恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 19話 |
―side 秋蘭
「もう少しで本隊が来る!それまで持ち堪えろ!」
そう指揮しつつ、弓を引き続ける。狙うのは馬に乗る指揮者等を優先的に狙っているからか、賊の攻勢が思うように進んでいないが、状況はかなり厳しい。
義勇兵の李典が物作りに長けていて各門に柵を作ってくれたおかげで楽にはなったのだが、それでもこの数の差はいかんともしがたい。
更に……
「申し上げます!東側の柵が破られました。義勇兵が踏ん張っていますが、厳しい状況です」
やはり、か。東側の柵は材料不足と一番圧力が少ないということもあってか完全に設置が出来ていなかった。
だからといって他の門からの予備なぞあるわけがなく、そこには楽進という義勇兵でも優秀な者を置いていたのだが破られてしまったか…
「くっ、……そうか、分かった。もうすぐ本隊が来るはずだ。持ち堪えてくれと伝えてくれ」
「はっ」
華琳様達なら桂花が指示を出し、兵を纏めて、此方に向かっている所だろう。
後は、我等が耐えればいい。
が、後一押し、何か一押しあれぱ確実に耐えれるが、その一押しがないからギリギリ耐えれるかどうかの状況だ。
「申し上げます!」
他の門も破られたのか?
「賊の本陣で土煙が!何者かが賊の本陣に急襲を仕掛けたようです」
なんだと?もう援軍が来たのか?
「旗は?」
「それが……上がっていません。
唯、分かることは何者かが賊の本陣に急襲を仕掛けたということだけです」
正体不明の部隊、か。
この急襲はありがたいが、その部隊がどういう立場なのかを知りたい。しかし、今は耐えることが先決だ。
正体をつきとめるなどは後でも出来る。だから今は華琳様が来られるまで耐えることだけを考えよう。
私はそう考えながら弓を引き続けた。
― side out
「オラオラ!紅蓮団だ!当たると痛ぇぞ!」
そう先頭で部下を率いながら叫びつつ槍を振り回し、道を切り開いていく。
目的は賊の大将の首を取り、相手を混乱させ攻撃の手を緩めさせること。
この急襲は機動力が命だ。相手が此方が少数と気付くとアウト。
相手が冷静になり対処されるとアウト。
此方の機動力が削がれればアウト。
通常の国と国との戦ならこの数での本陣の急襲は分の悪い賭けじゃなく無謀といったところだが、今回は賊相手だ指揮系統や策も正規のそれとは比べ物にもならないぐらいお粗末だ。
いや、この期間でよく一からここまで作り上げた。と褒めるべきか。
まあ、そんな無駄なことを考えつつも馬に無理をさせないようにしつつ槍を振るい蹴散らす。
秋蘭のことだ。
このぐらいの状況になったら時間をちゃんと稼げるだろう。
「くそっ、てめぇら何をしている!この俺を守れ!」
……へぇ。あの馬に乗って自分を護る指示を出しているのが大将ってわけか。
そう思いつつ合図を出して馬を止める。
「森羅、此処で状況維持。俺は、大将のとこまで一騎駆けしてくる」
「はっ、全員このまま状況維持!ご武運を」
そして部下達は前進を止め、その場で近づいてくる賊を蹴散らしている。
……さてと、早く終わらせるとしますかね。
「おォぉう!」
その場で大声を出して賊を一瞬硬直させる。
進撃が止まったと思った矢先のことだ。大体硬直している。これなら一騎駆けも楽になる。
「……さて、華琳のとこに戻る手土産に賊の大将首、貰っていこうか、ね!」
そして俺だけ馬を走らせて、大将の元に突き進む。
さっきの大声であっちの呼吸が乱れたのか、大体素通りになる。
その中でも慌てて此方の進路を邪魔する奴が出てくるが、それは見せしめを兼ねて瞬殺し、そのまま進む。
元々民、百姓だったから命惜しさに出てこれなくする為でもある。
「くそっ、早く俺を守れ!」
「残念だな、その指示よりもちょいっと俺の方が速かった」
あせりながら叫ぶ大将に近づき、返事をしつつ、槍で首を切る。
これで第一段階は終了っと。
「賊の大将首、李高 雲犬が討ち取った!
てめぇらの負けだ!」
一応、士気を下げる為に名乗りを上げ、大将を討ったことを賊に分からせる。
「森羅、お前は予定通り西な。俺は東に行く」
「はっ、西側に行く者は私に続け!」
「で、残りは東だ。時間稼ぎが目的だ。しっかりやれよ。いいな!」
「「「応!」」」
さてと、華琳が来るまでの留守番の手続きをしにいきますかね。
side 凪
「怯むな!押し返せ!」
そう叫びつつ、最前線で時には殴り、時には蹴り、時には気弾を放ちながら賊を倒していく。
状況は不利、柵は破られ、今はなんとか押し留めているが、それも時間の問題。人員は夏侯淵将軍が選りすぐりの者達をなるべく東門に集めてくれたお陰で耐えている状況だが、問題はみんな疲弊している。更には他の門からの援護も期待できない。唯一の希望がもうすぐ到着するという曹操様の本隊。
だがそれも早く来てくれなければ保たない。
もう殆ど全員が限界に近い。
「もうすぐ増援が来る。だから諦めるな!」
だが、やられるわけにはいかない。
此処が抜けてしまったら後はなし崩しに他の門も抜けてしまう。それだけは絶対してはならない。他の門には沙和や真桜がいる。だから此処は絶対に抜かせない。
そんなことを考えていたからだろう。考え事をする余裕など自分はないのに、考えてしまったのが、運の尽きだった。
気が付けば目の前には今まさに私を殺そうとする賊がいた。
それに対処出来る時間もない。
そのまま、振り下ろされる攻撃を目を瞑って最期の時を待つ。正直怖い。だがそれより……
「沙和、真桜、済まない」
自分の友を裏切る行為つまり死んでしまうことの罪悪感の方が強い。
「後は頼む」
「……ところがギッチョン!ってな!」
死を覚悟した所に場違いな軽い声が聞こえる。
だが私には関係ない。もうすぐ死ぬのだから。
……しかし、待っても何も来ない。
そして状況を把握するため目を開けると……
「よう、なに呆(ほう)けてやがる。加勢だ。助けにきてやったぜ」
雲を連想させる、赤い槍を持つ槍兵が目の前の賊を倒し、立っていた。
― side out
いや、ホント危なかった。所謂間一髪ってやつだった。つーか俺の速度でなきゃ間に合わなかったぞ。
流石最速とか自分で褒めてみたり。
というか「ところがギッチョン」って傭兵になってから言ってみたくなったセリフだ。後悔はない。
「本隊が来てくれたのですか?」
そんな馬鹿な事を考えながら槍を振るっていると、助けた女の子が尋ねてきた。
「残念だが外れだ。俺達は傭兵だ。名は李高、そっちは?義勇兵っぽいが」
それを聞いたとたん女の子は落ち込む。まぁ、そうだろうなもう助かると思ったら、もう少し頑張らないといけないんだからな。
「確かに自分は義勇兵です。名は楽進。
一応言っておきますが貴方達に払う報酬は持ち合わせていませんよ」
うーん、やっぱり有名な将は女だな。
ていうか装備を見る限り無手で戦ってんのか。なんか同士を見つけた気分だ。
それより、傭兵=報酬って……いや、確かにそうだけど、今言わないでおこうよ。
今までの傭兵稼業のせいか気分が下がる。
「そんなことどうでもいい、ただ、今は戦闘経験のある俺の指示に従ってくれ。大丈夫だ。あんまり味方が死ぬのは気分が悪くなるんでね」
「……分かりました。」
渋々了承をもらう。さてと暴れますか。
「ありがとよ。
……野郎共!俺達は戦線を門の前まで上げて、そっから先は誰一人として門を通さない覚悟で望め!
で、元々いた奴らは俺達が零した奴を頼む!」
俺の指示で戦いながらも態勢を整えていく。
で、義勇兵達の指揮者は楽進だろう。最低限の指示をだす。
「楽進、お前はそのまま俺達以外の奴らの指示を頼む」
「分かりました。で、どのようにするのですか?」
うん、スゲー素直でいい子だ。
そんなことを思いながら、手早く指示をだす。
「俺達は門の外で全体的な足止め、で抜けて門に入った奴をそっちが倒す。ってのが俺の考えだ。いいな」
「分かりました」
そう頷き、義勇兵達を纏める。
よく纏めている。こいつは華琳に紹介したほうがいいな。少し鍛えれば即戦力になる。
っと、それは後で考えるか。そんなことを考えつつ、槍を振るい、敵を屠りながら押し上げる態勢を整えていく。
そして、態勢が整い、「押し返せ!」と言おうとした時に……
「遠くから土煙が!旗は曹が上がっています」
華琳が本隊を率いてやって来たか。
となると流れが変わるからこっちは攻めるだけになるな。
「おーい、楽進、さっきのは取り消しだ。本隊が来たから多分全員合わせて攻めに転じるだろうから。それまでは現状維持になる。基本的には同じだが、攻める事の出来る奴を固めといてくれ」
そう言い、しばらく守っていると、予想が外れ、戦いは終わっていた。(後に聞いた話によると先行した春蘭の率いる部隊が突撃、大将もやられていた賊はそれが原因で逃げ出したらしい。)
さてと、戦は終わったし、後はいきなり出て行って華琳を驚かすだけだが………出来るのか?
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