兎を殺す方法
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兎を殺す方法

 

 

ウロボロスバニーは嘘が身体の七割を占める。

 

だから真実が体内に撃ち込まれると死んでしまう。

 

 

 

兎×夢主。

 

 

兎にとって夢主の言葉は嘘でも真実でもどっちでもいいと思ってた。

でも夢主はいつも「本当だよ」と。

そう自分に伝えてくる。

 

 

だがそう彼女云ってても「はいはい」って受け流してた。

 

だって唇から出る言葉と思ってる事が違うなんて事くらい知りすぎてる。

自分を含めて。

 

 

 

 

「今度はいつ会える?」

「時間が出来ればまた、こちらから連絡します」

 

「楽しみにしてる。大好きだよバーナビー」

 

「僕もですよ・・・」

 

 

こんな会話さえ、兎にとってはただの「駆け引き」の一つだ。

 

 

 

とあるBarで一人飲む彼女に声を掛けた事から始まった。

自分の正体を知らない一般の女性。

 

 

仕事が絡まない、兎にとっては至極、都合のいい相手。

 

 

 

 

 

 

そんな時、油断してNEXT能力を掛けられる。

当然、即始末をしたのだが絶命する瞬間、まるで呪詛の言葉を吐き出すかと如くこう呟いた。

 

 

 

 

 

「その能力は一生消えない」

 

 

 

 

 

最初は、どんな能力かと戦々恐々としていたが、徐々にその能力が「相手の心の声が聞こえる」と解る。

 

 

 

それでも、別に不都合なんて無かった。

むしろ好都合だ。

わざわざ、そちらに気を回さないで済む。

 

 

「いやぁ〜〜・・相変わらずキミの手腕には舌を巻くね」

『ふんっ、たかが若造のクセに調子に乗りおって。こちらもせいぜい利用させて貰うとするさ』

 

 

「有り難うございます。ご期待に添えたようですね」

 

 

「流石は若き幹部と云った所か、私もうかうかとしてられないな」

『相変わらず目障りなガキだ・・』

 

 

人が思っている事と云ってる事が違うなんて解りすぎてる。

だからなんの不都合も無かった。

 

 

 

『邪魔な男だ・・殺すか・・・』

「キミに見て貰いたい物がるんだがいいかな?」

 

「なんです?」

 

 

「まぁ、こちらに来たまえ」

『そうだ、そのまま近づいて来い・・』

 

 

 

殺意が分かっていれば、後はタイミングを測るだけ。

造作もない事だ。

 

自分の能力は拳銃などは効きはしない。

 

 

 

「・・・・・な、何故わかった・・・」

『化け物め・・なぜ・・・』

 

 

「さぁ?」

 

怯える男の首に掴み力を込めれば、その身体はすぐ抵抗を無くし冷たくなっていった。

 

 

 

「もしもし、僕だ。片付けて貰いたい物がある・・・ああそうだ・・」

 

 

あとは、いつも通りの日常を送るだけ。

 

 

 

人間が口に出す言葉と考えてる事が違う。当然だ。

今更そんな事分かり切っている。

 

 

相手の云う「嘘」から真実をかぎ取ればいいだけの事だ。

なにも支障などは無い。

 

 

そう思っていた・・・

 

 

この能力が掛かった後も、色々な女性と関係を持った事は当然あった。

 

 

「久しぶりに逢えて嬉しいわ。なかなか連絡しれくれないだもの意地悪ね」

『駆け引きのつもりかしら?』

 

 

「私には、アナタしかいないんだからあまり放っておかないでね」

『付き合ってる男の中では彼が一番いい男ね』

 

 

 

皆、男も女もさして変わらない。

 

 

 

人間なんて一皮剥けばどれも同じだ。

 

 

今更絶望する程の事なんてなにも無い。

 

 

 

 

 

――――彼女に出会うまでは。

 

 

 

 

久しぶりに彼女に会った。いつもようにBarで待ち合わせる。

なんて事無い日常の一つだ。

 

 

でも、一つだけ違った・・

 

 

「久しぶりに会えて嬉しいわ」

『寂しかった。会えて嬉しい』

 

 

「随分、疲れてるわね?仕事忙しいの?」

『顔色が悪いわ?疲れてるね』

 

 

彼女だ。

 

 

思考と言葉ズレがない。

 

(でもまぁ・・これくらいなら・・・)

よくある事だ。

 

 

 

 

「僕もアナタに会えなくて寂しかったですよ」

 

 

「本当?嬉しい!!」

『嬉しい。嬉しい。久しぶりに会えて私も嬉しい』

 

 

 

 

「・・・どうして・・・・?」

 

 

 

「どうしたの?」

『どうしたんだろう?』

 

 

 

 

それからだ・・・

 

 

何度となく彼女と話そうと彼女の言葉と思考に差違はない。

 

 

 

たとえ兎が彼女以外の女性のと関係を持っていると伝えても・・

 

泣く事も拗ねる事も怒る事もせずただ・・

 

 

 

「知ってるよ」

『知ってるよ』

 

 

二重音声のように兎に届く。

 

 

 

 

能力さえいかけられていなければ、真偽をはかる事も出来ずにいた答えも、今では彼女の言葉が総て真実だと解る。

 

 

 

ずっと・・・彼女の言葉は「駆け引き」だと思っていた。

 

 

他の人間と同じように思考と言語に一致しないと。

 

 

それが今まで当然だったし、なにも疑問に思ったことなど無かった。

 

 

自分を含めて。

 

 

 

だが、彼女は・・・違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

兎を殺す方法。

 

彼女は悪意なく緩やかに兎を殺す。

 

無意識に。

 

 

説明
ツイッターでフォワロさんとの会話中に思い付いた設定をちょっと詳しく書いてみました。

小説ではなく設定小咄。


*ストーリーに関する文句はお断り致します。
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