恋姫無双〜決別と誓い〜 第二十一話
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山越が実質無条件降伏をしてから三ヶ月。

 

山越は飢饉や孫呉に反する豪族による操り人形と化した政府に賠償を支払うのはあまりにも酷と判断し支払いを断念。

 

しかし反旗を翻した豪族達は戦犯として公正にきちんとした手続きのもと裁判で然るべき処罰を受ける方針で、急進派である孫権の叔父の孫静を筆頭とした有力者たちはこれを機に粛清されることとなり、結果として政府の権力が集中されることととなった。

 

なお疲弊した山越は呉と蜀で共同に援助していくことになり、現在は暫定政府のもとで食料、医療等の援助をしている。

 

これには予想通り蜀は戦争に協力したんだから我々の意見を聞けと要求してきたのだ。

 

呉は北方の脅威が排除されていないので強気には出られず、渋々意見を呑むこととなった。

 

・・・というのは建前でどっちにしても蜀だけ利益が無いのは関係上あまりよろしくないという意見が多かったためだ。

 

しかしこれからは山越を復興させる際に蜀、呉どちら側の陣営につかせるのか主導権争いをみせることとなるだろう。

 

攻められても毅然とした対応を見せた呉に戦争開始当時嫌悪感を見せていた山越国内は態度を軟化し呉と山越は少しずつではあるが友好関係が築かれつつある。

 

山越は蜀呉の同盟に加盟することが決まっており、国民間での交流が進むことだろう。

 

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そして私は呉の憲法制定調査会の主任を任されており、今は建業と地方を行ったり来たりと多忙を極めていた。

 

兼務していたものは部下たちに引き継がせ、憲法制定に私は集中している。

 

行政側が犯した弊害を調査するのは四苦八苦だが、国民や儒学者なんかと意見を交わし合えるのは非常に有意義かつやり甲斐に満ちていた。

 

そしてそれからさらに三ヵ月がすぎ終戦から半年。

 

私は建業で憲法案をまとめていた。呉は三国で一番小さいとはいえ広大だ。しっかりとした憲法が制定されるのは幾分時間がかかる。

 

審議で議長である私は進行を促す。

 

「では今審議中であるところの国民に自由かつ広域な権利を与えるべきかどうかだが・・・・」

 

今であった封建制度の解体と身分制度の廃止。

 

職業選択の自由、結婚の自由、自由な経済活動の保障、言論の自由。

 

といったように自由な選択肢を国民が持つこととなる。

 

自由といえば無秩序で昏倒とした賊のような世界を連想するがそれは違う。

 

自由が保証されるというのはすなわち、自分でやった行いを自分で責任を取らなければならないのだ。

 

自由だからといって人を殺していいわけではない。

 

だが責任を持たせるにはどうするべきか?

 

そこで議論が起こっていた。

 

一つはこれまでどおり、政府中心の官僚の下で憲法を遵守するなかで法律を作成を任せるのか?という考え。

 

そして二つ目は自由があるなら国民に責任を持たせるやり方で政治に参加させる機会を持たせるというもの、つまり国民が立法権を会得するということになる。

 

前者は政府が行うため国民事情を無視した政策を採りやすく、後者は今の国民による統治は前代未聞であり、国民の教育水準によっては目先の利益や既得権を得るなど行政が腐敗する可能性を指摘し任せられるのかどうかという点が疑問として挙がった。

 

私は後者を推した。国民には自分の国を背負っているという自覚と責任が生まれて欲しかったからだ。

 

それでいて呉の国民は独立意識が強く、情にもろい。

 

必ず自分たちで自立してまとめ上げることができると信じている。

 

だが私だけでどうにかなるものでもなく、一進一退。結論は出なかった。国民に本当の自由を保障すべきなのかがこの作成に当たっての山場と言えるかもしれない。

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議論が白熱する中私は休憩のため密かに部屋を抜け出した。

 

蒸し暑い夏は終を向かえ、涼しげな風が舞い込んでくるのを感じていると、何やら見たことのある人物が挙動不審な動きで歩いている。

 

咄嗟に隠れて柱から様子を伺う。黄蓋だ。

 

(またあの方は・・・・)

 

彼女の行動がまるで手に取るように分かる。全く自分の歳を考えてもらいたいものだ・・・。

 

彼女のあとをつけるとやはり隠していた酒を飲んでいた。

 

「やっぱり、仕事を抜け出しての酒もまた格別よのぉ」

 

とかブツブツいいながら拝借している。

 

「何をしてるのです?」

 

ビクッと背中がはねると絡繰り人形のようにギギギギと顔をこちらに向けてくる。

 

「お、おお冥琳ではないか。どうしたのじゃ?」

 

「どうしたじゃないでしょう・・・。聞こえましたよ?また仕事を抜け出して飲んでいたのですか?」

 

「う、うむ。面目ない・・・」

 

うつむいて申し訳なさそうに小さくなってしまう。流石に仕事中に拝借はマズイと思ってたらしい。

 

マズイと分かっていてやるあたり、彼女も相当だなと私は呆れを通り越して感嘆の領域にまで達していた。

 

「全く・・・。自分の体もいたわっていただかないと困ります。もう若くないでしょうに」

 

「やかましいわい!!まだそんなに歳をとってないわ!!儂だってまだ一口も二口もイケルのじゃからな・・・」

 

私は、はぁ〜と深い溜息をつくと、

 

「分かりました。ですが酒ばかり飲んでいてはお体に障ります。これからほどほどにするようにお願いします」

 

「・・・・・・?」

 

ポカンと私を見つめる祭殿。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、いつもならネチネチと攻めてくるのに今回は随分とあっさりなんじゃなと思っての」

 

「そうでしょうか?私はいつもどおりに接していますが?」

 

いつもネチネチとは聞捨てならないことを言っているが無視して言う。

 

「いや、お主何かあったじゃろ?そういえば周りの奴らもお主のことをカドが取れて丸くなったと言っとったぞ?なんでそうなったか儂に言ってみ?」

 

「変わったもなにも・・・。私は別に・・・・」

 

急に活き活きとした目になり肘で脇腹をウリウリと突いてくる。まったくこの人は人の噂話なんかが好きなタチだからな。

 

「それより私はまだ仕事が残っていますので・・・では?」

 

「お、おい、待たんかい」

 

逃げてきた。

 

彼女といるとつい本音がでてしまう。酒を飲ませてくるのもあるのだが、彼女は意外と聞き上手な面がある。

 

それは軍を統率するうえでは貴重な能力なのだが、私と話すときには厄介だ。

 

言いたくない本音もポロっとでてしまう。それはあまりよろしくない。

 

「変わったか・・・・」

 

私は変わったのだろうか?もしそうなら間違いなくあいつのせいだな。

 

北郷 一刀

 

彼は聞くところによると、昇進して三佐になり部隊を統括しているらしい。

 

最初出会ったあの頃とは大きく違った者となったが、彼はどんどんと新しいことを吸収していってると上層部でも評判が良い。

 

だが上層部に好まれるということは上層部に好かれるような仕事を率先してやっているということだ。

 

それはあまり他の者ならやりたがらない仕事だ。

 

以前顔をちらっと見たが以前のような目の輝きは失われ、ドス黒い焦点のない虚ろな目をしていた彼が心配だった。

 

その姿はかつてくすぶっていてどうしようもなくなってた頃の私に重なる。

 

そう自分の罪悪感で押しつぶされていたあの頃と・・・・。

 

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最初は話の分かる弟みたいな奴と思っていた。

 

どこか抜けていて放っておけない母性本能をくすぐる男。

 

だが思春と北郷が戦っているのをみて彼に対する考えは大きく変わってしまう。

 

自分が教えた戦い方を実施して勝つ彼の姿に今までのような可愛い弟としてではなく初めて女として心を打たれてしまった。

 

その正体が一体なんなのかは直ぐに分かった。

 

なんせ蓮華様を見ているのだ。嫌でも分かる。

 

私は恋に落ちてしまっていた。

 

焦った。

 

私はもっと・・・こう、なんというか急激にそういった感情が生まれるものだとばかり思っていた。

 

情熱的でそれでいて・・・・こう・・・、なんというか燃え上がる炎のような感じで。

 

でも私の場合はそれとは大きく異なったものだったのだ。

 

例えるなら・・・・花に近い。

 

花は水をやっても急には育たない。

 

毎日水をやり日光を浴びることですくすくと、少しずつ育っていくものだ。

 

私の彼に対する感情もそうだった。

 

頼りなくて私の苦労をわかってくれる弟分から、気の許せる親友。

 

そして気がつくと彼を異性として意識していたのだ。

 

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だが私はその育った『花』をまず受け入れず、踏み潰すことから始めた。

 

 

 

なんで私があいつを好きにならなければ・・・。そもそも江東の大都督がこんな有様では笑われものだ。

 

と焦ったし、蓮華様に対してそして何よりも雪蓮にも横恋慕している形になっていたからだ。

 

蓮華様は北郷のことを想っている。それに北郷はまだ雪蓮を想っている。

 

親友の恋愛話を聞かれた身でもある私が彼を好いてしまうなんて、本末転倒もいいとこだ。

 

見守り応援していた主、今は亡き友人を裏切ってしまう。

 

入り込めない。入り込む余地などない。

 

そうわかっているのに・・・・、それなのに抑えきれないこの想い。

 

やめておけと理性では言っているのに言うことが聞かない。

 

彼の顔を目にするだけで、そして噂で聞けば胸が弾んだ。

 

そして蓮華様と北郷とのあいだで大きな確執が生じたことに心の何処かで歓喜している自分がいた事は自分自身大きく失望をせざるを得なかった。

 

こうなったらと彼を忘れようと仕事にまたのめり込んだ。

 

今更ながら思うがヤケだった。

 

内務長官、外交卿、軍事改革主任、そして憲法調査委員会と多くの役職を兼務していった。

 

次から次へと案件を受け入れ、自分の頭から少しでも彼のことを忘れなければと思ったのだ。

 

忘れたかった。何もかも。そして『無かったこと』にしたかった。

 

彼の事も、蓮華様のこと、そして雪蓮とのことも・・・。

 

そしてこんな邪な感情を持つ自分などいなくなってしまえとさえ思っていた。

 

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でも無駄だった。

 

彼は一人で大丈夫だろうか?

 

北郷は私のことを思い出してはくれているだろうか?

 

とどんなに仕事をしても浮かんでは消え、浮かんでは消えそしてそれを消すために仕事に打ち込むという悪循環に陥ってしまっていた。

 

悪循環の行き着いた先は分かりきったことだった。分かってはいたけど止められなかった。

 

誰にも相談できない。でも彼に気持ちを打ち明けることも出来るはずもなく、次第に食欲もなくなり、睡眠を取れなくなったりと体が壊れていくのが自分でも分かった。。

 

それでも私はやめなかった。いや、やめれなかったのだ。

 

誰か私を罰して欲しかった。

 

罪を犯してもなお平然としているこんな私を罰してくれたらそれでよかったのだ。

 

その甲斐あって私の体は壊れた。

 

朝、蜀での会談にいこうと立ったとき視界がグニャグニャと揺れて立っていられなくなり腹部に強烈な激痛を感じ吐血した。

 

それから急に足がなくなったかのようにストンと地面に倒れ立ち上がることもできない。

 

未練はなかった。この苦行からようやく解放されるのだなとむしろ清々しい気分でいた。

 

私はゆっくりと目をつぶり、意識を手放した。

 

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「・・・・・りん!!!・・・・・めい・・・・・・・ん!!」

 

何処からか私を呼ぶ声が聞こえる。この声は忘れるはずがない。

 

少し低くてそれでいて優しさを感じられるその声。北郷だ。

 

その声に導かれるように目を開けると彼の涙と鼻水でグチャグチャになった顔が目の前にあった。

 

驚いた。

 

彼がこんな顔をして泣くのを始めた見た。雪蓮が死んでもこんなに泣かなかったあの男が私に、私のために泣いてくれていた。

 

なぜか嬉しかった。

 

自分だけが彼のこんな顔を知っているのだと思うと嬉しくて仕方がなかった。

 

「ふふ・・・・・・。どうして・・・・、お前が泣いているのだ?」

 

「ばかやろう・・・・。お前が・・・・、冥琳が・・・・。頼む。俺を置いて行かないでくれ・・・・。もう大切な人がいなくなるのは・・・・・」

 

それっきり彼は嗚咽で言葉を発せなかった。

 

そのかわり私をかき抱いてくる。

 

もう離さないと訴えかけるかのような強い力だった。

 

(ああ。どうして貴方は私が弱っているときにいつもそばにいてくれるの?それでは貴方を忘れるなんてできなくなってしまう・・・・)

 

強く抱きしめる彼に私も精一杯の力で応じた。

 

彼の耳元でごめんなさいと呟くと、大きな背中に手を回し抱き返す。

 

(ごめんなさい。でも今だけは・・・・。今だけはこのままで・・・・・)

 

この時間がどうか永久に続けばいいのにと願いながら泣く子供をあやすよう優しく包み込んでいった。

 

それから三日程過ぎた。

 

医者からの診断では疲労と極度の緊張からくる胃の炎症で三週間は絶対に安静するように言われた。

 

なお私の代理は魯粛が務めることになり、彼は蜀について一番に私の所に来てくれた。

 

「バカが。働きすぎだ。こんだけ働いたら体がイカレるのはお前なら分かってるはずだろう・・・!」

 

「すまない。今回は私の落ち度だ」

 

「まぁいいけど。お前は休んどけよ?残りは俺に任せとけ。任せとけ!この魯粛様がやるからには必ず成功させてみせるからな」

 

「ああ。すまない。お前には借りを作ってばかりだな・・・・」

 

「いいって。ただもうこんなことはゴメンだ。二度とこんなことをしないと約束してくれ。友人をただ黙って見ているだけなんて俺にはもう・・・・な」

 

このときの魯粛の顔を私は一生忘れられない。

 

普段は飄々として余裕のある表情を絶対に崩さない彼の顔が泣きそうに歪んでいることを。

 

彼は雪蓮の死に顔を見ていない。

 

口では言わないが責任感が強い彼なら北郷や私以上に自分を責めていることだろう。

 

それなのに・・・・、私は自分のことしか考えられずこのような結果になってしまったことを恥ずべきことと猛省するしかなく友人の前でうなだれるしかなかった。

 

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それからは二人で引継ぎを急いで済ました。

 

魯粛も引継ぎをする前にある程度話を内務官(外交での調整役)と済ませてきたらしく予想より早く済んだ。

 

「じゃあ俺は仕事に戻る。何度でも言うがお前は何も考えずに寝てろよ?」

 

「ああ。分かった」

 

私の返事に彼は完全に納得しているわけではないのが見て取れた。

 

彼のことだから私を監視させてまでもそうした動きを阻止しようとするだろうというの大いに予測できた。

 

一ヶ月の安静で寝具から出られないとなるとすることがなく、自分ひとりここで休み、皆は国のために勤労に勤しんでいる。

 

どうしようもない焦燥感に駆られていると、

 

「ああ。以後は・・・・・が・・・・・だ」

 

部屋の外で何か喋っているようだ。

 

私の警備で門番が二人。

 

声からすると一人でここに来たようだ。

 

「・・・・・・・・」

 

私は寝具に隠してあった白虎九尾を手に取る。

 

ひょっとしたら今話している奴は私の首を狙っているのかもしれない。

 

いくら同盟を結んだといえ私を面白く思っていない奴らがこの国にも当然いる。

 

これを機に私の暗殺も計画していたとしたら・・・。

 

近づいてくる足音からして少数・・・立ち向かえる。

 

自らを奮い立たせ、痛む腹部を無視して敵の死角となる入口の壁際に張り付いた。

 

・・・・・足音が大きくなってくる。数はやはり一人だ。

 

暗殺が騒がれないようにということか。

 

(面白い。この周公瑾の首をたかが一兵卒の人間一人が取れると思うなよ・・・・!)

 

気配が近づき、敵が入口で止まった。もう敵とは目と鼻の先だ。

 

(今だ!!!)

 

死角から白虎九尾を軽く振る。

 

「うおぉ?!」

 

(感触がある。かかった)

 

そのまま今ある強い力で引っ張るが腹部が痛んで力が思うように入らない。

 

が敵の体勢は先程の声から崩れているのは分かる。

 

(先手必勝・・・・)

 

足に隠してある短刀を出すとそのまま壁から出る。

 

「!?」

 

ガキンと金属がぶつかり合う音で私の攻撃が不発だったとわかる。

 

(こいつ・・・・・できるな!!)

 

私の一撃を受け止めるとは・・・・。だが次の斬撃を一手二手先を考え攻撃に移ろうとしたが、

 

「びっくりしたよ。いきなり刺激的な挨拶だな?め・・・・周瑜将軍?」

 

そこには苦笑した彼の姿が。

 

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「な・・・・?北郷か?」

 

「どうしてって顔してるな?魯粛三佐から頼まれてな。周瑜が完璧に治癒するまでは見張れとさ」

 

なんてことだヨリにもよって一番顔見たくても、見たくない相手が来るとは・・・・。

 

それにこの前の出来事‐どさくさであるが彼と抱き合っていたこと‐を思いだし、どうしても彼の顔を直視できない。

 

一体私は何をやっているのだ。赤子じゃあるまいし・・・・。これでは小蓮様とそう変わらないではないか・・・・。

 

内心自分に呆れながらそれを顔に出さないよう全力を注ぐ。

 

「そ、そうか。わかった。迷惑をかけるな」

 

「いいんだ。気にしないでくれ。それより病人がこんな激しい動きをしたらダメだろ?」

 

ほらといって優しく手を握りそしてもう片方の手で肩を支えてくる。

 

「こ、こら・・・。私は・・・・」

 

「いいって」

 

胸が高鳴り体が動かない。彼の思うがままになってしまう。

 

そうして導かれるままに寝具へと。

 

「それよりすごい動きだったな?流石将軍といったところかな・・・?」

 

「ああ。私もそれなりにではあるが武芸を嗜めてはいる。一般兵より弱い上司など以ての外だからな」

 

「まぁ・・・・。そうだな」

 

それで会話が途絶えてしまう。

 

ああ、重い。これほどまでに会話を欲することなんて私が生きてきた中で今まであったことだろうか?

 

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「この前はすまなかった」

 

 

「?」

 

「魯粛にも言ったが今回の件で大勢の関係者に多大な迷惑をかけてしまった。それはお前も例外ではない。感情に任せて行動することは軍師にはあるまじき行為なのにな・・・・」

 

何か話さなければと思っていった台詞がこれだった。北郷は眉をピクっと動かしたが表情は変わらず

 

「そうか」

 

といって持ってきた籠の中から見たこともない物を取り出した。

 

「これは南蛮の果実さ。南蛮で交易が始まってからは南蛮のものが売り物にも出されるようになってさ。まってな。今皮を剥くからさ」

 

私の謝罪を聞いていないかのようにそう言うと斬撃を受け止めた剣で器用に剥き始める。

 

「武器で剥くとは・・・・・」

 

「いいだろ?現地調達がメイン・・・・じゃなかった。主な俺たちはこうやってるんだぜ?・・・・ほらできた。食べてみ?」

 

そう言って渡された果実を恐る恐る口にする。

 

甘味と瑞々しさが口を満たす。うん美味だ。

 

「美味い・・・・」

 

「よかった。周瑜は舌が肥えてるだろ?俺が美味しいと感じても周瑜がそうは思わないかなって思ってたんだ」

 

それから半分に切ったもう片方をまた器用に剥き始める彼に、

 

「・・・・何も言わないのか?あのことを・・・」

 

「・・・・もう済んだことだろう?無事で済んだならもういいじゃないか」

 

「しかし・・・・、お前は怒っているだろう?その・・・・、私がやったことに対して・・・・」」

 

彼は私の台詞を遮るように静かに果実と剣を置き、

 

「ああ。怒ってる。だがそれは周瑜に対してではなく、お前を支えるべくして支えてやれなかった俺自身に対してだ・・・!」

 

 

「っ!!!」

 

ドキッとした。彼は私の核心をいきなりついた彼に。

 

「そんな・・・・、私は罪を犯したのよ。私がいたら皆が傷つく。貴方も、蓮華様もそして雪蓮にもだ。お前がそんな罪の意識にとらわれるなんて・・・」

 

「なんの罪を犯したのかは俺は追求はしないよ。

 

でもその罪をお前と共に背負っていく度量も器もなかったことに・・・・な。

 

・・・・なぁ俺ってそんなに頼りないかな・・・・?

 

未だに俺は周瑜にとっては使えない情けない種馬男なのかなぁ・・・・」

 

「・・・・・・っ!!」

 

驚きのあまり言葉を発することもできない私をみて彼はそれを肯定と受け取ってしまったらしい。

 

(そんなことはない。私にとって貴方は・・・・・)

 

それでも私はどうしても彼に言葉を掛けてやることができなかった。

 

どうすれば彼に伝えられるのかと悩んではいたが、いつの間にかうつむく彼をあの時のようにゆっくりと抱き寄せていた。

 

彼の髪がちょうど鼻のあたりにあたり鼻腔をくすぐる。

 

抱き寄せられた彼はビクッと体が反応したが拒絶することなく受け入れてくれた。

 

「そんなことはない・・・・。貴方は私が苦境に立たされているときや諦めかけていたとき勇気を与えてくれた・・・・。だから・・・・」

 

彼は私に戦う勇気を与えてくれた。

 

雪蓮が死んでから彼以上に抜け殻のようになっていた私に強い覚悟と責任を果たすという生き様を教えてくれた。

 

どんなに辛い時でもお前が凍てついてくる私の心をいつも温めてくれた。

 

それにこんな私を大切な人だと、共に背負っていきたいと言ってくれた。

 

こんな嬉しいことは私にはない。

 

(もうそれだけで十分よ・・・・。だから自分を卑下するようなことは・・・・)

 

体を離すと彼の両手を両手で優しく包む。

 

「ごめんなさい。私も貴方を頼りたかった・・・・。しかし私が甘えたら、貴方に迷惑がかかってしまうと考えたらどうしても打ち明けられなかった・・・・」

 

互いが互いを思いやるあまり敬遠してしまう。

 

そんな些細なすれ違いから生じたこの事件だったとは。

 

「今は言えない・・・・、だがいずれ貴方に言うと約束する」

 

「・・・・分かった」

 

そう今は言えない。だが近いうちに彼にどんな形であれ気持ちを伝えておきたい。

 

それがどのような結果となっても私はもう迷わない。

 

そのとき私はそう思ったのだった。

 

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皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。

 

どうもコックです。

 

まず最初に、

 

今回は非常に難しかったです。

 

説得のシーンで随分と悩みました。あの頑固な冥琳さんをどうすれば自然なかたちで説得できるのか?

 

それがこの話テーマでした。

 

不自然に思った方もおられると思いますがそれは私の完全な力不足言わざるを得ません。

 

視点がひとつのところにしか向いていない人というのはその考え方を180度変えるのは至難の技です。

 

私自身そういった方とは人生の中で何度もお会いになったりはしていますがその考え方を変えるというのはできていません。その経験が私にはないため苦戦を強いられたのかなぁと感じましたね。

 

なお冥琳さんはこの話だけでなく3,4話あたりでもくすぶっていますね。

 

脆くて、弱々しい。こんなの周瑜じゃないという方もいらっしゃると思います。

 

ですが人間である以上何かに悩み、苦しみ足掻く。という一連のプロセスを必ず経験されると思います。

 

大都督でも周瑜は一人の人間であり女性でもあります。

 

彼女が迷ったり、道を誤ってしまうことも当然あると筆者は考えております。

 

それはほかのキャラも例外ではありません。思春やオリキャラの徐盛なんかもつまらないことかもしれませんが悩み、苦しんでいますよね?

 

恋姫キャラが無双する話でもいいんですが、挫折と苦労を知らない超人はあまりにも人間味に欠ける話になるんじゃないかなと思います。

 

だからといってほかの方々の作品を否定するつもりはございません。

 

一つ一つがまさに「外史」であり、皆さんがどれだけこのゲームを評価なさっていたのか見るだけで伝わってきます。

 

ですが私が作る作品はそういう作風にはしません。

むしろ失敗してその経験を自分で痛感し、そして次に生かす。

 

そしてそれが成功に結びつくから次も頑張ろうって思える。

 

それが人生ではないでしょうか・・・・?と思うのですがどうでしょうか?

 

さて重苦しい話はおいといて、皆様方はこのssが一体誰がメインヒロインなのかはもうお分かりになったのではないでしょうか?

 

そうです。周公瑾こと冥琳さんですね。

彼女がメインを張るのは極めて珍しいのではないでしょうか?

 

私自身もそう言った作品をあまり目にした記憶はありませんし・・・・。

 

でもでも冥琳はいいキャラしてると思いません?

 

面倒見が良くて、なおかつ容姿端麗、頭脳明晰、普段はクールですがたまに熱いハートを時折見せる。

 

そしてメガネキャラ。

 

ストライクゾーンでしたね。

 

萌将伝では愛紗、恋のイベントが少ないとネットが炎上したことがありましたが、私もこの作品には憤りを感じてしまいました。

 

みんなが言うように愛紗と恋云々じゃありません。

 

雪蓮と冥琳のイベントが少なかったというのもから筆者の怒りは来ていましたね。

 

雪蓮と冥琳の存在なしに恋姫の呉は語れないと思っていただけあってショックでしたね〜。

 

『辛いです・・・・・・。冥琳さんが好きだから・・・・・』

 

と某タテジマ球団の三塁手みたいな状態だったのはいい思い出でしたね。

 

ついでに筆者はネットで騒がれていた愛紗と恋はどうでもいい感じでした(オイッ)

 

・・・話が大分飛んでしまいましたが、最後に。

 

コメント毎回残してくださる方々へ感謝の気持ちでいっぱいです。

 

『待ってました』とか『面白いです』

 

という感想が来るたびに筆者は書いてきてよかったなぁと救われています。

 

もちろん誤字指摘や、ここおかしいんじゃね?という矛盾指摘もすべて読まさせていただいております。

 

貴重な意見をありがとうございます。

 

そういった全ての方々が満足していただける作品をできる限り作っていきたいと思いますので、これからも一刀のお話にもう少しお付き合いしていただけたらなと思います。

 

では再見!!

説明
お待たせしました。

第一話と二話を加筆修正致しています。

興味があれば覗いてやってくださいm(_ _)m

誤字指摘、感想どしどし待っています。

あとがきを若干加筆しました。

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コメント
コメントありがとうございます。自分の置かれている状況を誰にも相談できないというのはかなり辛いというのもあった思いますね。ですからこの話で一種の開き直りを見せた冥琳さんに期待していただけたらなと思います(^_^)(コック)
とてもいいですね…これを見て思ったとのは、恋は侮れない、と言う事ですね。恋で国が滅んだ例もありますしね…無理に押さえつけようとしてもいい事はないから、上手く折り合いをつけないと、ですね。(たこきむち@ちぇりおの伝道師)
黄金拍車さんいつも丁寧な誤字指摘ありがとうございました。今回はリア充成分がたっぷり含まれていますからね。シットの炎が湧き上がるのは無理ないかと・・・(´;ω;`)(コック)
eitoguさんコメントありがとうございます。冥琳√をなんとしても完結させていきたいと思っているのでご支援賜りますことをよろしくお願いします。(コック)
呉は北方の驚異が排除されていないので⇒脅威 「すまない。今回は私の落ち目だ」⇒落ち度  これを聞いてて嫉妬の炎を燃やす方がいたらコワイ^^;(黄金拍車)
冥琳√イイネ (*´∀`)b゚+.゚グッジョブ!!(eitogu)
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真・恋姫無双  北郷一刀 冥琳 

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