STAY HEROES! 第六話 後
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「いいねファントム! 訓練の成果でてんじゃんか!」

 

「いつまでも足手まといのままではおれんのでなあ!」

 

 

そこら中でサイボーグと民兵の戦闘が展開されている廃棄港。

その海に面した一区画に、背中あわせで白兵戦を行う二機の機装がいた。

ガルダとファントムの振りまわす振動剣が、二人を取り囲むサイボーグ達をけん制する。

が、じわりじわりと奴らは輪の直径を縮めてゆく。

 

 

「楽しいなあガルダ! 駅の連中よか歯ごたえのある奴らだ!」

 

「何言ってんすか!? こいつらあたしたちを本気で殺しに……Damn!」

 

 

とうとう、サイボーグの一体がガルダの右腕を掴む。

それと同時に、僕は敵の輪の中へ馬ごと突っ込んだ。

 

軍馬の膝蹴りを喰らったサイボーグ達が砕け散りながら、海面遥か彼方まで吹っ飛んでゆく。

奇襲に気付いた何体かの敵は小火器を乱射してきたが、この重機装には傷一つ付けられやしない。

そいつらにお返しとして長身の斬馬刀を叩きつけてやる。

面喰ったサイボーグ達は反応を返せないまま、馬鹿でかい振動剣の露と消えた。

敵が一掃出来た後、鉄馬から降り立って二人へと駆け寄った。

 

 

「ガルダ、ファントム、無事か!」

 

「な、誰だっ!? このお侍ちゃんはっ!?」

 

「僕だ!」

 

「えー? 少し見ない間にガタユキも逞しくなったもんだな」

 

「うわ、安形には似合わねえぞこれ」

 

「やかましいわお前ら!」

 

 

心配して損した。

無事でほっとする反面、いつも通り過ぎて腹立つ。

だが一息つく間もなく、倉庫の隙間から新たな敵がうじゃうじゃ出てきやがった。

うかうかしていられない。

 

 

「二人ともよく持ちこたえた! ここからは僕が始末する!」

 

「えぇ……?」

 

「なにガッカリしてんの少尉殿! ほら下がるよ!」

 

 

  activation:Five barreled rotary cannon GAU-12/EXA overdrive 25mm gun system

 

 

機関砲の使い方なんざ知らないが、一か八かで僕は背部ユニットから五連砲を引き抜いた。

ロックオンされた標的に意識を重ね合わせた瞬間、ガトリングが火を噴く。

音速を軽く超える 25mmの鉄甲弾を受け止めきれずに、倉庫は一瞬で崩れ落ち、サイボーグは次々弾け飛んだ。

一斉射が終わって辺りに残響と煙が漂った時、声が聞こえた。

 

 

「く、くっそ! 予定とは違うがお前りゃをここで葬り去ってやる!」

 

 

やたら口足らずなその声には覚えがある。

ありゃあ、ホログラムで演説をぶっていた噛み噛みのサイボーグだな。

ふむ。

再び突撃してくるサイボーグと共に、倉庫のトタン屋根を突き破って、戦車の砲塔に四肢を取ってつけたようなロボットが現れた。

二脚戦車は僕目掛けて片腕を振りおろしてくる。

 

 

「遅い!」

 

 

背中から宙返りを決め、逆立ちのまま畳んだ腕をバネにして伸ばせば、イヅラホシは宙を舞う。

そして腰に収めていた斬馬刀を再び抜いた。

目標は、もちろんヤツだ。

足を付けた倉庫の古看板を蹴り飛ばし、僕は重力に逆らって跳躍の方向を変えた。

 

 

「ヒーローごっこでなにが出来りゅ! 行けっ! 二脚戦っ、ぬううううん!??」

 

 

太陽も眩しいので、僕は二脚戦車の足を遠慮なくぶった切ってやった。

二脚の巨大ロボット兵器? そりゃ対人向けのおもちゃじゃないか。

親父から受け継いだ機装乗りの血を舐めんじゃねえぞ!

 

 

  launch:BGM-71Q TOW-Jr. anti-tank missile attention! SACLOS

 

 

ロボットの股下に滑り込んだ僕は、対戦車ロケットをその燃料タンク目掛けて打ちこんだ。

乗員もろとも、ロボットの上半身が木っ端みじんになる。

戦車のなれの果ては水柱を立てて、海へと崩れ落ちた。

 

 

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さあて。最後だ。

立ち上がり、ゆっくりと残りのサイボーグ達へと近づいてゆく。

噛み噛みサイボーグはひどく慄き、激しく震え始めた。

ハッタリでも演技するしかないぞこりゃ。

 

 

「貴様が頭領だろう。まず、誘拐した兵士たちをどこに監禁したか吐け」

 

「あ、あ! 分かった! 分かった! 言う! 北区の山中に『埋めてある』!」

 

 

束の間、僕は呆気に取られた。

僕らと交戦する遥か前に、こいつらは人質を殺したって言うのか。

物にならない怒りがこみ上げてくる。

ならもう用は無い。

サイボットを捕虜にしても、何の情報も吐かぬまま自爆するのがオチだ。

 

 

「いきなりだが、次に最後の言葉を聞こうか」

 

「うええ!? 後生だ! 見逃して」

 

「身勝手な責任論を嘯く輩なら! 潔く責任とってくたばりやがれ!」

 

「こっ、降服する! 降服だ! 降服……!」

 

 

 

 

「覚悟ッ!」

 

自棄になって襲いかかってくるサイボーグ達をなぎ倒しながら、僕は奴らのリーダーへと突貫する。

そもそも、宇宙開発用の義体を戦闘で使うなんて無茶すぎるんだ。

人や自然を踏みにじる事業よりも先になすべきことがあるだろう!

 

「ジェイクの糞ったれえええ! 最新の重機装があるなんて聞いちゃねえええ! コンの素人おおお!」

 

最後に残った彼は、カメラアイを見開いて機関砲を乱射してくる。

が、片目に狙撃を受けてサイボーグは大きく仰け反った。

いい仕事だ、ファントム。

鋼の鼓動に全神経を集中させ、僕は奴の懐深くへ入り込んだ。

 

「『俺』は素人じゃない! 俺は、(( 整備員 |エンジニア))だッ!」

 

横一閃に振り切られた太刀筋は、夕闇に火花を散らす。

斬馬刀が甲高く吼えた時、刎ねた首は地へと落ちた。

 

 

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首無しで突っ立っている義体を見つめているうちに、ふと頭によぎった。

かつては彼もヒーローだったのかもしれない。

サイボットは元々、サイボーグ化された宇宙飛行士たちの互助組織だったと聞く。

まさしく、国の誇る英雄の集いだったはずだ。

だが、今の彼らは人質たちを虐殺するまでに落ちぶれた。

成り行きでヒーローになった僕も同じように、自分の立ち位置を見失うかもしれない。

 

  BINGO! BINGO!

 

ここにきてイヅラホシの電源出力が落ちやがった。

慣らし駆動も無しに、新品を酷使すりゃあエラーも起きる。

同時に、今まで興奮で誤魔化されていた耳鳴りと頭痛が、僕の身体へと攻めよせてくる。

吐き気を堪えながら片膝をついた時、機装の兜を誰かに外された。

ケーティだ。左肩には止血パッドが貼られている。

 

「無茶が過ぎます……」

 

「けれど、これで僕もみんなと同じヒーローになれたわけだ」

 

兜を抱えて俯くケーティへ、僕はむりやり笑って見せた。頭痛くてしょうがないけど。

ケーティの後を追って、ガルダとファントムも近づいてくる。

どれもボロボロだったけれども、なんとか、みんな無事だ。

よかった。今はそれだけだ。

 

「あーあ、随分手痛くやられたわね。さて隊長、これからどうする? このまま修理しちゃいたい所だけど」

 

「え、あの、その」

 

「すんません、その前に病院行ってええですか……?」

 

 

説明
オリジナルミリタリーライトノベルチックSFの第六話後編となります。
第一話を読んでない方(ry
挿絵は主人公だけ気合入ってます。

絵を描くって大変です。

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