マクロスF〜とある昼行灯の日常〜
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その頃、フロンティアでは@

 

 

 

「マクロス・クォーターの新換装を祝して!」

 

「私達オペレーター3人の!」

 

「打ち上げ会〜♪」

 

「ほらほら、早く店に入りましょう、お腹がすいてきたわ」

 

 

ようやくマクロス・クォーターの換装が終わったわね。大統領府からの許可を得て工事に取り掛かって約半年。

少しずつリニューアルされていき、最後にピンポイントバリアの回路を増設して漸く完了した。

私達は、今までの仮仕事が終わったという事で、フロンティア・サンフランシスコエリアにあるカフェに来ているの。ここではお酒も出してくれるから軽く飲みたい時にはここを利用するのも良いかも。

 

うん、やっぱり人気のお店なだけあるわね。

お洒落な店構えに、流れてくるBGM。焼きたてのパンの匂いが私の鼻を擽る。

 

 

「とりあえず注文をしましょう。すいませ〜ん」

 

「えっと、Aコースを3人前。飲み物は食前は紅茶、途中でチューハイ追加お願いします」

 

 

店員さんに告げ、下がっていくのを見て会話が始まった。

 

 

「ふぅ〜、ようやくクォーターの換装完了、やっと私達の仕事ができるわね」

 

「はい、これまで私達がやってきたと言えば、大統領府との連絡係、パイロットや整備員の皆さんへの差し入れだったりでしたし」

 

 

対面に座る、知的美人のミーナがこれまでのことを思い浮かべて遠い目をしているわ。

ふふっ、彼女ってば天然さんだから、こういう表情が見れるのは私達の特権てやつね。

 

 

「でも、これで新統合軍からのやっかみも酷くなるんじゃないです?」

 

 

隣に座る、ラムが懸念を言うが私もそう思う。

ってラム、テーブルの上に身体を投げ出すのはやめなさい。

 

 

「ん…確かに、S.M.Sに所属している人はデータ的に見てもみんな新統合軍より優秀だしね…ほら、紅茶が来たわよ、姿勢を正しなさい、ラム」

 

「そうです、特に戦闘力からすれば対人・対機比率3:1で勝てるデータもありますし、合同演習でも圧勝の成果を上げ、この上今回の母艦の換装ですからね」

 

 

運ばれてきた紅茶を口に含みながら、ミーナも同意を示してきた。

 

 

「ま、お金が無いと動けない私達には何もできないんだけどね」

 

「まぁ特例条項なんてものがありますけど、滅多にあることでは無いですから」

 

「うえぇ、勘弁してよぉ」

 

 

あはは、私もミーナに激しく同意するわ。

想像してみてゾッとする。

得体の知れない何かが襲来…そうすると私達の出動なわけで。

 

ま、まあ近くにはギャラクシー船団もいるんだし、そこまでの事態には陥らないと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

料理が運ばれてきた。

私達は取りとめのない話をしながら頬張っていく。

ん、美味しい。パスタとサラダが程よい感じで口に溶けていくような感覚。

グラスに入れておいたアルコールをほんの少し口に含む。

 

んくっ

 

はぁ〜…美味しい。

 

 

「「………」」

 

「あれ?どうかしたのですか、二人とも」

 

 

モニカさんとラムがこちらを凝視してる…何かあった?

 

 

「…ミーナって…お酒飲むときすっごく色っぽいわね…」

 

「はい…私もそう思ったです」

 

 

へ?私が??

無い無い。

 

昔から勉強しか能の無かった私が色っぽいなんて。

ふふっ、お二人とももうお酒が回ったのかしらね。

 

 

「何かさ〜、知的美人が華麗にお酒を飲むなんてところ、すっごく絵になるよ」

 

「私は子供っぽいですから、どう頑張ってもあんな風にはなれないです」

 

「あはは…ほ、ほら、まだ飲みが足りないみたいですね。すいません、同じ銘柄のお酒をあと1本追加お願いします」

 

 

っ…こういうお世辞には慣れてない。ここはお酒を飲ませるに限るわね。

 

 

「あはは、逃げたわね」

 

「ですね〜。ほらほら、グラス空けないと注げないですよ〜?」

 

 

ちょ、ちょっと…私そんなに飲めない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うふふ、あ〜、いい気持ち。

これってほろ酔い気分って言うんだっけ、ダイチ先輩が言ってた。

 

何でも、お酒ってのは仕事を頑張る為の活力をくれるって力説していた時があったな。

…あの後、シミュレーターに蹴り入れられて数分後に汚物吐きながら出てくるのを見て、とても信じられなかったけど今なら分かるかも。

 

初めて飲んだお酒、このメンバーで飲めたのなら何も言うこと無いわ〜。

 

 

「ねね、みんな好きな人っている?」

 

 

わ、モニカさんが話振ってきた。うぅ、私の苦手な部類だ。

女性ってこういう話題大好物だよね。

 

 

 

「私はいませんね。興味がある人ならいますけど」

 

 

え、ミーナってそういう人いるんだ?あはは、興味あるってミーナらしいね。

 

 

「じゃあラムは?」

 

「私も…いません」

 

「ホントにぃ〜?」

 

 

うぅ、そんな目が据わった状態で顔を近づけないでくださいよぉ…

って近い!近いですから!

 

 

「ふぅ〜ん…つまんないのぉ」

 

 

…ひょっとして酔ってます?何か言動がいつもと違うんですけど。

 

 

「モニカさんは…言わずと知れてますね」

 

「あぁ、うん。あの人ですよね」

 

 

チャンス!ミーナが反撃のきっかけを作ってくれた!

ガンガン押して押さないと。

 

 

「え…えぇ!?ちょ、ちょっと待って!?何で私のことだけそんな」

 

「分かりやすいですし」

 

「はい、バレバレですね」

 

「はぅぅ…」

 

 

…わぁ、モニカさんのあんな姿、滅多に見れるもんじゃないですよね。

いつも凛としてて、私達オペレーターの中心として引っ張ってくれる人。

 

それがあんな肩を縮こませて…何かモニカさんって恋する乙女って感じですっごく可愛い。

 

 

「歳の差なんて関係無いですよ、ファイトです」

 

「だ、だからそういうんじゃなくて」

 

「お尻触られて喜んでる時点でアウトだと思いますが」

 

「むしろご褒美ですよね?」

 

 

ぷっ、艦長にお尻触られた時のモニカさんの表情を思い出して笑っちゃった。

この前ダイチ先輩のいる前でされたんだっけ。

ダイチ先輩てば、顔に出さないようにしてたけど私にはバレバレでしたよ?

あぁ、イライラしてるなって。

 

もう手をギュッて握っちゃって、膝の上でプルプルさせて…

あの時、私はダイチ先輩の仕草を見てノックアウト寸前だったんですよ?

恍惚となって、頬が上気したのを覚えている。

 

はっと気づいた時には報酬の話になって、あ、いつものダイチ先輩だって思った。

思わず憎まれ口が出ちゃったけど…

 

 

ダイチ先輩………そんなに触りたいなら私のをいつでも…

 

 

……

……はっ。

 

 

「「………」」

 

 

いつのまにか、二人が話を止めて私の顔を覗き込んでる。

あ、ミーナが嫌な笑顔を浮かべて…モニカさんも口を手で隠して目だけで笑ってる…

…嫌な予感が。

 

 

「誰のことを考えていたのかなぁ〜?」

 

「そうだそうだ、しっかり白状してもらうからね〜?」

 

「わわっ、にじり寄らないでください」

 

 

きゃ〜っ、二人が椅子ごとこっちにきた。何かシュール。

 

 

「あうっ」

 

 

がしっと二人に肩をつかまれ、両側から顔を覗き込まれる。

 

 

「さぁさぁ…早く白状した方が身のためよ?」

 

「私達に隠し事をするのはいただけないわよ、ラム?」

 

 

…笑顔を貼り付けた修羅が二人。

私は早々に観念するしか無かった。うぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜ん…ダイチ中尉ね〜」

 

「意外って言えば意外、でも何か納得できるような感じね」

 

「うぅ…私とダイチ先輩はフロンティア・ツーリングクラブに入ってて、同じ所属だってことから知り合ったんですよぉ」

 

「う〜ん、やっぱり渋さが足りないと思うのよね」

 

「艦長並みに貫禄もあって渋さがある人は早々いないような気がするんですが」

 

「オズマ少佐は?」

 

「妹煩悩過ぎるわね。せめてシスコンを治してくれれば」

 

「あれ、狙ってるの?ミーナ」

 

「んな訳ないじゃない」

 

「あはは。ま、まぁジェフリー艦長以上の人は中々いないってことで」

 

「さり気なく名前を呼びましたね」

 

「ですね。願望が口から出ています」

 

「私の時だけ追及激しくない?」

 

「気のせいですよ」

 

「そうです。リア充爆発しろだなんて思ってないですから」

 

「二人が苛める…」

 

「でもさ、ダイチ中尉ってよく分からないよね」

 

「?何がですか?」

 

「何て言えば良いんだろ…みんなとは雰囲気が違うって言うか…何かこの世界で違った存在…て言えばいいのかな」

 

「纏う空気が違うってこと?」

 

「あぁ〜…そんな感じです。正確には違うんでしょうけど」

 

「う〜ん…」

 

「こういうデータがあります。新統合軍時代は今のような明るい人では無かった。ここでは人間関係が非常に悪かったとの情報もあります。ですがS.M.S.に所属以来、人格が変わったかのように明るく振舞い、私達との関係も悪くない。

戦闘能力においても同じで、昔はミサイル管制の能力は無いに等しかった。ですがここ数年で見違えるように上達、今は第2管制室を任される程。…まるで力を隠していたかのように異例の速さで駆け上がってるんです。新統合軍とS.M.S.で何が違うと思います?」

 

「………」

 

「…任務の自由度?」

 

「それもあると思います。軍ならば細かい命令にまで従って行動しなければならない。ですが我らはある程度の自由・自己裁量が認められています」

 

「…後は…軍で歯が立たない相手は私達が…」

 

「うん、そこが一番を締めていると思います。より強い相手の存在。我らならば、その存在があったならば命がけで戦うことになるんです。それが、ダイチ中尉にとっての存在意義ではないか、力を示しても全く矛盾が無いからだ、と推測したのですが」

 

「…ううん」

 

「ラム?」

 

「…ダイチ先輩はそんな感じじゃないよ。確かに、昔は軍の中に居場所が無かった、酷い人間関係だったって言うのはあるんだろうけど、今はS.M.S.がある。ダイチ先輩が笑って過ごせる場所がある。ダイチ先輩はみんなが笑顔であることを望んでるだけですよ」

 

「「………」」

 

「知ってますか?オズマ少佐の義妹のランカちゃんが引き取られたときのこと」

 

「知らないわ」

 

「私も」

 

「…すいません、こういう場で話す話題ではなかったです。やめときましょう」

 

「…ここでそれは無いんじゃない?お酒抜けちゃったじゃない」

 

「激しく同意」

 

 

 

 

 

 

 

「場所を変えましょう。シフトまで時間ありますし、クォーターのラウンジに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、フロンティアではA

 

 

 

あの悲惨な時から、もう10年近く時が経っているんですね。

いえ、私も10歳にもなってなかったのでよくは覚えていないのですが。

少しずつ、各所から集めた情報です。

 

 

 

あの頃のオズマ少佐は新統合軍で大尉の階級を拝命しており、それはそれは好戦的な性格だったそうです。

シミュレーターでの模擬戦闘、そして白兵戦闘術等、戦闘訓練の類は誰もが震え上がってやりたがらなかったと聞きます。

え、今も?

いえいえ、あんなのはウォーミングアップに過ぎません、今も齢30を超えたとは言え、本質までは変わっていないのではないでしょうか。

…そう考えると一人だけいますね、あの頃のオズマ少佐を甦らせている人が。

ええ、言わずと知れたあの人です。

 

 

そして件のダイチ先輩です。

ダイチ先輩は新統合軍・グァンタナモ級宇宙空母のミサイル管制官の3年期生として勤務していました。少々の実践的な訓練を受け、いくらかの実行動を経て少尉の階級まではとんとん拍子だったそうです。ですが、ミサイル管制の手順を無視したり、教官や先輩達の教えや動作の非効率さを指摘するといったことを繰り返していた為、どうにも上からの評価は辛かったみたいです。

次第に機器に触れることも出来なくなり、本当に除者にされていたんです…!許せないと思いません!?

 

 

 

え?何故2人のことを先に説明するのか、ですか?

ランカちゃんのことに深く関わってくるからなのですよ。

何故ダイチ先輩もかって?

 

慌てないでください、それもちゃんと説明しますから。

 

あ、お手洗いは大丈夫ですか?

飲み物、グリーンティーで良かったですか?

 

 

それじゃあランカちゃんが救出され、オズマ少佐に引き取られる所までを説明しましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メーデー!メーデー!!こちら第117探査船団!!多数の未確認生物からの攻撃を受けている!至急救援頼む!マクロスが作動しない…!くそっ、奴ら艦橋まで…』ブツッ

 

 

……

 

『脱出ポッドはもう満員だ!大至急脱出するぞ!』

『うわ、化け物がまた来やがった!』

『いやぁあああああ!!??』

『急げ!このポッドはフロンティア船団へと向かうぞ』

『あ、アレ見て…あそこのポッドが…』

 

 

 

 

 

――――――ガリッ…!………””’’””!!

 

 

 

 

『嘘…お母さん…?お兄ちゃん……?ウソ……ウソ…………

いやぁあああああああああああああああぁあああああああああ??!!』

 

 

 

……

 

 

 

『あの子か?探査船団の生き残りってのは』

『らしいな。何でフロンティアに』

『知らね。さっきまで半狂乱だったらしいぜ?何か怖ぇよ』

『オレ達にもケチ付きそうだぜ、関わらないでおこう』

 

 

 

『ったく、あいつらは…!!ダイチ、あの娘の所に行くぞ』

『え…オズマ大尉?』

『いいから来い!』

『おお…おお……?』

 

 

 

『※※※※※は活動を鎮めた模様。フロンティア船団に追ってを掛けてくることは無かろうて』

『ですが大統領…!』

『分かっておる、至急調査船団の主だった者を集めてくれんか。これからの対策について考える必要がある』

 

 

……

 

 

『よし、今日からオレがお兄ちゃんだ!だからキミの名前はランカ・リー!』

『ぷっ…お兄ちゃんって…くくっ』

『…!』

『…いっ痛ぇ!?何もぶっ叩かなくても…』

『あん?』

『すいませんマジ調子乗りました』

『………私の名前…ランカ・リー……?』

『っ!うん、そうだぞ?これからオレと一緒に、この家で住むんだ。

もう一人じゃないからな?このバカダイチもいるし』

『……』

 

 

『はぁ…ったく。改めまして自己紹介だ。オレは鉄ダイチ。…お嬢ちゃん、お名前は?』

『…ランカ・リー…』

『ランカちゃんかあ。キミにぴったりだわ。ねね、頭撫でて良い?』

『……』

 

 

……

 

 

 

『ちっ!?奴らの襲来か!バーミリオン小隊2番機、オズマ大尉出る!』

『待て!まだ幕僚本部からの許可が下りていない。発進は待て』

『くそっ!?こんな時に…!!ん…?あれは!』

『誰だ!?小型宇宙空母が命令も無く…?!』

 

『目視できる敵15体の行動予定軌跡をシミュレート。対空弾幕用意…ファイア!

次!誘導ミサイル射出準備…今!第2波に向けて目標修正…照準完了』

『な、何だあのデタラメさは…!?弾幕で敵の行動範囲を絞り、そこに誘導ではなく直接ミサイル、だと…っ!誰だ…【モニターON】…ダ、ダイチ?!』

 

 

 

『S.M.S.より新統合軍各機へ。この宙域は我らが引き継ぐ。速やかに空母へ撤退せよ』

 

 

『S.M.Sか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?この会話の情報筋ですか?

…ふふっ、内緒です。女の子には秘密が一つや二つ、あるものでしょ?

 

はい、私が手に入れることが出来たのは『何故か』録音されてあったこの会話のみです。

誰が、どういう意図で保存していたのは知りませんが。

 

もちろんじゃないですかぁ、ダイチ先輩が『昼行灯』だなんて呼ばれてるのは知ってました。

ま、奴らの見る目が無かったんじゃないです?

良い人材をどんどん放出していますから。

 

ジェフリー艦長、オズマ少佐、ジェシカ大尉、そしてダイチ先輩…ダイチ先輩……ダイ

 

……はっ。

 

え?あぁ、そこまで分かってらっしゃるのなら話が早いですね。

クォーターはバトル・フロンティアと少なからず回線が繋がっているのですから、そこをハッキングしてやればこの通りですよ。

ふふん、新統合軍の未熟なCICオペレーターに遅れを取るわけ無いじゃないですかぁ。

お二人もそのくらいのこと……

…ほぉ?

今度は是非ともその会話、聞かせて欲しいものですね。

 

 

ミーナ?オズマ少佐宅に盗聴器は…やりすぎじゃない?

いつくらいから…そんなに前なの?

 

え?興味?

え、だってオズマ少佐は狙ってないとかさっき……まさか?!

その『驚いた?』ってドヤ顔止めて!?

 

 

え、えぇえええええ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、フロンティアではB

 

 

 

…ここはどこ…?

私の名前…何だっけ…?暗い…暗いよ…

 

嫌…何も思い出せない…

 

『第117探査船団』

 

『生き残り』

 

『忌み子』

 

 

違う!私は…私は…!

誰か…誰か…

 

 

『何でフロンティアに』

 

『明日は我が身』

 

『無視』

 

『あの無表情…怖っ』

 

 

私が何をしたって言うの?

誰か助けて…

 

 

『アイモ』

 

『新たな神の国』

 

『侵略確保』

 

 

この記憶は何?

私こんなの知らない…!どうして?

 

 

胸が痛いよ…痛いよ…痛いよ…!!

 

 

……

『※※※?大丈夫か?心配いらねぇよ』

………あ。

あったかい……

誰?

私を抱き締めてくれているのは誰?

 

 

『お孃ちゃん、お名前は?』

 

『※※※ちゃんかぁ、キミにぴったりだわ』

 

 

 

あったかい…

おにいちゃん、誰?

私の名前、もう一回呼んで?

 

 

『ひぐっ……ぐぅっ……ゴメンなぁ?』

 

 

何故泣くの?

私は全然悲しくない。

 

 

『キミみたいな小さい子が受ける仕打ちじゃねぇよ…周りの大人が守りきれなくて…ゴメンなぁ?』

 

わたし、全然気にしてないもん。

 

『キミから笑顔を奪っちまって…ゴメンなぁ?』

 

わたしは元気だよ?笑顔なんか無くったって…

 

『心配いらねえ、よ?もうキミを怖がらせたりしねぇ』

 

………ホント?

 

『もうキミを一人にしたりしねぇ』

 

ホントに?

 

『鉄…クロガネの名にかけて』

 

 

あ。

伸ばした手の先が、しっとりと濡れてくるのを感じる。

 

 

…私は酷い子。アナタが泣いてるのを見て…嬉しく思ってるの。

アナタが抱きしめてるのを感じて…喜んでるの。

嬉しいの。私はアナタに救われた。

だから…笑顔を見せて?

私にお名前教えてくれたときみたいに。

 

 

ね?

 

 

 

 

私は…一人じゃないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…夢…?

何だか懐かしい夢を見た。久しぶりだな…

 

 

「んっ…」

 

 

軽く伸びをしてからベッドから降りる。フローリングの床が冷たくて気持ち良い。

 

 

「あの頃の私…無表情で、無感情で…お兄ちゃんに心配ばかりかけただろうな」

 

 

そして。

 

 

「ダイチさん…あれってプロポーズに間違われてもおかしくないよ?」

 

 

きっと、必死に私の事を考え、必死に私の為だけに動いてくれたんだと思う。

 

お兄ちゃんがS.M.S.に入り、家を空けがちになったとき、新統合軍を辞めたダイチさんは毎日のように顔を出しにきてくれた。

 

お兄ちゃんがお仕事でケガして私が発狂した時も、ギュッと抱き締めてくれた。

 

気絶した私の隣に、私が起きるまで添い寝してくれた。

 

お腹がすいた私の為に、不器用ながらご飯を作ってくれた。

 

 

 

私の、寂しいを消してくれたのはダイチさんだった。

 

今でも、たまにダイチさんの部屋に潜り込んでダイチさんに抱きついて眠っちゃうのは仕方ないよね?もう何年もそんな風に馴らされてるんだから!

 

私の想い…少しずつ変化してきてるのをようやく自覚できたんじゃないかなって思う。

 

ダイチ兄さんからダイチさんへ…無意識に呼び方を変えてたんだね、私。

 

「うぅ…」

 

 

わ、私の今の顔、多分真っ赤だ。

熱を冷ましに、ダイチさんと散歩に行って一緒に歌ってた、グリフィスパークに行こう。

 

わ、また思い出してきた…平常心、平常心!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「………」」

 

「どうですか?これでもダイチ先輩が戦闘目的でS.M.S.に入ったと思いますか?」

 

「ゴメン、正直上辺しか見てなかったわ」

 

「同感です、でもだとしたら…ふむ」

 

 

あれ、やっぱり話さない方が良かったかな?ついつい喋っちゃったけど…

モニカさんは表情暗くなっちゃってるし、ミーナは…あれ、何か考え込んじゃってるよ。

 

「ふぅん…ランカちゃんか…ジェシカ大尉もいるし…この際ラムと協力して…」

 

「ちょ、ちょっと待って?!」

 

「大丈夫よ、私は独占はしないほうだから」

 

「全然大丈夫じゃない?!」

 

「まずは情報が先ね?盗聴器を本人と部屋に…」

「だから犯罪です、それ?!」

 

 

わ?、ミーナがスイッチ入っちゃったよ。収拾がつかない。

 

これ以上ライバルが増えるのは勘弁してほしい、只でさえ二人には差をつけられてるんだから!

 

 

「仕事ではジェシカ大尉、プライベートではランカちゃんにダブルスコアくらい差が離れている訳ね…ふふ、燃えてきたわ」

 

「あら、何が燃えてるのかしら?」

 

 

わわ、後ろから急に声かけられたらびっくりしちゃうよ?!

ってジェシカ大尉?!!

 

「そろそろシフトの時間よ、着替えてきなさい?」

 

「分かりました」

 

「はい、ジェシカ大尉もシフトお疲れ様でした」

 

良かった、会話は聞いてなかったみたいね。

安心して、部屋に戻ろうと椅子から腰を浮かせた瞬間、ジェシカ大尉の冷え冷えした声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宣戦布告…受けて立つわよ、お二人さん?」

 

 

 

 

 

…勘弁して。

 

 

説明
ダイチがアンドロメダ船団へ旅立って数日。

フロンティアでは、様々な想いが錯綜していた。
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コメント
コメントありがとうございます^^ダイチは年上すぎるが故に…と、後は続きを楽しみにしててください。(これっと)
すっごく面白いです! 頑張ってください  ダイチさんは更に大変な状態に・・・・(taku)
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