真恋姫†夢想 弓史に一生 第四章最終話 第十二話 正式採用
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〜聖side〜

 

距離をとったか…。流石に不自然すぎて気づかれたかな??

 

でも……それは不正解だよ。

 

 

 

俺は蛇弓を取り出し、弓を射掛ける。

 

張遼は当然驚いた顔をしているが、飛んでくる矢は打ち落としていた。

 

まぁ、刀しか見せてなかったしな…。まさか弓を持ってるとは思わなかっただろう…。

 

さて、ここからは少し一方的にいかせてもらうぜ?

 

 

 

〜張遼side〜

 

「くっ…。はぁあああ!!」

 

キン!!!

 

「はぁ…はぁ…。」

 

徳ちゃんと距離を離した瞬間、彼の手には弓が握られていた。

 

一瞬驚愕していると、その隙を射掛けられ、弓は正確に急所を攻めてくる。

 

そのところを見ると、彼の弓の腕は確かだ…。

 

 

……それにしても一体どうなってんのや!? 

 

何でいきなり刀が消えて、弓が出てきたん!?

 

……あかん。考えてる暇なんかあらへん…。

 

それぐらいさっきから間髪いれずに矢が飛んでくる。

 

普通弓と戦うときは、相手との距離をつめるなどの間合いの掌握が必要になる。

 

その為、さっきから何度か前に行こうとするが……その度に、退き帰さざる終えないほどの弓を射掛けられて…そのせいでまた距離をとらされる。

 

 

堂々巡りはもう飽きたっちゅうに…。

 

それに、さっきから体力の消費がマズイ…。

 

しょうがない、この事態を好転させるためにも、ちょっとは無茶せなあかんかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜聖side〜

 

弓で射掛け始めてから結構な時間が経過した。

 

矢は全て、弾かれるか避けられるかしているので相手にダメージを与える結果とはなってないが、相手の体力を削ることは出来ているだろう。その証拠に、張遼さんの息遣いが荒くなっているのが分かる。

 

このままじゃ張遼さんはジリ貧の状態。きっとこの状況を好転させようと無理やり攻めてくるはず。

 

勝負は……その時だ!!

 

 

 

 

 

 

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その瞬間は意外と直ぐにやってきた。

 

俺が射掛けた矢が張遼さんに避けられるや否や、張遼さんは俺に向かってやってくる。

 

その速さはきっと全力なのだろう。神速と呼ぶに相応しいほどの早さである…だが、目で追えないほどではない…。

 

蛇弓をしまい、磁刃を構える。

 

俺は、張遼さんの愛刀、飛龍偃月刀が右肩側から袈裟切りに振り下ろされるのを避け、追撃の突きに対して磁刃を滑らせながら体を回転させて張遼さんとの距離を縮める。

 

 

「なっ!!!???」

 

「もらった!!!」

 

脇腹に回転の勢いのまま回し蹴りをお見舞いする。

 

 

「うぐっ!!?」

 

 

張遼さんは目を見開き、息が苦しそうな表情を受かべる。

 

前のめりになった姿勢では、次の一撃を避けることは出来ない……。

 

彼女の右手に握られている偃月刀に視線を向け、

 

 

「はぁぁぁああああああ!!!!!!!!!」

 

 

下から切り上げるように柄の部分を打ち抜き、そのまま弾き飛ばす。

 

偃月刀は放物線を描きながら張遼さんの数メートル後方に落ち、金属の無機質な音が鍛錬場に木霊する。

 

俺は彼女のその首に、刀の切っ先を添えた。

 

 

「……俺の勝ちかな?」

 

 

俺の今回の勝因は相手が俺を舐めていたこと、そして、神速であるが故にその威力を利用されたときの反動が大きいこと…かな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜賈駆side〜

 

 

一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 

一時は一方的に攻めていた霞が、何時の間にかあいつが持っていた弓のせいで防戦一方となり、隙を見て神速の一撃を打ち込みに行ったところ、次の瞬間には霞の首筋に剣が添えられていた。

 

 

「…俺の勝ちかな?」

 

 

そう呟きが聞こえたことで、ボクの意識が急に覚醒する。

 

そうだった、ボクは審判だった。

 

 

「勝者、徳種聖!!」

 

 

ボクの勝者宣言が鍛錬場に響き渡り、その瞬間会場は少し騒然となった。

 

我が軍でもその強さが知れ渡っている、あの張文遠が負けたのである。

 

しかも、良く正体がわからないような男に…。このことが持っている意味は非常に大きい。

 

 

「良い!!聞きなさい!!ここに居るものは、今日ここで見たことは決して誰にも言わぬように。緘口令を布くわ!!」

 

 

ボクは直ぐに緘口令を布く。これが、霞の為であり、我が董卓軍の威信のためである…。

 

 

 

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〜聖side〜

 

賈駆ちゃんの勝利宣言後に直ぐに緘口令が布かれた。

 

まぁ、この世は女尊男卑。

 

董卓軍で力のある張遼が、良く分からない男に負けたなんてことが知れ渡ったら、張遼さんの威厳が損なわれるし、董卓軍全体の威厳が損なわれる。

 

元々、勝負が終わったら緘口令を布いて貰う予定だったし、俺としては丁度良い。

 

俺は刀をしまい、張遼さんに手を差し出して起き上がらせた。

 

 

「……完敗や。初めから徳ちゃんの手の上で踊らされとっとわな……。」

 

「いやいや、張遼さんの一撃も速かったよ。ただ、俺には見えていた…それだけかな。」

 

「あの一撃が見えて、それでいてこっちの気の緩みを狙う。そんなところかいな?」

 

「あのまま突っ込んできていたら、それこそ反撃で武器を弾き飛ばすつもりだった。でも、流石にワザと過ぎて気付かれたけどね…。」

 

「そうや!! なんなん?急にあんな弓取り出して!! 一体どっから出しおったん!?」

 

「あぁ、それも俺の勝因だね…。実は…となっていてね…。」

 

「なんやて!! そりゃあずっこいわ〜分かるはず無いやん…。」

 

「まぁそうだな。でも、それも戦術の一つさ!!」

 

 

不満そうな顔をする張遼に勝ち誇った笑みを向ける。

 

 

「じゃあ、徳ちゃんって弓と刀とどっちも使えるってことなん?」

 

「まぁ、そういうことになるかな。一応、得意なのは弓だけどね。」

 

「お二人ともお疲れ様です。これで汗を拭いてください。」

 

 

張遼さんと話していると、董卓軍の皆さんがやってきて、董卓ちゃんから濡れた手ぬぐいを渡される。

 

 

「ありがとう、董卓ちゃん!!気が利くね(ニコッ)」

 

「おうっ!! 月っちありがとう!!ホンマに気が利くな〜。」

 

「…そっ…そんな…へぅ〜…。( ///)」

 

 

へぅボイス戴きました〜!!!! ありがとうございます!!!!

 

 

「ちょっと!!月を変な目で見るなって言ってるでしょ!!」

 

「えっ!! 別に変な目で見てなんかいないって!!」

 

「鼻の下伸ばしてえらそうなこと言ってんじゃないわよ!!」

 

「無実だ!! そうだよな、皆??」

 

 

 

俺は振り返って近くまで来ていた俺の仲間に同意を求めた…のだが…。

 

 

「聖様ですから…。」

 

「お頭だしな…。」

 

「先生ですから…。」

 

「聖だしな…。」

 

「……。」

 

 

そうか、これが四面楚歌か…。

 

四面皆楚歌するを聞き、項王大いに驚きて曰く…。

 

 

 

「あっ、そうや!! 試合前のアレはなんやったん?」

 

「そう言えば……アレは……一体何の意味が……あったんですか? お兄ちゃん…。」

 

「ボクもそれは気になったのよ。アレは一体何?」

 

「私も気になってるんです〜。聖様、アレは一体〜?」

 

「お頭、皆気になってるんだから、教えてくれよ。」

 

「先生!! アレはなんなんですか!?」

 

 

俺が項王の最後を看取っていた所で、皆が俺に聞きたかった質問をぶつけてきた。

 

丁度その時、先ほど頼んだ門兵が慌てて鍛錬場に入ってきた。

 

 

「報告します。他国の間諜と思われる者を指示通り三人捕らえました。」

 

「えっ!! そんな指示、ボク出してないわよ!?」

 

「あぁ、俺が出しといたんだ…。勝手に悪かったな。」

 

「…一体どういうこと…??」

 

「さっきの質問の答えにもなるんだが…俺は、自分の存在をあんまり知られないようにしなきゃいけない身でね…。他国の間諜が邪魔だから排除したかったんだ。」

 

「前から思ってたけど、なんで徳ちゃんはそんなに自分の身を隠したがるんや? それほどの武将で、さらに一勢力を築くとしたら、先に有名になっといたほうが、後々その名声に引き寄せられてくる奴が大勢居ると思うんやけど…。」

 

「張遼さんの言うことももっともだと思うよ。確かに人はその人の名声に惹かれるものはあるからね…。う〜ん…………まぁ…良いか…皆には話しても…。実は俺は、巷で噂されている天の御使いなんだ。」

 

「なんやて!! あの天の御使いかいな!!?」

 

「…嘘…。」

 

「…本物…??」

 

俺の言葉に、董卓軍の皆の顔に驚きが伺える…恋を除いて…。

 

「恋…。君は気付いていたのかい?」

 

「ん…気付いてた訳じゃない…ただ…多くの人を殺してる匂いがした…。」

 

「それで、俺が一人で千人の賊を討伐した天の御使いじゃないかと…?」

 

「……。(コクン)」

 

「……怖ろしい勘だな。さて、恋にも言ったように、俺はこの前一人で千人の賊を討伐した…。これに嘘偽りはないよ。後は、そっちが信じるか信じないかだけ…。」

 

 

まだ少し驚いた様子ではあるが、先ほどよりは納得の言ったような顔で賈駆ちゃんが話し始めた。

 

 

「成程ね…。そのことを良く知らず、快く思ってない人がいるから、むやみやたらに名を明かせないって事か…。そこは分かったわ。実はボク達は、近いこともあって間諜にそこら辺の事を詳しく調べさせていたから、大体の真相は知っているわ…。あんたがしたことは決して間違ったことではない。これだけはボク達も分かってるから安心して。」

 

「そうか…良かったよ。」

 

「それで? 間諜を見つけ出すなんて、そう簡単に出来るものじゃないわよ?」

 

「あぁ、だから先ほどやったように、刀を高速で納刀したんだ。こうすると、金属音が鳴って、普通の人だと素直に体が動かなくなる。それに、物の存在によって音ってのは微妙に高さが変わるんだ…。だから、その二つを利用して、俺は今回間諜を炙り出して、門兵さんに捕まえといてもらったってわけ!!」

 

「あぁ〜成程…って納得出来る訳無いじゃない!! なんなのよその理由!! そもそも、音で人が動かなくなるとか聞いた事がないわよ!!」

 

「まぁ…だよな…。」

 

「なぁ、聖。」

 

「なんだ?一刀。」

 

「前者って、る○剣の○鳴閃??」

 

「おっ!!知ってるのか!?」

 

「あぁ〜成程…。それと、後者って絶対音感か何かか?」

 

「流石一刀!!良く分かってる!!」

 

「ちょっと!!勝手にそこで話を進めないでよ!!」

 

「そうですよ〜…。まったく持って意味が分かりません〜。」

 

「もうちょっと分かりやすく話してください。」

 

 

俺の説明に興味を示したのは賈駆ちゃんと芽衣と橙里。

 

残りの皆は意味が分かっていないか分かろうとしていないか…。ともかく、話半分で聞いているように見える。

 

 

「…じゃあ、身を持って体験すれば分かるか? 俺は目を瞑ってるから、その間に隠れて、俺がこの技を使って見つければ文句はないよな?」

 

「…分かったわ。望むところよ!!」

 

「分かりました〜。」

 

「分かったのです。」

 

 

三人は俺から離れると、隠れるために移動した。

 

俺は目を閉じて彼女達が隠れ終わるのを待つ。

 

 

 

しばらく経ったところで、一刀が皆が隠れたことを教えてくれたので、目を開けて確認する。

 

確かに皆しっかり隠れているようである。まぁ、関係ないけど…。

 

 

「じゃあ、行くぞ!!」

 

 

俺は残りの人たちに耳を塞ぐように指示を出した後、磁刀を高速抜納刀し、音を発生させる。

 

音の反響音から察するに…鍛錬場の門のところに一人、外の木のところに一人、後はそこの木箱の裏に一人か…。

 

 

「張遼さん。賈駆ちゃんを運ぶために付いてきてもらっても良い?」

 

「分かったで。」

 

「奏は芽衣か橙里を運ぶのを手伝ってくれ。」

 

「了解。」

 

「さて、運びに行きますか。」

 

 

俺はそれぞれが隠れている場所に寸分違わず行き、そこで動けなくなってる三人を元の場所に運んだ。

 

 

運ぶ際、芽衣と橙里が俺に運ばれたいと駄々を捏ねたのには困った……。

 

結局二人共、俺がお姫様抱っこの形で運ぶことにはなったのだが……。

 

まぁ、二人とも軽いから運ぶのになんら苦労は無いんだけどね……。

 

 

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「……これで証明できたかな?」

 

「…何なのよ…一体…。」

 

 

賈駆ちゃんは未だに立ち上げれず、女の子座りのまま話していた。

 

 

「あぁ〜…。悪いな…そこまでするつもりはなかったんだが…。」

 

「まぁ…良いわ…。アンタの力が常識の範疇に囚われてないって事だけは分かったわ…。」

 

「ははは…ごめんなさい…。」

 

「徳種さん。」

 

 

俺がそちらに顔を向けると、真剣な目をした董卓ちゃんがこちらを向いていた。

 

 

「どうしたのかな? 董卓ちゃん。」

 

「今日は、あなた方のお力を見せていただきました。」

 

「あぁ…。そう言えばそういう趣旨だっけ…。」

 

「是非、御使い様。あなた様のお力を我が軍にお貸しいただけないでしょうか。」

 

「月っ!!」

 

「…詠ちゃんだって分かってるでしょ? 徳種さんは良い人だし、きっと私達の力になってくれるよ。」

 

「…そもそも、これは俺たちから言い出したこと…。俺らを雇ってくれると言うなら、この力、存分に振るって見せます。ただし、これだけは守ってください…。俺はしばらくしたらここを出ます。なので、配下にはなれません。なので、客将扱いしてください。お願いします。」

 

「分かりました…。これからしばらくの間、よろしくお願いしますね、徳種さん。」

 

「こちらこそよろしく、董卓ちゃん。後、俺のことは下の名前で呼んで。その方が慣れてるんだ。」

 

「では、私のことも真名の月で呼んでください。」

 

「月っ!!それだけは…。」

 

「詠ちゃん…。私のことを心配してくれるのは嬉しいよ。でも、徳t…聖さんは信用の置ける人物だよ。この人なら真名を預けても良いと思えるほどの…。」

 

「月………分かったわ、月が預けるなら、ボクも真名を預ける!! 真名は詠よ!!」

 

「月に詠か…。分かった。二人の真名確かに受け取った。二人とも俺のことは呼びたいように呼んでくれ。」

 

「なんや〜、二人が真名を預けるんやったら、ウチも預けるわ!!さっきの試合のお礼もかねてな!!ウチの真名は霞や。よろしゅうな、徳ちゃん♪」

 

「こちらこそよろしくな、霞。」

 

 

その後、俺達は全員が真名の交換を終えたところで解散となった。

 

明日までには部屋を用意しとくとの事なので、今日は全員で宿屋に戻った。

 

 

未だに足腰が立たない芽衣と橙里を、俺と奏で背負って運ぶ。

 

橙里がひたすら芽衣に向かって文句を言っているが……芽衣は素知らぬ顔でそれを受け流し、俺の背中にぴったり張り付いてくる。

 

……ってか、その……背中に柔らかい感触が……胸が当たってんすけど…。

 

俺のその様子が背中越しでも分かるのか、芽衣はくすっと笑うと、

 

 

「気持ち良いですか〜? わざと当ててるんですよ〜?」

 

「なっ!!?」

 

 

と俺の耳に囁き、その直後、顔が熱くなり真っ赤に染まったのが分かった。

 

 

 

そんなこんなで宿屋に到着した俺たち。

 

時間は少し早かったが、試合の疲れもあってか眠気を感じたので部屋に戻ると直ぐに寝台に横になった。

 

 

明日からは董卓軍で客将としての日々が待っている。

 

この町の政治基盤が知れる機会があれば、是非、詠に教えてもらいたいな…。

 

そう思い、寝台の上で目を閉じる聖なのであった。

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。


今話を持ちまして、第四章を終結したいと思います。

それに伴いまして……と言うか、作者の勝手なお願いになりますが、少し投稿を停止させていただきます……。


理由といたしましては、実は作者が最近忙しいことがありまして……書き溜めていた分がもう残りわずかなんです……。

安定した投稿をお送りするためにも、書き溜めを作る必要があると作者が判断した次第であります。

読者の方々には申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください……。


期間としては二週間ぐらいですかね……。目標は10月14日(日)に再投稿の予定です。
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コメント
コメントありがとうございます。 その通りでございます…。誤字報告ありがとうございます。 (kikkoman)
「我が群でも」は「我が軍でも」かな?(きたさん)
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