戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝 第7話 狂乱の式神使い |
(掛川宿→山城国の三条大橋、移動中)
トリン:トリーーーーン!
バラバラバラバラ
レン達一行は、早朝出発していた。いつもの一行はトリンで移動し、その後を、ネルハクてとの3人が乗ったヘリが追いかける状態で移動していた。今回のトリンはヘリの安定飛行速度に合わせた速度で走っていた。ヘリとトリン一行の連絡を取り合うため、ヘリの水晶体とミクの水晶玉の通信は常にONの状態になっていた。
ミク:ネルさん達、敵影か何か、映りましたか?
ネル:映ってない・・・と言いたいところだけど、残念ながら敵影が1つあるのよね。しかもこっちにかなりの速度で近づいている
学歩:そう簡単に、伏見城には行かせてくれない・・・か。で、種別かなにかわかるか?
ネル:まぁ予想通り、“金属反応”、つまり、“役小角”と同じようにロボット、というわけです。それに今度は自分で飛びながら接近してます
升太:うーむ、今回は飛んでいる敵か・・・。ヘリ戦と同じように、リンレンにお任せということかな
ミキ:え、でも、今回はヘリは仲間だから、戦術の幅はあるんじゃない?
ネル:そうだな。向こうを裏切ったわけだから、たぶん“めぐみ”の部下だろう“こいつ”からは問答無用で攻撃があるだろうね
学歩:遭遇地点によるが、各自臨戦態勢を整えていてくれ。できることなら振り切りたいが、そうもいかんだろう
全員:了解!
(数分後)
バサバサバサバサ
ネル:みんな、もうわかっていると思うけど、後ろの大量の“人型の切り紙“と”中央の陰陽師“が、今回の敵です。識別はわからないけど、本体からはやはり金属反応があるから、例のロボットで間違いないよ
学歩:相手も速かったか。仕方ない、各自トリンを停止して、交戦に入る。移動しながらの戦闘はさすがに分が悪い
キキキーーー
全員のトリンが停止し、ヘリはトリンの横でホバリングして、戦闘姿勢をとった。当然だが相手のロボットと切り紙も相対した位置で止まり、本体がなにやら話しかけてきた。
本体:ひぃーーーーひゃぁーーーーー。止まってくれて、サンキューだぜ! ベイベー! 俺の名は“賀茂保憲(かものやすのり)”様だぜ、ハニィー!!!
レン:な、なんだ、アイツ
リン:言葉に英語が出てくるから、とりあえず本当に未来から来たロボットであることはわかったわ
学歩:とりあえずわからん言葉の事はいいとして、賀茂保憲! その紙切れの大群がお前の部下って事なんだな!!
賀茂保憲:イェース! このハニィ達が俺の友達さ! ちゃんと“式神”って名前もあるんだぜ、ベイベ! そして俺は、陰陽師であると同時に、式神師でもあるんだゼ! ヨロシクゥ!!
ミキ:なんか今回は、特に変なのが来たわね
レン:役小角が、改めて立派な敵だったと実感したよ
賀茂保憲:ひゃっほー! めぐみ様の第2プラン成功のため、お前らはここでジ・エンドになってもらうぜ、アーユーレディ?
レン:とりあえず飛んでいるから、引き吊り落とすまでヘリとリンに任せるよ
ネル:ちゃちゃっと片づけるよ。霊力バルカン、セット
リン:紙なら火炎よね。ネル! 私が周りを片づけるから、本体をバルカンでお願いね
ネル:オーケー!
賀茂保憲:ひーや! いくぜいくぜ、いっちゃうぜ! 式神ぃ! まずはあのヘリから片づけるぜ! いけぇ!
賀茂保憲は自分を守れる数の式神だけ残し、残りの大量の式神を、素早くヘリの周りに飛ばせ、周りを囲ませた。
賀茂保憲:さぁリンちゃんヨー? 仲間に火炎が撃てるかぁ?。ちなみに俺は火炎なんてへっちゃらってもんだぜ! ベイビ!
リン:・・・・ヘリの皆さん、火炎行くけど、大丈夫だよね、装甲
ネル:大丈夫ってもんだよ。来な!
リン:オーケー、火炎術! 轟来炎砲!(ごうらいえんほう)
リンはヘリの方を向いてお祓い棒を構え呪文を唱えると、棒の先から巨大な火炎が噴き出し、ヘリ周辺を火炎が包んだ!。当然火炎は周りの式神を全て焼き払い、ヘリはピンピンしていた。
賀茂保憲:あ、ありゃ? ヘリ、火炎大丈夫なの?
ネル:くたばれ! アホ!
ガガガガガガガガガ!!!!!!
ヘリの武器砲身から霊力で作ったバルカン砲が、賀茂保憲本体に直撃していった。
賀茂保憲:ムゴムゴムゴムゴ!!!
ネル:これで、お前がジ・エンドだ!
しかし、事はそう簡単ではなかった。
賀茂保憲:ムゴ・・・ヒュゥ〜、いやー喰らった喰らった。んじゃま、封印させてもらおうかね
ネル:なに!
賀茂保憲:封印シークエンス! 霊力バルカン、火炎属性攻撃
レン達の足下の地面に赤色の星形結界が現れ、一瞬輝いた後、再び消えてしまった。
リン:い、いったいなにが起こったのよ
賀茂保憲:言葉通り、受けた攻撃を封印したわけだ。対空武器のバルカン、式神の弱点“火炎”属性攻撃、両方な
カチカチカチ
ネルは操縦桿の引き金を引いてみたが、バルカンは発射されなかった。
ブンブンブン
リンもお祓い棒を振ってみたが、火炎自体が出てこなくなってしまった。
ネル、リン:や、やられた・・・
賀茂保憲:これまでのお前らの戦闘データから、ふざけたフリをしていれば、俺の見たままの弱点を攻撃してくると考えた。封印できる俺からしてみれば、それこそ最善策。見事にワナにはまってくれて、改めて礼を言おう
リン:クッ・・・
ネル:完璧なアホのフリをして誘い、弱点攻撃を封印してしまうなんて・・・
賀茂保憲:では、安心してこちらから仕掛けさせてもらう。召還、式神!
賀茂保憲の周りに、再び人型の切り紙が大量に現れ、中央の司令塔である賀茂保憲は、まずヘリを指さした。
賀茂保憲:まずは“空域”を封じさせてもらう。行け
バサバサバサバサ
賀茂保憲の声に呼応して、大量の式神がヘリへ向かっていった。
ネル:やたらに攻撃できない・・・。仕方ない。高度を低くとって安全を確保する
大量の式神が次々に武装部分、ヘリの装甲、フロントとサイドガラスに張り付き、ヘリの制御を無効にしていった。
ギュンギュンギュン・・・
ネル:やはりこうなったか。接地アームで着陸し、翼の回転を止める。万事休すだ
ギュンギュン・・・・ピタ
ネル:みんな済まない。こっちは戦闘不能だ。脱出もできない。後を任せる・・・
ハク:みんなごめん!
てと:(T▽T)
学歩:くぅぅ・・・最大の戦力を最初に封じられてしまった・・・。空中攻撃できるのはリンと忍者軍団だと思うが、そもそもヤツへはやたらに攻撃できない・・・
賀茂保憲:召還、式神! 次は司令塔、“学歩”だ
バサバサバサバサ
学歩:やたらに斬り捨てたら、斬撃を封じられる・・・
次々に式神が学歩の体を覆っていってしまい、まるでミイラ男のようになってしまった。
学歩:ぐぅぅ、みんな、なんとか息はできる。すまぬ、私もだめだ・・・
バタン
式神に覆い尽くされた学歩も、その場に倒れ込んでしまった。
升太:学歩!!!! 賀茂保憲ぃ! 卑怯な手を使いやがって!!
升太は我慢ならずに、テトの死神の鎌を借りて、思いっきり式神の集団と賀茂保憲の方へぶん投げた!
ミキ:だめ! 斬撃が封じられる!
ザクッ!
投げつけられた死神の鎌は見事に賀茂保憲に刺さっていた。
賀茂保憲:はははっ、これで目の上のたんこぶが取れるってもんだ。封印シークエンス。斬撃攻撃!
先ほどと同じように、赤く光る星形結界が現れ、輝いて消えた。
賀茂保憲:これで、海斗、メイコ、ミキ、テト、レンの攻撃を封じたな。では、次は海斗、メイコ、ミキ、テト、それとうるさい升太を同時拘束させてもらう! 式神、行け!
先ほどより大量の式神が、一気に5人の体に張り付き、動きを徐々に封じていった。
海斗:済まない・・・息はできるから、ここで待機させてもらう・・・
メイコ:悔しいけど、こっちもだめ・・・
ミキ:アホ毛で斬れなくなった・・・無念・・・
テト:(((( ;゚д゚)))
升太:すまん、みんな!
ついにレン一行で戦えるのは、レンとリンだけになってしまった。呆然と立ちつくす二人。
リン:こいつ・・・強い・・・
レン:役小角とは全く違う意味で、強い・・・
賀茂保憲:おいおい、あんな旧式と比較されては困るな。“めぐみ”様の“第2プラン”は、役小角で失敗した部分を補ってあまりある策だ。そしてその策は成功した。この場で戦えるのは、私、式神、そしてお前ら二人だけ。この現実は受け止めてほしいものだな
レン:役小角の事を・・・バカにするな!
レンはカチンと来たのだろう。ビームセーバーを構えていた。
リン:レンだめ! 相手の挑発に乗っちゃ!
賀茂保憲:どうせ“斬れない刀”だ。いつでも来ていいぜ。役小角に鍛えてもらったアマチュアが! それにしても役小角め。最後に寝返って情報をばらまいて自爆しおって。信念と人情に心を動かされる戦闘ロボットは失格だ。もっとドライに仕事をしてほしかったものだ
レン:キ・・・キサマ・・・
リン:レン! だめ! ここで覚醒しちゃだめ! 覚醒必殺技まで封印されちゃ、もう勝ち目がない!
リンのアドバイスでレンは通常モードに戻ったが、策がない状態には変わらなかった。
リンは相手の様子を伺いながら、何かに気づいたのか、レンにこう切り出した。
リン:・・・・・レン、昨日約束したよね、お互いに生きて元の世界に戻るって。そのためにレンも助けてくれるけど、私もレンを助けるって
レン:そ、そうだけど・・・策がない
リン:私、これからヤツに仕掛けるわ。策が成功したら、たぶん“レンだけ”攻撃できると思う。だからレンも私の策が終わるまで、手を出さないでね
レン:わ、わかった。でも絶対死ぬなよ!
リン:うん。では、行くわ! 空間術、人体浮遊!
リンはお祓い棒を真上にかざして呪文を唱えると、リンの体がゆっくりと賀茂保憲の方へ向かって浮遊し始めたのだった。
賀茂保憲:? なにをやりたいのか、全く持って不明だが、大量の霊力を消費してわざわざ空を浮遊してまで、私の手に掛かって死にたいか。なら、そうしてやる
レン:リン! 本当にそれで大丈夫なのか!?
リンは賀茂保憲の目の前で浮遊し、お祓い棒を左手で持ち、右手拳を作って殴る姿勢をとった。
賀茂保憲:ふん! 蚊が止まる程度の攻撃で、しかも打撃攻撃まで封じてほしいのか? まぁその前に式神で封じるがな
リンの手の周りに式神がまとわりついてきた。
リン:ま、まだ殴れる状態・・・よ! とりあえず一発殴らせて!!
ガン!
リンは渾身の力を込めて式神が巻かれた右手を使って、ストレートパンチを賀茂保憲の顔面にかましてやったのだった!
賀茂保憲:くぅ〜、小娘にしては“いいパンチ”してるじゃねーか。だが仕事はきっちりさせてもらうぜ
リンレンのいる場所の地面に、再び赤い結界が生まれ、輝き始めた。
賀茂保憲:封印シークエンス。打撃技、式神術、浮遊術、飛行術・・・・・・・・なに!!!!!!!!
最後に引っかかったのは“賀茂保憲”の方だった。彼のCOMP回路が彼の意志を介入できない状態で、彼や式神に接触した相手の攻撃を分析して、そのすべてを“自他共に”封じてしまうのが、彼の能力だ。今回、殴ったパンチの構成部品は、“打撃する腕”、“式神”、そして、同時に使っていた技は“浮遊、飛行術”。その全てが、賀茂保憲の武装でもあったのだ。
リン:ふふ。貴方の武器、全部封じてやったわよ
全ての式神が消滅し、空中に浮遊していたリンと賀茂保憲が浮遊する術をなくして、落下していった。
レン:リン!!!
ボサ! ドン!
レンは咄嗟にリンの落下地点まで移動し、落ちてきたリンを抱きかかえた。賀茂保憲は地面に顔から落ちてしまった。
レン:リン! 大丈夫か!
リン:私もレンを守れたわね・・・でも、ちょっとチカラが抜けちゃったみたい
レン:トリンの所に隠れていていいよ。後は俺が引き受ける。地面にいるのなら、いくらでも攻撃できるから
リン:頑張ってね
浮遊術で増幅した霊力のほとんどを使い果たしてしまったリンは、よろよろしながら、全員のトリンを停めてある場所まで行って、トリンに寄りかかって、ぐったりしてしまった。
ところで式神術を封じたので、ひっついていた式神が全部なくなった関係で、式神に封じられていた仲間が全員、復活してきた。
学歩:ぶは! なんとか助かった。リン、礼を言うぞ!
海斗:げほげほ!・・ふぅ〜助かった。かたじけない!
メイコ:はぁはぁ。た、助かったみたいね。ありがとう!
升太:ごほ! はぁはぁ、なんとか無事だ。すまぬ
ミキ:ふぅ〜、ああ、気持ち悪かった・・・。ありがとうね!
テト:ヽ(´∀`*)ノ
ネル:よ、よかった。ヘリも無事だよ!
ハク:助かりました。有り難うございます!
てと:o(>Д<。*)ノ
ところで直撃落下してしまった賀茂保憲は、泥だらけの顔をようやっと上げることができた。しかし、アホのキャラでも、策士のキャラでもない、完璧にキレたキャラになっていたのだった。
賀茂保憲:き・・・・きさま・・・ら・・・・・許さんぞ!!!!、@pqdcb##$$%%&&!!!
レン:皆さん、僕たちが封印された攻撃は、火炎、斬撃、打撃、浮遊と飛行、霊力弾です。なら、本体に効果がある“刀類でできる残りの技”、わかりますよね
学歩:ああ、剣道やっていなくてもわかりすぎるほどわかる。“その攻撃”ができない者は、攻撃を控えてくれ。できる仲間で同時攻撃をかける
海斗:メイコ! “クナイ”の準備、いいか?
メイコ:大丈夫よ。これまでの恨み、はらさせてもらうわ
升太:俺とヘリは休憩だな
ネル:すみません。頼みます
ミキ:私のアホ毛とテトのはちょっと変形しないとね
テト:(`・ω・´)
賀茂保憲は落下したことによる損傷が激しく、特に脚部による歩行能力を著しく欠いていた。その場で怒り狂う賀茂保憲。
レン:最後だ! 賀茂保憲! 残された刀攻撃は!
チャキ!
全員が刃先を前に突きだす構えをとった。
レン、学歩、海斗、メイコ、ミキ:“貫通技”だ!!!!!!
テト、てと:━━━━(゚∀゚)━━━━
全員が賀茂保憲に突っ込んでいって、体の全周囲から同時に、全員が刀身を突き刺した。
グサグサグサグサグサグサグサ!!!
賀茂保憲:ぐぉぉぉ・・・・・・ほんた・・・・い・・・・そんしょ・・・・うり・・つ・・・ま・・くす・・・きどう・・・・ていし・・・・
シューーーーーーーーン、プシューーーー
賀茂保憲は、役小角の最後と同じように、元のベースの小さいロボットに戻り、焼けこげて、壊れて、その場に転がった。
カラン
レンの足下に、「Type:LEON」と彫られたドッグタグが転がって来たので、レンが拾い上げ、小袋にしまった。
学歩:賀茂保憲、お前は“攻撃を封じるため、全ての攻撃に対する耐性がなかった”。だから、レン以外の武器でも通じたのだ
レン:だから、“回復、封印”できないように、封印されてない攻撃を、一斉に浴びせたんだよ
リンがレン達の所に歩いてきた。
リン:勝てたんですね
レン:ああ。全てはリンのおかげだよ。あの思い切った策が成功してなかったら、たぶん、全員やられていたと思う。改めて有り難う
リン:私もレンを助けられたから。凄く自信がついたよ。本当に良かった・・・
レン:リン・・・
学歩:あーえーっと、強敵だったが、なんとか倒せた。めぐみとやらの第2作戦も鎮めた故、すぐにはこちらに新手はこないだろう。それに、こちらも伏見城攻略のための陣を設けないといかん。すぐに出発したいが、リン、大丈夫か?
リン:はい。トリンでの移動くらいなら、問題ないです
学歩:よし。では三条大橋の宿へ出発する!
こうして、一行はトリンに跨り、ヘリを再起動し、三条大橋の宿へ急いで向かうことにした。
(伏見城・天守閣)
水晶玉(めぐみの声):秀吉、第2プランを奴らにうち破られてしまった
秀吉:で、では、奴らはここ“伏見城”に向かっているのでしょうか?
水晶玉:そういうことになる。そうそう第3プランをすぐに始動させることはできん。次の交戦は、伏見城門番戦となるが、それすらうち破られた場合、次はおまえとの闘いということになる
秀吉:めぐみ様! そんな殺生な!
水晶玉:安心しろ。あの門番3人は、そうそう突破できるものではない。だが、保険はかけておくことにしよう。戦闘の際、伏見城の兵器庫にある“戦車”を使え! 操縦はその戦車が自立してやってくれる
秀吉:は!
水晶玉:とにかくお前の所を突破されると言うことは、当然そこにある“浮遊装置”を破壊される事にもなり、自動的に最後の砦“安土城”まで攻め入られる事になる。秀吉、お前がやるべき事、わかっているな?
秀吉:は! 何が何でも、門を突破させません!
水晶玉:全戦力を使ってでも、門を死守せよ! ではな
ブツン
こうして水晶玉での交信が終わった。
秀吉:・・・ついにココまで来てしまったか・・・。前に来た連中とヘリは城の対地、対空兵器と戦車に任せればいいが、あのリンとレンとかいう来訪者・・・、第2プランまでの直接の破壊者、そして三種の神器の継承者で、門番を斬る事ができる者・・・。どうにか策を講じないと、門の突破は歴然か・・・
秀吉は、策を講じるのはとりあえず後にし、すぐに城内の魔物兵へ“総力戦”になることを告げ、陣を作ることにし、秀吉自身は天守閣の座敷に座り、“秀吉らしい策”を練ることになった。
(夕方・山城国・三条大橋の温泉宿『麻呂眉屋(まろまゆや)』)
一行は正直疲れていたのだが、とりあえずすぐに温泉に入り酒無しでの食事を済まし、全員を男子部屋に集めて小さいながらも“陣”のようなものを作り、作戦会議に入った。
(夜・温泉宿『麻呂眉屋』・男子部屋)
学歩:さて、今回は安穏とした雰囲気で宿に止まることはできん。何せ、ここがリンレンが来る前に我らが到達できた最高地点だ。正直、あの後、あの場所がどう変わったのか、全くわからない状況だ
升太:とりあえず柱の門番3人、“安倍晴明(アベノセイメイ)”、“芦屋道満(アシヤドウマン)”、“仙狐(センコ)”を軸に陣が組まれている事は変わっていないと思う。そしてこの3人の陰陽師を倒せるのは、リンレンだけであることも解っている
リン、レン:はい! 頑張ります!
メイコ:問題はやはり、柱3人だけとリンレンを対決させるために、残りの面々が“何をしなければいけないか”ね
海斗:先の戦では、魔物がそう、100は間違いなくいたはずだ。そして我らが倒せたのは50程度。それを振り切って門番と対決したが、結局斬れずに、逃走するはめになった
升太:兵力は補充、拡大しているだろうから、軽く見積もって、今は200はいると考えた方がいいだろう。勿論、我々で倒せる相手とはいえ、人海戦術に来られると正直きつい
ミキ:だけど、今回はヘリがあるからね〜。数に物を言わせている部分は、ヘリの一掃射撃で片づけられるのよね? ネル?
ネル:ああ、出来るよ。伏見城の対空設備は、ヘリが相手になることを計算に入れてないから、大丈夫だと思う。数で勝負している部分は私たちに任せていいよ
ハク:でも、用心はするけどね。私たちが裏切った後、城を改造しているかも知れないから
学歩:とにかく心強い! では、今回の戦での“我らの役割”はどうするべきだろうか?
海斗:うーむ。門番次第だけど、ヘリが作ってくれた“道”を一気に通って、門を落とすのはどうだろう。門の仕掛けを破るのは、我々“忍”の範疇だからな
学歩:なるほど。では、リンレンを我々の陣の中央に配置し、一気に道を通って、門番の相手をして貰っている時に、隙を見て、門を破るわけだな。うむ。それはいいな。では、明日の作戦は、それで行こう
升太:全員、今日は疲れている。明日の決戦に備えて、各自、早く寝ておくことにしよう
学歩:では、解散!
こうして、女性陣は女性部屋に戻り、男子、女子共に、すぐに寝ることにした。
***
(深夜・温泉宿『麻呂眉屋(まろまゆや)』・男子部屋)
誰かがレンの布団の所にやってきて、小声で呟いた。
???:ねぇ、レン、起きて、ねぇったら
レン:う・・うーん、えー、あれ? リン、なんでこんな時間に?
リン:明日決戦でしょ、なかなか寝付けないの。寝ていた所悪いんだけど、ちょっとつき合ってくれない?
レン:ふぁ〜、わかったよ、で、どこに行く?
リン:誰も泊まってない部屋があったの。そこでちょっとおしゃべりしよ?
レン:わかった。行くよ
こうして、寝付けないリンに起こされ、リンとレンは、男子部屋、女子部屋とはちょっと離れた空き部屋に入り、おしゃべりする事になった。
***
(深夜・温泉宿『麻呂眉屋(まろまゆや)』・空き部屋)
リンとレンは一緒に座っていた。
リン:・・・静かな夜だね
レン:そうだね、で、なんか、考え事とかあったの?
リン:・・・うん
そういうとリンは浴衣を肩口からはだけて、驚いて倒れているレンの上に乗っかった。
レン:リン!? どうしたんだよ、ちょっと!
リン:レン、私のこと、スキなんでしょ?
レン:そ、そりゃスキだけど、でも、こういうのはいくら何でもイケナイんじゃないか?
リン:お風呂ではキスしたくせに・・・レン・・・私だけを見て・・・私の眼だけを見てよ・・・
レン:リン・・・・
その時、リンの両目が赤く妖しく光った!
レン:うっ・・・・・・ね・・・・む・・・い・・・・・・・・・・
ガクッ
レンは赤い目を直視してしまった後、意識が遠のき、眠くなって気絶してしまった。
リン:ふふふ、この手の仕事はちょろいもんね
ビュン
リン“だった”人物は、九本のシッポを持つ、狐と女性のハーフの魔物に変化した。その魔物、いや番人の一人、“仙狐(センコ)”は、霊力ステルスの能力で“ミクの霊力レーダーにかからず”潜入して、レン以外の寝ている全員に呪文をかけて深い眠りに誘い、リンの記憶と姿を模写してレンに近づき、“明日の要であるレン”を奪い取ってしまったのだった。
仙狐:さーて、んじゃ、伏見城に持っていくとするかねぇ。よいしょ
気絶したレンは担がれて、闇の夜を疾走する仙狐によって、伏見城に連れて行かれてしまった。何故、ここまでの能力を持っているのに、誰も殺さず、しかもレンだけを連れていってしまったのか?
それを知っているのは、仙狐自身と、秀吉だけだった。
そして、夜は明けたのだった。
(続く)
CAST
巫女・鏡音リン:鏡音リン
巫女(?)・鏡音レン:鏡音レン
巫女・初音御貢(ミク):初音ミク
拳の升太:墓火炉 升太
アホ毛のミキ:miki
人形のテト:重音テト
懐刀の侍・神威学歩:神威がくぽ
忍者・海斗:KAITO
くノ一・女威虎(メイコ):MEIKO
めぐみ:???
陰陽師“賀茂保憲”:LEON
門番“仙狐”&偽リン:???
カラクリのネル:亞北ネル
深酒のハク:弱音ハク
人形の“てと”:重音テト
トリン:トリン
秀吉、etc…:エキストラの皆さん
説明 | ||
○ボーカロイド小説シリーズ第9作目の” 戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝“シリーズの第7話です。 ○巫女の鏡音姉弟(?)が主役の擬似タイムスリップジュブナイルです♪ ○メインは和風の妖怪とか陰陽師とか出てくる、バトル物でもあります。 ☆めぐみの第2プランである、陰陽師“賀茂保憲”との激戦、そして、とんでもないイベントです。 ☆これから先は、そう簡単には進ませてくれません。しかし仙狐と秀吉の“策”とは、いったい何なのでしょうか? ☆作中の“トリン”とは、トラボルタP様のリン曲“ソラトバズ”に出てくる、飛べない鳥の名前です。 ニコ動リンク:http://www.nicovideo.jp/watch/sm9293649 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
634 | 634 | 0 |
タグ | ||
Vocaloid 鏡音レン 鏡音リン 初音ミク KAITO MEIKO 神威がくぽ 亜種 miki 海外組 | ||
enarinさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |