勇者伝説セイバスター 第17話「終わらない勇者伝説」
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第17話「終わらない勇者伝説」

 

 遂にこの時がやってきた。

 宇宙帝国デストメアは地球に向かって総攻撃をかけると宣言した。そして、それを阻止するために宇宙へ向かった勇者達。

 そこに、レクイストが立ちはだかった。闇の力を手に入れ、強力となるレクイストに、勇者達は苦戦を強いられる。

 だが、その時ファントムがレクイストに立ち向かっていった。

 激戦の末、ファントムはレクイストと共に太陽に飛び込んで消滅した。

 感傷的になっている暇もなく、勇者達はデストメアへと向かう。そして……

 

 

「……な!?」

 勇者達は向かう途中で急に立ち止まり、目の前で起こっていることに驚愕した。

 

 その理由は、デストメアにあった。

「な、なんで変形してるんだ!?」

 デストメアが戦艦から変形しようとしているのだ。しかも、そのプロセスから察するに、ロボットの姿へと。

「……なにか、嫌な予感がするな」

「止めるぞ!」

 勇者達は一斉に変形しようとする戦艦に向かって攻撃した。だが、

「何っ!?」

 あまりにも戦艦が巨大なため、穴を開けても全くその動きをやめようとしない。戦艦にとって、勇者達の攻撃は微塵でしかないのだ。

「も、もう一回!」

「だめだ、遅い……」

 そうこうしている内に、戦艦は変形を終えていた。

 勇者達よりもはるかに巨大で猛々しいその姿は、前にどこかで見たことのある姿であった。

「こ、これは……!?」

「ヘルゲイズ……!?」

 そう、以前現れたあのヘルゲイズとあまりにも酷似しているのだ。

 しかし、酷似しているとはいえ、その大きさはあまりにも違いすぎている。以前のヘルゲイズを100mとするなら、その十倍はあるだろう。

 推定1000m、それは前代未聞の巨大さを誇っていた。

「驚くがいい、勇者どもよ……」

 突然、戦艦の変形したロボットから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「その声は……!?」

「やっぱりお前か、ヘルゲイズ!」

 ヘルゲイズのあの声は、勇者達にとって忘れる事のできない声であった。その声が、ロボットから聞こえてきているのだ。

「これこそが、我の真の姿、そして真の力なのだ……」

「つまり、ヘルゲイズは戦艦そのものだった、ということか」

「我にかなうものなどいない。ここでくたばるのだ……!」

 そして、ヘルゲイズはその巨体を動かし始め、勇者達への攻撃を開始した。

「総攻撃、開始……!」

「なっ!?」

 その攻撃方法とは、魔物をまるで雨のように勇者達に向けて放つという、単純な攻撃である。他にも、レーザーやビーム、ミサイルなどの攻撃も混じっている。

 しかし、単純とはいってもあまりにも数が多い。もし全ての魔物とレーザー等に攻撃されたら、最悪のパターンが待っている。

 そして何より、勇者達の背後には地球がある。魔物を逃したとなれば、そのまま魔物を地球へと迎え入れてしまう。

「くっ……みんな、行くぞ! グレートドラゴンバーン!!」

「ヴァリアントエッジ!!」

「レオンクロー!!」

 それだけは絶対にまぬがれたい。

 勇者達は地球のためにも、攻撃を開始した。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「だあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 次々と襲い掛かってくる魔物を蹴散らし、倒しながら進んでいく勇者達。

「くっ……!」

 その途中で勇者達はレーザーを食らってしまう。

「グアアァァァァッ!!」

 

ドガァン!

 

「ぐあっ!」

 魔物の攻撃も受けてしまう。

 困難ばかりが立ちはだかる。だが、それでも勇者達は止まらない。いや、止まれないのだ。

 ここで立ち止まることは地球をデストメアに手渡すことと同じ。それだけは絶対にしない。勇者達は必死になって突き進んだ。

 

バゴォォン!!

 

「!」

「しまった!」

 だが、その途中で魔物を何匹か逃してしまい、地球へと向かわせてしまう。

 追いかけようとしても、次から次へと襲ってくる魔物から逃れる事ができず、追いかける事ができない。

「く……HBF、応答願う! こちら瞬治、地球外知生体がそっちに向かった!」

 瞬治が激闘のわずかな合間を使ってHBFに通信を試みた。だが、宇宙から地球への通信はヴァリアントセイバスターには搭載されておらず、届いている可能性は限りなく0に近い。

 そのため、返事は返ってこなかった。

「く……そおっ!」

 瞬治はその事に苛立ちを感じ、ボードに拳を叩きつける。

「瞬治、怒りをぶつけている暇はない」

「そんなことは……わかっている!俺達がここで食い止めなきゃ、地球は終わりなんだ!  VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)

 ヴァリアントセイバスターの言うとおりである。怒りをぶつけている暇があれば、目の前にいる魔物たちを倒さねばならない。

 瞬治は半ばあきらめた感じで再び攻撃に転じた。

 その時、瞬治はある変化が起こっていることに気づいていなかった……

 

 

 ここは地球、日本のとある場所。

 そこで、HBFは総攻撃に備えて待機していた。

「石橋司令官!」

 突然、荒井がレーダーに映った影を見て石橋を呼んだ。

「どうした!?」

「地球外知生体が、現れました!」

「何だと!?」

 荒井の一言に、石橋は我が耳を疑う。

「モニターに映します!」

 モニターに映ったのは、空から舞い降りてくる魔物の姿であった。それによって、荒井の言葉は真実と証明された。

「く……」

「まさか、瞬治君たちは……」

「そんな事は決してありえない! きっと、何か事情があったのだ!」

 一瞬絶望しかけるHBFスタッフを励ますように、石橋が大声で怒鳴る。

「全スタッフは配置につけ! Holy Brave Fortress、リフレクションシールド展開準備!!」

「了解!」

 HBFスタッフは慌ただしく動き始め、各々のやるべきことを行なう。

「リフレクションシールド・マックス!!!」

 石橋の掛け声と共に、HBFを中心にして辺り一帯に透明なシールドが張られた。

「ガァッ!!」

 その時、魔物の一匹が攻撃を放ってきた。

 

バキイィィン!!

 

「グアァァッ!!?」

 だが、ガラスの割れるような音と共に攻撃を放った魔物に向かって攻撃が跳ね返ってくる。

 真正面からそれを受けてしまった魔物は、自らの攻撃によって消滅してしまう。

「グオォォォォォッ!!」

 魔物たちはそれに動じることなく、次々と攻撃を放っていく。

 

バキイィィン!! ガキイィィン!!

 

 魔物が攻撃を放つたびに、激しい音と共に跳ね返すリフレクションシールド。

 

 

ゴォォ……!

 

「くっ……!」

 リフレクションシールドが攻撃を跳ね返すたびに、HBFは激しく揺れていた。

 リフレクションシールドは、攻撃をそのまま跳ね返すことができるがその反面HBFに多大な疲労を蓄積させてしまうのだ。

「石橋司令官! このままでは、あと10分と持ちません!」

「分かっている! だが、それでも我々はやらねばならぬのだ!」

 石橋は全員に向かって、そして、自分に対して言い聞かせた。

(そう、やらねば、地球は……)

 石橋がそう思った瞬間、

「……てい……んと……」

「っ!?」

 突然、何かが聞こえてきたので驚いて辺りを見回す石橋。

 だが、その声を発したと思われる人物は、見回しても全く見つからない。いや、見つかるはずないのだ。

(今のは……なぜ……? 確かに、瞬治君の声が……)

 なぜなら、その声はあまりにも瞬治に似ていたのだ。いや、おそらく瞬治の声だったのだろう。しかし、瞬治はここにはいない。

 石橋の聞いたのは幻聴なのだろうか?

 いや、そうではなかった。だが、それを今知ることはできなかった。

 

 

 再び宇宙。

「フェザーキャノン!!」

 勇者達は先ほどと変わらず、魔物を蹴散らしていた。

 だが、違うところがある。それは、前進していることだ。少しずつではあるが、確実に前に進んでいる。

 そして、勇者達はヘルゲイズを目前にする所まで来ていた。

「ここまで来たのはいいけど、一体どうするんだ!?」

 グランドレオンが攻撃をしながら質問を投げかける。

「確かに、このままだと全くらちがあかない」

「……ヘルゲイズの中に入って、核を叩く」

 その時、ヴァリアントセイバスターが独り言を言うようにそうつぶやいた。

「核を……」

「叩く?」

 その事が理解できないのか、空人と誠也は首をかしげる。

「いくらヘルゲイズとはいっても、元は戦艦だ。必ず中には核となるものがあるはず。それを壊せば……」

「総攻撃を、止められる!」

 やっと理解することのできた二人。

「そうとわかりゃ、早速乗り込むぞ!」

「ああ!」

 勇者達は、ヴァリアントセイバスターの作戦に同意し、実行することにした。

「最初に開けた穴から、乗り込む事ができるはず!」

「一気に行くぞ!」

 最初に変形を止めるために撃った攻撃で開いた穴に向かって飛んでいく勇者達。

 それは、意外とすんなり行く事ができた。

 

「我が体内に来たか……だが、状況は変わらぬ……ここで朽ちるのだ……」

 

 

 ヘルゲイズの体内、デストメア内でも勇者達に向かって攻撃の雨が襲ってきた。

 あらゆる角度からレーザーやビームが、あちこちの穴からは魔物が、そして、壁からも襲ってきた。

「ファイナルブレード!!」

「ヴァリアントボウガン!!」

「レオンクロー・ダブル!!」

 勇者達はそれを自らの武器で次々と防御し、倒していく。

「中に入ったのはいいけど、一体どこが中枢なんだよ!?」

「この奥に、巨大なエネルギー反応がある。おそらくそこだ!」

 ヴァリアントセイバスターがその反応があると言っている一方を指す。

「だが、道はそっちに向かってないぞ!」

 グレートファイナルセイバスターの言うとおりである。

 道はヴァリアントセイバスターの指した方向の反対側へと向かっている。これでは、近づくどころか逆に遠ざかってしまう。

「だったら、道を作ればいいんだよ!」

 全員が一瞬首をかしげると、

「レオンクロー!!」

 レオンセイバスターが突然横の壁を爪で破壊し、穴を作った。

「………………」

 あまりのことに、全員が絶句してしまう。

「どうしたんだ、さっさと行くぜ!」

「あ、ああ!」

 だが、そんな事を気にしている暇もないため、全員はその穴を通って向かっていった。

 

「何とも乱暴な……だが、こうでなくてはおもしろくない。私のところまでたどり着くがいい……」

 

 

「でやあっ!」

 レオンセイバスターが先ほどと同じように壁に穴を開けて通ると、ある広い空間に出た。

「ここは……?」

「ここが、中枢らしい」

 その空間はとても広く、そしてとても暗かった。壁は完全に黒一色であり、所々に回路のような模様がある。

「あれが、ヘルゲイズの核か……?」

 三人は中央の壁に見えるものに注目する。

 そこには黒一色の中で唯一鮮やかな光を放っている球体のようなものがあった。

「ついにここまで来たか、勇者達よ……」

 その時、空間の中にヘルゲイズのあの低い声が響いてきた。

「ヘルゲイズ!」

「そのことは褒めてやろう。だが、青の星は終わりだ。見るがいい……」

 すると、勇者達の前に突如画面が現れた。

 そして、画面に映っていたのは、青き星、地球だった。

「何をするつもりだ!?」

「青の星に『絶望』を放つのだ……その眼で青の星が闇に染まるのを見るがいい……!」

 ヘルゲイズの言葉と共に、突然辺りが激しく揺れる。

「な、なんだ!?」

 

 

 ヘルゲイズの体が、ある体制になる。

 腕から大砲のような砲塔が各一門ずつ、計二門現れた。

「ディスペアキャノン、発射準備……!」

 そういうと、大砲にエネルギーがだんだんと収束されていく。

「何っ!?」

「やめろおっ!」

 地球を攻撃すると分かった勇者達は、止めるためにヘルゲイズに向かって攻撃する。

 

バキィッ!

 

「ぐあっ!」

 だが、ヘルゲイズにかすり傷を与えるどころか全く触れる事ができなかった。

「ディスペアキャノン、発射……!!」

 

ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 

 そして、絶望という名の大砲は発射された。自ら放った魔物を消滅させながら……

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 地球。

「っ! 石橋司令官!」

「今度はどうした!?」

「巨大なエネルギー反応が、地球に迫ってきています!」

「何だと!?」

 荒井の言う巨大なエネルギー反応とは、ヘルゲイズの放った大砲のことである。

「くっ……リフレクションシールドの力を最大に上げるんだ!」

「無理です! これ以上は、もう……」

「HBFの全エネルギーを、リフレクションシールドにまわすんだ!」

 スタッフが慌しく動く。だが、その間にも『絶望』は迫ってきている。

「ダメです! 間に合いません!」

(もう、これまでなのか……!?)

 今までスタッフを励まし続け、指示を与えた石橋が遂に絶望してしまった。

 そして、HBFスタッフの誰もが絶望を覚悟した

ゴオォォォォッ!!

 その瞬間、

「はあっ!!」

 

「………………?」

 石橋は何も変化が起こらないことに気がつき、ゆっくりと顔を上げた。

 すると、モニターにはロボットが映っていた。それも、一体や二体ではない。何十、いや、何百ものロボットが『絶望』という名のエネルギーを食い止めているのだ。

「なんとか、間に合ったようだ……」

「な……?」

 ロボットたちは食い止めながらも口を開いた。

「我々は、あなた達の勇者からのメッセージを聞いてやってきた者です」

「私達の勇者からのメッセージだと……?」

 石橋やHBFスタッフは、何が起こっているのかわからないでいる。

「こんなメッセージを、世界は受けたのだ」

 そういうと、ロボットはHBFにある『声』を聞かせた。

『……俺達がここで食い止めなきゃ、地球は終わりなんだ!』

「これは……」

 それは、瞬治の声だった。

 そう、あの時瞬治は通信のスイッチを切り忘れたのだ。その電波が人工衛星に伝わり、それが世界中に伝わったのだ。

「勇者のメッセージが、世界を、地球を動かしたんだ!」

「今、世界の勇者が結集しています!」

「希望は、まだ断たれていません!」

 ロボット達、いや、勇者達は一斉にそのエネルギーに向かって力を注ぎ、

『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

ドカアァァァッ!!

 

 そして、『絶望』を破壊した。

「石橋司令官……!」

「希望は……まだ、ついえていない……!! 我々も、希望をつなげるぞ!!」

 石橋らHBFスタッフは勇者達の姿に感動を起こし、中には涙を流すものさえいた。そして、自分たちも勇者達のためにと再び動き始めた。

 

 

「な、何だと……!?」

 ヘルゲイズは、勇者達が結集したことと『絶望』が破壊されたことに驚愕していた。

「どうやら、お前の思惑通りにはいかなくなったみたいだな!」

「我々は、奇跡を起こす事ができるのだ」

「そして、何よりも勇気が、みんなの心を一つにしたんだ」

「ぐ……おのれ……!!」

 ヘルゲイズのうめきが聞こえたかと思うと、突然辺りの壁が変化し始めた。

 左右からは腕が、正面からは顔が現れたのだ。

「こうなったら、貴様達を最初に始末する……!」

「行くぞ!」

「おう!」

 そして、最終決戦は始まった。

 

 

「レオンクロー!!」

 レオンセイバスターがヘルゲイズの右腕に向かって攻撃する。

 ダメージこそ食らうものの、右腕は全く動じずに攻撃してくる。

「ぐわっ!」

 右腕に殴られ、吹きとぶレオンセイバスターだが、

「負けんなよ、グランドレオン! お前が負けたら全部終わりなんだぞ!」

「んなのわかってらあ! アイフラッシャー!!」

 誠也の励ましと共に光を放ち、右腕の動きを止めてから再び攻撃に転じた。

「行くぜ!! レオンアタック、ゴー!!」

 

 

「ヴァリアントエッジ!!」

 ヴァリアントセイバスターがヘルゲイズの左腕に向かって攻撃する。

 左腕はそれをかわし、攻撃してきた。

「くっ!」

「ヴァリアントボウガン!!」

 ヴァリアントセイバスターはボディを砕かれるが、ひるまずに反撃する。

「ヴァリアント、分かっているな」

「ああ」

 瞬治とヴァリアントの間に会話はあまり必要なかった。

 互いのことをよく分かっているからである。分かっているからこそ、言葉は必要ない。

「はぁっ!!」

「THUNDERARROW,FIRE!!!」(サンダーアロー、発射!!!)

 

 

「ファイナルブレード!!」

 グレートファイナルセイバスターがヘルゲイズに向かって剣で攻撃する。

「ムン!」

 

バキッ!

 

「ぐあっ!」

 だが、ヘルゲイズの放った衝撃波によって吹き飛ばされてしまう。

「我にかなうものなどおらぬ……我こそ絶対、我こそ真の闇……!!」

 

ドガガガガガガガッ!!

 

「ぐあぁぁぁっ……!!」

 さらに、浴びせるように放ち続ける攻撃によって、グレートファイナルセイバスターの装甲が次々と破壊されていった。

「ファイナル!」

「大丈夫だ、空人……! フェザーキャノン!!」

 グレートファイナルセイバスターが攻撃の雨の中、懸命に力を振り絞ってエネルギー弾を放った。

「ハァッ!」

 しかし、エネルギー弾はヘルゲイズの衝撃によって止められ、さらにグレートファイナルセイバスターに向かって跳ね返ってきた。

「!!」

 

ドゴオォン!!

 

「ぐわあっ!」

「うわあっ!」

 エネルギー弾は顔面に直撃し、グレートファイナルセイバスターを吹き飛ばす。

 

「ファイナル!!」

 

「空人!!」

 

 

 その光景を目にした全員は、慌ててグレートファイナルセイバスターに駆け寄った。

「見たか、我の力を……所詮、光は闇にかなわないのだ……!」

 ヘルゲイズがあざ笑う。その笑いは勇者達のいる空間に響き渡った。

「ファイナル、大丈夫か!?」

「空人、空人!」

 全員が呼びかけるが、全く返事がない。

 見ると、グレートファイナルセイバスターのフェイスマスクが痛々しいほどに砕けていた。それほどにグレートファイナルセイバスターの放ったエネルギー弾が強かったのであろう。

「おい、起きろよ! お前たちも勇者なんだろ!? だったら、最後まで戦えよ!」

「もう一度……目を……覚ますんだ!」

 何度も呼びかけるが、やはり返事はない。

「そろそろとどめを刺してやろう……!!」

 そういってヘルゲイズがまさに攻撃しようとしたその時であった。

「……ブ……」

 わずかだが、声が聞こえてきた。

「……レイブ……」

 ただし、グレートファイナルセイバスターの声ではない。少年の声、空人の声だ。

「空人……?」

「ファイナル……ファイナル・ブレイブ!!」

 空人の叫び声が響いた瞬間、初めて出会った時と同じようにグレートファイナルセイバスターの体が光り輝いた。

 その時、グレートファイナルセイバスターが再び起き上がった。

「空人……」

「ファイナル……」

「バカな……!?」

 ヘルゲイズは再び驚愕した。グレートファイナルセイバスターが、再び起き上がるとは思わなかったからである。

「私は……『最後の勇気』を司る聖勇者……最後の勇気は……窮地に陥ってこそ真の力を発揮する……!」

「うん……分かってるよ、ファイナル!」

 空人は力強く、たくましく返事した。

「!!」

 その瞬間、グレートファイナルセイバスターの体が先ほどよりも強く光り輝いた。そして、その光は一つの力、一本の剣となった。

「ムン!」

 そして、グレートファイナルセイバスターはその剣を握り、ヘルゲイズに向かって構えた。

「おのれ……我が、光ごときに負けるはずが……ない!!」

 ヘルゲイズは怒りと共に、グレートファイナルセイバスターに向かって攻撃してきた。

「サンダーシールド!!」

 だが、その攻撃はヴァリアントセイバスターの雷の盾によって防がれ、

「おとなしくしてやがれ! トライアングルフィールド!!!」

「ぐ……!?」

 ヘルゲイズ自信はレオンセイバスターが作り出したバリアによって動きを封じられる。

「今だ、ファイナル!!」

「その、勇気の光で出来た剣で、ぶったおせ!!」

 全員の声援を受けたファイナルは、

「行くぞ、空人!」

「うん!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 空人と共にヘルゲイズに向かって走り出し、

 

ズバアァァァァァァッ!!!

 

 そして、大きく振るってヘルゲイズを両断した!!

 

 

「グ……ググ……!!」

 ヘルゲイズが攻撃してくることはなかった。完全に全てを断たれたのだ。

 

ズドオォォォン!!

 

「な、なんだ!?」

 その時、辺りが爆音と共に激しく揺れ動いた。

「中枢を壊したから、崩壊が始まったんだ……」

「急いで脱出するぞ!」

 三人は危機から脱出するため、急いでその場を離れることにした。

「我は……滅びぬ……この宇宙に……闇がある限り……我は……!!!」

 ヘルゲイズの最期の言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。

 爆音のせいではない。誰にも聞こえないような、小さな声で言ったからでもない。誰も聞かなかったのだ。

 ヘルゲイズは、誰も共にできることなく、『孤独』という名の『闇』に消えていったのだ。

 

ズドオォォォォォォォォォォン!!!

 

 宇宙帝国デストメア、そして、ヘルゲイズは爆発と共に消滅した。

 

 

 それは、地球上にいたHBFや勇者達にも確認する事ができた。

「どうなったんだ……!?」

 だが、勇者達の安否は確認されていない。

「勝ったのか、負けたのか……?」

『……ら、……治……F……せよ……』

「!?」

 その時、スピーカーからノイズの入った声が聞こえてきた。

『こちら、瞬治。HBF、応答せよ!』

 瞬治の声だ。

「瞬治君か!?」

『デストメアは……ヘルゲイズは、爆発した。俺達の勝ちだ……』

 

ワアァァァァァァァッ!!

 

 瞬治の言葉に、HBFが湧きかえった。

 荒井は、平山は、神波は泣いた。歓喜のあまりに泣いた。

 石橋は無言であったが、顔は喜びに満ち溢れていた。

「よくやった……よくやったぞ……」

 

 

 そして、地上の勇者達も確認できるほどに、勇者達は降下して来た。

「おぉーい!」

 誠也は、瞬治は、空人は、勇者達に感謝の意を込めながら、帰って来れた事を喜びながら、自分たちの存在を確認させながら、思い切り手を振った。

 グランドレオンは、ヴァリアントは、ファイナルは、その傷ついた体でゆっくりと降りていった。

 そして、地上にたどり着いた瞬間に、勇者達に歓迎され、褒め称えられた……

 

 

 こうして、勇者達の戦いは終わった。

 宴は三日三晩続いた。世界がかつての勇者が勝利した時と同じように湧き上がった。

 

 空人が家に帰ったとき、空人は晴香に泣かれてしまった。

 もちろん、悲しいからではない。嬉しさのあまり泣いてしまったのだ。だが、空人はそれでも困ってしまい、少し戸惑ったという。

 

 宴の時間はあっという間にすぎ、空人達にとっては大切な時間が訪れた。

 そう、別れの時間だ……

 

 

「お別れ、だね……」

「ああ……」

 

 

 ここは、かつてグランドレオンと出会った林の中。そこに、グランドレオンと誠也はいた。

「ここだよな、お前と初めて出会ったのは」

「ああ。あん時は本気で怒ろうかと思ったぜ。なんせお前がデカイ声で俺を起こすんだからな」

 そういって、グランドレオンは小さく笑う。

「わりぃわりぃ、あん時は起こし方が分からなかったからよ」

「まったく、お前らしいな……」

 しばらくの間、沈黙が流れた。

「……もう、会えないよな」

「かもな」

「地球がピンチにならないと、目覚めてくれないんだろ?」

「ああ」

「だったら、俺が地球をピンチに……」

「おいおい、悪い冗談はよしてくれよ」

 今度は笑いが流れる。

「んじゃ、ウインドホークも」

 そういうと、誠也の腕のブレスレットが光となり、その光はウインドホークとなる。

「また、地球が危機に陥ったら起こしてくれよ」

「分かってるって。お前がいなきゃセイバスターはなりたたねえよ」

「それもそうだな……」

 再び沈黙する。

「……じゃあな」

「ああ……『じゃあな』……」

 誠也のその言葉によって、グランドレオンとウインドホークは光に包まれた。

 そして、光が消えるとそこには石となったグランドレオンとウインドホークの姿があった。

「……さてと、ナンパでもしてくるかな」

 誠也は踵を返し、街へと戻っていった。

 

 

 HBFフォースオーダールーム。そこには瞬治とヴァリアントがいた。

 瞬治とヴァリアントに別れはない。

「誠也達は、今頃別れを惜しんでいるのだろうか……?」

「さあな。もっとも、誠也は別れを惜しむタイプじゃないな」

 瞬治はヴァリアントの操縦席に座りながら、ヴァリアントの言葉に言葉を返していた。

「そうだな」

「空人は……辛いだろうな……」

「ああ……」

「あいつは、誰よりも別れが辛い事を知っている……思い切り泣いてなければいいが……」

 そういうと、瞬治は宴の時に撮った写真をチラッと見た。

 そこには、空人と瞬治と誠也、さらにファイナルやヴァリアントやグランドレオンのほかHBFスタッフが楽しそうに写っていた。

「瞬治」

「なんだ?」

「もしも、瞬治と私が別れなければならなくなったら、瞬治はどうするんだ?」

 ヴァリアントの唐突な質問に、少し戸惑う瞬治。

「……そうだな。俺の場合、一言だけ、こう言うな」

「何と?」

「『ありがとう』と……」

 

 HBF甲板の先端に、一人の男が立っていた。

「………………」

「ここにいたか、ファントムよ」

 そこに、石橋が話しかけてきた。

 そう、あのファントムがここにいるのだ。レクイストと共に太陽に飛び込んで消滅したはずの、ファントムが。

「なぜ、私は存在する事ができている……?」

 なぜここにいるのか、それはファントム自信にも分かっていない。

「それは、君が『勇者』だからだ」

「?」

「勇者は、昔から『奇跡』を起こすものだと決まっている。君も、『奇跡』を起こしたのだ」

 石橋が自身たっぷりといった顔でうなずく。

 根拠はないのだが、ファントムにとってそれはどんな理屈よりももっともらしいと思った。

「……そうか」

 ファントムは小さな笑みを浮かべた。

「それと、『存在する』なんて自分をモノ扱いしない方がいい」

「……だったら、一体?」

「『生きている』、君は『レクイストの幻影』ではない。ファントムという『命』なのだ」

 その言葉を聞いて、ファントムの中で何かが変わったような気がした。

 そして、石橋に向かって一言こう言った。

「……ありがとう」

「これからどうするんだ?」

「宇宙に存在する闇の暴走を止めるために、旅立つ」

 そう言って、ファントムは飛び上がり、戦闘機と融合して空の彼方へと向かっていった。

「さらばだ」

 その姿を追いながら、石橋は一言口にした。

 

 

 ここは明日ヶ丘市のとある公園。そこで空人と晴香、それにファイナルが別れを惜しんでいた。

「ここでお別れだ、空人」

「うん……」

 空人の返事は、いつもよりも元気がない。

「さびしいか……?」

「さびしくないって言ったら……嘘だよね」

 見ると、空人の目には涙が浮かんでいた。

「でも、僕のわがままでファイナルを引き止めてちゃダメだよね。だって、ファイナルは勇者だから……宇宙を守る勇者だから……」

 空人は必死に笑顔を作るが、どこかぎこちない。

「すまない、空人……」

「ううん、ファイナルが謝らなくてもいいよ。僕、ファイナルと一緒にいて楽しかったよ。時々辛い事もあったけど、でもそれを全部忘れるぐらい楽しかったよ」

「空人……」

 ファイナルは空人のその姿に少し心が痛んだ気もした。

「僕、絶対ファイナルの事忘れないから……だから、ファイナルも、僕の事……」

「ああ、絶対に忘れない……」

「私も、ファイナルさんの事、忘れません」

「私もだ、晴香……」

「じゃあね、ファイナル……」

 その言葉で、ファイナルは空へと浮かび上がった。

「忘れないでくれ……私と、君の心の中にある『最後の勇気』を……」

 そして、その言葉を最後に空の彼方へと消えていった。

「………………」

「空人………」

「さ、行こう、晴香!」

 笑顔で空人は晴香の方を振り向くと、すぐに走り出していった。

「あっ、待ってよ、空人」

 晴香も笑顔になって空人を追いかけていった。

 

 その時、晴香は気づいていなかったが、空人は涙を流していた。

 だが、空人はそんな涙を吹き飛ばすぐらいの笑顔でいた。最後の、勇気で……

 

 

【END】

説明
アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。
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