いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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第七十三話 あれが愛情なら俺はいらない

 

 

 

 俺のお見舞いに来てくれた皆は「一度家に戻る」と言って俺の部屋を出ていった。

 …一度?

 また来るの?

 そんなことを考えながら俺もまたすぐに眠りにつく。

 

 「で、目が覚めたらこれだよ!」

 

 何故か、プレシアが俺をベッドに縛りつけている。

 アリシアは金色の花と蝶の模様の刺繍の入った緑の着物を着ていた。…だが、何故絶妙な感じで着くずれを起こしている?

 まるで襲い掛かられた後のような…。

 

 

 …読めたぞ!

 

 

 アリシアが俺に悪戯をしようとしたが、慣れない着物で転んで俺の上に倒れた。

 その時にプレシアがそれを見た。

 倒れた衝撃でアリシアの着ていた着物が着くずれを起こした。

 そして、プレシアが暴走したわけですな。

 

 

 そのような仮説にたどり着いた俺はアリシアの方を見る。というか睨む。

 弁護を求む!

 

 「…むぅ、お兄ちゃんが何を言いたいのかはなんとなくわかるよ」

 

 おう、言ってやれ!

 

 「悪戯しようとしたけど失敗して、着くずれを起こしてお母さんにしばかれるなら、もっと色っぽく脱げ!だね!」

 

 違う!

 どうして最後だけ違うの!

 それは弁護ではなく、追い打ちだ!

 

 「((GET READY|準備はいいか))?」

 

 何故に英語?!

 待って!待ってくださいプレシア様!

 その手に持った((簪|かんざし))は日本独自のアクセサリーで、一部の((仕事人|ヒットマン))を除いて、人の体を刺すための道具じゃありませんよ!

 だから、その振りかざしたその右手を下ろして!じゃなかった!振り降ろさないで!

 

 アッ―――――――――。

 

 

 

 タカをしばいてからしばらくすると、フェイトとアルフが可愛らしい着物をつけてやって来た。

 フェイトはアリシアとは色違い赤い着物でやって来た。

 正直、鼻血が出るかと思ったわ…。

 

 「プレシア…。鼻血が出ているよ」

 

 訂正。いつの間にか零していたらしいわね…。

 ふきふき。と。

 アリシアと並ぶと本当に可愛いもんだから自然と零れてしまう。

 子犬フォームにペット用の着物をつけたアルフに注意される。

 この子は確か狼だったような…?

 

 「お母さん。お兄ちゃんが再起動したよ〜」

 

 「アリシア?再起動ってどういうこと?」

 

 あら、タカも起きたようね。それじゃあ行くとしますか。

 と、思ったら未だに外に出る準備がなっていないタカは手をあげて私に意見してくる。

 

 「…プレシア。俺、今日は大事を取って寝ていたいんだけど…」

 

 「全てにおいて、私の優先順位は娘たちのお願いよ」

 

 「そりゃあ。そう、だろう。けど…」

 

 アリシアがタカの手を引き、フェイトが彼の額に手を当てながら様子を見ている。

 同世代の男の子なら鼻の下が伸びてもおかしくないんだろうけど、タカは未だにふてくされている。

 これも彼の精神が大人だからかしら?

 ただ、私の娘たちにここまでされているのに鼻の下を伸ばさないのもしゃくね。

 まあ、伸ばしたら伸ばしたで…。

 

 「…っ」

 

 「…おおう、何故か寒気が。風邪がぶり返したか?」

 

 おっといけない。

 つい、ついサドっ気が出てしまったわ。フェイトも何事かと当たりをきょろきょろと見渡しているし。

 私が向けたのはタカであって、貴女ではないのよ。

 そこに一ミリの誤差はないわ。

 

 だが、それは安易に高志に百パーセントのサドっ気を当てているという事になる。

 

 「お兄ちゃんが行かないなら私も行かない」

 

 アリシアは頬を膨らませてタカを見上げている。

 それはいけないわっ。

 アリシアにはフェイトと一緒に近くの神社で行われているこの国独自のイベント。初詣。

 出店も回って初日の出を見て、おみくじを引いたり、鐘をつくなど、他にもいろいろなイベントを体験してほしいのに…。

 

 「…タカ」

 

 血反吐を吐いてでもついてきなさい。

 

 「っ。((私|わたくし))も是非にご同行させていただくであります!」

 

 私と彼は以心伝心。

 というよりもまた私のサドっ気に当てられたのかしら?

 フェイトも彼と一緒に私に敬礼しているし…。

 

 「では、私は外着に着替えてくるので!」

 

 全力で部屋に戻ったタカはドタンバタンと部屋の中で騒がしくしながら着替えを行っているのだろう。

 

 「…なあ、プレシア。あんた。やっぱり変わったよ。だけどさ、もう少しあいつに優しくしてやったらどうだ?」

 

 アルフがため息をつきながらタカの部屋の扉を見て言う。

 

 「あいつは私達の恩人だよ。もう少しくらい優しくしてあげても…」

 

 「それをあの子が望むのならね」

 

 「え?」

 

 確かに、彼は偶発的にとはいえ、アリシアを助け、私を助けた。

 闇の書の事件ではフェイト達を助けたと言ってもいい。

 だけど彼はアサキムに狙われている。そして、それに巻き込んでしまったことに後ろめたさを感じている。

 それについて謝られたこともあった。

 その時に私に要求したことは一つ。

 

 「フェイトやアリシアを連れて、いつでも見捨てて逃げてもいいようにしてほしい」という事。

 

 正直格好つけすぎだ。

 ガンレオンの整備も未だにまともに出来ないのに。

 それでも彼は私達の事を考えていた。だから言ってやった。

 

 「あなたが死ねばスフィアで生きているアリシアも死ぬかもしれない。だから、アリシアの為に私は逃げない。だから、あなたはアリシアの為に生きなさい」と。

 

 彼に下手な慰めは逆効果だ。

 なら、その逆で叱咤激励だ。

 彼は称賛される事になれていない。何か心の枷のようなものが無いと自分の意志も貫けない。

 彼の枷はきっと彼の『前の世界』の家族だろう。

 そこへの未練があったから彼はアサキムとの戦いも心折れずに戦えた。

 だけど、闇の書事件を終えて彼の心の枷は『テスタロッサの家族』に変わった。それは前の枷に比べたらあまりにも弱い。

 出来ることならアリシアの傍にずっといて欲しいのだけれど、そこは母親心。

 彼は正直言って地味すぎる。うちのアリシアの伴侶にしてはあまりにも貧層過ぎる。

 命の恩人に向かって思う事じゃないかもしれないけど彼自身もそう言っていたから問題ないだろう。

 

 「いっそ、このまま私好みに教育。いえ、調教しようかしら?」

 

 「いやいや。調教じゃなくて教育にしてあげなよ。あいつをどうするつもりだい?」

 

 あら?いつの間にか声に出ていたようだ。

 考えをまとめる。

 あの子にはいつもの通り。その((日常|・・))が何よりの報酬だ。

 いつもの通りの家族の交流こそ彼が欲している。

 

 私にいつもしばかれる家族の交流…?

 アリシアやフェイトに悪影響を与えないかしら?

 

 まあ、少しは彼への接し方も考えてはみるとしよう。

 体が子供に戻った所為か家族を欲する欲求が強くなっている。それはこれまでの彼の行動を見ていればわかる事だ。

 

 「外出準備完了であります!」

 

 「…あら、もういいの。それじゃあ行きましょうか」

 

 「イエスマム!」

 

 黒のジーパンに白い厚手のジャンパーを着たタカがやって来たのでアルフも私との話し合いを打ち切る。

 まあ、アルフの信頼を得るにはまだまだ時間はかかりそうだけど…。

 

 「…あんたは本当に親馬鹿だな」

 

 「否定はしないわ」

 

 アリシアやフェイト。アルフには聞こえないように高志は愚痴を言ってくる。

 親馬鹿ね。いつかフェイトに対してもそう呼ばれたいわ。

 

 「…うう。その愛情のかけらでもいいから俺にも分けてくれよ」

 

 「あら、分けてないかしら?」

 

 私はからかうつもりで彼を見下ろす。

 タカは十歳くらいの身長なので、女性としては背の高い私だと見下ろす形になる。

 

 「…うっ」

 

 加えて精神が二十一歳。いや、ここの世界での滞在期間も足すと二十二歳か。

 そして、年上の美人好き。

 私のからかいに顔を赤らめて視線を逸らす。

 …地味な風体だけどタカは面白い。だから、アリシアも魅かれているのかしらね?

 

 「…あ、あれが愛情なら俺はいらない」

 

 「またまた」

 

 「いや本当マジでいらないからね!」

 

 「本当は嬉しいくせに…」

 

 「俺はマゾじゃないよ!」

 

 私のからかいにタカは叫ぶように否定するけど…。

 

 「それは。…ないわ」

 

 私は真顔で答える。

 

 「ごめん。タカシ…。私も否定できないや」

 

 「お兄ちゃんはMだよ」

 

 アルフはタカから目を逸らし、アリシアは満面の笑顔で。

 

 「え、えーと。えむだ、よ?」

 

 フェイトは意味が分からないながらも私達に合わせて高志に言ったのがトドメだった。

 

 「皆なんか嫌いだ!」

 

 タカは涙を流しながら私達の輪から離れるように走り出した。

 ごめんなさいタカ。あなたの為ならいくらでもガンレオンを調整する。

 だけど…。

 あなたを見ているといじりたくなるの。

 

説明
第七十三話 あれが愛情なら俺はいらない
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コメント
コメントどうもです。次回はアジサバが出ますよ。(たかB)
問題だらけじゃねえかwww(神薙)
しかも敵になる。どこに問題がある!(巌の蛟)
気のせいさ!ただガンレオンがマグナモードになって変貌するように、後輩は機体ごと変貌しただけだから。意識失う上、自分で元に戻ることもできず、戦闘能力も段違いで堕ちる(巌の蛟)
ちょ、それは馬鹿過ぎるだろwwwっていうかその後輩って確かランドが登場する時にトンでもない事になってた気が…。(神薙)
私は再世篇だけですがね。ネタバレになるんで言いませんよ?後輩助けるために、超低空を高速飛行して、露天やらなんやら吹き飛ばして、百万の借金をこさえたなんていいませんとも!(巌の蛟)
すんません、マジでシリーズの一作品もしていないんです。オリキャラ出るやつだけしたいな〜、とか考えているから…。(神薙)
それはランドの初登場時のだよ!クロウの登場話では、ブラスタで新たな借金こさえた。・・・知らなそうだな。(巌の蛟)
悲劇?ガンレオンにボコされた挙句ホームランされて吹っ飛ばされた状態からガンレオンに捕まってパイルバンカーぶっ放されたアレ?(神薙)
・・・事実、破壊活動しかね、出来ないんだよ。しっているか?再世篇でのクロウ登場時の悲劇。あれが良い例だろう。(巌の蛟)
ブラスタの活用法…生中継…紛争地帯の偵察…撮影系ばかりな気が…(神薙)
つまりいざって時の楯か・・・つくづく万能だなwwwブラスタ何て目じゃないぜww(巌の蛟)
SSっつーのはシークレット・サービスの略称っす、要するに護衛とかそんな奴等。(神薙)
あー、でもコレだと、数十機必要になるか。(巌の蛟)
SSが何を示すか分からんが、うーむ、それに加えてでいいのか?救助隊や災害地での運用を考えていたり。ほら、チビなら即席の道作ってくれそうだし、家電レオンだし、三機もあればカバーもできるし、あと、家電レオンだし、避難所での救援物資輸送もできるし、即席で家具も作れるから復興も早くなる。(巌の蛟)
つまり配置は管理局の寮やらSSの派遣とかそういう場所ですね!?もしもこれでスカさんが味方の状態で興味を示したら魔改造されそうだなwww(神薙)
タカ専用だが、着ぐるみとしては使える筈・・・。あとチビレオン量産されると、家電メーカーが幾つも潰れることになる。高性能すぎなんだよ!数機で十分だおww(巌の蛟)
量産型には武器さえ持たせなかったら最高だな、ランチボックスもあったからキャンプににも連れて行ける、遭難してしまってもGPSみたいなものを備えておけば助けを呼べる…どんだけ有能なんだよチビレオン…最早本家がいら子じゃんwww(神薙)
・・・テレビ、洗濯機、冷蔵庫だっけ?三種の神器に掃除、料理だけにとどまらず、修理、改修もこなし、室内除湿器、クーラー機能も兼ね備え、有事には防衛戦をはじめとした戦闘や人命救助もこなす量産型家電レオン。・・・私だったら重要施設以外は所持禁止にするなコレ。マジ話。(巌の蛟)
でもチビレオンを造れたっていう事は、そのままデカくしてしまえば電気は滅茶苦茶食うけど家電レオンを再現できる筈だぜ?(笑)(神薙)
ガンレオンの調整をやっただけよ!プレシアさんは。(巌の蛟)
そして量産化されて『一家に一台』という名目の元発売、そして完売御礼となりゆくゆくはテスタロッサカンパニーという大企業へ…何やってんだよプレシアさんwww(神薙)
ガンレオンの調整=家電レオン化ですね?解ります。(巌の蛟)
その不憫回がイコールタカの日常なのです。日常が、不憫なんかじゃないの!傷だらけの獅子にとっては御褒美です?・・・リンディも同意見なんだろうなあ。(巌の蛟)
これからはもう日常回と言わずに不憫回と言った方が合ってないか?www(神薙)
タカ……不憫すぎるwwwww  誰か!誰かタカシに愛の手を!!!!! リインフォース!君の出番だ!君しかタカシを癒せない……はず!(孝(たか))
タカぇ…ベーコンレタスの次はm疑惑…強く逝きろ(piguzam])
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