語られし者たちとIS 世界樹大戦 第17話 特訓の成果 千冬の疑問 |
学年別トーナメント前日の夜、一夏はいつものように異世界で修業をする
一通りやることが終わったのでジュディスに報告をしていた
「明日は学年別トーナメントね。これを渡しておくわ」
一夏はジュディスから透明な水晶のようなものをもらった
「リミッツ・デュオ、あなたの闘気をより蓄えることができるようになる道具よ。今までの2倍の闘気を溜めることができるうえ、今までの2倍の闘気を解放だってできる。もちろんいつもよりも強力な力を発揮できるの。今のあなたになら使いこなせると思うから渡すわね。そうそう、さらにこれよりも強い道具があるのだけれど、それについてはトーナメントが終わってから教えてあげる」
(さらに闘気を蓄えられる道具……この道具からもかなり強い力を感じる……)
一夏はもらったアイテムを見てそのことを感じた。それを自分のポケットの中にしまった
「さて、明日の試合だけど大丈夫?」
「ええ、何度かシャルルとのコンビネーションは試すことができましたし、ラウラの動きを止める技の対策はできています。それに……あの技もだいぶ完成させました」
「そう、なら楽しんできなさい。アリーナから見ているわ」
その言葉を最後に一夏は異世界を出て元の世界に戻り、自分の部屋に戻った
同室しているシャルルが迎えてくれた
「おかえりなさい。何か飲む?」
「いや、大丈夫。それより明日頑張ろうぜ」
一夏はシャルルにいつも散歩と言って出かけている。一度一緒に行きたいと言われたが、さすがに異世界には連れていけないので断った
「頑張ろうね……そうだ、一夏。言い忘れていたけどペアに誘ってくれてありがとうね。僕が女の子ってばれないようにしてくれたんだよね?」
「気にするなよ。俺達友達だろ?」
そんな答えにシャルルは満足したのか笑顔で頷いた
体調を万全にしたいため、一夏はすぐにベッドに入って眠ることにした
目を閉じて少ししてからシャルルが何かつぶやいていた
「全く……一夏はずるいよ。こんなに優しくされたら僕……ありがとうね、一夏」
次の日はトーナメントということもあり朝から賑やかだ
聞いた話だと三年生は企業へのアピール、二年生は一年間の成果という目的があるらしい
最もそれは国の代表候補である鈴やセシリアにも言えることなのだが、今回参加できないのは悔しいだろう
それよりも……一夏にはその彼女たちを傷つけた人との戦いだけを見ていた
「一夏はボーデヴィッヒさんとの戦いだけを考えているんだね。でも気をつけて、彼女は多分一年の中では最強だから」
シャルルと二人で話していた。男子更衣室には他に誰もいないためかなり広い場所を二人で使っている
急にタッグ戦となったため誰と戦うかまだ分からない状態らしく、試合前に対戦表がわかることになっている
二人が着替え終わると同時くらいに更衣室にあったモニターに対戦表が出てきた
それを見て二人は驚いた。一番初めの対戦カードが一夏・シャルルVSラウラ・箒だったから
アリーナの競技場、すでに四人は戦う準備ができている。しかし箒だけはどこか表情が固い
一人だけ専用機ではないこと、最初に一夏と戦うことになったこと、色々と複雑に思っているのだろう
「まさか初戦で当たるとはな……だが、ちょうどいい」
「そうだな」
ラウラとしては箒と組んだ理由は特にない。しいて言えばお互いにペアを見つけることができなかったから
ラウラ自身、一人で充分だと考えている
すぐに試合開始の合図が鳴った
一夏達はすでにラウラの動きを止める攻撃、AICに対しては対策ができている
そのための作戦はすでにシャルルに伝えてあるようだ
「シャルル、頼んだ!」
「うん、油断しないでね」
シャルルはすぐに箒の下に向かい、一夏はラウラと対峙する
「いいのか? パートナーを助けに行かなくって」
「ふん、あんな奴がいなくとも私一人で充分だ。さっさと片付けてやる」
「そうか、じゃあ俺達が負けることはないな」
一夏は笑いながらラウラと戦い始めた
だがしばらく耐える攻撃は控え、エネルギーの消耗を抑えている。そんな一夏を見てラウラは防戦一方なのかと鼻で笑っていた
一方、シャルルは箒と戦っていた
「ごめんね、一夏と戦えなくて」
「な!? 馬鹿なことを言うな! さっさと倒してやる」
そう言いながら箒は攻めるが、シャルルはそれを狙っていたかのような攻め方をする
シャルルの攻撃に翻弄され、箒は全く攻めることができない
あっという間に箒のISのエネルギーが尽きてしまった
すぐさまシャルルは一夏の所に戻った
「早かったな」
「まあね、一夏を待たせたら悪いと思って」
一夏は持っている雪片弐型を握りしめ、一気にラウラに攻撃を仕掛ける
もちろんラウラはAICを使ってくる。だが、それが狙いだ
一夏の動きを止めた瞬間、ラウラは笑っていた。だが、その時を狙ってシャルルが狙撃をする
「貴様ら……」
「その技、一人に対して集中していないと使えないんだろ?」
(なるほどね。確かに相手の動きを止めるなんてかなり強いけどその技を使うには集中力がかなり必要。だからこそ1対1には向くけど今回のような複数人と戦う時は意味がないのね)
ジュディスの言うとおりである。数日前、一夏は鈴とセシリアがラウラと戦った時の話を聞いて少し考えていた。動きを止める技、何か制約があってもいいと
一度ラウラに動きを止められた時に簪が攻撃したら一夏は動けた
そこでよく考え、自分の考えをシャルルに伝えたら恐らく正しいと思うという答えが出ていた
そして今、それは正しいことが証明された
「さすがですね、織斑君とデュノア君のペアは。すでに1対2ですね。その上コンビネーションも抜群ですし」
「ふん、あんなのはコンビネーションとは言わない。デュノアが合わせているだけだ」
(まあ! 自分の弟の事を褒めてもいいのに)
観察室のモニターで真耶、千冬、アンジュの三人はモニター越しに試合を見ていた
もちろん千冬にアンジュは見えていない
(それに……どうやら弟さんの、一夏君の実力に気が付いていないみたいね)
(そうですね、この前のクラス代表戦よりも実力を上げていると思います)
アンジュと真耶は一夏の力に興味を示していた
自分たちも多少は特訓をしている。すでに真耶もオーバーリミッツを会得している
しかし彼はそれ以上の力を持っているのではないか? そう思えてしょうがない
「それにしても今回タッグ戦にしたのはこの前の襲撃事件があったからですか?」
「そうだ、今年の新入生は第三世代のISが多い」
(なるほどね、確か第三世代のISってまだうまくデータが取れていないからとにかく起動させてデータを取るということね)
「でも他の子達は?」
「その第三世代の兵器を守るため、教師だけでは不足する場合がある。つまりは自衛のためだ」
その答えに納得する真耶。しかしアンジュはあまり納得していないようだ
(……つまり国の財産を守るために学生が頑張るということなのね)
(まあそう言う見方もできなくはないですけど……)
そのまま試合は動いていた
「やはり篠ノ之は負けたか。まあ専用機持ちでなくとも性格の問題でデュノアとの相性は悪いからな」
「それにしても1対2になってしまったのにボーデヴィッヒさん、余裕そうな表情ですね」
「強さとは攻撃力だと思っている。変わらないな」
千冬はつまらなそうに話す
そのまま一夏は零落白夜を繰り出していた
「ふん、そんな簡単に決まるものかな」
千冬のボヤキを聞いた真耶の感想は違った。彼は本気で零落白夜を使っていない
(あの軍人の子、間違いなく負けるわね……仮に一夏君のパートナーがいなくても)
(そこまで言えるんですか? 確かに織斑君は強いと思いますけど……ボーデヴィッヒさんだって)
(あら? 簡単よ。仲間を大事にしない人は弱いのよ)
そんなアンジュの言葉に真耶は納得していた
「知っているぞ、零落白夜の事。だが当たらなければどうということはない」
一夏が零落白夜を使うことを分かっていたのか、ワイヤーブレードや銃器を使って距離を離す
しかし一夏にはほとんどの攻撃が見切れているのか、綺麗にかわして射程範囲内に入る
「ち、ちょこまかとうっとうしいやつだ。だが、お前の動きを封じればいいだけだ」
そのままAICを打ち込み、一夏の動きを封じた。だが、一夏は笑っていた
捕まえたと思った瞬間、ラウラは狙撃されていた。シャルルが死角から攻めているのだ
「悪いな、お前と違って俺には頼れる友がいるんだよ」
動けるようになった瞬間、もう一度零落白夜を起動させる
だが、エネルギーが切れてしまったのか効果を発動できなかった
「この場面でエネルギー切れとは……残念だったな。そのまま散れ!」
「それはどうかな?」
いつの間にかシャルルは間合いを詰めていた。すぐにAICを発動させようとしたが、一夏がそれを妨害していた
……零落白夜を使って
「な!?」
「俺は一言もエネルギーが切れたなんて言っていないぜ? さっきはわざとだ」
怯んだラウラは、もはやこのまま攻撃を受けるしかない。誰もがそう思って試合を見ていた
そのままシャルルの近距離最大の攻撃、シールドピアスをまともに喰らってしまった
ラウラは吹っ飛びアリーナの壁に激突した
壁にめり込んだままラウラはショックを受ける
(馬鹿な……こんな所で負けるのか? 確かにあいつらの力を見誤った。だが、それでもあいつには……教官に汚点をつけた弟に負けるのだけはあってはならない!!)
彼女は今までずっと戦いの中で生きてきた。一度は最強の称号を手に入れたのだが、とある事情で一度出来損ないという烙印を押された
しかしそんな彼女を救ったのは千冬だった
彼女の特訓を受け、ラウラは再び強さを手に入れた
一度、千冬に質問をした。どうしてそんなに強いのかと
しかしその答えはラウラの予想外のものだった
優しい表情で弟のおかげだと答えた
ラウラはそんな彼女の表情が嫌だった
(なぜそんな人のために……そいつはあなたの輝かしい記録に泥を塗ったやつだ)
そんな顔をする原因を作った男、千冬の弟は許せなかった
そしてそいつを完膚無きにまで叩きのめす。そうするはずだった
しかし今、彼に敗北しかけている
(力が欲しい。あいつを倒す……力を!!)
そうラウラが願った瞬間、彼女のISに電流が走った
「ぐあああああ」
ラウラも同時に絶叫をした
何が起こったのかと見ようとした時、ラウラのISに変化が起こった
急にISが黒くドロドロに溶け、彼女を包み込む
そして彼女は黒い全身装甲となった。今の彼女に意識はない
そう一夏とシャルルには感じられた
黒い装甲の人物はある刀を持っていた
「雪片……」
(一夏と同じような刀ね……まさか千冬と同じなの?)
騒ぎになったため、近くにやってきたジュディスの言葉に一夏は頷いた。かつて千冬が使っていた武器である
武器だけではない。この事態を止めようと入ってきた教師たちを対処する時の構え、攻撃の仕方、すべてが千冬と同じものだった
一夏はその姿を見て持っていた雪片弐型を強く握りしめた
(一夏、落ち着きなさい。あの存在が許せないのはわかるけど)
ジュディスの言葉に冷静になる一夏
「どうしたの? 一夏」
「あいつは……千冬姉のデータだ。そんなデータに操られているラウラが何だか嫌な感じがするんだ」
シャルルの言葉に一夏は答えた。それを聞いていた箒は一夏を止めようとした
「成程な、だが今の私たちにできることはない」
「箒、それは違う。俺はあいつを止める」
箒の意見を否定し、一夏は構える
闘気を解放させる。今回は1段階だけのようだ
(? 何だろう、一夏の力が強くなるのを感じた……)
シャルルは一夏の変化に気が付いていた
一夏はそのまま黒い装甲に包まれたラウラに攻撃を仕掛けた。千冬の動きは一夏も知っている
(今だ!)
白式の瞬間加速を使い、テンポを乱し、相手の隙を狙って零落白夜を展開させて切り裂く。だが、相手はまだ立っていた
しかし一夏の攻撃は止まらない
「バースト・アーツを受けてみろ! 零落! 白の一線!!」
一筋の線を描くように駆け抜けながら切り裂く。かなりのダメージを与えたのか相手の動きがほとんど止まった。そして一夏は相手の隙を見逃さなかった
「そこだ!!」
飛び上がり、装甲を両断するかのようにてっぺんから切り裂いた
これが決まり、切り裂かれた黒い塊の中から気を失ったラウラが出てくる
一夏はそれを受け止める。そして受け止めた彼女だけに聞こえるように話した
「ふう、こんな物に頼った所でお前は千冬姉に近づけない。それと俺もお前もまだまだ成長する。目標があるんだからな」
そのままラウラは駆け付けた教員によって保健室に連れて行かれた
(お疲れ様、上出来よ)
(ありがとうございます、ジュディスさん)
「……ここは?」
「気が付いたか」
夕方の保健室、ベッドで眠っていたラウラ。そしてその隣には千冬が
「私は……一体……? そもそも……何があったのですか?」
「……機密事項だがな、お前のISにVTシステムが組み込まれていた」
VTシステム、過去にあった優秀な人物の動きのデータを真似するもの。しかしそれは使用・開発等禁じられている
それが使われた、これにはドイツ軍に何かしらあると思われる
発動条件は操縦者の願望、つまりラウラが願ってしまった。千冬になることを
「ラウラ・ボーデヴィッヒ! お前は誰だ?」
「……私は……」
突然の千冬の質問にラウラは答えることができなかった
「ならばこれから三年間で自分自身を見つけ出せ。それから他にもたくさん学んでしっかりと励め、小娘」
そう言い残して、千冬は去っていった
(……私自身を見つけるか。あいつは……織斑一夏という自分を持っているから強いのか? あいつの眼は……言葉は……教官とはまた別の強さを感じた。知りたい……その正体を)
ラウラは窓の外を見て考えていた
どうやって一夏と向き合うか、これからどうやって自分を見つめるのか
一方部屋から出て言った千冬は複雑な表情で考え事をしていた
(……まさか、あんなにあっさり解決するとは思ってもいなかった……それもあいつが……)
一夏のことである、彼は素人もいい所、ラウラに勝ったのだってシャルルが八割以上貢献していると思っている
だが違うのではないかと思い始めた
一夏だけではない
(真耶も……去年とは雰囲気がまるで違う。頼りないような感じだったのが落ち着いている。そして鳳の強さも……一体どうなっているんだ?)
そのまま考えてみる。まずは真耶だ。雰囲気が変わり、落ち着きを持った良い先生になっていた
何より、自分に自信を持っているからか、千冬に対して意見を言うことも増えた
教師として成長していることは喜ばしい事なのだが、変化が急すぎる
そして代表候補とはいえ所詮15歳の女子、そうやって鈴のことを考えていたが違和感を持っていた
フォルスと呼ばれた何やらよくわからない力を使って攻撃していたこと
他にも本音や簪、楯無や虚の生徒会メンバーにも何か変わった感じがしていた
そして最も大きく感じたのは一夏だ
中学二年の正月から約一年、千冬は彼に会っていなかったが、大きく変わったように思えた
そもそもISの使い方がものすごく発達している。アリーナで稼働させている時間から考えてあり得ないくらいの成長速度
それから戦闘技術
(今まで私が教えてきた型が完全に崩れていた。あいつが何処かの道場に通ったとかそういう話は聞いていない……)
(それにあいつの雰囲気が違いすぎる。まだまだ未熟な奴だと思っていた。だが、いつの間にかものすごい闘気を感じた)
千冬はため息をつきながら考え続けた。しかし答えは見つからない
(……一体、あいつらはどうなっているんだ?)
千冬は困惑したまま次の仕事に向かった
スキット 教師として思うこと
夕方、事務処理を行っていた真耶にアンジュは質問していた
「それにしてもラウラが変化したあれは一体なんだったの?」
「VTシステムですね。あれは世界大会優勝者の動きをコピーしたものです。しかしその使用・開発などは禁止されています」
「彼女は知っていたのかしら?」
「いいえ、織斑先生の話ではドイツ軍が勝手に入れたそうです」
その話を聞いてアンジュはため息をついていた
「何というか……この世界の子供たちは本当に苦労しているのね。一夏君はもちろん、一夏君と組んでいたあの子も……」
アンジュはシャルルの正体を何となくわかっていたのだろう。先日、真耶にそのことを話した時には驚いていた
「……そうですね。詳しい事情は分からないんでしたっけ?」
「ええ、あの子が自分のことを話した時に力になれるといいわね」
「わかりました。頑張ります」
アンジュの期待に応えられるようにと笑顔で答えた真耶だった
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コメント | ||
神薙さん、ありがとうございます。 自分のイメージした各々の印象が強すぎて信じたくなかったみたいな感じだと思います。(しゅーろう) っていうか今更気が付いたのかよ千冬さん…あんたの原作での感の鋭さはどこ行った…。(神薙) 神薙さん、感想ありがとうございます。 確かにその方がテイルズっぽい感じがしてよさそうですね。使わせてもらってもよいでしょうか?(しゅーろう) 白の一線っていうのを白之一閃って変えて更に厨二臭くしてみましょうよwww(神薙) |
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