真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 拠点:清羅 か、可愛い// |
まえがき コメントありがとうございます。前回の拠点:星で朝食を作っていた清羅さん登場です。雰囲気としては、みんなの前ではお姉さんタイプ。一刀と二人きりのとは甘えたがりの女の子になります。このギャップを感じてもらえればと思います。それではごゆるりとしていってください。
そろそろ昼になろうとしているころ、一刀と星は救護室で二人でまったり一つの椅子に腰かけて過ごしていた。星がずっと立っているのはきついだろうと俺は席を譲ろうとしたのだが、
「けが人を立たせるのは気が引けますので。」
と言って何故か俺の膝の上に腰かけている星。そして何故か俺の頭をなでなでと撫でてくる。
「なんで俺の頭撫でてるの?」
「先ほどの主の泣き顔が愛おしかったので。」
「なっ!///」
冗談をこうして素直に信じてくれるのでからかいがいがあるので助かりますな。いや、愛おしいのは本当なのだがね。
「主・・・。」
「な、何?」
「冗談ですのでお気になさらず。」
「・・・。」
俺は思わずうな垂れてしまった。俺ばっかりドキドキして馬鹿みたいじゃないか・・・。すると、星が俺の頬を両手で触れて俺の額にキスしてきた。額に全ての神経が集まっているような錯覚に陥る。こんなの、不意打ちだ。今の俺の顔、真っ赤なんだろうな。
「星、ずるいぞ・・・。」
「くすっ。おや、なんのことやら。」
「・・・。」
口で勝てないのは分かりきってるからこちらが引いた方が得策だろう。それからしばらくして、扉をノックする音が聞こえたと思えば月が血相を変えて救護室の中に入ってきた。
「一刀さん、大丈夫ですか!?」
「?」
「大けがしたと聞いたので急いできました。」
何かあったのではないかと心配した俺の考えは一瞬にして杞憂に終わった。とりあえず包帯が巻かれている左手を月に見せる。
「ちょっと槍の穂で切っただけだから心配することないよ。」
「そ、そうなのですか。良かった・・・。」
月は安心したように胸を撫で下ろした。
「心配させちゃってごめんね。」
「いえ、私が勝手に早とちりしただけなのでお気になさらないでください。それより大事に至らなくて良かったです。
「ありがとう。というか、俺が怪我したの誰に聞いたの?」
「桃香さんが廊下でお話ししていたのを小耳に挟んだんです。」
なるほど。まぁ、俺の怪我のこと知ってるのは桃香と星だけだから、よく考えれば分かることだったな。桃香が大袈裟に話しているのが目に浮かぶ。あとは愛紗と朱里と雛里あたりが来るだろうなー。そんなことを考えていると隣にいた星がおもむろに口を開いた。
「主よ、そろそろ清羅との約束の時間ではないか?」
「・・・あっ!?そうだった!」
「一刀さん、急いでください!」
「あぁ。星、月、またね。」
そう言うと一刀さんは救護室を出て行ってしまいました。少しお話したかったのですが、仕方ないですね。
「そういえば星さん、お昼ご飯がもうすぐ出来るのでそろそろお庭の方に来てくださいね。」
「私は少し休むのであとでいただこう。」
「分かりました。では台所に置いておきますので休憩し終わったら食べてくださいね。」
「あぁ。すまない。」
「では失礼しますね。」
月が救護室を出てから星も自室へ向かった。
・・・
「月、ご主人様の容体はどうだった!?」
「だ、大丈夫だったんですか!?」
「きっと、不治の病にかかって、よれよれになって・・・。」
月が庭に到着した途端、愛紗と朱里、雛里に詰め寄られた。その横で桃香も心配そうに見ている。
「私を安心させるためにあんなことを言ったんだよ、きっと。」
皆さん、やっぱり一刀さんのことが心配なんですね。私もそうでしたし。月が、彼が槍の穂で少し掌を切っただけだと愛紗たちは先ほどの月のように安心した表情を見せた。桃香も本当だったんだね〜。と月の言葉を聞いてようやく信じたようだった。
・・・
星は自室に到着すると、着替えもせずに寝台に横になった。
「主・・・。」
自分の唇にそっと指で触れると先ほどの主との接吻した時の様子が鮮明に思い出される。自分でも体が勝手に動いたように思えて少し驚きを隠せないでいた。おそらく私の今の顔は赤く染まっているのだろうな。ふふっ、この趙子龍がこのようになってしまうとは。だが悪くない。むしろ心の中が陽だまりの中にいるように心地好い。今日の夜に主がこの部屋に来たら私はどのような行動にでるのだろうな・・・。自制が利かなくなったらあなたのせいですからな、主・・・。そう呟いて星は眠りについた。その表情は、まるで兄を待つ妹のような幼げが見え隠れするものだった。
・・・
「ご主人様、まだかな?」
清羅は一足先に城の出口で一刀が来るのを待っていた。後で食べる予定の昼食が入っている籠を持ち、普段は後頭部で結っている髪を下ろしている。壁にもたれ掛かり待つこと一刻、一刀が城から出てきた。
「ごめん、遅れた!」
「私も今来たところだから大丈夫だよ。」
清羅の声のトーンがいつもより若干高いことに少し違和感を覚えたがそれより気になったことが一つ。
「なんか話し方がいつもと違うような気が・・・。」
「二人のときはこれでも良いと思ったんだけど・・・、駄目ですか?」
駄目ではないんだが上目使いはずるい。俺の周りの子に上目使いをされると途端に甘くなる俺がいる気がする・・・。というか女の子しかいないな。気の合う男友達でもできないかなー。と少し考えてみるが今のところ男はうちの兵たちくらいだし、時が来ればそういう人にも出会えるだろう。その頃のとある山の中で、一人の男がくしゃみをしていたそうな。
「えっくし!うぅ、風邪か?いやいや、俺は医者だ!そんなことはない!気合だ気合!元気になあああぁぁぁれえええぇぇ!!」
暑苦しい声を発した男は山奥へと駆けだして行ったのはまた別のお話。
・・・
とりあえず清羅の話し方について了承するとありがとう!と言ってぺこりと頭を下げた。
「まぁここでじっとしてても埒が明かないから、街の方まで出ようか。」
「はい!」
嬉しそうな声を背中に聞きながら俺たちは街へと繰り出した。
・・・
俺は清羅と二人でぶらぶらしていると月と、出かけたときに会った清羅の部隊の兵と出会った。
「姐さん、兄貴、久しぶりだな。」
「鉄さん、お久しぶりです。」
「俺は一昨日会ったばかりじゃないですか。というか、雲禄さんっていうんですね。」
「おっ、言ってなかったか?」
「はい。聞いてないです。」
「こりゃ失敬。俺は馬鉄。真名は蒼(そう)だ。改めてよろしく頼むぜ、兄貴!」
馬鉄・・・、確か馬超と馬休の弟だったよな。初めての男の人の武将だ。とは言っても他の子たちはみんな女の子だからたまたまということもありえる。桃香たちが女の子の時点で深く考えるのは止めようとは思ってたんだけど。とりあえず蒼さんは蒼さんということで。
「こちらこそよろしく頼むね。馬姓ということは西涼出身ですか?」
「っ!!兄貴にはばれたか。そうだよ。俺は馬家の長男だ。しかしお袋と喧嘩してから家を飛び出しちまったんだ。それから行くあてもなく放浪しているうちにあの村に辿り着いて、そんときは随分と姐さんに世話になった。それからあとはもう説明はいらないな。それと、俺のことはさん付けしなくていいぜ?何せ、兄貴だからな。」
そう言うと清羅が蒼の額にでこぴんした。コツンと軽い音が聞こえたように思えたが今の額を抑えてうずくまっている蒼の姿を見るに相当痛かったらしい。
「もっと良い呼び名に変えなさいと言っておいたはずですよ?」
「別に良いって。俺も蒼くらいの方が親しみやすいしね。こういう人がいても良いと思うよ。」
「流石兄貴!分かってるじゃねーか!」
「もう・・・。」
蒼さん復活早いな。その隣では清羅が溜め息ついてる・・・。
「おっと、二人の大切な逢引の時間を使わせちまって悪かったな。俺は警邏の続きでもすっか。兄貴、姐さんのことはよろしく頼んだぜー!」
蒼は手をひらひらと振りながら人ごみの中へと歩いていった。既視感を覚えるのは気のせい・・・じゃないよな。
「蒼は西涼出身だったんだね。というか、馬家ならもっと有名でもいいはずなのに・・・。」
「あの人はお母様と喧嘩をしたらしいからなるべく名乗りたくないらしいの。しかもここは西涼じゃない。それが身の危険にだってあり得るから。けれども蒼は私の部隊の一番の精鋭にして働き者よ。実力はあるんだけど自分からは前線に出ず補佐に徹するようにしているって感じかしら。まぁ私を立てようとしてくれているのは確かね。とりあえず悪い人ではないから。少し口が悪いのが難点だけど。」
「そうだね。けど蒼の人柄を見るに、補佐より前線で槍を振るった方が活躍できるよ、きっと。」
「分かっているわ。それより、早くどこかに行こう。時間がもったいないわ。」
「おっと、それもそうだ。」
俺が歩き出すと清羅はちょっと待って。と言って俺の歩みを止めた。
「何?」
「そ、その、わ、私と二人っきりなんだから、手くらい繋ぎたいなって。・・・だから・・・。」
「手くらい言わなくても繋いでいいよ。ほら。」
そう言って俺は清羅に手を差し出した。だが俺のその手を握られることはなく、代わりに俺の腕に彼女の腕を絡めてきた。清羅の予想だにしない行動に呆気に取られたけど、それよりも腕に柔らかいものが腕に当たって・・・。
「ご主人様、早く行こう!」
「いや、まだどこに行くか決めてないよ!・・・おっと!」
俺はどこか楽しそうな清羅に引っ張られる。歩くたびに腕に当たって、生きてる心地がしないとはこのことだ。清羅はそんなこと気にしていないでどんどん歩を前に進めていく。これは清羅とのデートを楽しみつつも、この感触と戦わなければいけないようだ。そんなことを考えていると清羅はふと足を止め、ここなんてどう?と俺に問いかけてくる。そこはまるでオープンカフェのような、店の外にも椅子とテーブルが用意されており店員が外まで注文を聞きに来てくれる店だった。
「ここ、結構人気のお店みたいでね。月ちゃんに聞いてどこに行こうか決めてきたの。」
清羅も月に聞いたのか。だから苦笑いしてたんだね。
「良い雰囲気のお店だね。じゃあ入ろう。」
店に入ると店員さんがこちらに駆け寄ってきた。店内の内装もいいな。
「いらっしゃいませ。何名様になりますか?」
「二人です。」
「店内と外、どちらにしますか?」
「清羅、どっちが良い?」
「今日は天気もいいし風も気持ちいいから外が良い。」
「では外で。」
「承知しました。それでは料理表をお持ちしますのでお席についてお待ちください。」
俺たちが席に着くとすぐに料理表を持った店員さんが席に来た。結構早かったな。
「料理表をとお冷をお持ちしました。それではご注文が決まりましたらお呼びください。失礼します。」
料理表を開くと結構メニューがたくさんあることに気付く。へぇ〜、この時代でもたくさんあるんだな。流石にコーヒーはないか。清羅は既に決めたようでメニュー表を閉じて俺の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの?」
「こうしてると改めて二人っきりなんだなー。って思ってたの。」
「確かにこうやって落ち着いて二人で向かい合ってるとそう感じるね。というか清羅、決めるの早いな。」
「一目見ただけでこれしかないっていうのがあったの。お昼ご飯は私が作ったから。」
「おー。お弁当持ってきたの?」
「私の愛情たっぷりだよ♪」
「それは楽しみだね。じゃあ俺は俺はお抹茶を貰おうかな。清羅はもう良いの?」
「うん。何を頼むかは来てからのお楽しみにしててね。」
俺たちは料理を注文して、店員さんはくすっと笑って店内に戻っていった。清羅の注文を見たときに羨ましいです〜。と言っていたんだがなんだ?ひとまず抹茶がきたので一口啜った。うん、ほどよく甘みもあって美味しい。ちょっと日本茶が恋しくなったところで清羅がお弁当を籠から取り出した。中身は配色を考えて赤、黄、緑の食べ物が綺麗に配置されている。
「さぁさぁ、早く食べて食べて!」
「うん。いただくよ。いただきます。」
早速食べようとお箸をとろうとしたら何故か置いてあったお箸が見当たらない。あれ、確かに弁当箱の上に・・・。
「ご主人様、あーん。」
それは既に清羅の手中にあった。え?この公の場でするの?すごく視線が痛い。
「あの、周りの視線が痛いんだけど?」
「あーん。」
「いや、だから・・・。」
「あーん。」
「・・・。」
経験上、こうなった女の子は絶対に引かないということを知っている俺は両手を挙げて降参する。
「分かったよ。あーん。」
「あーん。」
鶏の唐揚げが口の中に入れられる。うん。衣はさくっとしているし肉も柔らかい。味付けは塩コショウか。これは美味い。
「どうかな?」
「うん、美味しいよ。」
「やった!」
可愛くガッツポーズをとる清羅を見てこんな一面もあるんだなー。と清羅の顔をまじまじと眺めていると次はミニトマトを取り、俺にあーんしてきた。
「あーん。」
「あーん。」
二回目にもなると少しずつ慣れてくるな。なんてことを思っていたら清羅の頼んでいた料理が到着した。
「お待たせしました。恋人限定、夏の思い出・甘酸っぱい青春が詰まった夏の果物盛り合わせです。ご一緒に果物の飲み物もお付けしましたので、お二人でお飲みくださいね。それでは。」
・・・。・・・。え?夏の思い出?甘酸っぱい夏の青春?というか飲み物一つしかないんだけど。いろいろツッコみたいことがありすぎて思わず固まってしまった。
「うわ〜、美味しそ〜。いただきます。ご主人様も食べないと私が全部食べるよ?」
「食べれるの?」
「いや、そこはツッコんでよ。」
正直、出てきたときのインパクトが大きすぎてそこまで頭が回る気がしない。それにしてもこの果物の量、相当なものだぞ?
「これ、俺たちだけで全部食べられるかな?」
「大丈夫。私が食べられなかったらご主人様にあげるから。」
「遠まわしに結構な量食べてと聞こえるんだけど・・・。」
「気のせいだよ。次はご主人様が食べさせる番ね。あーん。」
「はいはい。」
お互いにお弁当と果物を食べさせあいながらなんとか完食した。意外とすんなり入ったな。果物ジュースも美味しかったし。3分の1だけ飲んであとは清羅に残してある。その清羅はグラスを凝視してるんだけど。
「美味しいから早く飲めば?」
「飲むよ。飲むけど、これに口つけたらご主人様と間接的に口づけしちゃうんだなーって思って・・・。」
「・・・迂闊だった。」
一つのグラスを二人で使えば間接キスになるのは当然だ。あちゃー、配慮が足りなかったか・・・。
「新しいの頼む?」
「いや、いいの。別に嫌って訳じゃないから。ただ恥ずかしくて・・・。」
頬を染める清羅を見てドキッとしてしまった。いつものクールなのも良いけどこっちの方が素っていうか、ありのままの清羅のような。そんな気がする。どっちも魅力的だけどね。
清羅は意を決してグラスに口を付けた。
「美味しいでしょ?」
「ドキドキして味が分からない。」
そんなこと言われたらこっちがドキドキするよ・・・。それからグラスの中の飲み物も空になり、店を出てまたあたりを回ることにした。すると前方で恋とねね、セキトを見つけた。どうやらあの桃まんを買っているらしい。あそこに恋が行っているのは聞いたが、あの量はおかしいだろう。何をどうやったらあんなに胃に入るのだろうか・・・。
「恋は相変わらずの食べっぷりだな。ねねがその横でちびちびと食べていると余計に多く感じる。」
「・・・。」
「清羅?」
「かわいい・・・。」
「ん?」
「あのわんちゃん可愛い!ふわふわのもふもふなんだろうなー。一回触ってみたいなー。」
「もしかして、清羅って可愛いもの好きだったりする?」
「ち、違うよ!私はただあのわんちゃんが可愛いから言っただけで別に頬擦りしてみたいなーとか持って帰りたいなーとか思ってないんだから!」
思ってたのか・・・。俺が昨日動物に囲まれてるところを見たらおそらく恋を見る愛紗みたいになるんだろうな。そんなことを話しているうちに二人と一匹は人ごみの中へと消えて行ってしまった。
「あ、行っちゃった・・・。」
心底残念そうな表情をしている。相当触りたかったんだろうな。
「機会があったら恋の部屋にいってみたらどうだ?セキト以外にも動物がたくさんいるみたいだよ?」
「そうなの!?」
「う、うん。」
「わ〜。今度恋ちゃんにお願いしてみよ〜っと。」
清羅が行くときに俺も行ってみようかな。・・・いや、昨日の二の舞になりそうだから自粛した方がいいかも。
「ご主人様も一緒に行こうね♪」
「あ、あぁ。」
清羅の誘いを断る理由もないので思わず返事してしまった。行くときは替えの着替えを持っていこう。そう考えていると遠くの方でセキトの元気な鳴き声が聞こえた。
「さて、あとはどこに行きたい?」
「んー、ご主人様に任せる。」
「了解。」
俺が行きたいところは一つだしね。そろそろあれも出来ているだろうし。俺たちはとある装飾屋に来ていた。
「こんにちわー。」
「おや、北郷様。いらっしゃいませ。今日はお一人ではないのですね。」
「はじめまして。葉蓮と申します。」
「あー、この方が北郷様がおっしゃっていた方ですね。」
「?何を話していたのですか?」
「まだ内緒。うん。あれ、出来てるかな?」
「はい。良いものに仕上がりましたよ。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
俺は店主から包みを受け取り店を出た。包みを少し開けて確認してみると俺の希望通りのものが入っていた。うん、これなら満足してもらえるかな。
「清羅、いきなりだけど、目を瞑ってくれない?」
「?・・・う、うん。」
目を瞑る彼女の髪にさっき受け取ったもの、菊の花の髪飾りを付ける。ちょっと離れてみてみるけどばっちり似合っている。髪飾りのお陰で清羅の栗毛がよく映えて見えるね。
「もういいよ。」
「ん。何を付けたの?」
「菊の花の髪飾りだよ。俺が倒れた時の看病してくれたお礼だから、受け取ってくれる?」
清羅は髪飾りを外し手に取った。宝物のように両手で抱え、じっとそれを見つめたあとに俺に視線を移す。
「まだ、気にしていたのですか?」
口調が戻った。どうしたんだろう?
「気にしていたとかじゃなくて純粋にお礼がしたかったんだ。あれから清羅に何もしてあげられてなかったからさ。俺がこっちに引き込んだのにこのままじゃ俺の気が済まなかったというか、ね。」
「そんな、私こそご主人様に何もしてあげられていませんのに!こちらに誘っていたことだけで私は感謝でいっぱいなのです。あなたがいなければ私はここにいません。だからこれは受け取れま・・・むっ!」
俺は清羅の唇を塞いだ。もう聞きたくなかったから。ここにいませんなんて言われたときには頭の中が真っ白になって体が勝手に動いた。誰かがいないなんて想像もしたくない。そんなの、耐えられるはずがない。呼吸をするのも忘れて自分の唇で彼女の唇を塞ぎ続ける。
「ん・・ちゅ・・・ご、ご主人様・・・ん・・・、苦しい。」
我に返った俺は唇を離し持っていた髪飾りを彼女の頭に付けた。
「ここにいないなんて言わないでくれ。そんなことになったら俺は・・・。」
口づけをされて真っ赤になっていた清羅だが気落ちした一刀を見て不謹慎だがくすっと笑ってしまった。
「な、笑わなくたって・・・俺は本気で・・・。」
「ご主人様、私がいなくなるなんてことはないよ。ご主人様がいなければって言ったでしょ?」
「あ・・・。」
確かにそう言った。俺、取り返しのつかないことをしてしまったぞ。どうしよ・・・。
「だから、あなたがいる限り私がいなくなるなんてことは絶対にないから。私の方こそご主人様がいない人生なんてそれこそ私がいる意味がなくなるんだから。私の初めての口づけを奪ったんだから、責任とってもらうからね♪」
「はい。」
「流石は兄貴、天下の往来だっていうのに大胆なことするな。姐さんもまんざらじゃなさそうだし。」
「!!」
俺たちは思わずあたりを見回すと街の人たちが会話を止めて俺たちの方を見ていた。大胆ねー。とか、あんなべっぴんな嬢ちゃんと口づけしてみたいぜー。だの、この禿!さっさと店に戻りな!そんな会話が聞こえてくる。そしてすぐ近くにはにやにや顔の蒼。俺たちは揃って赤面してしまい、いても立ってもいられず全速力で城に帰るのであった。
・・・
・・・
晩飯を食べ終わり、恒例のじゃんけん大会勃発。緊迫した状況の中、勝利を勝ち取ったのは星だった。しかし、今さらなのだが俺がお邪魔になる部屋の順番を日ごとに分けて決めれば良かったのではないだろうか?まぁ、最初の提案だったらともかくこの状況下の場合、却下されるのは目に見えてるから言わないけど。とりあえず俺は着替えを持って風呂へ向かった。その頃の星・清羅部屋では・・・。
・・・
「おや、星ちゃん、機嫌良いわね。」
「その言葉、そっくりそのままお主に返そう。まぁ、大体の予測はできているがな。おや、その髪飾りは・・・、主からの贈り物か?」
「ええ。ふふっ、出かけているときにご主人様のたくさんの今までに見れなかった表情が見れてとても有意義だったわ。」
「それは私も主と模擬戦をして結構なものを学ばせていただいた。それにしても主はお強いな。今朝の一戦でもおそらく本気ではなかっただろうし、今の私ではとても敵うものではないお方だ。」
「あれだけ武人としての実力があるのに、努力を怠らず、文官としての実力、皆を纏める統率力、しかも武将や軍師、兵や市民にも平等に接して私たちを平等に愛してくれている。ほんとに、理想というかどうやったらあそこまで完璧になれるのか興味が沸いてくるわ。」
「育った環境が良かったのだろう。主を取り巻いていた環境には戦というものはなく、家族も優しくしかも今の主よりも強いお方がいると聞いた。その方たちから修行を受け、積み重ねた努力の賜物と言えばいいのだろうか。まぁ、周りの人間が傷つくことを恐れているというか、寂しがり屋の傾向のあるお方だ。どうにも守ってあげなければという使命感というか、保護欲が生まれるのだ。主を見ていると不意にな。」
「ご主人様といるとなんというか、甘えたくなるのよね〜。それにしても、セキト・・・可愛かったな〜。」
「・・・は?」
なんだ?突然口調が変わったぞ?
「あのもふもふの体、ふさふさの尻尾、ぴこぴこしてる耳、恋ちゃんが食べてた桃まんを欲しそうな目で見つめるあの表情、は〜〜〜〜。」
「せ、清羅?どうしたんだ?いきなり別人のようになって・・・。」
「そんな細かいことはどうでもいいの!」
「は、はぁ。」
「それよりもセキトのこと!は〜、でも触りたかったな〜。けど、それで今度ご主人様と一緒に恋ちゃんのお部屋に遊びに行く約束もしたしね。結果良ければ全て良しだよ!ご主人様と動物たちが戯れるとこを見れるなんて!幸せ〜。」
「そ、そうか・・・。」
「星ちゃん、どうしてそんな顔しているのかしら?」
「・・・。いや、なんでもない、気にするな。」
「そうね。」
清羅にこのような一面もあるとはな。そんなことをしみじみと思っていた。しかし、星もメンマのことになると清羅以上に語り出すので人のことは言えないだろう。
・・・
「何でこんなことに?」
寝台の上で寝ている俺なんだけど、両隣には星と清羅が俺の腕にしがみ付いて寝ている。足まで俺の脚に絡みついてるし。それは俺が風呂を上がって部屋に入ったところまで遡る。
「お邪魔しまーす。」
は〜さっぱりした。今日は模擬戦して歩き回ったからな。というか洛陽に来てから毎日だな。明日は・・・愛紗とお出かけだったな。今日のうちに考えておこうかな。二人は寝台に座って談笑していた。
「あ、お帰りなさい。」
「どうぞお入りください。」
「二人とも、今日はお疲れ。」
「ご主人様、今日はご一緒していただきありがとうございました。」
「主、左手の傷は大丈夫ですか?」
「俺って気を使えるでしょ?その恩恵か分からないけど傷の治りが早いんだ。だから、明日には傷跡も無くなってると思うよ。」
「そうか。それは良かった。」
星がほっと胸を撫で下ろした。と思ったらその隣にいた清羅が俺にずいっと近寄ってくる。
「ご主人様、今度、本当に一緒に恋ちゃんのとこに遊びに連れてってくれるんだよね!」
出たな、清羅の甘えん坊モード(命名:俺)。どっちが素なのか結局分からなかったけどどっちも『清羅』であることには違いない。それならいつもと変わらない接し方でいいよね。
「勿論。一緒に行こうな。」
俺は清羅の頭をよしよしと撫でてやると、えへへ。と言って、寝台の真ん中あたりをぽんぽんと叩いた。
「ここに横になって。」
「?横になればいいのか?」
「うん。」
主旨を掴めないまま言われたとおりに横になってみる。すると俺の右隣から清羅が俺の腕にしがみ付いて・・・いや、抱きついてきた。足まで絡めてきてるし。
「ご主人様の体、気持ちい〜。これはハマっちゃうよ〜。」
あー、抱き枕になった気分だ。抱き枕も大変なんだなー。などとよく分からないことを考えているとその反対側から星も清羅と全く同じ体勢で抱きついてくる。
「ふむ、主にこうやって抱きついて寝るというのもなかなか乙なものだな。」
すいません。俺、これだと身動き取れないんですが・・・。というかこの体勢で寝るんだ。嬉しいんだけど、果たして俺は寝ることは出来るのだろうか。
「ご主人様、おやすみなさい。」
「主、それでは。」
「・・・うん。おやすみ、清羅、星。良い夢を。」
二人とも眠りについた。さて、とりあえず明日の愛紗とどこに行くか考えようかな・・・。そんなことを考えつつ瞼を閉じた一刀だったが幼い頃から寝つきの良かった彼はあっという間に眠りについた。結局翌日の予定を立てることはできなかったとさ。その頃の愛紗はというと先日の桃香と同じでなかなか寝付けないでいた。
・・・
「は〜、どうしよう・・・。ご主人様と出かけるのだから・・・いや、普段と同じでいいのか?霞にはいろいろと聞いて来たからいいのだが。」
愛紗がうーん。と唸っていると隣の寝台から鈴々がにゅっと首を出してきた。
「愛紗、何をぶつぶつ言ってるのだー?」
目をくしくしと擦っているあたり、寝ているとこを起こしてしまったようだな。
「いやなに、明日ご主人様と出かけるのでな。その予定を・・・。」
「お出かけ!鈴々も行くのだー!!」
「・・・え?」
ということで愛紗が目を丸くしているうちに鈴々も一緒に行くことが決まった。とうぜんながら、それを今の一刀は知る由もなかった。その夜には二人の姉妹の予定を立てる話し声が一晩中聞こえていたそうな。
あとがき 拠点:清羅はいかがだったでしょうか。普段のお姉さん的立ち位置からいっきにポジションを変えさせてみた清羅さんですが、どちらの清羅さんも温かい目で見守っていただければ幸いです。さて、新キャラ登場させました馬鉄こと蒼。この人物はサブの立ち位置で名前はつけない兵A的ポジションだったのですが、構想を考えているうちにあれ、メインいけるんじゃね?と思いこの度昇格させました。蒼のお話はおそらく翠たちが仲間になってから本格的に始動することになりますので少々お待ちください。それと、清羅さんのオリキャラ扱いを突然ながら消させていただきました。そこは第弐節の方を少し修正させていただきましたのでご了承ください。その真相は近々明かしますのでしばしお待ちをお願いします。それでは次回 拠点:鈴々 鈴々と大食いと兄としての心配 でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。 | ||
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何気に立った翠フラグと華佗フラグが気になったり・・・ 甘えてくるお姉さんとか、漢の浪漫が溢れるいいシチュエーションで素敵(yosi) 往来で美女と堂々とキスなどしおって…う、うらやましくなんかないんだからね!!(mokiti1976-2010) 馬鉄が凄く気に入りました!(本郷 刃) 何これ可愛いwww(アルヤ) |
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