IS インフィニットストラトス〜騎士を駆る少年〜 |
とある日の放課後、俺と一夏とセシリアはISの練習をしていた。俺はビットの操作の練習をしていただけだったんだが。
「兄貴のそれってセシリアのブルーティアーズと同じなのか?」
「ビットという点では同じだが、セシリアのは射撃。俺のはエネルギーで作られるから、ほぼ無尽蔵に作れるんだ」
「それは接触しないと効果がない…ということですの?」
「ああ。だが使い方次第ではこんな事も出来る」
俺は空中に飛翔すると、エナジーウイングと両腕から大量のビットを生み出し高速で俺の周りを動かすと球状になって防御にも使える形態になっていた。
「凄いな…」
「でもこいつは大量のエネルギーを使う。幾ら燃費がいいと言っても限度があるからな」
「ビット系は操作が難しいのに…凄いですわね」
「セシリアは集中しすぎなんだよ。もう少し気を緩めた方が良い」
「そうですか?」
「ああ。まずは一夏で試してみると良い」
「人を試験用の機械みたいに言わないでくれよ。っていうか、俺じゃあまだセシリアに勝てないだろ?」
「そりゃあお前の機体は相手の隙をついてなんぼの機体だからな。急襲用の機体と言っても別に過言じゃないだろう。…ところで一夏、時間は良いのか?確か箒と剣の修行をするんだろ?」
「え?…うっわ、ヤバいヤバい!早く戻らないと!セシリア、兄貴!悪いけど先に行くわ!」
あいつも大概の馬鹿だな。時間に遅れたりしたら箒がどんな態度を取るか分かっているだろうに。俺はコアのデータをいじりながらそう思っていた。
「それでは私も失礼しますわ。お疲れ様でした」
「お疲れ様。しっかり休めよ…なんて言う必要はないか」
「ええ。いつか必ず勝ってみせますわ。覚悟しておいてくださいね?」
「分かった分かった。俺はちょっと泊まりがけで行かなきゃならない場所があるからまた今度な」
「え?一体どちらへ?」
「秘密さ。それじゃあ精々一夏といちゃついてると良いさ」
「ちょっと、草薙さん!?」
俺は着替えて受付に向かって走りだした。俺は教えるだけで、特に汗とかはかいてないからな。受付で山田先生に会った時には、出来る限り早めに帰るように言われた。泊まりがけの予定なのに何を言ってるんだ?
俺はバイクに乗ってとある場所に向かった。そこは…海だった。正確に言うと、海に近い家屋だった。
「ランスロット・アルビオン、起動」
俺は白の機械鎧を纏い、エナジーウイングを展開して飛び立った。そして更なる目的地に向かっている最中に膨大なエネルギー反応を感知したので、その場所に進路を変えた。
そこにあった…いや、いたのは白を基調とした鎧を纏う人だった。なんかふらふらしてるけど、大丈夫か?あれ?
「大丈夫ですか?」
「…一つ問いたい。ここはどこだ?」
「ここは地球ですが?それがどうかしましたか?【異世界からの漂流者】さん」
「異世界、だと…?」
「とりあえず所属と名前を教えてください。それぐらい、教えてくれますよね?」
「ヴェイガン所属のゼハート・ガレットだ。其方は?」
「秘密結社ブリタニアの主をしています草薙晃です。以後、お見知り置きを」
「ブリタニア?なんだそれは。それよりも戦いはどうなったのだ!?」
「ここは貴方の知る世界じゃない。少なくとも、人間がまだ宇宙に到達していない現状では戦いなど起きていない」
「そう、か…」
「とりあえずついて来て貰えます?貴方の治療やらこの世界についての説明をしたいので」
「…分かった。よろしく頼む」
俺たちはそのままアジトに向かうことにした。あんな所にいたら何時狙われるか分かった物ではない。
俺はとある海平洋上で止まった。ゼハートさんは訝しげな表情をしていた。いや、見えないけどね?雰囲気的に。
「光学迷彩解除。漂流者を回収した。怪我をしているようなので医療班の準備をしておいてくれ。通信は以上」
いきなり粒子が散り始め、しまいには巨大な島が現れた。と言っても、諸島レベルなんだが。
「これは…【見えざる傘】?」
「それが何かは知りませんが、違います。これは特定の粒子でその姿を隠す−−俗に言う光学迷彩って奴です」
「光学迷彩?よく分からないが、宇宙に進出していないのによくこれだけの設備が創れるな」
「これは別の異世界から漂流者さんから教えて貰った技術ですから。それに一般社会が進出していないだけで俺たち【ブリタニア】のメンバーはすでに進出しています」
「…何故技術提供をしないんだ?更なる発展に繋がるだろう?」
「発展ばかりすることが良いことは限りませんから。それに人は誰かの手を借りるのではなく、自分たちの手で到達するべきなんですよ」
「…それもそうだな」
俺たちはビットに降りて、ゼハートさんは怪我を負っていたので医療班に連れて行かれた。対する俺はというと…
「直接会うのはこれが初めてですね。初めまして。ブリタニアの主、草薙晃です」
「ZAFT軍所属のシン・アスカです」
「同じくZAFT軍所属のルナマルア・ホークです」
アスカさんとホークさんと対面していた。これがコーディネーターって人種なんだ…。
「さっそくですが、ここの生活は如何でしたか?」
「快適でした。この世界がどういう世界なのかも伺いました」
「では一度街に出てみては如何ですか?」
「え?いいの?」
ホークさんがちょっと間抜けな表情を浮かべていた。面白かったのでつい笑ってしまった。
「あははははっ。…全然構いませんよ。他の2人にも言ったんですが、俺としては皆さんを束縛する気はまったくありません。
むしろ自由にしたら良いんですよ。でも2人は一回街に出たら割と直ぐに戻ってきましたから。ですから、ホークさんよりもアスカさんは気を付けた方が良いですね」
「そこまでなのか?」
「さあ?刹那さんもバナージ君もその辺は語りたがりませんから、俺は分かりませんし。まぁ、異世界からの方には少し厳しいでしょうね。
あ、お金が必用なら事務に申請してください」
「お金も出してくれるんだ」
「一定額まで、ですがね。別に働いて頂いても構いませんよ?何時買い物に行けるか分かりませんが」
「まあ急いではいないけど。ところで訊いてもいいか?」
「はい?なんでしょうか?」
「どうして君たちは戦うんだ?」
「え?」
「この間、新しい量産機とISの量産機のスペック差を比べたら問題外のレベルだった」
「そりゃあそうでしょうね。…それで戦う理由でしたっけ?それは簡単ですよ。
全世界にあるIS…総計467機を総て破壊することですよ」
「…本気か?」
「アスカさん、ホークさん。そもそも、何故女尊男卑などという物があると思います?」
「え?そりゃあ…ISが登場した所為じゃないの?」
「そう。ISが女性しか使えないからです。…俺はね、力ある者にはそれ相応の権利があるべきだと思うんです」
「言い換えれば力のない者には権利などいらない、ということか?」
「アスカさん、正しいことを言って罰せられることは、おかしいことだと思いませんか?
この世界では万事において、女性が勝利する。であるが故に、男性はどうしようもないんです。極端な話だと殺されても、ね」
「「なっ!?」」
これは事実だ。昔、世界中を旅していた時にそういう現場に遭遇したことがある。その人は救助して現在はこの島で働いている。
「そんな事が…許されるのか?」
「女性というだけで無法地帯も当然なんですよ。まあ、さすがにこれは極端すぎる例ですが。
結局俺が言いたいのは、ISとは何ら関係がない女性まで特別視するのは問題、ということです」
「だから…世界を変えるのか?でも、それは!」
「傲慢である事は重々承知していますよ。それでも、俺は戦う。己の願いと己の守りたい者達の為にも、ね」
それは未だ15、16歳の少年が抱くような覚悟ではない。それは、軍人であるシンとルナマルアがよく理解していた。
「別に俺は戦争をしたい訳じゃないんですよ。戦いよりも平和の方が大事であることも理解しています。
だけど、それでも!嘆きは、恨みは、辛みは、復讐の心は止まらない。止められる…訳がないのだから」
「それでもどこかで連鎖を断ち切らなきゃ誰も救われない」
「救われない?救われるって何ですか!?
こんな血も涙もない現実で必死に生きていたのに、いきなり家族を喪うことの苦しみが、簡単に晴れる訳がない!
ここで訓練を受けている者達にとって、復讐ってのは支えなんですよ。
復讐が何の意味も為さないことぐらい知っている!家族が返って来ないことぐらい…知っている!
でも!それでも!倒さなきゃいけない。そうしないと前に進めないんだから。
貴方達だって軍人だ。家族が、同僚が殺されれば悲しいし辛いでしょう?貴方達だって、感情で引き金を引いたこともあるでしょう?そんな貴方達に否定されるような謂われはない」
「…確かに俺達だって人を殺してる」
「…シン」
「でも、だからこそ戦争は止めなきゃいけない。君達の行動で悲しむ人が必ず出てくるんだから」
「…確かにアスカさんの言うとおり悲しむ人だって出てくるでしょう。でも、俺はそのために被害者が我慢すべきだとは思いません」
「これ以上は平行線だな」
「そう、ですね…。とりあえず、すいませんでした。お客人なのに怒鳴ったりしてしまって」
「いや、こちらも色々と言い過ぎたからな。気にしてないし、むしろこっちの方が申し訳ないと思ってるから」
「そうですか?それじゃあお詫びと言っては何ですが、俺の専用機のテストを見て行かれますか?」
実は俺の専用機はまだ完成していない。だからこそ、俺は色々なコンセプトで機体を作り上げいろいろとデータを取っていた。
そこに更にガンダムのシステムを導入した…のは良かったんだが、その所為で必要なパーツを集めるために時間が掛かったがようやく形になった。
今回、俺がここに来た理由は俺の専用機である最新鋭にして全KMF中で最高の性能を誇る【ペンドラゴン・クロスエンド】を受け取るためだ。
こう言ってはなんだが、ISに男が乗れるというのは異常だ。世界はより危険な方に加速する。亡国機業(ファントム・タスク)も活動している今、早急に動くための力が必要になる。技術的に見てこの機体に勝てる存在しない。
それにナイト・オブ・ラウンズの専用機の第9世代化に加え、一般兵の機体の変更とやることは沢山残ってるからまだ動けないんだが。
「で、殿下!」
「うん?どうかしたのか?」
「最初の漂流者の女性が目を覚ましたそうです!」
「なんだとっ!?それは本当か?」
「は、はい。意志の疎通も可能です。あと新たな漂流者の方の治療が終了しましたので、すぐにここに参られます」
この最初の漂流者さんは傷だらけの機体を纏って空から落ちてきたんだ。意識もなくてずっと寝たままだったのになんでだ?
「どうかしたのか?」
「あ、ゼハートさん。黙って俺に付いてきて貰えます?」
「よく分からないが…分かった。案内してくれ」
「はい。お二人は自由になさっていただいて結構です。失礼します」
俺とゼハートさんは走ってとある部屋に向かって行った。俺が扉を開けるとそこには薄い紫色の髪を下ろしている女性がいた。
「本当に起きている…。あ、申し遅れました。ここの主をやっています。草薙晃です」
「私は…「フラムッ!」ゼハート…様?」
突然ゼハートさんが走って女性に抱きついていた。やっぱり知り合いだったんだ。上司と部下って感じだな。
「よく…生きていてくれた…っ。ありがとう…フラム」
「ゼハート様…また再びこうして出会えたことに感謝します」
…俺はここにはいない方が良いな。俺はサラッとメモから書いたもの机に残して立ち去った。
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