファイナルが叫ぶと同時に額に竜の翼のような飾りが出現する。

「ファイナルセイバスター!!!」

ファイナルセイバスターが両腕を振り上げ、気合いを入れるように腕を振り下ろして構えのポーズを取る。

 今ここに、再び火焔の勇者が降臨したのだ。

 

「ファイナルが……」

「再び合体できるようになったのか……?」

 そのことに驚きを隠せない瞬治たち。だが、空人とファイナルセイバスターは当然のような顔をして立っていた。

「何だ……何が起こるかと思ったら弱体化したんじゃねーか。なおさら俺には都合がいいぜ! くらえ! ダークナイトメア!!」

 ゴルヴォルフは強気な姿勢のまま、両手からコウモリのようなエネルギー弾をファイナルセイバスターに向かって打ち出す。

「ドラゴンバーン!!」

ファイナルセイバスターは慌てる事なくゴルヴォルフに向かって構えると、胸の竜が口を開ける。するとその口から炎が飛び出し、ゴルヴォルフの攻撃と激突した。

 そして互いの攻撃は互いの力に耐え切れず爆発、消滅する。

「な、なかなかやるな。だが、これは防げるか!? ディスペアマグナム!!」

 ゴルヴォルフは続けて黒いエネルギー弾を打ち出した。

「フェザーキャノン!!」

すかさずファイナルセイバスターはエネルギー弾に向かって肩のキャノン砲から羽根のような形をしたエネルギー弾を撃ち出す。

 これもまた先ほどのように互いに爆発、消滅した。

「俺の猿真似ばっかりしやがって……」

「次のも猿真似といえるか?」

 ファイナルセイバスターは怪しげにいうと、腰に手を添える。

「ファイナルブレード!!」

ファイナルセイバスターが腰についていた剣の柄をつかみ、剣を抜いた。そしてゴルヴォルフに向かって突進し、一瞬の隙も与えずに腕を切り裂く。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ゴルヴォルフはたまらず絶叫した。切り取られた腕は消滅し、切断面からは黒い煙―正確には闇のエネルギー―が吹き出ている。

「これで猿真似といえるか?」

「ぐ……ふざけんなぁっ!!」

 ファイナルセイバスターの言葉に怒りを感じ、ゴルヴォルフは雄たけびを上げながらエネルギーを手の中に集める。

「死ねぇっ!! ダークネスブレイカー!!!」

 ゴルヴォルフは激しい咆哮と共にファイナルセイバスターに向かって漆黒の竜の姿をしたエネルギー弾を打ち出した!

「空人、いくぞ!」

「うん!」

 だが、二人は全く動じずに突進してくるゴルヴォルフに向かって構えを取る。

「チェンジ、ドラゴンモード!!」

 すると、ファイナルもその姿を変形させ、燃え上がる焔のような赤き龍へと姿を変えた。

「ファイナルドラゴンアタック!!!」

 同時にファイナルセイバスターは真正面から激突する!

「ハアァァァァァァァァァァァァッ!!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 互いの叫びが辺りに轟く。

 

ズガガガガガガガガガガガガ!!!

 

 激突の衝撃が周りのもの全てを包み込み、次々と崩壊させていった。

「ま、まずい! このままだと全てが破壊されてしまうぞ!」

 普段は冷静なヴァリアントセイバスターもさすがにあせってしまう。

「レオンセイバスター! トライアングルフィールドでゴルヴォルフを抑えるんだ!」

「わかった!」

 激しい衝撃が飛び交う中、レオンセイバスターは懸命に力を振り絞ってジャンプしてゴルヴォルフの真上に来た。

「トライアングルフィールド!!!」

 レオンセイバスターは手からバリアを発生させてゴルヴォルフをバリアの中に閉じ込める。同時に漆黒の竜もファイナルセイバスターによってかき消されてしまった。

「グ……なにしやがる!」

 ゴルヴォルフはそのバリアの中で必死に抵抗するが、全く動くことができない。

 そのうちにファイナルセイバスターはドラゴンモードから元に戻る。

「ファイナル! 今のうちに……」

「そうはいくか! ハアッ!!」

 

バキィン!!

 

「なっ!? また……!?」

 ゴルヴォルフはレクイストと同じようにレオンセイバスターのトライアングルフィールドを破った。

 レオンセイバスターはそのことに再びショックを受けてしまう。

「完っ全に怒ったぜ……てめえらまとめてブッ殺してやる!!」

 そういうとゴルヴォルフは呪文を再び唱え始めた。

「青の星の邪悪やる闇のエネルギーよ、我の力となれ! 我の鎧となれ! 我の武器となれ!!」

 するとゴルヴォルフの姿が変化していく。

 先ほどと同じ人の姿だが、先ほどよりもさらに凶悪さは増しており、完全に『悪魔』といえるような姿と化した。

「死ね! デビルクラッシャー!!!」

 直後に体全体から黒い光を発したかと思うと、勇者たちに激しい衝撃が襲ってくる。

「ぐあああっ!!」

 何とか耐え抜こうとするものの、その衝撃の大きさに耐え切れない勇者たちは倒れてしまう。

「ヒャーッハッハッハ!! 弱い、弱すぎるぜ! 何が勇者だ、何が地球を守るだ! 笑っちまうぜ!」

 ゴルヴォルフは明らかに挑発や罵りを入れた言葉を勇者にかけた。

「…………うな……」

 その時、空人が何かを口にする。

「あン?」

「勇者をそんな風に言うな!!」

 空人が怒りを爆発させ、ゴルヴォルフに向かって思い切り叫んだ。

「勇者は絶対に負けないんだ! 今までいろんな敵と戦ってずっと地球を守ってくれたんだ! だから僕達も負けないんだ!!」

 何度も、何度も叫んだ。さっきの挑発や罵りを全て吹き飛ばすかのように。

「………………」

 その場にいた全員は目を点にして驚いていた。普段の空人からは連想できない姿であったからだ。

「……フ、フン! だからどうした! 俺に説教なんてきかねーぜ!」

 ゴルヴォルフが再び構えた瞬間、ヴァリアントセイバスターとレオンセイバスターがファイナルセイバスターの前に守るように立った。

「瞬治さん、誠也さん……」

「気が済んだか、空人?」

「怒ってたら勇者として本気が出せねーぜ。勇者の最大の武器は何だ?」

「……勇気!」

 空人は元気よく答える。

「そう、その通りだ!」

「付け加えるなら、空人の持つ勇気は『最後の勇気』だ。そして、最後の勇気が本当の力を発揮するのは?」

 続けて瞬治が質問した。

「きゅうちにおちいったとき……?」

「こんなことを言うのは皮肉だが、今がその時じゃないのか?」

「あっ……」

 空人は気づいた。確かに、少し皮肉かもしれないが、いまが窮地に陥っているその瞬間ではないのか。

「だったら、本当の力を見せてみろ、空人!」

 誠也の一言で、空人は決心した。

「うん! いくよ、ファイナル!」

「ああ!」

 空人の頭の中に新たな言葉が生まれてくる。

「バーニング・ファイナル・ブレイブ!!」

 空人がキーワードを思い切り叫んだ。

「超火焔合体!!」

 ファイナルセイバスターも同じように叫ぶと、地平線の彼方からバーニングダッシャーが現れた。

 ファイナル最大の合体が、今始まる!

 

 バーニングダッシャーは機体をバラバラにし、各パーツに分離させる。

 まずバーニングセイバスターの脚部となるパーツはファイナルセイバスターの足と結合した。その瞬間、結合した部分から炎が噴き出る。

 バスター砲は腕と結合し、同じように炎を噴き出した。

 上半身となるパーツは左右に分離し、肩と体の間に挟まれるように結合し、炎を噴き出す。

 最後にバーニングセイバスターの胸の飾りは額に結合した。

「グレート……」

 全ての合体を終えると全身から炎があふれ出し、

「ファイナル……」

 腕を思い切り振り上げ、

「セイバスター!!!」

 勢いよく、そして力強く構えを取った。

 紅と朱のカラーリングを持つ、まるで輝きを放つ焔や烈火のようなその姿は、ファイナルセイバスターやバーニングセイバスターを超えている強さを持っているように見える。いや、実際には超えた力を持っているだろう。

 今ここに、火焔と烈火の力を重ね持つ勇者『グレートファイナルセイバスター』が光臨したのだ。

 

「な、何だと……!?」

「グレートファイナルセイバスター……」

「これが、『最後の勇気』の本当の力……」

 その姿に絶句する瞬治たち。ゴルヴォルフも驚きは隠せないでいた。

「……た、たかがでかくなっただけじゃねーか! くらえ! ダークナイトメア!!」

 ゴルヴォルフはその迫力に押されそうになり、負けじとコウモリのようなエネルギー弾をグレートファイナルセイバスターに打ち出した。

「グレートドラゴンバーン!!」

 同時にグレートファイナルセイバスターは胸の龍から今までよりもはるかに赤い光を放つ炎の玉を打ち出し、ダークナイトメアをかき消す。

「なにっ!?」

 

ズドオォン!!

 

「ぐわあっ!」

 それだけでなく、ダークナイトメアを突き抜けてゴルヴォルフにまでダメージを与えた。

「すげえ……」

「ぐ……こうなったら……!」

 ゴルヴォルフは、何を思ったのか急に飛び上がり、三度呪文を唱え始める。

「闇より生まれし獣よ、今ここに現れ出でよ!」

 呪文を唱え終わると、ゴルヴォルフの左右に全く同じ姿をした黒い魔物が二体現れた。

「やっちまえ、『ダークビースト』! 地獄へ連れて行ってやりな!」

 ゴルヴォルフの命令を聞くと、魔物は勇者たちに向かって攻撃を開始した。

「くっ……!」

「ファイナル! ここは俺たちに任せろ!」

 グレートファイナルセイバスターが身構えたその時、前にヴァリアントセイバスターとレオンセイバスターが立って魔物に向かって攻撃態勢をとる。

「ファイナルはゴルヴォルフを倒すんだ!」

「……わかった!」

 二人の言うことに甘え、グレートファイナルセイバスターはゴルヴォルフの方へと向かっていった。

「いくぞ、誠也!」

「わかってるさ、瞬治!」

 二人の掛け声をスタートとして、二人の勇者は魔物に向かって攻撃を始める。

「ヴァリアントエッジ!!」

「レオンクロー・ダブル!!」

 ヴァリアントセイバスターは右腕を魔物に向かって突き出すと、右腕についていたV字の刃が魔物に向かって飛んでいった。

 レオンセイバスターは両手の甲に装着された爪で魔物を切り裂く。

「グアッ!」

 二匹の魔物が同時に悲鳴を上げる。だが、魔物たちはすぐに勇者たちに突進してきて体当たりをしてきた。

「ぐわっ!」

「ぐっ!」

 さらに魔物は二人の上に乗りかかり、体を食いちぎろうとする。

「ヴァリアント! 魔物をこっちに放り上げるんだ!」

「了解!」

 その寸前でヴァリアントセイバスターは魔物を思い切り蹴り上げてレオンセイバスターの方に投げ飛ばす。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 同時にレオンセイバスターも魔物を蹴り上げ、空中で魔物同士を衝突させた。

「行くぜ!」

「レオンアタック、ゴー!!」

レオンセイバスターはそういいながら魔物に向かって飛び上がる。

「覚悟しろよ!!」

そして二匹の魔物の目の前に来た瞬間、レオンクローで魔物を激しく、何度も殴りはじめた。

 

バキッ! ズガッ! ドゴッ!

 

まるでそんな擬音語が当てはまるかのように、グランドレオンは何度も何度も魔物を殴り続ける。

「空人とファイナルだけが勇者じゃない。俺たちだって勇者だ! 負けるわけにはいかねーんだよ!!」

「フィニッシュ!!!」

誠也の叫びと同時に、最後の一撃としてレオンセイバスターは魔物を上から両手で殴り、地面に叩き付けた!

「グアアッ!!」

魔物はレオンアタックによって強烈なダメージを受けてしまい、立つのがやっとという状態になってしまった。

「後は任せたぜ、ヴァリアント!」

「OK!」

「ヴァリアントボウガン!!」

ヴァリアントセイバスターはどこからかともなく銃を取り出し、右腕を上に突き上げる。

するとその右腕に装着されていたV字の装飾品が飛び上がって銃に装着された。

「いくぜ……」

瞬治はその照準を二匹の魔物に合わせる。

「V−SLASHER,FIRE!!!」(Vスラッシャー、発射!!!)

瞬治がそう叫ぶとヴァリアントセイバスターはすかさず引き金を引く。

 

ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

その瞬間、銃声と共にヴァリアントボウガンからV字の刃が魔物に向かって飛んでいった!

 

ズバアァァァァッ!!

 

 刃は二体の魔物を切り裂き、再びヴァリアントボウガンに装着される。

「グ……グアァァァァァァァァ!!」

 

ズドオォォォォォォォン!!

 

そして魔物は激しい雄叫びと共に大爆発をおこして魔物と共に消滅した。

「さあ、ファイナルと空人を助けに行くぞ!」

「オッケー!」

 すぐさま二人はグレートファイナルセイバスターの元へと向かっていく。

 

「フェザーキャノン!!」

「ディスペアマグナム!!」

ズバアァァン!!

 二つのエネルギー弾が衝突し、爆発を起こした。現段階では、どちらが有利とはいえないようだ。

「しぶといやつだな……だが、次で終わりだ!! デビルクラッシャー!!!」

 その時、再びゴルヴォルフは全身から黒い光を放ち、衝撃波でグレートファイナルセイバスターを襲う! ……はずであった。

「アイフラッシャー!!」

「ぐあっ!?」

 衝撃波を放つ直前に、レオンセイバスターが獅子の瞳から光を放って動きを止めたのだ。

「グランドレオン!」

「ヴァリアントエッジ・サンダー!!」

 直後にヴァリアントセイバスターがゴルヴォルフに向かって電気を帯びたV字の刃を放ち、ダメージを与える。

「がっ!?」

「ヴァリアントセイバスター!」

「あんな魔物ぐらい、倒せなかったら勇者じゃないぜ!」

「仲間がいてこその勇者だ。協力して倒そう」

「ああ!」

 三人の勇者がゴルヴォルフの方を向く。ゴルヴォルフはダメージに苦しんでいたが、目は怒りに燃えていた。

「お前ら……ゆるさねえ! こうなったら、この星もろとも消えてなくなるんだな!!」

「なにっ!?」

 ゴルヴォルフが急にうなり始めたかと思うと、あたりが地震のような揺れに襲われる。

「自爆して消えてなくなれぇっ!! ヒャーッハッハッハ!!」

 ゴルヴォルフが高笑いをあげて自分の中にあるエネルギーを爆発させようとした瞬間、

「トライアングルフィールド!!!」

 レオンセイバスターがゴルヴォルフの真上にジャンプし、手からバリアを発生させてゴルヴォルフをバリアの中に閉じ込めた。

「なっ!?」

「このまま自爆させてたまるか!」

「くっ……そおぉっ!!」

「今度は意地でも脱出させないでやる!!」

 レオンセイバスターが懸命の力を振り絞ってゴルヴォルフの必死の抵抗を制御する。

「ファイナル! いまだ!」

「ああ!」

 レオンセイバスターの言葉を聞き、グレーとファイナルセイバスターは構えを取った。

「ファイナルブレード!!」

そして、腰についていた剣の柄をつかみ、剣を抜く。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 グレートファイナルセイバスターは剣を上にかざし、激しく咆哮すると空高くジャンプした。

「フィニッシュフレア!!!」

 真上から斬ると同時に腕のバスター砲から炎を噴き出し、剣と炎でゴルヴォルフを一刀両断する!

「ち……ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

ドオォォォォォォォォン!!!

 ゴルヴォルフは悔しさの叫びを上げながら爆発した。

 完全に消滅したのを確認すると、グレートファイナルセイバスターは剣を腰に収める。

「やったあ!!」

「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)

 空人はいつもより大きく喜び、瞬治はいつものように決め台詞を口にした。

 

 戦闘終了後、戦闘地となった街の上空にレクイストが現れる。レクイストはぐったりしたゴルヴォルフの体を抱えていた。

「所詮、役立たずは役立たずか……だが、貴様らをこのまま死なすわけにはいかない。貴様らは死んでも戦わなければいけない運命なのだ……」

 レクイストはそういうとすぐさまどこかへと去ろうとする。

「ぐっ……!?」

 と、その時、レクイストは以前にも襲われた頭痛を感じた。

「まただ……いったい何なのだ……?」

 レクイストはふらふらになるも何とか耐えて飛び去っていく。

 

 

 新東京国際空港。そこで空人たちはある人物を待っていた。

「あっ!」

 そこに、トランクを持った夫婦が現れる。その姿を見るなり、空人はすぐさまその二人に向かって走っていった。

「父さん! 母さん!」

 そう、その二人こそが空人の両親なのだ。

「空人! 元気にしてたか?」

「うん!」

「しばらく見ないうちに大きくなったわね」

 空人は二人に抱きつき、頭をなでられる。

「僕、父さんと母さんがいなくても大丈夫だったよ!」

「そうか。偉いぞ、空人」

「エヘヘ……」

 父親に「偉い」といわれ、少し照れる空人。瞬治たちはその光景を黙ってみていたが、瞬治たちにはその光景がどこかほほえましく思えた。

「……空人、そちらの人たちは?」

 その時、母親が瞬治たちの存在に気づく。

「あ、あのね……」

「初めまして、俺は空人の友達の堀井瞬治です」

 空人が紹介しようとしたとき、瞬治が自ら進んで自己紹介をした。

「あ、俺も瞬治と同じ空人の友達の剣持誠也です」

 同じように誠也も自己紹介をする。

「へー……空人、年上の友達ができたのか」

「う、うん!」

「そちらの方は……?」

 次に母親が指したのは石橋であった。

「あ、えーと、あの……」

「初めまして、私はある研究をしている石橋貴志です。空人君には私の研究を手伝ってもらっていまして……」

 なんて紹介したらいいのかわからず、空人が困っていると石橋がとっさに機転を利かせて自己紹介をした。

「空人に手伝いができるのですか?」

「はい。空人君は立派に私の研究を手伝ってくれています。感謝したいぐらいですよ」

 石橋がそういって軽く笑ったので、空人たちもつられて笑う。

「ねえ、父さん、母さん。早く行こうよ! いっぱい話したい事があるんだ!」

 空人はあふれてくる気持ちを抑えきれず、両親を引っ張り始めた。

「こらこら、そんなに引っ張るんじゃない」

 空人の両親はそういいながらも笑顔で空人についていった。

 

 空人は両親のいる間、ずっと笑顔が耐えなかった。

 

第13話に続く

 

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次回予告

 

瞬治だ。俺たちの次の任務を教える。

 

人々の平和を壊す奴ら、それが宇宙帝国デストメア。

デストメアには騎士と呼ばれるものが三人いた。いまは一人しかいないが……

なに!? ソルダーズとゴルヴォルフがレクイストと共に破壊活動をしているだと!?

そんな馬鹿な!? あいつらは確かに俺たちが倒したはず。

…まさか、レクイストの仕業なのか!?

 

次回、勇者伝説セイバスター『よみがえる騎士達』

 

行くぞ! 「VALIANT、Let’s go!」

説明
アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。
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