恋姫†無双 関羽千里行 第1章 6話
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第1章 6話 ―訪問者―

 

 

幼い女の子「御遣い様!こんにちは!」

 

一刀「やあ、こんにちは。風邪はもういいのかい。」

 

幼い女の子「うん。御遣い様に言われた通りお薬とお水飲んでたくさん寝たら治ったよ!ありがとう!」

 

一刀「いやいや。風邪が治ったのは君の体を丈夫に生んでくれたお母さんのおかげだ。もうあんまり心配かけちゃいけないよ。」

 

幼い女の子「うん!わかった!じゃあね、御遣い様!」

 

 そう言って女の子はきゃっきゃとはしゃぎながら楽しそうに通りの先へと駆けて行った。

 

 俺がこの村の県令になってから1月ほどの時間が流れた。大陸一の街にするという願いのもと、復興への意欲を燃やしていた住人たちによって村はあっという間に活気を取り戻した。しかも、まるで怪我をしてもかえって丈夫になる身体のように、村人いわくむしろ前より笑顔にあふれているらしい。それを俺のおかげだなどと大層なことを言うつもりはない。しかし、村の人たちに新しく村の名前をつけてくれと言われ、俺はこの村がこれから代々繁栄するよう願いを込めて京と名前をつけた。

 

 天の御遣いが街を興した。それは近隣の民草にとってかなりインパクトがあったようだ。周囲の村からは噂を頼りに多くの商人や旅人が訪れるようになり活気にあふれていた。そして俺の世界の様式にヒントを得た村の運営や区画整理といったものが、よい実績を残しているとの噂が彼らを通じて伝わっていき、それを聞いてまた人が訪れた。このいい連鎖を生みだしたことを、俺のおかげだと京の商人や町人から感謝されるとやはり嬉しいものがある。

 

 そんなこんなで今日も今日とて俺はお伴を伴って街を警邏、もといぶらぶらしている。街を見回りつつ商店主や長たちの話を聞いて要望や意見を集めるのはこの街をよりよくするための俺の日課だ。初めは1人で回るつもりだったが、今は愛紗の強い要望もとい半ば強制でお伴を連れて行くことになっている。今日のお伴はその言い出しっぺである愛紗だ。ここしばらく街の復興で忙しく二人で出掛けるのは久しぶりなので、俺も愛紗も少しテンションが高くなっていた。

 

愛紗「子どもというのは純粋ですね...あの笑顔を見ていると心が安らぎます。」

 

一刀「そうだね。あの笑顔を見ていると明日も頑張ろう!っていう気になるよ。お、あそこの点心美味しそうだな。愛紗、あれ食べながら警邏しよう。おっちゃん2つおくれよ!」

 

店主「よう御遣いの兄ちゃん!今日もべっぴんさん連れてて妬けるねぇ。まあ目の保養になるしいいんだがよ。よっしゃ、気分がいいからおまけしてやるよ!」

 

愛紗「もう、ご主人もからかわないでください。それに一刀様も、今は警邏中です。そもそも食べながら歩くなど行儀が悪いですよ。」

 

一刀「えっ...愛紗と一緒に食べたいんだけど...だめかな?」

 

愛紗「うっ...う〜!も、もう!はぁ...し、仕方ないですね。一刀様がどうしてもと言うから、今回だけ、特別に、仕、方、な、く、ですよ?」

 

 愛紗は押しに弱いのでお願いされると断れないのだ。ふとこの世界に初めて来たころ、愛紗と警邏をした時の事を思い出して苦笑する。愛紗の警邏に対する真面目さというか実直さにどうしたものかとよく首をひねったものだ。それが今やこのように一緒に点心を食べながら街を歩けるようになったのだから、愛紗もずいぶん変わったものである。そうして代金を払って点心にかぶりつきつつ街の中を二人で歩いていると...

 

警邏隊員「た、隊長〜!」

 

 遠く後ろから俺を呼ぶ声がした。ちなみに今、俺は県令の仕事をしつつも街の警邏隊の隊長も兼任している。その隊員は駆け足で俺たちの前まで来ると慌てた様子でこう言った。

 

警邏隊員「た、大変です、隊長!」

 

一刀「おちつけって。まずは1回深呼吸だ。...そうそう。でどうしたんだ?」

 

警邏隊員「それが、北の物見からの報告でこちらに向かってくる武装集団を発見したそうです。今張遼さんが街の入り口まで向かっています。」

 

一刀「数は?」

 

警邏隊員「三百程度のようです。」

 

一刀「そうか。それくらいなら霞一人でも大丈夫だと思うけど、念のため君は警邏隊のみんなをを北口の近くに集めておいてくれ。俺たちはこれから直接そっちに向かうよ。」

 

警邏隊員「了解しました!」

 

 その隊員はハキハキとした声で返事をすると元来た道の方へかけていった。

 

一刀「三百ぐらいじゃこの街を攻めてきたわけじゃなさそうだけど...いったい何なんだろうね。」

 

愛紗「行ってみればそれもわかるでしょう。私達も急ぎましょう。」

 

一刀「そうだな。街のみんなに迷惑がかかったら大変だしな。」

 

俺と愛紗は残りの点心を一気に口の中へ放り込むと急いで街の北へと向かった。

 

 

 

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愛紗「霞。様子はどうだ?」

 

霞「愛紗〜。ウチが心配できてくれたんか?うっれしいなぁ〜♪」

 

愛紗「そ、そうか。は、ははは...」

 

一刀「おいおい。一応俺も霞の主君ってことにはなってるんだから無視しないでくれよ...で武装した連中というのは?」

 

霞「はいはい、わかってるって。ほら、あそこ。あいつらやな。剣も抜かずにのこのこ歩いてくるとこを見ると戦いにきたわけやなさそうやけど...それにしては雰囲気がささくれ立ってるしなぁ。」

 

 街から少し離れた街道を、男たちが歩いてくるのが見える。

 

一刀「あれか...なんか俺の世界にいたヤンキーみたいだよな...背中に羽飾りとかつけてるし...」

 

霞「やんきぃ?また天の言葉かいな。」

 

一刀「ざっくり言えば荒くれた若者ってことだよ。ん?なんかあいつらの方から何か聞こえるな...」

 

 その一団が近づくにつれてだんだんとその音は大きくなってきた。カラカラという歩行に合わせて聞こえる何かの金属音。それが聞こえ始めたかと思うと、通りにいた旅人たちは慌てて手近な屋内に逃げ込んだ。

 

一刀「なんだなんだ?」

 

霞「ほお。これはまた面白いのが来たなぁ。」

 

一刀「霞知ってるのか?」

 

霞「噂だけな。まあウチも愛紗もいるし安心し。」

 

一刀「ああ...」

 

その羽根飾りの集団は街の入り口で通せんぼしている俺たちの前まで来ると訓練された軍隊よろしくピシャリと止まった。そしてその軍隊が左右に分かれて真ん中に一本の道を作ると、中から腰に剣を刺した少女が列の前へと出てきた。

 

??「この街の支配者を出してもらおうか。」

 

一刀「支配者ってのはあんまし好きな言葉じゃないんだけどな...一応俺がそれなんだけど、何の用かな?」

 

??「貴様が天の御遣いとか言う胡散臭いやつか?確かに聞いた通り、変な格好をしているな。」

 

一刀「胡散臭いってのは俺も認めるけど変な格好っていうのはちょっとへこむなぁ...」

 

??「まあ貴様が本当に天の御遣いかどうかはどうでもいい。だが貴様の返答次第ではお前とここの住人は気持ちよく明日を迎えられることは言っておこう。そこで本題だが、私たちは長距離を移動してきて疲れている。だから私たちがここに滞在する間、酒と料理をふるまってもらおうか。」

 

 随分と傲慢なことをおっしゃる。俺は心の内は出さずに冷静に対応する。

 

一刀「その返答の前に訊きたいんだけど。君がこの人たちの代表なんだろ。俺は北郷一刀。君の名前はなんて言うのかな。」

 

 俺のあっけらかんとした態度に多少面喰ったのか。目つきの鋭いその少女は一瞬考えるそぶりを見せてからこう言った。

 

??「ふん。私たちを前にしてその態度とは、変なのは恰好だけでなく中身もか。肝が据わっているのかいないのか。...まあ知らないのなら無理もない。私は甘興覇。鈴の甘寧とは私のことだ。」

 

 彼女の動きに合わせて腰の鈴がカラカラと音を立てた。ああ、俺の世界ではシャンシャンというのが1番最初に思い浮かべる鈴の音だからわからなかったのか。前の世界では孫権の配下になっている時からしか知らなかった。しかし、確か俺の知っている歴史では甘寧という武将は若いころ、不良たちを集めて自分の縄張りで悪いことをしたやつらを懲らしめたり、行った先の村に歓待を要求して受け入れられなければ略奪をしたりしていたはずだ。さっき旅人が慌てて隠れていた所を見ても、この世界でも大方それと似たようなことをしているのだろう。ちょっと待てよ。...

 

 それならば今目の前に立っている甘寧はまだ孫呉はおろか劉表のところにも士官していないはずだ。甘寧ほどの良将が味方になってくれればかなり心強いけど...何か方法はないものか。そのように思考に耽っているといらいらした様子でこっちを睨んできた。その殺気にも懐かしいものを感じたがこれはご遠慮願いたい感覚だ。

 

甘寧「さあ返事はどうした。それとも怖くて声もでないのか。」

 

一刀「そうじゃないよ。えーと。こちらとしては酒や料理を出すのは別にいいんだけど、君の口ぶりからするとその代金はこちら持ちなんだよね?」

 

甘寧「そうだ。」

 

一刀「そういうことならその要求は飲めないかなぁ。こちら持ちってなると、みんなが汗水たらして稼いだお金から分けてもらった税金で払うことになるだろ。君1人くらいなら俺の給料でもお腹いっぱい飲み食いさせてあげられると思うけど、後ろの人全員っていうのは無理かなぁ。」

 

甘寧「ほう、断るのか。大した度胸だな。」

 

 そう言うと甘寧は一瞬にして腰の得物を引き出すと俺の額にその剣先を突きつけてきた。さっきよりも強く甘寧の殺気が俺に向けられる。一瞬愛紗と霞が飛び出しかけたが、俺は大丈夫だという意志を示すために手で2人を制した。

 

甘寧「もう1度言う。酒と料理を出せ。」

 

一刀「断る。」

 

 俺はきっぱりとそう答えた。甘寧の殺気が一気に膨らみ得物を持つ手に力が入る。俺は甘寧が次の動作に移る前に口を開いた。

 

一刀「勝負をしよう。」

 

甘寧「...は?」

 

 一瞬にして甘寧の殺気がしぼんでいくのがわかった。その顔はこいつ何言ってんだと呆れた顔をしている。その視線に少し悲しくなった俺は慌ててその先を続けた。

 

一刀「俺と甘寧で勝負をして、そっちが勝ったら君たちの要求を飲もう。何ヶ月か分、俺の給料を前借させてもらうことになっちゃうけどね。ただ俺が勝ったら俺のお願いを聞いてもらうよ。」

 

甘寧「貴様の?なんだ。」

 

一刀「俺が勝ったら、君と君の配下の人たちは俺の仲間になってくれ。」

 

 俺の要求は甘寧にとってかなり意外なものであったらしい。最初は驚いてきょとんとした顔をしていたがそれも一瞬。すぐに腹を抱えて笑いだした。後ろに整列していた男たちも笑いをこらえきれないと言った様子だ。

 

甘寧「ふっ、はっはっはっ!仲間になれだと?ふ、聞いたかお前たち。私たちに仲間になれだと。」

 

甘寧一味A「んなこと言う奴初めてだぜ!」

 

甘寧一味B「こいつ馬鹿なんじゃないですかね!頭ぁ?」

 

甘寧一味C「見かけどおりの変人ですぜ、こいつは!」

 

 散々な言われようである。救いを求めて後ろを見ると愛紗も霞もすっかり呆れたといった表情をしている。さらにその先の、建物越しに事の顛末を見守っている街のみんなも、なんだか生温かい表情で俺を見ている。そんなに変なこと言った覚えはないんだけど、ここまでぼこぼこにされると本当に悲しくなってくる。がっくりとうなだれる俺に甘寧はさも楽しそうに少し硬さのある笑みを浮かべて肩をポンポンと叩いた。

 

甘寧「北郷といったか。こんなに笑ったのは生まれて初めてだぞ。お前みたいに面白いやつなら私の部下に加えてやらなくもない。」

 

一刀「いや、仲間になってくれってお願いしてるのはこっちなんだけど...」

 

甘寧「ふふ、そうだったな。笑わせてもらった礼だ。その勝負受けてやる。ただ勝負の方法がこれ以上馬鹿げたものだったら、このままお前の首をはね飛ばすぞ。」

 

 とっさの思いつきだったがうまくいったようだ。でも...笑顔でさらりと怖いことを言わないでください。そう頭の中で呟きつつ、

 

一刀「勝負してくれるのか。じゃあ勝負の内容は一騎打ちでどうだろう。そっちから1人とこっちから1人の1本勝負で。」

 

甘寧「いいだろう。ならばこちらは私が出よう。お前たちもそれでいいな!...そっちはまさかお前が私の相手をするのか?」

 

一刀「俺じゃ多分君には勝てないよ。愛紗、頼んでもいいかな。」

 

愛紗「承知しました。」

 

 控えていた愛紗が青龍刀を持って一歩前に出た。愛紗を見てその強さを感じ取ったのか、甘寧の表情がすぐに引き締まったものになった。

 

甘寧「なかなかできるようだな。だがこちらも大勢の部下を束ねる身だ。どこの馬の骨ともわからん貴様に負けはせん。」

 

愛紗「一瞬にして実力の差を見極めたか。負けを考えた時点で貴様の敗北は決まっている。」

 

甘寧「くっ...!」

 

 甘寧の顔に苦渋の色が浮かぶ。おそらく今の愛紗相手に一騎打ちで勝てる武将など殆どいないだろう。甘寧には悪いがこれも策というやつだ。ただそんな俺たちの内心には全く気付いていない様子で、甘寧の部下たちはやっちまえーだのなんだの言っている。そしてほどなくして道の真ん中に立っているのは愛紗と甘寧だけになった。二人が距離をとってそれぞれの得物を構える。

 

一刀「じゃあ俺の合図で始めてくれ。では用意...始め!」

 

甘寧「はああああああ!」

 

 霞の時とは打って変わって、合図が聞こえたと同時に、甘寧は愛紗に向かってはじき出されたピンボールのように突っ込んでいった。あれは普通の人から見たらその場から消えたように見えるに違いない。甘寧はそんな俊足の挙動から、上から下から横からありとあらゆる方向から斬撃を放っていく。幾多の剣筋が愛紗に向かって襲いかかる様子はさながら複数の剣を同時に扱っているようにも感じられた。だが愛紗はそのすべての斬撃を見切って青龍刀で受けきっていく。

 

甘寧「チィ...!」

 

愛紗「どうした甘寧とやら。貴様の攻撃はそれで終わりか。」

 

 一連の攻撃を放った甘寧は一旦後ろに跳びすさって愛紗と距離をとった。見たところ甘寧の戦闘スタイルは一気に勝負をかける速攻型だ。今ので決め切れなかった甘寧にもう勝利はないだろう。

 

甘寧一味A「あいつ頭の攻撃を受けきったぞ...」

 

甘寧一味B「化け物かあいつは...」

 

 ピキッ...

 

 化け物という言葉に反応して愛紗の注意がそれる。その隙を甘寧ほどの使い手が見逃すはずはなかった。

 

甘寧「もらったぁ...!」

 

愛紗「くっ!」

 

 だがその隙をついた改心の一撃も愛紗のとっさの防御に阻まれた。最大の好機を逃した甘寧の表情に焦りの色が見える。

 

愛紗「いい斬撃だったぞ、甘寧。ならば次はこっちから行くぞ!せええええええい!」

 

甘寧「させるかっ!」

 

 今度は愛紗の方から甘寧に距離を詰めていき、次々と攻撃を放つ。愛紗の重い一撃を受けとめずに受け流している甘寧もさすがだ。だがいくら受け流しても愛紗の的確な攻撃によってダメージは蓄積されていく。手が痺れてきたのか、やがてその防御もだんだんと荒いものになってきた。甘寧の顔に疲労の色が濃くなってくる。

 

愛紗「せぇいっ!」

 

 甘寧の状態を見極めた愛紗がトドメとばかりに大きく横から一閃凪いだ。守りを一度につき崩すほどの一撃に、甘寧はそのまま後方へと弾き飛ばされた。

 

甘寧「ぐはっ!」

 

 なんとか立ち上がろうとする甘寧ののど元に、接近した愛紗が青龍刀の刃を立てた。

 

愛紗「勝負あり...だな。」

 

 勝負はついた。人知を超えた勝負の決着に皆唖然とし、辺りには他に誰もいないかのように静寂に包まれた。しかしその静寂を破るように、自らの敗北を理解した甘寧はこう口にした。

 

甘寧「...殺せ。」

 

 微動だにしない愛紗。甘寧は構わず続ける。

 

甘寧「何をしている。私の負けだ。さっさと殺せ。」

 

一刀「それはできない。負けたら俺の仲間になる約束だろ。」

 

 答えない愛紗に代わって甘寧のそばまでやってきた俺が答えた。すると心底ありえないものでも見たかのように俺を見、愛紗を見、そして周りに問いかけた。

 

甘寧「こいつは何を言っている?おい、そこのお前。お前は私たちのこと知っているだろう。こいつに教えてやれ。」

 

旅人「ひぃっ!あ、あの御遣い様。そこの甘寧という者はいくつかの村でおたずねものとして手配されているのです。もちろん生死問わずという条件付きです。」

 

一刀「そんなこと関係ないよ。」

 

旅人「し、しかし...」

 

一刀「しかしも案山子もないよ。甘寧は負けたら仲間になるという条件を飲んで勝負を受けた。ならそうなってしかるべきだ。殺すなんてとんでもない。」

 

甘寧「馬鹿か貴様。私を仲間になんてしたら、私を手配している村から何を言われるかわからんぞ。」

 

一刀「そんなの知ったことか。それに...」

 

 俺は愛紗に刀を引かせると、地面に腰をつけている甘寧の目線と同じになるまでかがむとにっこりと甘寧にほほ笑んだ。

 

一刀「君みたいにかわいい女の子を殺すことなんて、俺にはできないよ。」

 

甘寧「!?」

 

 一瞬にして赤くなる甘寧。

 

甘寧「ば、馬鹿か貴様。わ、私がかわいいだと!?そんなことあるわけがない!馬鹿にするのも大概にしろ!」

 

一刀「なら甘寧、俺の目を見てくれ。嘘を言っている目に見えるか?」

 

 赤くなりながら俺の目を見つめる甘寧。俺も甘寧の目をじっと見つめる。するとだんだんと赤くなる甘寧はついに顔をそらしてしまった。

 

一刀「どうだい?」

 

甘寧「...嘘は言っていないようだな...。」

 

一刀「そうだよ。だから今日から君は俺の仲間だ。いいかい?」

 

甘寧「...くっ、仕方がないな。...元よりそういう条件だ。これからは私を...その...

なんだ。...好きに使え。」

 

一刀「使うなんてつもりは毛頭ないけど...。でもこれからよろしくね、甘寧。」

 

思春「私の真名は思春だ。私の主となる以上、これからはそう呼べ。」

 

一刀「ありがとう、思春。」

 

 そこまで言うと今度は甘寧の部下たちから妙な気配を感じた。まさか...こいつらみんな思春のファンで俺に対して殺意を!?しかし、彼らから発せられた言葉は全く逆のものだった。

 

甘寧一味A「お、お頭が...お頭がついに男に惚れたぞ!」

 

思春「なぁ!?お前たち何を...」

 

甘寧一味B「あの頭がねぇ。グスッ...こんな瞬間に立ち会えるなんて...俺、今まで頭についてきて良かったぜ!」

 

甘寧一味C「やるじゃねぇかあんちゃん!俺たちのお頭をよろしく頼むぜ!」

 

 どうやら思春はよっぽど部下に慕われていたらしい。思春の部下たちはそれぞれ歓喜に震えたり、嬉しすぎるのか泣き崩れるものまで現われた。なんというか、部下というよりさながら愛娘を嫁に送りだす父親みたいだ。当の思春はというと部下たちの狂態にどうしていいのかわからずオロオロしている。そんな光景を微笑ましく見つめていると後ろからなんだか不穏な空気を感じた。こちらからは今まで何度も感じた、まるで虎のいる穴に放り込まれたようなものを感じる。

 

愛紗「...一刀様?」

 

一刀「あ、愛紗?」

 

愛紗「貴方はそうやっていつもいつも、女子(おなご)と見ると誰かれ構わず...」

 

一刀「いやぁ、これは...う...か、かわいい子にかわいいって言って何が悪いんだ!」

 

愛紗「そうですか...ふふふ。」

 

 やばい、今日の愛紗はやばい。愛紗の後ろで何か炎のようなものがメラメラと盛り上がっている。俺は何とかして助かろうと周りを見回す。

 

一刀「霞!頼む!助けてくれ!助けてくれるなら何でもするから!」

 

霞「いややもーん。今日のところは乙女心ちゅうもんがわかってない一刀が悪いんや。愛紗にたっぷり絞られてきぃ。」

 

一刀「そ、そんなぁ!」

 

愛紗「一刀様...?霞にまで色目を使う気ですか?」

 

一刀「!?そうじゃなくて...」

 

霞「ヤーヤメテー。オソワレルー。」

 

一刀「ちょ、ちょっと霞!?」

 

愛紗「...。」

 

一刀「待て愛紗。話せばわかる!」

 

愛紗「問答...無用!」

 

一刀「うぎゃああああああ!」

 

その日、それを最後に北郷一刀を見たものは誰ひとりとしていなかった。

 

 

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―あとがき―

 

なんか作品自体よりアップ方法に頭を抱えさせられている。こんばんは、れっどです。

 

アップ方法についてはコメント下さった方有難うございます。探り探りやりたいと思います、はい。今回は長い文章を少し切ってみました。時期見て書き方固まったら前の方も直す方向にしました。それまでは見づらいかもしれませんが、意見は色々受け付けたいので下の方によろしくお願いします。今まで読んでくれている人は本当にありがとうございます!

 

とりあえず6話をお送りしました。最初のあれはなんか書いてはいけない気がしてああなりました。他意はありません。それはともかく6話は加入イベントでしたが、霞の会話の下りで分かっちゃった人とかもいるのかな?筆者の三国志知識は恋姫のゲームと某三国無双のものしかないので、わからないことは調べていますが書かれている物によっては内容が全然違うと思います。そこはご容赦ください。外史なので!(外史って便利だな、これからも困ったらつかry

 

思春さんって恋姫だとかなりの忠臣だし、蓮華と会う前一刀に会ってたら結構デレてくれると思うんだ。すいません、完全に妄想です。

 

多分次回も加入イベントなので誰が来るのか予想するのも楽しいかもしれません。ヒントとしては「え、この人入れるの?あそこ大丈夫なの?」って人です。今のところも霞と華雄のおかげで董卓陣営がヤヴァイと言われているみたいですが...まあそこは外史ってことで!(やっぱり便利だな、これからもつかry

 

それではグダグダしてしまいましたが、仕方ない、もう少し付き合ってやるかという方はよろしくお願いします。

 

 

説明
恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第6話になります。
今回は一刀君たちのいる街に殴りこみが来たようです。
物騒だね!(投げやり
それではよろしくお願いします。
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コメント
クラスター・ジャドウさん 江賊にはなっていませんが、設定上ではそれっぽいことはしてましたかね。何しろいっぱい部下がいるので。(Red-x)
…ん〜、甘寧が着けている鈴が違うのは兎も角、一刀が治めてる村までわざわざやって来たって事は、荒くれ者達の首領ではあっても、まだ河賊にはなってなかったのかな?河賊稼業をやっていた場合は、孫権に出会って孫呉の将になってたんだろうなぁ…。(クラスター・ジャドウ)
ななのさんかな?美羽が一人になるからまさに「あそこ大丈夫?」状態になる(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
思春が仲間になったか。次はだれになるだろうか。(BLACK)
一騎当千、神速、猪、隠密・・・あとは軍師(戦略・内政)で一通り揃うかな・・・(真山 修史)
次あたりで鈴々を連れた桃香に訪れてほしいです。(竜羽)
蜀、董卓、呉……後はW駄名家と魏か。軍師がいないし桂花辺りか?(ロンリー浪人)
さすが一刀少しづつ種馬の本領を発揮してる。たしかに思春は蓮華に仕える前ならこんな反応でもおかしくないかな。(レイブン)
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恋姫†無双 関羽 張遼 

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