残念美人な幼馴染が勇者として召喚された 第9話 |
「・・・というわけだ。自分がどれほど無茶をしたか分かっているのか?・・・・・・お腹に大穴開けて・・・本当に、死んだかと思ったんだから。」
「・・・あー、何というか・・・ゴメン。」
ちょっと泣きそうになっている凛音を見て、物凄い罪悪感が湧き出てくる。・・・でも同時に、少しだけ嬉しくなって口元がにやけてしまう。
「あっ、何よ龍騎。何が可笑しい!?」
それを見た凛音が、自分が笑われたのかと勘違いして起こっているから、その勘違いを正しておく。
「違うよ凛音。・・・俺は、自分が逃げ出さなかった事を喜んでいるだけだ。」
「・・・え?」
「・・・そうかぁ・・・・・・俺は、ちゃんと戦えたのか。今までで一番ピンチだったあの場面で、お前に任せっきりにしないで戦えたのか。今までみたいに足で纏いじゃなくて、ちゃんと守れたんだな。・・・・・・良かった。」
「・・・龍騎。」
その時の記憶が無いから不安だったんだ。・・・また俺はコイツに救われたんじゃないかって。アレは、間違いなく今まで経験してきた中で最大のピンチだった。数秒後には間違いなく死ぬ事が確定していて、それ以外の選択肢なんか無いように思ってた。・・・でも、俺はコイツらを救えたらしい。それが・・・とっても嬉しかった。やっとコイツに追いつけたような気がして。
「・・・お前が私を置いて逃げた事なんて、今まで一度も無いよ。・・・それに、足で纏いだと思ったことも・・・無い。」
「え・・・?」
「・・・な、何でもない///」
俺、ちゃんと認められていたのか。・・・何か、凄い嬉しい。まさか、死にかけることでこんなに嬉しい言葉が聞けるとは・・・異世界召喚されて良かったかもしれん。
「姫様、よく見ておくんですよ。コレが本物の信頼関係で結ばれた、相棒と呼ばれる人たちです。・・・姫様も、結婚するならこういう男性にしなさい。」
「うん・・・。」
何か変な空気になってきたので、無理やり話を変える。流石に恥ずかしい。
「・・・で、結局俺の魔法って何?」
「それが、よく分からないんですよね。過去の文献を漁って見ても、貴方の魔法に類似する物は見つかりませんでした。・・・まぁ、勇者の持つ魔法って、僕達『((芸術|アート))・((魔術師|マジシャン))』と同じように、一代限りの特殊な物が多いらしくて。・・・例えば、さっき話した三百年前の勇者の魔法は、『自然操作』っていう魔法だったらしくて、火だろうが風だろうが雷だろうが植物だろうが、凡そ自然に存在するものだったら何でも操作出来るっていう魔法だったらしいよ。・・・まぁ、ここまで強力な魔法だったら、そりゃ邪神も倒せるよね。」
その勇者流石にチートすぎるだろう?凛音レベルのチートじゃねぇか・・・。
「で、お前たちの魔法が特殊ってどういうことだ?」
そこで凛音が割り込んできた。どうやら、((芸術|アート))・((魔術師|マジシャン))とやらに興味を持ったらしい。
「私たちの使う『((芸術|アート))・((魔法|マジック))』は、基本的に同じ魔法は発現しないんだよ。」
「どういうことだ?」
言っている意味がよくわからない。
「うーん、説明が難しいな。・・・例えば、隣の国セベスの人間は、『錬鉄魔法』という魔法を使う事が出来る。その魔法は、魔力を使用して鉄を生み出し、加工することが出来る魔法なんだ。主に、他国に武器や生活雑貨を売ることで生計を立てている。」
ここまではいいかい?と聞かれ、俺たちは頷く。
「で、当然、『鉄を生み出して加工する』というだけの魔法だから、弟子にも教えやすいよね?魔法にも上手く使う為のコツがあって、それを技術として教えることが出来る。」
「そうだな。腕の善し悪しはあれ、それをするだけの魔法ならば弟子に伝えることも容易い。」
凛音が頷く。例えば日本の伝統芸能だって、過去から現在まで、師匠から弟子に脈々と受け継がれてきたから残っているんだ。それを上手く扱うためのコツなんかが無いと、後世にまで受け継ぐことはほぼ不可能だからな。
「でも、『芸術魔法』はそういうことが出来ないんだ。」
「ん?どういうことだ?」
「僕たちの魔法はね、その個人個人が芸術だと思うものしか発現出来ないからだよ。」
説明 | ||
口癖は「飽きた。」熱しやすく飽きやすい幼馴染と俺が、異世界に勇者として召喚された。・・・俺はオマケだったらしいが。・・・だけどさぁ、この『残念美人』を制御出来ると思ってる訳?最悪の場合、コイツに色々されて世界滅ぶんじゃないの?しょうがない、俺が手綱を握ってやるかね。 | ||
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