[モバマス]みくと魚とダイエット
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「うにゃぁあああ!?」

 レッスンスタジオ。体重計に乗った前川みくの声が響き渡った。

「……48キロ。さ、3キロも太ったにゃぁ……。これは絶対プロデューサーチャンには言えないにゃ……」

「ほう? プロデューサーには言えないか?」

「当たり前にゃ、そんなこと言ったら今すぐにダイエットしろって言われ――」

 言いながら振り返ったみくの目の前には、

「うん、今すぐダイエット開始な!」

「ふにゃぁあああ!? ぷ、プロデューサーチャン!? いつからいたにゃ!?」

 腕を組んだプロデューサーが、引きつった笑顔で立っていた。

「いつからも何も、時と場所と声の大きさを考えろ……」

 

 

「さぁ、ダイエット効果抜群のレッスンプログラムを組んでもらったぞ」

 プロデューサーが一枚の紙をみくに差し出した。

 みくはおそるおそる受け取って目を通すと、ふるふると肩をふるわし始めた。

「プロデューサーチャン! こんなハードなレッスンみくには無理にゃ!」

「でも、ファンのみんなにいつもすっごく可愛いみくを見てもらいたいだろ?」

「か、カワイイ……。そうにゃ! もちろんファンには最高にカワイイみくを見せたいにゃ!」

「だろ? だったらファンのために頑張ろう!」

 プロデューサーの誘導に、みくはぐむっと唸る。

「でっ、でもプロデューサーちゃん! ダイエットはテンション下がるにゃ! テンションの低いみくを見てもファンは喜ばないにゃ!」

「ダイエット成功したらテンション上がるだろ? だったら大丈夫だ。このレッスンプログラム組んだトレーナーはベテランだからな」

 プロデューサーがトレーナーの方を顔で指し示す。

 視線を受けたトレーナーは目の前の生徒達から目線は外さずに、プロデューサーへと親指を立てて返事をした。

「にゃぁ……、でも、今日はテンションあがらないモン」

 ぷい、とみくはそっぽを向く。

「ええー……」

 単なるわがまま発言にプロデューサーもあきれ顔を浮かべる。

 それを見て、ここぞとばかりにみくは攻勢に出る。

「そ、それにみくが太ったのは秋のせいにゃ! 秋はご飯が美味しすぎるにゃ!」

「…………」

「うにゃ。プロデューサー、チャン……?」

「……はぁ。分かったよ」

「わ、分かってくれたにゃ?」

「あぁ……、分かった。すごく分かった」

「にゃんにゃにゃにゃにゃにゃ♪」

 みくはうれしそうにステップを踏む。

「それじゃ通常通りレッスンをしていてくれ。俺は昼ご飯の手配でもしとくから」

「にゃあ! 了解したにゃー! プロデューサーチャン、美味しいもの頼むにゃー!」

「ああ、任せとけ!」

 

 

 昼休み。

「フーッ!! うー……にゃー!」

「……頼むから日本語でしゃべってくれ」

 みくはお弁当を広げた瞬間、プロデューサーに威嚇を始めた。

 みくの目の前にあるのは焼きサンマ弁当。

「これはにゃんの嫌がらせにゃ!?」

 みくはプロデューサーに詰め寄りながら言った。

「ん? 秋はご飯が美味しすぎるっていうから美味しいものを食べさせてやろうかと思ってな」

 当たり前の事のようにプロデューサーは答えた。

「にゃぁあ! みくがお魚苦手だって知ってるでしょー! ひどいにゃー!」

 涙を浮かべながら、恨めしそうな目でプロデューサーをにらむ。

「アレー、ソウダッタカナー?」

「ふにゃぁああ! 棒読みにゃー! プロデューサーチャンのお弁当いただくにゃ!」

 きらりん、と目を光らせたかと思うと、みくは一瞬にしてプロデューサーの弁当を奪い去った。

「ふっふっふー、みくの手にかかればこんなもんにゃ」

 誇らしげに言うと奪ったお弁当を見る。

 紅鮭弁当。

「うにゃぁああ! またお魚にゃ――っ!?」

 お弁当を投げ出し、みくは走り出す。

「おいおい、っと、危ないなぁ」

 投げ出されたお弁当をキャッチしたプロデューサーは、落ち着いた様子でみくの動向をうかがう。

 みくは今度はトレーナーの弁当をねらう。

「いただきにゃー!」

 みくは勢いよく飛びつくと、お弁当の入った袋を口にくわえ、四つんばい状態で着地した。

 まるで野生の猫である。

「今度こそ、美味しい美味しいお弁当にゃー!」

 袋からお弁当を取り出しみくは、

「に゛ゃ――!?」

 再びお弁当を投げ出した。

 カレイの煮付け弁当。

 今度はトレーナーがお弁当をキャッチ。

「フーッ!」

 みくは四つんばいのまま、5メートルほど離れたプロデューサーを威嚇する。

「さ、美味しい美味しいお魚、どの弁当でも選び放題だぞー?」

 言いながらプロデューサーはみくに近づく。

「こ、こっち来るにゃー!」

 みくは後ろに逃げようとするが、そこにはベテラントレーナー。

 カレイの身を箸で持ったままみくに近づく。

「栄養価を見ても魚は良いぞ。トップアイドルを目指すなら食べていて損はない」

「ふにゃぁああ! こっちも目がマジにゃー!?」

 みくは猫顔負けの華麗なサイドステップで距離を取る。

 しかし、その先には、

「ご、ごめんなさいみくさん! お姉ちゃんの命令なの!」

 ルーキートレーナーがサンマの身を箸に構えて立っていた。

「にゃぁああ!?」

 再びステップで距離をとるが、

「お、鮭がいいのか?」

 距離を取った先にはプロデューサー。

「にゃぁああ! みく、袋のねこにゃー!」

「いや、それは例えなんだからねずみでいいだろ!」

 突っ込みながらも、鮭の身を構えたままみくに近づくプロデューサー。

「……うー。にゃにゃにゃ、っにゃ――!!」

 みくは猫の様に素早い動きでフェイントをかけつつ、包囲網をかいくぐった。

「にゃふー、にゃふー、にゃふー……」

 レッスンスタジオの隅まで逃げるみく。

「これくらいで逃げれたと思うなよ。行くぞみんな!」

「ああ、任せておけ!」

「ご、ごめんなさいっ!」

 プロデューサーのかけ声に、ベテラン・ルーキーの両トレーナーが続く。

「ふ……ふにゃぁああああああ――――!」

 

 

 2週間後。

「オサカナ……オサカナいやにゃ……」

「良かったじゃないか、元の体重に戻ったわけだし、別に魚を食べさせた訳じゃないだろ?」

「うぅー、良くないにゃっ! プロデューサーチャンのせいで、最近はお魚に追っかけられる夢ばっかり見るにゃ! 窮魚猫を噛む夢にゃ!」

 目を潤ませ、八重歯を全開に見せながらプロデューサーに向かって吼えるみく。

 窮魚ってピラニアか、と心で突っ込みながら、みくの頭にぽんと手を置く。

「それにしてもよく頑張ったな。ご褒美に松茸でも食べに行くか?」

「い、行くにゃ――!!」

 ガバッとプロデューサーに飛びつくみく。

 離れろよ、と口に出しながらも、全く可愛いやつだ、と思うプロデューサーであった。

 

説明
モバマス、前川みくのお話です。

モバマスみんな可愛い!
他にも色々書きたいな!
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