IS ~愉快を求める転生者~ 第9幕 英国との接触 |
「ふぅー、ちょっと長居しすぎたか?」
一限どころか二限目までサボった京也は、教室へ戻るため長い廊下を一人歩いていた。
ちょうど授業が終わったところか、通る教室を横目にすると生徒達が自分の席を立っていた。
(・・・確かに学校は学校なんだけど、やっぱ元の世界の学校と全然違うよな。
明らかにこっちの方が科学発展してるし、温暖化とかどうなんだ?)
地味に環境問題を気にするが、やはり気になる。
実際に人類の生活が豊かになるのに比例して自然環境は悪化していた。あの世界でさえ問題視されていたぐらいだから、この世界はもっと深刻なんではないかと思った。
しかしそんな噺はご割愛。
同時に環境問題ともう一つ、京也は別の問題を抱えた。
(あー、戻るタイミング間違ったかなー。視線が痛いんだけど)
教室の出入り口から背中にズブズブと刺さるのに、理解するのに振り返る必要はない。
ここはIS学園。ISは女性にしか起動させられないので、本来ならば男子生徒がいるわけもない。
そしてその例外は一人ウチのクラスにいるあの男。
全世界に名を知らしめた織斑一夏意以外の男子生徒が制服を着て学校にいることは、謎でしかない。
不思議そうにこちらを見る生徒、奇怪の目線を送る生徒、何故か目を輝かせる生徒。
(よし、走ろう。というか逃げようこの状況から)
教室までおよそ100mぐらい。割と距離があるので人目に付くことは避けられない。
歩むことを止めず、安直な結論を出す。
「・・・7秒、かな」
踏み出した右足に、重心を乗せた。
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自分のクラスに何とか辿り着き、向こう側からはひょこっと現れたように見えるよう教室に入る。
「ふーっ、あんな珍獣扱いは嫌いだよ・・・ん?」
『聞いてますの!?お返事は?』
急に耳に刺さってくる声が響く。おおっと、確かこの流れは...
「悪いな、俺キミが誰だか知らないし」
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを!?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」
...そういえばそうだったよ。最初のイベントはセシリアだった。ロールのかかった金髪にややつり上がった目。イギリス代表候補生でこの頃は男を見下す傾向有り...だっけか。
「あ、質問いいか?」
織斑一夏が唐突に口を開いた。
明らかに初対面の人に対する口の利き方ではない。セシリアは不服そうに鼻をならす。
「ふん下々の者の要求に応えるのは些か不満ではありますが、まあいいでしょう。よろしくてよ?」
「代表候補生ってなんだ?」
(ガダダダッ)
クラスに居た人間が同時にずっこけた。
マジか...そういやアイツ全くの無知だっけな。流石にこれは見てられないな。
「・・・代表候補生というのはだな、国家IS操縦者にするために国が選抜した、いわゆる卵だな。国家IS操縦者の。もちろん実力もそれなりに高いらしい、いわゆるエリートだな。」
「あ、ありがとう。えっと、確かお前は...」
「興野京也だ、一応自己紹介はした。あと呼ぶのは京也でいい」
「お、おうありがとう京也。織斑一夏だ。俺も一夏でいいぜ」
「わかった。よろしくな一夏」
「何勝手に自己紹介始めてますの!?」
シビレを切らした金髪ロール(俺銘々)が怒鳴った。
「なんだい?知識の提供しただけだけど?俺何か悪いことした?」
「悪くはないですが...はぁ、極東の島国には礼儀という概念が存在しないのかしら」
暴言を吐く金髪ロール。そしてその発言に苦虫を?み潰したようにイヤな顔をした周りの女子生徒がいたのを見逃さなかった。
さすがに、言われっぱなしでは面白くないな。
「あのさぁ...その言葉そっくりそのままお返しするよ。相手方のことを知っているとはいえ、一応初対面だから会話するときの言葉ぐらい選ぼうよ。開口一番に相手を見下した物言いで、なおかつその母国を侮辱する。自分に置き換えなよ。もしイギリスが侮辱されたらどんな気分だい?イヤかい?イヤだよね?とりあえずそこら辺習ってないなら幼児からやりなおしな」
言いたいことを出来るだけ短く、綺麗に汚くまとめる。口を閉じた瞬間、周りが沈黙した。
目の前の少女に限っては口をパクパクさせている。音が出ないのか?
「あ・・・・・・あ・・・あ・・・」
「「あ?」」
不安定な少女は口を閉じる。そしてまた開く。
「あなたなんてこと言いますの!?しかもよりにもよってこのわたくしに『幼児からやりなおせ』などと・・・!」
おお、どんどん顔が赤くなっていく。
「・・・まあいいですわ。そのくらいのことを許せる位の寛大な心は持ち合わせていますので。あなた少しは学がお有りのようですわね。しかしそちらは・・・」
鋭い眼光が一夏を捉える。
「・・・まあ泣いて頼まれたら教えてあげないこともよくってよ。何せわたくし、入試で唯一!教官を倒したエリート中のエリートですから」
やけに唯一を強調して言い放つ金髪ロールは、これでもかと言わんばかりに胸を張る。ちなみに俺はこういう状況に関しては束で慣れてしまっているので何の問題もない。
「入試って、あれか?ISを動かして戦うってヤツか?」
「俺は知らないよ、だって受けてないし。一夏もやったのか?」
「受けてないって、じゃあどうやって入ったんだよ・・・。ああ、受けたぞ。というか俺も倒したぞ、教官」
至極同然という感じで言葉を漏らした一夏に、その言葉を理解した(かどうか怪しいが)少女が固まる。
「は・・・?」
「いや倒したっていうか、相手が動かなくなったんだけど・・・」
なんという運ゲー。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子では、ってオチじゃないのか?」
セシリアの顔にどんどん血が溜まっていくのが視認できるほどになる。だが京也は気付かない。
「多分そうだな。ちなみに俺が受けてないのはその必要がないからだけどね」
「そうなのか?ちなみになんでだ?」
一夏が首をかしげる。
「いや、俺この学校の織斑先生以外の教官より強いから」
(ドカンッ!!)
この一言を言った瞬間、目の前の火山が噴火してしまった。
「・・・で・・・・ん・・・」
「ん?」
「なんですの・・・人にあれだけ言っておいて、結局自分が一番言われる立場じゃありませんか・・・」
喉の奥から絞り出すような声、まるで地獄がら響いて来るように場を支配した。
「まあまあ、とりあえず落ち着きなって」
「これが落ち着いていr『キーンコーンカーンコーン・・・』くっ!この話は後でいたしますわ!」
完璧なタイミングで鳴るチャイム。やはり空気を読んでくれている。
「・・・京也、なんだったんだ今の?」
「さあね。ま、覚悟は必要だろうな」
一言だけ漏らし、自分の席に着いた。
************************************************
「それではこの時間は再来週行われるクラス代表者を決める」
教壇に立った千冬の第一声はこれだった。
(むー・・・これは逃しちゃダメなウィークポイントだな。原作でも一夏が代表。何事もなく進んでくれるとうれしいんだが・・・)
「クラス代表者とはそのままの意味だ。言ってしまうと・・・まあクラス長だな。クラスの実力推移を測るために行われる対抗戦も代表者が行う。現時点でたいした差はないだろうが、競争は向上心を生む。年間を通して勤めてもらうのでそのつもりでいろ」
説明がざっくり過ぎるが、要は雑用だな。死んでも御免だ。
そして確か原作通りならここで、
「はい!織斑くんを推薦します!」
一夏への推薦が入る。
「私もそれがいいと思いますー」
次々に入る一夏の票。当の本人は慌てふためいている。
「では候補は織斑一夏・・・他にはいないか?」
「お、俺!?」
まるで今気付いたかのように立ち上がる一夏。
「織斑邪魔だ。言いたいことでもあるのか?ちなみに推薦の取り消しは認めん」
「そ、そんな千冬ねえ・・」
「織斑先生と呼べ」
風を切って出席簿が一夏の眉間に吸い込まれる。
「あだっ!い、いやじゃあ俺は・・・」
額を抑えつつ目の前に座る人物を見下ろす((木偶の坊|いちか))。その視線の先・・・ん?
「俺は京也を推薦する!」
(よりにもよって爆弾落として行きましたよこの人ォーーーーーー!!!)
視線が一気に京也に集中する。
「なるほど、では興野も追加だな」
「ちょ、ちょっと待ってください・・・というか一夏巻き込むなよ」
「うっ・・・で、でも京也言ってただろ?『この学園のどの教官よりも強い』って」
さらに濃い視線がまとわりつく。そして教壇の方角からもイヤなオーラが放たれていた。
「・・・ほう?興野。そんなこと言ったのか、実に楽しみじゃないか」
明らかに表情を歪ませた千冬が京也を追い詰める。
「・・・イエ別ニ。俺が言ったのは『織斑先生以外なら勝てる』ですので」
さらに集中する注目。もう少しで穴が空きそうだ。
「何故そこまでの自信があるのかは・・・大体予想できるが興野、それくらいにしておけよ」
「?どういうことですか」
急に千冬が問い詰めるのを止めた。京也の左後方を顎で指し示す。
振り返ろうかと身体を左に傾けようとした時、
「待ってください!納得がいきませんわ!そのような選出は認められません!だいたい男にクラス代 表を任せるなど、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのです か!?」
・・・あーなるほど、この人か。
「実力から言えばわたくしがクラス代表になるのは当然のこと。それを、物珍しさでこんな極東の猿と根暗に任せるなど!わたくし耐えられませんわ!」
(誰が根暗だよ・・・!)
猿は一夏として、根暗はないだろう根暗は。
しっかしこの発言は見過ごせないな。さっきも同じ状況になった気もするが、バカにされたのならやり返すのが興野京也という男の流儀だ。
「大体文化として後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体わたくしにとっては―――」
「いや、イギリスにだって大したお国自慢ないよね?」
反撃開始。
「ああ、世界一マズイ料理で何年トップ張ってるやら」
ちょうど一夏も乗っかってきた。
「な・・・!あなたたち、私の母国をバカにしますの!?」
「それはさっき俺が言ったよね?つまりお互い様だ」
「それに言うならそっちの方が一回多いぞ」
いやそれは子供の発想だぞ一夏。
黙るセシリア。あれ、なんかデジャヴ。
「・・・決闘ですわ!」
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投稿遅くなりました。 やっと他のキャラと絡みます。 http://www.tinami.com/view/452193 ↑第一章です。 「あー、あの子正直苦手だわ・・・」 |
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