IS学園にもう一人男を追加した 〜 エピローグ |
一夏SIDE
[カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ・・・]
"あの時"から二ヶ月が過ぎ、現在、俺は机に向かう数少ない生徒と共に、補習を受けている。受けないと、進級できないってさ・・・何故?
いや、俺が予習復習を欠かしたのがいけなかったのは間違いない。シャルにも言われたし。
だからと言って、面と向かって・・・
千冬
『もう・・・ダメだな』
一夏
「"ダメ"って何だよぉっ!?」
先生
「織斑君」
一夏
「・・・すみません」
我が姉よ。せめて、お叱りの言葉を頂きたかった・・・
まぁ、俺の事はさておき、"あの時"から二ヶ月が経った事は最初に言ったが、その後について少し、補習プリントに集中しつつ説明しよう。
俺が迷い込んだあの基地、『亡国企業』の隠れ家の一つだった事は知っていると思うが、あの基地はすでに無くなっている。どうやら、島の下に作られた基地全体が支柱が崩れたように瓦礫・・・というより、塵の山となっていたそうだ。
"内部では爆発が起きたんじゃないか"と、誰かが言っていたような気がするが、外見から見た島はまったく変わりがない。まるで、"核兵器並みの爆発が基地内だけ被害を及ばした"ようだった。
一応、日本の政府と更識家、そして更識家とキョウダイ関係にある家柄が協力して、調査しているようだ。
一夏
(そういえば、楯無さんって、留年したんだっけ?)
千冬姉の命令を無視して、俺達は学園を飛び出したため、かなり重い罰則が与えられる・・・はずだったが、その罰を全て楯無さんが"会長責任"として受けたのだ。そのせいで、また2年生から・・・
一夏
(楯無さんと同級生・・・変な感じだな)
[ゴォー・・・]
その時、校舎の外・・・第3アリーナから爆発音が小さく聞こえた。
一夏
(まだ特訓してるのか。鈴も大変だな・・・)
特訓といえば、箒も毎日、竹刀を振るってるみたいだけど・・・
【第3アリーナ】
鈴
「はぁ、はぁ・・・もう無理っ」
セシリア
「何を言っていますの? ほら、寝ていては一生、BT操作を取得できませんわよ」
鈴
「勘弁してよ・・・」
(って言っても、根を上げてたら、そこまでよね・・・この『甲龍』を完璧に扱えないと・・・)
セシリア
(わたくしは弱い・・・だからこそ、教える側に立って"弱さ"を学ばなければなりませんわ・・・そうしなければ、強くなれません!)
鈴
(限界を超えられない!)
鈴
「よしっ! 続きをやるわよ!!」
セシリア
「ビシバシ行きますわよ!!」
【篠ノ之道場】
[ブンッ!・・・ブンッ!・・・]
箒
「・・・足りない」
このままじゃ、いつまで経っても私は私を超えられない・・・そして、また・・・
箒
「紅椿・・・」
お前はまた、私を狂わすのか・・・
箒
「いや、私は変わる! そして───」
一夏の背中を守れる"奥ゆかしい女"になるんだ・・・!
[カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ・・・]
そういや、各地に潜り込んでいた『亡国企業』のエージェント達は、拘束されたって聞いたけど、まだ組織自体は完璧に壊滅してないんだよな・・・まっ、即戦力を失った組織じゃ、身を隠すのだけで精一杯だろうって、楯無さんは言ってたし気にしなくてもいいか。
気にするべきは捕らえられた"マドカ"と"もう1人のクローン"の処分だ。被害を受けたイギリス、ドイツがその処分を決めようとしたのだが、『亡国企業』の被害を受けた国は過去も含めて数知れず。2人の争奪戦が論説で始まった。
だが、その論戦はすぐに沈静化した・・・全国に"篠ノ之束"名義の脅迫状が届いたからだ。"騒いだら消すよ♪"の一文だけが・・・
でもまぁ、政府の全員はその一文にビビッたのだが、さすがにテロリストを野放しには出来ない。そこで名乗り出たのが千冬姉だった。
さすが『ブリュンヒルデ』とまで言われた戦乙女。千冬姉の言った事に全国の首脳達は文句も漏らさず、ただただ頷くだけ。それで2人の保護司が決まり、今では・・・
【織斑邸】
千冬
「お名前は?」
マドカ
「お、織斑・・・マドカ・・・です」
"大""小"が机を間に正座。どうやら、高校面接のシミュレーションをしているようだ・・・
千冬
「堅い。肩の力を抜け」
マドカ
「な、何故、私が、学校などに・・・」
千冬
「それが、条件だからだ」
マドカ
「くっ・・・」
千冬
「シミュレーションして、もう2時間か・・・未だに、名前の紹介から進んでいない」
マドカ
「うっ・・・な、なら、姉さんが見本を見せてください」
千冬
「っ・・・い、良いだろう!」
マドカ
「・・・」
千冬
(どうする・・・どうする! 面接なんてやった事ないぞ! IS学園には束のコネ的なもので入ったようなものだし・・・いやだが、ここで威厳を失っては・・・)
[ドキドキドキドキ!]
マドカ
「・・・はぁ」
(これは・・・期待できそうにない)
【シュヴァルツ・ハーゼ(仮)基地】
ラウラ
「ふぅ・・・」
『シュヴァルツ・ハーゼ』仮基地にて、明日、日本に発つラウラが準備に一息をつくため、軍服のボタンを2つ外し、休憩室に入る・・・
[ウィン・・・]
リリヤ
「た〜いちょっ!」
ラウラ
「っ!? な、何だ、いきなり!?」
入った直後に、背後から気配を消して、共に室内に入ってきたリリヤに抱きつかれた。ラウラは驚き、後ろに気を向けていると、次は前・・・室内から多量のクラッカーの音が鳴り響いた。
ラウラ
[パチッ・・・パチッパチッ]
目をパチクリさせるラウラの頭に、クラッカーから飛び出した紐が乗っかり、広くもない休憩室にいる"『シュヴァルツ・ハーゼ』隊員全員"が一斉に・・・
全隊員
「ラウラ隊長ー!! 昇格おめでとうございまーす!!」
ラウラ
「え、あ・・・ありがとう・・・」
隊員1
「ほらほら、主役様はここに座ってください!」
ラウラ
「あ、ああ・・・って、クラリッサ! これは一体なんだ!?」
クラリッサ
「見ての通り、隊長のレセプションですが」
ラウラ
「た、確かにそうだが、こんないきなり・・・って、クラリッサだって昇格しただろ!」
クラリッサ
「チッチッチッ。何を言っているのですか? 今はそんな事はどうでもいいのです!!」
ラウラ
「はぇ?」
クラリッサ
「今は隊長の・・・ラウラ"中佐"の昇格パーティです!! 私がどれだけ、出番を惜しんで時間を懸けてきたか・・・」
ラウラ
「・・・もしかして、出番が少ないから見せしめに私を・・・」
クラリッサ
「そんな事はありません!! 私は隊長の活躍(萌え)を聞ければ、それだけで幸せです!!」
ラウラ
「そ、そう、か・・・すまない」
リリヤ
[ジ〜〜〜]
隊員2
「? リリヤ、どうしたの?」
ラウラ
「え?」
リリヤはラウラの胸元・・・ボタンが外された軍服と肌の隙間を凝視していた。ラウラが振り向くと、リリヤは目を光らせて・・・
リリヤ
「おりゃ!」
ラウラ
「うひゃっ!?」
リリヤ
「あれ? ブラしてないんですか? 無防備すぎますよ、隊長〜」
ラウラ
「や、やめっ───」
軍服の隙間から手を突っ込み、小柄な体躯に似つく胸を揉んだ。ラウラはリリヤの拘束を振り払うことが出来ず、ただただ愛らしい声を上げるだけ。
すると、周りの隊員達も抑圧されて、ラウラに群がっていった・・・
リリヤ
「あらら・・・」
その群れから持ち前の小柄さで抜け出したリリヤは、自分が招いた事に責任の影を一切見せず、ただラウラを哀れむだけ。そして、傍観に徹していたクラリッサの下へ。
リリヤ
「クラリッサ副隊長も昇格おめでとうございます」
クラリッサ
「ありがとう・・・そっちも"降格"おめでとう。リリヤ二等兵」
リリヤ
「お、おめでとうはちょっと・・・あはは〜」
ラウラ
「ちょ、やめ・・・んんっ!」
クラリッサ
[ピクッ]
ラウラ
「ど、どこに、手をぉ・・・?」
クラリッサ
[ゴゴゴゴゴゴッ!]
リリヤ
「副隊長?」
クラリッサ
「・・・ブホァ!」
リリヤ
「副隊長!? 副隊長ぉー!?」
・・・まぁ、仲良くやってるみたいだな。
先生
「はいっ、これで冬休みの補習は全て終わりました。また3学期に会いましょう」
いや〜、終わった終わった・・・
女生徒1
「織斑君、お昼、暇?」
女生徒2
「一緒に学食行かない?」
一夏
「ん? おう、いいぞ」
"よしっ"とガッツポーズをする2人の女子。
そうだよな〜、あんな長い補習受けてて、お腹が空かないはずがないよな・・・
一夏
「あ、わりぃ。教室に忘れ物が」
女生徒1
「う、うん。じゃ、先に席を取っておくから」
そう返してくれた女子達は先に学食へ小走りで向かっていき、俺は反転して教室に向かう。
一夏
(今年度は色々ありすぎたけど、来年度から蘭が中学以来の学友になるのか・・・)
どんな新入生が来るのだろう・・・できれば、面倒事が起こらなければいいけど・・・
一夏
("面倒事"って・・・獅苑のが移ったか?)
【五反田食堂の上の階・・・蘭の自室】
蘭
「♪〜」
新品同然のIS学園の制服を一足先に着た蘭は、立て鏡の前でクルッと一週回り、その姿にご満悦の様子。
その部屋の扉の隙間から、覗く二つの目・・・兄、五反田 弾が心配そうな眼差しで見ていた。
弾
(一夏・・・頼むから、昔よりは感が鋭くなってくれよ・・・じゃないと)
厳
「弾っ! 早く降りて来い!」
下の階から・・・食堂から男の声。
弾
(じいちゃんが、始動するから・・・頼むっ!)
【フランス・・・ディディア邸】
シャルロット
「お世話になりました」
レーア
「そんな畏まらないでいいわよ。また、いつでもおいで」
ジュン
「またね、シャルロットさん」
シャルロット
「うん。ジュンもね・・・あと、レーアさん。"あの話"の答え、もう少し待ってくれますか?」
レーア
「そう・・・そうね。ゆっくり考えなさい」
そうレーアは微笑み返し、シャルロットはディディア邸を後にした。
静けさが戻ったディディア邸では・・・
ジュン
「"あの話"って?」
レーア
「養子の件。お母さんとお父さんに連絡したら、大いに喜んでくれたんだけど・・・まっ、そういうのは本人が決めるもんよね」
ジュン
「そ、そうだよね・・・」
レーア
「歯切れ悪いわね・・・どしたの?」
ジュン
「・・・姉ちゃん。相談があるんだ」
レーア
「恋路?」
ジュン
「違う」
バッサリと否定したジュンに、レーアはつまらなさそうに腕を頭の後ろにやる。
レーア
「な〜んだ、つまんないの〜」
ジュン
「俺は千冬様一筋だ」
レーア
「あっそ・・・それで、なに?」
本題に戻した途端、ジュンの表情は強張り始め・・・
ジュン
「俺を・・・俺をIS学園に入れさせてくれ!!」
レーア
「・・・」
ジュンの発言にレーアは面を喰って・・・おらず、逆にテンションが上がって───
レーア
「姉さんに任せなさい!! 丁度、ジョンに合う私のおさがりがあるから!!」
ジュン
「あっ、いや、出来れば女装は・・・って、聞けー!」
【アメリカ・・・留置所】
ナターシャ
「・・・ん? イーリ?」
壁にもたれかかっていたナターシャは、牢の向こう側から訪問してきたイーリスに声をかける。
イーリス
「よぉ、ご機嫌は?」
ナターシャ
「良いわけないでしょ。毎日が退屈よ・・・まぁ、それも後三日で終わるんだけど」
イーリス
「そうか・・・もう逝っちゃうんだな」
ナターシャ
「違うわよ! 勝手に殺さないでくれない。"釈放"の方だから・・・それで、"あの子"は?」
イーリス
「やっぱ、"あの時"の貢献が良かったみたいでな、凍結は解除されるそうだ。当分は倉庫送りだが」
ナターシャ
「それでも良いわよ・・・"あの子"と会えるなら、ね」
【更識家別荘】
簪
「ご飯ですよ〜」
ラン・ルン・ロン
「ワンッ」
獅苑が本音に渡した"赤い勾玉と水色の小石のブレスレット"から、三匹の炎犬が飛び出し、簪が持ってきた小皿の上に乗せられたドックフードを庭で仲良く食べ始める。
簪
(ナノマシンでも、ご飯は食べるんだ・・・)
そんな疑問を持つ簪だが、三匹の可愛らしさを見ていたら、全てが吹っ飛ぶ。
そして、三匹とも小皿に乗ったドックフードを綺麗に平らげて、三匹とも別の行動を取り始める。
ラン
「くぅ〜ん」
ランは、縁側で腰掛けていた簪の膝の上で甘い声を出し、目を虚ろにする。人懐っこいランだが、この行動が取れるのも簪に対して心を開いてるからである。
ルン
「・・・」
ルンは、木の木陰に移動して、風で揺ら揺らと揺れる木の葉を眺めている。どうやら、ルンは猫と似ている部分があるらしい。
そして、ロンは・・・
優
「簪、散歩に出かけ───
ロン
「っ、がうっ!!」
優
「おっと・・・!」
襖から優が出てきた瞬間、気配を感じ取ったロンが飛び掛かり、避けた優は"またか"とちょっと嬉しそうな笑みを浮かべる。
優
「相変わらず、血の気が多いね・・・よしっ! やるか!!」
ロン
「がうっ!!」
例え、犬相手でも売られた喧嘩は買って出る優。"楯無"となった優とロンは、種族を超えた喧嘩をおっぱじめた。
春
「あらあら」
簪
「あ、飽きないよね。ホント・・・」
ラン
「ワンッ!」
【ミヨー橋・・・(南フランスのミヨー近郊にある世界一の橋)】
オータム
「・・・んで、これからどこに行く?」
スコール
「そうね〜・・・今度はどこに旅行しようかしら」
雲海より高い位置に敷かれた橋のレールをスポーツカーが駆けている。前席にサングラスをかけるスコールとキャップを被るオータム。そして後席には・・・
B
「有り余った財産を使うのはいいが、ここ空気薄くねぇか?・・・あむっ」
W
「・・・くも・・・あむっ」
一本の綿雨を2人で頬張る『B』と『W』。正確には、綿雨を持つ『B』が車から顔を出している『W』に差し出していた。
スコール
「"ヴィヴィ"、乗り出すと危ないから頭を引っ込めなさい」
W
「・・・[コクッ]」
スコール
「素直で良い子ね。で、次の目的地だけど・・・希望はある?」
B
「ないなら、日本に戻ろうぜ。"店"をほったらかしにしちゃマズイしな」
スコール
「あのお婆さんから譲り受けたパン屋さん? へぇ〜、店長の責任ってやつ?」
B
「そんなところだ」
オータム
「こりゃ驚きだ。お前に"責任感"っていうもんがあったなんてな」
B
「うるせぇ・・・ほら、さっさと飛ばせ!」
スコール
「言われなくても!」
オータム
「おおぉ!!」
スピードメーターが300を振り切り、橋に残留する雲海の塵を吹き飛ばしながら加速する。
[ビュンッ!]
B・W
「あ・・・」
『B』が『W』に差し出した綿雨が『W』の目の前で棒から抜けて、空に舞い上がった・・・
W
「・・・うぅ」
スコール
「オータム! ISで取りに行って!」
オータム
「はい!?」
B
「さっさと行け! 泣かれたら、取り返しが付かなくなるぞ!!」
W
「う・・・ひっく・・・!」
オータム
「わ、わぁったよ! 私が行けばいいんだろ!!」
【???】
束
「う〜ん。やっぱり行き詰るな〜・・・もう休憩!! くーちゃん、お茶〜!」
くー
「どうぞ。束様」
どことも知れぬ、謎の室内。そこで束はテーブルに腰掛け、くーが出したお茶を啜りながら、先まで研究していた"コア"の情報を脳内で再生する。
束
(う〜ん・・・やっぱり、"原石"を持ち出してこないと、先に進めないのかな? 今の私ならピュッピュピュ〜イ!なんだけどなぁ〜)
くー
「束様。通信が入ってます」
束
「ん? げっ! "イカレポンチ"からだ・・・」
【とある喫茶店】
山田
「それにしても、博士はずっと研究室に篭りっきりだけど、ご飯はどうしてるんでしょうか?」
[キュッキュッ]
ユウキ
「ん〜・・・別段、気にしなくてもいいんじゃないんですかー?」
[ピコピコ]
山田
「そうは言っても、博士だって人なんだし・・・あと、客席に座ってないで吹き掃除を手伝ってくれません?」
ユウキ
「働いたら負け」
山田
(・・・失業者)
「そういえば、ユウキさんって僕が博士の助手に就いた後に来ましたけど、博士とは随分と仲が良いですよね。前からお互い知り合いみたいな感じで」
ユウキ
「まぁ・・・祖父だし」
山田
「あ〜、なるほど・・・」
[キュキュッ・・・キュッ]
「ぇ・・・」
パリィンッ・・・!
【生徒会室】
楯無
「はぁ・・・来年度はこの資料の山と向き合わなきゃならないのか〜。虚ちゃんも一緒に留年しない?」
虚
「しません。会長にはちゃんと会長らしくやっていただけないと」
楯無
「あ〜あ、来年に良い後輩が来てくれたらなぁ」
駄々をこねる楯無は、会長席から立ち上がり、窓の向こう側を見つめながら、窓際に置かれた"氷中花"を撫でる。
虚
「その氷、全然とける気配がないですよね・・・どこで手に入れたんですか?」
楯無
「ん? どこって・・・"あの時"よ。"あの時"」
[ガラガラ・・・]
一夏
「あっ」
本音
「オリムーだぁ」
教室に戻ってくると、誰も居ないはずの無人の教室に、何故か机を運んでいたジャージ姿の のほほんさんがいた。その机は、以前まで居たもう1人の男子生徒 獅苑の席があった場所に置かれた。
一夏
「何してたんだ?」
本音
「綺麗にしてたぁ!」
垂れた両袖を振り上げた のほほんさん。机を見れば、窓から入る日光を反射して、その綺麗さをものがたっている。
本音
「よいしょっ・・・」
のほほんさんは、どこかしらから取り出した30cmぐらいの氷柱を机の上に置いた。その氷の中に一輪の淡い青紫色の花が咲いていた。
これは・・・
一夏
「紫苑花?」
本音
「そうだよぉ〜」
"獅苑"に因んで"紫苑"ねぇ・・・ダジャレかいっ
突っ込みの代わりに、その氷中花に触れる。
一夏
(そこまで冷たくない・・・)
氷のヒンヤリさがなく、ガラスに触れているような感覚。
一夏
「でも、こんな物を置いたら、不吉じゃないか?」
本音
「だいっじょーぶ! 先生から許可はもらったからぁ!」
一夏
「いや、そういう意味じゃ・・・だいたい、どうして急にこんな事を?」
本音
「紫苑花の花言葉ってな〜んだ? 4つぐらいあるんだけどぉ」
花言葉?・・・紫苑花の花言葉って何だ?
俺が知識のないものを脳内で手探りをしながら考えていると、獅苑の隣の席(のほほんさんの席)に座り、氷中花を見つめて膝に頬杖をつく。
本音
「でも、本人が居ないとつまんないよねぇ〜」
一夏
「・・・」
急にしんみりとした雰囲気に、俺も口をつむぐ。だが・・・
本音
「その分、オリムーには"面倒事"を起こしてもらわなくっちゃ♪!」
一夏
「ええぇ!?」
獅苑
「クシュン・・・さむっ」
説明 | ||
最後まで愛読してくださった方、本当にありがとうございます。 | ||
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2017 | 1946 | 1 |
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