語られし者たちとIS 世界樹大戦 第16話 暴走する力
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「その情報……本当なのですか?」

 

「うん、どうやらマジらしいよ。学年別トーナメントで優勝したら織斑君と付き合えるんだって」

 

シャルルの正体が一夏にばれた次の週の朝、クラス中である話題が出ていた

 

今回の学年別トーナメントで優勝した人は一夏と付き合えると

 

もちろん当の本人は何も知らない

 

そしてこの教室に一人、この噂を良しとしない人物がいる

 

箒だ。本来彼女は引っ越しの際に一夏に優勝したら付き合ってもらうと言った。つまり一夏と付き合えるのは彼女だけの話である

 

しかしどうやら大声でそのことを話したことと周りに変な風に伝わってしまったのが原因でこんなことになっている

 

内心彼女は焦っていたが、すぐに気持ちを切り替えた

 

(そうだ、優勝すればいいんだ……そうすれば……私は……)

 

一夏とシャルルが教室に入ったと同時にこの話は止まる

 

彼らは何か不思議そうにしているが気にせずに授業の準備をすることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? 鈴さんではありませんか、お久しぶりですわね」

 

「セシリア……まあそうかも。最近、アリーナを利用していなかったからね」

 

放課後、とあるアリーナで二人の代表候補生が偶然出会った

 

鈴はアリーナにあまり来ていなかったので今回の大会はあまり乗り気ではないのかとセシリアは考えているようだ

 

実際は異世界に行ってマオと修業していた。今回アリーナに来たのはその成果を試すためらしい

 

「まあ、あたしにもいろいろとあるのよ。自分のISの調整とか……ね。それよりどう? 模擬戦でもする?」

 

「そうですわね……では」

 

そうお互いが構えた瞬間、二人の間に砲撃が放たれた

 

誰かと思い、砲撃のあった方向を見てみるとそこにはISを展開しているラウラの姿が……

 

「イギリスのブルー・ティアーズに中国の甲龍か……データで見た方が強そうだな」

 

「いきなり何すんのよ!? 模擬戦の申し込みならもっとまともな方法にしなさいよ」

 

鈴の言葉にラウラは鼻で笑う

 

「模擬戦の申し込み? は、お前たち程度の奴と戦ってなんになる?」

 

「あら? ドイツの方は礼儀というものを知らないのでしょうか?」

 

お互いが敵意をむき出しにしている。そんな中、マオは少し不安になる

 

(どうしよう……あのまま鈴が戦うとなるとまともに戦えない気がする……フォルス能力は冷静にならないと使いこなせないから……)

 

「二人がかりで量産機にも勝てない程度の実力者と戦っても準備運動にもならないからな。そもそもあの方の屑な弟を狙っているような奴らには負ける気がしないしな。例え二、三人がまとめてかかってきても……だ」

 

そんなラウラの言葉に鈴とセシリアはブチ切れた

 

「……今なんて言った? ギッタギタにして下さいって聞こえたんだけど」

 

「この場にいない人の侮辱の言葉とは……同じ欧州連合の候補生として恥ずかしい限りですわ。二度とその軽口を言えないようにしてあげますわ」

 

そのまま戦闘が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、一夏。今日も特訓するんだよね?」

 

「ああ、確か今日は確か……」

 

「第三アリーナだ」

 

シャルルと一夏が歩きながら話していると後ろから箒が話しかけてきた

 

二人は少し驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻す

 

「じゃあ行こうか。さっさと使いたいし」

 

そう一夏が言った瞬間、簪と本音が走っていた。何やら慌てている

 

一夏を見つけると、すぐに止まって話しかける

 

「おりむー! 大変だよ!」

 

「……今、第三アリーナで……代表候補生たちが戦っているんだけど……中国代表の子の様子がおかしいの……」

 

(! 一夏、急いで行きなさい。あの子の様子がおかしいということは……)

 

(ええ、僕も同じことを思っています)

 

(間違いない! フォルス能力の力)

 

それぞれのパートナーの会話を聞いた一夏は急いでアリーナに向かった。そこにはすでにISがほとんど破壊され、倒れているセシリアと未だほとんど無傷のラウラ

 

そして、鈴の姿があった。彼女の周りの地面や壁は何かで切り裂かれたかのような跡がある

 

「ああああ……許さない! 許さない!!」

 

「何をしているのかは知らんがそこにいるイギリスの雑魚を攻撃して何の意味がある? そんななまくら刃で戦おうとは……中国の奴も雑魚か」

 

持っている青竜等で切り裂こうとしたが、ラウラのAICによって止められてしまう

 

そのままラウラが反撃するが、そんなものは気にしないという感じで鈴は攻め続ける

 

「ふん、大したタフさだが、ただ馬鹿みたいに突っ込んでも私には勝てないぞ」

 

「黙れ! 黙れ!! 黙れぇ!!!」

 

鈴は衝撃砲を連射したが、冷静さを失っているため全く当たらなかった

 

しかしこの衝撃砲の威力、普段の倍以上はある。もしもこれが当たっていたら熟練した操縦者でもかなり危ないことになっているだろう

 

近くにいるマオも近づこうと考えているのだが、あまりにも攻撃が激しすぎてなかなか近づけない

 

そんな彼の眼に一夏とジュディスの姿が映る

 

(一夏! 鈴のフォルスが暴走したんだ! 急いで止めないともっと大変なことになるんだけど僕一人じゃ難しいから……お願い! 協力して)

 

一夏は頷いてすぐに本音に生徒会長の楯無と彼女の姉の虚を呼んできてもらう

 

そして簪にはセシリアを救出してもらうように頼もうとしたが

 

「その役割、僕にやらせて」

 

シャルルが立候補する。その眼には強い意志を感じたため、一夏は頷き、任せることにした

 

すぐに一夏達はISを展開し、観客席のバリアを切り裂いてアリーナに潜入する。もちろんジュディスも一緒だ

 

(マオ! 少し炎で目くらませなさい。その間に鈴を)

 

(了解! フォルス・フレイム!!)

 

ジュディスの指示で、マオはラウラと鈴の間に炎の壁を作り出した。突然現れた炎の壁にラウラは怯む

 

その隙に一夏はすぐに鈴の下に行く。暴走している刃のフォルスで傷つきながら

 

「鈴!! しっかりしろ!」

 

「え? 一夏……?」

 

一夏がそう叫んだ途端、発動していたフォルスが少し弱まった

 

その隙にマオは鈴を異世界に連れて行った

 

それと同時に炎の壁が消滅する。すでにセシリアの姿がアリーナから消えていた。シャルルの救助が終わったのだろう

 

ラウラが一夏の姿を見つけ、不敵な笑みを浮かべる

 

「ほう、貴様の方から出向いてくるとはな……あの雑魚二人の後だ、いいハンデだ。かかってこい」

 

「てめえ……」

 

一夏は一気に間合いを詰めてラウラに切りかかろうとした。しかしその動きが止まった

 

すぐにラウラが何かしたということに気が付いたが、そのまま攻撃を喰らってしまう

 

だがラウラの攻撃が出る前に簪が攻撃を仕掛けていた

 

「貴様……」

 

「いくら何でも……やりすぎ……あなたの言った事は……」

 

簪は最初から三人のやり取りを見ていたのでそのことを話している

 

「何を言っているのか理解に苦しむな。お前もそこにいる教官の面汚しの仲間か? 確か日本には類は友を呼ぶという言葉があったか……」

 

ラウラの言葉にジュディスとヒューバートは黙って彼女を睨みつけながら

 

(一夏、やりなさい)

 

(格の違いを教えてあげましょう。簪)

 

お互いのパートナーの言葉に頷いて一夏と簪が攻め始めた

 

ラウラの相手の動きを止める正体不明の技があるが、一夏と簪にとってはたいした問題ではないように思っている

 

簪が彼女に攻撃した瞬間、すぐに一夏は動けるようになったことに気が付いた

 

つまり、あの技は妨害が入ると失敗するということだ

 

「は! 貴様らのような平和ボケした奴らが軍人である私と戦うとは面白い、潰してやる。軍人と庶民の違いを見せてやる」

 

ラウラのワイヤーブレードと一夏の剣がぶつかり合う

 

その隙に簪が後ろから薙刀で攻めようとするが、ラウラにすぐにかわされてしまう

 

しかし簪は笑っていた。わざとかわさせたのだ

 

その証拠にすぐに一夏はラウラを切り裂いていた。零落白夜を使ってはいないのでエネルギー自体はそんなに減らない

 

「貴様……偶然とはいえ私に攻撃を当てるとは……少しは本気を出してやろう」

 

そのままラウラは先ほどと同じように一夏の動きを止めようとする。

 

だがかわされてしまい、動きは止まらなかった。むしろ先ほどよりも動きの切れが良くなっている

 

この試合を見ているギャラリーは驚いていた。一夏にあんな実力があるなんて

 

しかし箒はそうは思わなかった

 

(……あいつは一体どこまで行ってしまうんだ? 何故か、手の届かない所にいる気がする……)

 

しかしそんなネガティブな考えを打ち消すかのように首を振る

 

(ええい、私だってすぐに追いついてみせる)

 

そんな決意をしている箒の少し離れたところで三人の人物が試合を見ている

 

「オーバーリミッツね。一夏君、なかなか使いこなしているじゃない」

 

「でもいいのですか? 早急に処理をしなくて」

 

「そうだよ〜かんちゃんたちが負けるとは思ってないけど」

 

楯無に虚、本音の三人だ

 

「あら、あんなこと言った子にお仕置きを与えるのは悪い事じゃないと思うわ。それに……私が行かなくても」

 

試合は中断される。ラウラが一夏に切りかかろうとした時、千冬が生身でISの武器を使って仲裁した

 

そして千冬の宣言でこれから私闘は禁止ということに。千冬が去ったと同時にマオと鈴がこっちの世界に戻ってきた。だいぶ重症らしく、簪と一夏、シャルルは急いで医療室に運び始めた

 

その様子を見ていた楯無は少し不機嫌な様子。持っていた扇子には「残念」と書かれている

 

「こうなるからね。それにしても織斑先生は空気が読めないわね」

 

(あのまま戦っていては一夏さんと簪さんが勝っていましたからね。楯無さんとしてはそれが見たかったのでしょうけど)

 

「……お嬢様、そういうことはあまり考えてはいけませんよ」

 

(そうですよ、楯無さん)

 

彼女の従者とそのパートナーに少し怒られた

 

しかし彼女たちは内心、一夏にはラウラに勝ってほしいと思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら鈴さん怪我はISの調整不足が原因みたいですね。治療はだいぶ時間がかかると思います。今回のトーナメントは棄権してください。セシリアさんもISの損傷レベルがひどいので見送ってください」

 

「「……はい」」

 

夕方、医療室で真耶が鈴とセシリアに今の状況を話す

 

二人ともすんなり受け入れた。さすがにこの状態ではトーナメントには出られないからだろう

 

真耶はもちろん、鈴の怪我の本当の原因はフォルスの暴走ということを知っている。しかしそれを言うわけにもいかないのでISの調整ミスということにしている

 

「織斑君、デュノア君、更識さん、あなたたちがいなければもっとひどいことになっていたかもしれません。ありがとうございます」

 

「いえ、僕はそんな……織斑君と更識さんがボーデヴィッヒさんと戦ってくれたおかげです」

 

「そんなことないって。シャルルがいなかったら二人の救助が遅れたし……でも、どうしてセシリアと鈴はラウラと戦ったんだ?」

 

「……あの子が、二人に酷く挑発したから……」

 

一夏の質問に答えづらそうにしていたセシリアの代わりに簪が答えた

 

鈴はずっとふさぎ込んでいる。理由は簡単だ。フォルスを暴走させ、セシリアを傷つけたからだ

 

初めて暴走させたため、余計にショックが大きいらしい

 

「……鈴さん、確かにあなたに攻撃されましたけど気にしていませんわ。それより早くお互いに元気になりましょう」

 

「……そうね、でもごめん、しばらく一人で考えたい」

 

そう言いながら彼女はベッドに横になる

 

一夏達は邪魔をしては悪いと思い、部屋から出る

 

その矢先、目の前から大量の女の子たちがやってきた。先頭の女子が一枚の紙を持っている

 

どうやら今回のトーナメントをタッグ形式にするため、自分と組んでほしいという申し出のようだ

 

しかし一夏はあることを考えていた。シャルルのことだ

 

他の子と組んだ際、何かの拍子にばれてしまうのではないかと思う

 

「悪い、俺はシャルルと組むことにする」

 

同じ男子ならいいと思ったのか、みんな納得してくれた

 

「僕でいいの? 更識さんとは?」

 

「……私は、組もうと思っている人がいるから誘われても多分断る」

 

「そっか、ありがとうね。一夏」

 

(良かった。一夏は僕のことを考えてくれたんだよね。それは嬉しい)

 

笑顔でニコニコしていた。しかし同時にもう一つのことも考えていた

 

(でもこの二人、いや、鳳さんもだけど何か異常な気がする。鈴さんだって負傷した原因が自分のISのミスって言っていたけど……納得がいかない)

 

考えていたが何も思いつかなかったようでそのまま三人で話すことにした。寮に帰ろうとした時、本音に呼ばれた。のんびりした感じで

 

「おりむ〜、かんちゃん。ちょっといい?」

 

おでこを見せながら話しかけていた。つまり世界樹大戦のメンバーだけで集まれと言う意味

 

シャルルには先に部屋に戻ってもらい、一夏と簪は生徒会室に向かった

 

「いらっしゃい、今日はお疲れ様。少しお茶にしましょう」

 

そこで待っていたのは楯無の労いだった

 

「今回の件はこちらで対処しておきますので、織斑君たちはトーナメントの準備をしてください。噂ですけど、デュノアさんと組んだと聞きました。ならば彼に動きを合わせてみるべきだと思います。簪お嬢様も一緒です」

 

虚さんはお茶の準備をしながら話す

 

「ありがとうございます」

 

「わかりました」

 

「じゃあ、堅苦しい話はここまで。今日はいいお菓子が入ったから食べましょう」

 

そのまま生徒会室で小さなお茶会が開かれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキット

 

暴走

 

「……」

 

その日の夜、鈴はうつむきながら黙っている

 

そんな彼女が心配なのかマオが異世界からこちらに来て様子を見に来た

 

「……何よ? こっちに来てもいいわけ?」

 

「今誰もいないからネ。隣の子も寝てるし大丈夫だと思うんですけど」

 

そのまま鈴は黙ってしまった

 

「……どうだった? フォルスが暴走した感想は?」

 

「……怖かったわ。あいつに一夏のことをボロクソ言われて本当にものすごくむかついたと思ったら……暴走してた。何が何だか分からなくなるうえ、平気で周りを傷つけて……自分が自分じゃないみたいだった」

 

「暴走の恐ろしさがわかった? これからはしばらくフォルスを安定させる特訓だネ。特に鈴は性格的にフォルス能力の扱いが向いていないからとにかく慣れること」

 

マオの言葉に鈴は頷く。前にも似たようなことを聞いた。だが、今回はそれ以上に身に染みた

 

鈴は決意する

 

「もう絶対に暴走させない。この力は……」

 

(一夏と共に戦うために……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍人として

 

生徒会室でお茶会中

 

彼らのパートナーは今日のことを話していた

 

「それにしてもあのラウラという少女は……本当に悲しい子ですね」

 

「そうですね、同じ軍人として悲しいですね」

 

ヒューバートとローエンは悲しそうに話す

 

「どうしてですか?」

 

「本来ね、軍人というのは市民を守らないといけないの。でも今日の彼女はそれをまるっきり無視をしているのよ」

 

メルの質問にジュディスが答えた

 

「あの女は……正直気に食わないな」

 

リオンは吐き捨てるように言った。それには同意している人が多い

 

「ああいう子は一度誰かに倒されないと考えを変えないものです……一夏君か簪さんか、はたまた別の誰かが……倒してくれるのでしょうね」

 

ローエンは期待しているかのようだ

 

そしてそれはここにいるみんなも同じ想いのようだ

 

 

説明
書かせていただきます。
今回は大暴れするキャラが出ます
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コメント
感想ありがとうございます biohaza-dさん> 更識姉妹はメインヒロインではないのか!? というのは置いておいて……誰とは言いませんが出ます あとメインヒロインにパートナーをつける人数は書かないでおきます(しゅーろう)
メインヒロイン(鈴以外)にも、テイルズキャラのパートナーは出ますか?(biohaza-d)
感想ありがとうございます 鬼龍皇さん> 指摘ありがとうございます。 「一夏には」が抜けていました。修正しておきます(しゅーろう)
感想ありがとうございます 神薙さん>フォルスは精神が不安定になると暴走する事があります。 鈴自身、フォルスの使い方が初心者のため暴走しました……という風に自分の中で解釈しています。何だか紛らわしくて申し訳ありません(しゅーろう)
戦闘終了後、虚達が“内心ではラウラに勝ってほしいと思っていた”とありますが一夏の間違いではないでしょうか?(鬼龍皇)
鈴って熱くなればなる程冷静になっていくタイプだと原作の何巻かに書かれていたから怒っていても暴走はしない筈ですが…フォルスの方で自分が良く知らないからかな?(神薙)
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